私の町吉備津

岡山市吉備津に住んでいます。何にやかにやと・・・

3字の魅力について

2016-06-06 09:59:32 | 日記

 昨日、“不獲巳<ヤムコトヲ エズシテ>”という3字に付いて紹介しました。この3字ですが、あの長恨歌の楊貴妃の時にも書いたのですが、たった、漢字3文字で、そこに登場する人物の、誠に、細やかな悲喜交々の感情を言い表わす言葉として使われていたのを思い出しました。中国の場合は、七言絶句等の例を引かないでも分かるのですが、たった「三言」によって、その場での情景を的確に言い表す文章上の表現形式が早い段階から、既に、殷や周の時代から生まれていたのです。

 その例を、先ず、(長恨歌より)

  芙蓉帳暖 度春宵 
   春宵苦短 日高起
  従此君王 不早朝
  承歓侍宴 無閑暇
  春従春遊 夜専夜
    後宮佳麗 三千人
    三千寵愛 在一身
  金屋粧成 嬌待夜
  玉楼宴罷 酔和春
 
 このように、その時々の総ての情景を「三字」の中に詰め込んで詠んでいます。思わず、「うまい」と感嘆の声を上げずにはおられないような、上手なといいましょうか、誠に、その場に合致した相応しい言葉を持って書き現わしています。その当時の世界の最高水準の中国の文化が、遣唐使などを通して日本に伝わって来たのは確かです。それを、すぐに日本の書物の中に取り入れたのが「古事記」や「日本書紀」などです。 

 例えば「古事記」には、先に説明した”無及兵”という字が見られますが、これを、<セメタマウナ>と訓読みにルビを振ってはいますが。「共自死<トモニ ミヅカラ シセタマイキ>」もそうですし、昨日取り上げた日本書紀にある「不獲巳」もまたしかりです。<ヤムコトヲエズ>です。

 このように見てくると、地球上に発生した「文化」と呼ばれている、人間の感覚(感性)が創り上げた創造物は、人間の感情の深化に豊かに働いて、多大な効用を及ぼしていることが分かります。