“八佐受岐<ヤツノ サズキ>を設えて、夫々に酒樽を置いておきます。二日酔いを覚ます為の朝の迎え酒がちゃんとそこに御親切にも置いてくれてあるのです。誰だって「飲まずにおれようか」とばかりに、「何はともあれ、まずは」と、その酒に飛び付きます。昨夜の戦勝祈願のための深酒の上に、それも八つ総ての頭を、同時に、酒樽に突っ込んでです。
「出雲にも、こんなうまい酒があったのか」
とばかりに、一機に揉み干してしまいます。植木等ではないのですが、体にいい分けがありません。酔いが急に体じゅうを襲い、体中の力が抜けます。すると、どうなると思われます。オロチも人と同じです。まず、
“於是飲酔死由伏寝<ココニ ノミエヒテ ミナ フシネタリ>”
と、寝てしまいます。全く人間と同じです。それだけオロチが酒に強かったのです。スサノヲが、かって、アマテラスの神殿で酔った時は、眠らないで、お酒を神殿中に嘔吐したとありますから、オロチは相当に酒が強かったのでしょうね????それでも、その伏寝する様子が「死由」なのです。あたかも死んだように正体不明の如くにという事を云い現わしているのでは???????宣長は、これを<ミナ>と読まして、「死んだように」ではなく、八つの頭総てが「皆」だと説明がありますが。
「動かざること山の如し」のような、そんな巨体を「速須佐之男命<ハヤスサノヲノミコト>」は、いったいどうやって退治したのでしょうかね。八っも頭や尾があるようなオロチをです。