「好きな俳句」その2
昨日は蕪村の句について書いたのですが、近頃の猛暑で、つい、忘れていたのですが、夏の句として芭蕉にも、私の好きな句があります。先ず、これをご覧ください。私の持っている安永七年製の「奥細道 菅菰抄」の本です。
その中に見える
“暑き日を 海に入たり 最上川”
です。
芭蕉の夏を詠んだ清々しい名句だと思うのですが。
夏のじりじりと万物を焼き尽くすほどの太陽が、ようやく目の前に広がる雄大な静かなる日本海に沈みこもうとしているせつな、その太陽を堂々と包み込んでいった海。その海に滔々と流れこんでいる大河「最上川」から一条の涼風がさっと吹いてきたのでしょうか。猛暑の中に、それこそ、あるかないかのような、誠に、小さな小さな幸せをその中に読みとり感じて、今を生きている瞬間の自分の命の大切さに、感謝の気持ちを込めて歌い上げた芭蕉ならではの句だと思うのですが。
このところの猛暑ですが、一昨日の慈雨によって、吉備の中山から吹き下ろす涼風に、芭蕉のその涼しさを重ねて、生きている事の有難さをつくずく感じながら、この句を読んでおります。