越の国では、オホクニの出雲軍に対して徹底抗戦が、それとも和平交渉かの賛否両論がしばらく続きます。それが沼河比売の歌として間接的に言い表されているのです。それが
“其夜者不合而<ソノヨハ アハサヅテ>。明日夜為御合也”
です。
一日かけて、和戦の両論の議論が続きます。でも、それは「小田原評定」ではなく、その結論は一日で決まります。
「我越の国は、「萎え草」、「浦渚の鳥」などと同じで、あの強力な出雲軍の前には、すぐにも潰れそうな弱々しい力しかない。闘えば立ちどころに
“伊能知波<イノチハ>那志勢多麻比曾<ナシセタマヒソ>”
命が無くなりますよ。でも、決して、死んではなりません。「時に、范蠡無きにしも非ず」で、その時を待ちましょう」
と。
なお、この「な死せたまひそ」ですが、これは日売がオホクニに言った言葉と一般には解釈されていますが、それでは少々意味が通じないのではと思います。家の中に入る女性が、これから夜撃ちを仕掛けるようたしている身も知らずの男に対して言えることばではありませんもの・・・・・。
と考えると、この歌は、比売が、この作戦会議の中で、そこにいる「越」の人達に言った言葉だったのではないでしょうか。この歌の最後にある「いしたふや あまはせつかひ」は何のことかよく分かりませんが、わたしは「そこにいる人達に、敢て、自分の心を強く伝える時に言う言葉」ではないかと思いますが、如何なものでしょうかね???そう考えると、その前に、日売にオホクニが呼びかけた歌の中にもめ見える「いしたふやあまはせつかひ」の意味もはっきりと分かるのではないかと思うのでっすが。