少しばかり道草が長くなりましたが、再び、古事記へ戻ります。
オホクニは越の国に大変美しい乙女がいると聞いて、妻にと出雲からはるばるやってきて、その家の前で、「君恋し」と大声で歌います。あまりにもその方法が強引過ぎたのでしょうか、比売はなかなかその戸を開けようとはしません。その時に、二人が互いに詠みあった歌が残っております。比売が歌ったその二番目の歌が、少々、乙女らしからぬ少々卑猥な感じさえするものですから、誰かの入れ知恵だったのではないかと私は思っておりますが????その歌は
”多久豆怒能 斯路伎 多陀牟岐<タクズヌノ シロキ タダムキ>”
「あの力強い栲綱(たくつな)のような強くて真っ白な腕」をです。その腕で
“阿和由岐能 和加夜流 牟泥遠<アワユキノ ワカヤル ムネヲ>
「淡雪のようなふんわりとしたやわらかな私の胸を」と云う意味です。なんと洒落たことばではないでしょうか、こんな言葉が一杯にちりばめられているのですよ、古事記には。改めて「素晴らしい名著だ」と、何回でも書いておりますが・・・
さて、宣長は、、この<タダムキ>腕についてですが、この腕は、沼河比売の腕ではなく、オホクニの腕でだと解説しております。
まあ、久しぶりですので記憶が薄れてしまわれたお方もおられるかもと、”曾陀多岐<ソダタキ>”の前の状況を蛇足的に書いておきます。