さて、任那の「司」に任命された田狭は、すぐさま、朝鮮半島の遠地に出かけます。すると、すぐにです。それを書紀には
「俄かにして天皇、稚媛を幸<メ>し給ひつ」
と書かれてあります。どのようなそこら辺りに事情が有ったかは分かりませんが、稚媛を“幸”と書かれてあります。<メス>と読ませております。
辞書によると、この「幸」には、「さいわい」と云う意味の外に、「いつくしむ・かわいがる・こいねがう」と云う意味があるのだそうです。
すると、夫である田狭が国内にいなくなった、「俄かにして」ですから、時を置かずに、すぐに、と言うことになります、天皇は噂に聞いた日本一の美女を自分のものにした事になります。それが「幸」なのです。どのような策略を弄したのかは何も書かれていませんが、知恵者「雄略」ですもの、その辺りは大変上手に手を打ったのだと思われます。
"俄而、天皇幸稚媛”
此のたった7文字の中に、そんな雄略の他には誰にも真似できないような何か淫らな巧妙な手口が浮かび立っているように、私には思えるのですが???
その時の天皇の顔と策略にまんまと引っ掛かった稚媛の顔と比較しながら、この段を読むと、大変面白く想像を膨らませることができます。