暑い暑い今年の夏。
その中でも、ひときわ暑い所へ行ってきました。
国宝高松塚古墳壁画修理作業室の公開(第10回)及び 特別史跡キトラ古墳石室の公開!
ですっ!!。
法隆寺大学に行った時についでに行った奈良博(失礼な)でパンフレットもらって、
「おお、申し込んでみなくちゃ」と思っていたものの、
実際に申し込んだのが、締め切り当日の23時55分過ぎで、
しかもHP経由からだったというヤバさ。
それがですよ、
「多数の御応募をいただき抽選を行った結果,
本公開に当選致しましたのでご連絡致しました」
ですってよ。
早くから、往復はがきで申し込んでいた方には実に申し訳ない。
しかし、早く申し込めばOKってワケでもないのだなと思い知った今回の事実。
諦めずにチャレンジしてみて良かったです。
で。
当初お誘いしようと思っていた人が、脱落に継ぐ、脱落で…。
欠員出た…。
どうする、これ?
何でも、定員の4倍以上の申し込みがあったそうで、
いつもは「定員に空きがあれば、前日までの補充、または現地にて飛び込み参加可」
って状態だったものが、今回空前絶後の「キトラ古墳」という目玉が付いたことで、
定員を大幅に超える申し込み数で定員が抽選のみで、即充足。
そこで、補欠もなければ、現地飛び込み申し込みも勿論なし。
ということで、この当選通知、プラチナチケットと化していたようなのです。
それが、二枚も、あまってる…おーまいがっ!!!
そこで、あれこれツテを辿って、お誘いメールしたけど、
今日云って、明日!みたいなスケジュールで動ける人は少ない。
しかし、何とか二名分の補充をすることが出来てほっと一安心。
だって、4倍の難関を潜り抜けてゲットできた参加券だというのに、
それを無駄にしたら、時節柄、もったいないオバケが出るではないかっ!
それじゃなくても、古墳の何たるかもよく知らんようなやつが、
(いや、いちおー古代のお墓だって知ってますわよ>古墳)
当たってしまってさあ大変状態で、
なおかつ、その上チケット二人分も無駄にしたとかなったら、
見たかったコフンスキーの方々に申し訳が立たん!
あークワバラクワバラ。
なんてことをブツブツ唱えながら前日は寝て、
当日は日帰りで飛鳥ゆきなんてことをやってのけたのさ。
ふふん。
☆
当日は日帰り日程のため、ゆるゆるスケジュールを組んで、
飛鳥に到着したらまずは昼食というご予定をば。
ペンション飛鳥さんの経営する
ひだまりcafeあすかにて優雅にランチです。
とかとか思っていたら、千客万来で店内はごった返しておりました。
ええ、午前の部で「キトラ」をご覧になったと思しき、
シルバー世代が約20名ほどの一団が一固まりになっておりまして、
店内はすごい熱気…。
おおおお、これがキトラ熱か(なんじゃそりゃ)。
聞きしに勝るキトラ熱です。
とりあえず席は確保したので「お時間かかりますけどいいですか~」
の声も受け流すことが出来ました。
くだんの「キトラ隊」(勝手に名前つけるな)の皆さんは、
すでにお食事が終わっていたようで、食後のドリンクをとられた後、
私たちと入れ違いにお帰りになりました。
午前の早い時間での見学だったようですね。
ということで、云われた程時間もかからず前菜のサラダが出てきて、
手間隙かけて作られたランチをゆっくりと頂き、
デザートとコーヒーを満喫して、いざ歴史公園へGO!
とりあえずは歩きました。(10分程ですので、これくらいは可)
出かける前は、歴史公園の中を少し歩いて、高松塚古墳を見に行ったり、
高松塚古墳壁画館を見に行ったり、中尾山古墳を見に行ったりしてもいいかな~
とか思っておりましたが、やっぱりこの暑さ!
すっかり弱気になって、まずは集合場所である飛鳥歴史公園館にてしばし涼むことに。
今回の公開期間中には「鏡作り体験」というものが出来るということなので、
それをして時間をつぶすことにしました。
作業はいたって単純。
「金属を溶かして」

