イザナギの鼻を禊された時生まれな神「建速須佐之男命]に対して言われます。
“汝命所知海原と矣<ナガミコトハ ウナハラヲ シラセト>
と。こうして三柱の神は夫々の国を治めることになったのです。
ここで宣長はこの三柱の神の御心に付いても説明しております。即ち、天照大御神と月読命は「善神キカミ>」で須佐之男命は「悪神<アシキカミ>」であると。その理由として次のように説明されております。
『イザナミが火ノ神をお生みになるまでは総ての神は善神であったのですが、此の時、初めてこの世の中に「悪神」が出来たと。「火」は「世の中の大用<イミジキイサヲ>、大変便利な物にしてくれる良い物だが、反面、物を亡失<ホロ>ぼすこともある、大変、悪しき神でもあるのだ」
昨今起きた新潟県糸魚川の大火災もそうです。扱いによっては「火」は人々の生活を目茶目茶にもする大変な悪神でもあるのですが、その「悪神」のいる黄泉の国にイザナギは行き、、全身に「悪神」が取り付いてお帰りになられます。その時以来「悪神」がこの世に現れ、「善神」と共存することになったのです。その「悪神」として生まれたのが
“建速須佐之男命”
です。
このような「善」と「悪」とが混然と同居している「世の中」について、宣長は次のように説明しております。
“奇<アヤ>しきかも、霊<クス>しきかも、妙<タヘ>なるかも、妙なるかも”
そしてまた
“凡そ世間<ヨノナカ>古今<ヨヨノ>萬事<ヨロツコト>、此ノ理にもるることなし”
と。