象潟を訪ねた芭蕉は、この地をかって訪ねた先人、能因と西行の跡を“とぶらひ”尋ねます。この中で、特に、西行に着いて詳しく説明があります。
西行が詠んだ歌
“きさがたの 桜は波に うづもれて 花の上こぐ あまのつり舟”
にある桜は
“千満寺の境内、地蔵堂の前の汀にあり、古木は枯れて、今は若木なり”
と書かれております。そして梨一は、西行の来歴を詳しく書き、更に、
「水戸の三日坊五峯という俳人がこの象潟にやってきて、五百貫文出して、永代、この象潟を訪ねてきた風人に、ここに渡る舟賃をすべて「タダに」するよう依頼したので、大層以後のここを訪れる人にとっては大いに助かった」
という大変珍しい逸話も書き添えております。