「その娘子の名前は???」と、しつこく聞く天皇ですが、皇后の妹は大変な美人であるという噂をかねてから聞いていて、何時か機会があると、その人を自分の物にしたいと熱望していたのかもしれません。その機会の来ることを願っていて、わざと知らないふりをして、その舞いを誘って、皇后、自ら云わざるを得ないように仕向けた策略かもしれませんね???それとも知らないで、まんまと天皇の策略に引っ掛かって舞いを踊った皇后は、自分の浅はかさにあきれ返っているのではないでしょうか。
「しまった。天皇の策略に引っかかってしまった」
と、思ったのでしょうか。そんな思いを整理したくて、皇后は、2度までも舞いを踊るのです。でも、こうなったら、どう仕様もありません。その名を云わざるを得ません。そんな皇后の心を言い表しているのが
”不獲巳<ヤムコトヲ エズシテ>
です。たったこの「三言」で、皇后の心の底にある秘めたる、悔恨の情を、読む者をして十分に味わさせます。もう、致し方ありません。皇后は
”妾弟。名弟媛焉”
と、お答えになったと書いてあります。「それは私の妹で、名前は弟媛と申します。」と、申上げます。その時の皇后の蚊の鳴くようなか細い声や口をキッ結んだ顔面蒼白の表情までもが、この「三言」の中から聞こえたり見えたりするように感じられるのですが????