「型に入れて」

「固まるまで待って」「静かに取り出して」
後はひたすら磨く・磨く!磨くのみ!!
最初は飛び出していたバリの部分も荒いヤスリ→細かなヤスリ→金属磨きを
経ることによって平らに、滑らかになってゆき、
最後には確かに顔が写るくらいツルツルな鏡面に変身。
オオ~卑弥呼さまぁ~(謎)
もっと細かい工程別の写真は→
こちらのサイトを参考に。
この作業が60分から90分かかりますってことだったけど、
我々の作業時間は13時50分ほどから開始して、15時10分頃まで
磨き&磨きしておりました。
ホントはもっと磨いても良かったのかもしれないけど、
そろそろ集合時間だしってことで切り上げて。
手を洗って集合場所に行ったら、ちょうどよい頃合でございました。
で。
見学会の集合テント前にて無事、
お誘いした方(
奈良に住んでみましたのnakaさんご夫妻です)とも会えて、いざ受付。
いよいよ見学会開始です。

(この写真はnakaさん@
「奈良に住んでみました」サマからいただいたものです★)
高松塚古墳壁画の修理作業室の公開自体は、
以前も来たことがあるのですが。
高松塚古墳壁画と並べて、キトラ壁画も見せてくれ、
今回に限り「キトラ古墳の石室」も見せてくれるというのが何といってもポイント高し。
集合場所にて待機して、まずは座学。
集合班ごとに建物内で高松塚古墳とキトラ古墳についてのガイダンスを聞き、
その後、修理作業室へと移動します。
この”国宝高松塚古墳壁画修理作業室”というのが、ちょっとオシャレな日本家屋って感じで、
物々しい感じはしないものの、建て物の各所各所に”監視カメラ”が仕込んであって、
「おぬし、ただものではないな?」な雰囲気を醸し出しています。
↓

(このお写真はnakaさん@
「奈良に住んでみました」サマ撮影のものです★)
修理作業室の質素さは→
こちらのサイトでも拝めます。
修理作業室は普段、一般人は入れませんが、首から提げたパスがあれば、
「どうぞどうぞ」と手招きしてもらえるんです。感激♪
建物内に入った瞬間からキッチンタイマー(笑)で計ったキッカリ5分間が見学タイム。
今回は一番手前の位置で、「高松塚の青龍」の隣に「キトラの青龍」が、
「高松塚の女子群像」の隣に「キトラの朱雀」が並べられ、
眺められるようになっておりました。
現在も高松塚壁画のクリーニング作業は進められており、
一日に1平方
「センチ」メートル程度の修復が行われているとのこと。
確かに、女子群像なども以前見たときよりもクリアに見える気がします。
しかしカビを取ったり、汚れを落としたりといった作業はとても根をつめる作業で、
一日たったの、一平方「センチ」メートルの作業って、気を使うよなあ。
私には無理です(キッパリ!)
いつもならば公開はココまでですが、今回に限り、
次なる公開場所があります。
そう、今回の目玉。「キトラ古墳石室」です。
しかも、次のキトラ古墳まではジャンボタクシーで送り迎えしてくださるねんて!
なに?この上げ膳据え膳状態は!
飛鳥歴史公園館前から、車にて、キトラ古墳まで、送り迎え!
冷房完備!
参加料無料!!
くぅ~文化庁頑張った!!!
褒めてつかわす、ってか、誠に有難うございます!(もみもみモミ手)
先に見学した班が帰ってくると、入れ違いにそのジャンボタクシーに乗り込みます。
ここらへんはほぼ徒歩で歩き回ってはいたものの、たまに車道を通ると、
いつの間にか、ここら辺って、道が異常にきれいになっているのね。
「こんな道あったっけ?」とか思いながら、ものの数分で着くキトラ古墳周辺へ到着。
キトラ古墳と、地図にはある。
しかし、ほんのまん前まで行っても、そこがキトラ古墳だなんてとても思えない光景が広がり、
目前であるにも関わらず「古墳、古墳はどこ?キトラはどこなの?」状態なキトラ古墳。
(余談ながら私は、新潟駅前で「新潟駅はドコですか?」と聞かれたことがあります。
ひょいと指差して「あれが新潟駅です」と答えた時は情けなかったなあ>新潟市民として)
んなことはどーだっていいのだが。
キトラです、キトラ古墳。
竹林をバックに、手前に工事現場の現場詰め所みたいな建物が建ってる。
建築製図を持ったヘルメット姿のおじさんが出てきそうないでたちの建物。
それが、なんと、キトラ古墳の石室への入り口!なのですよ。
かつての高松塚古墳の出入り口よりもよっぽど工事現場チック。

(Photographed by naka-san@
「奈良に住んでみました」sama)
どこからどう見ても工事現場詰め所です(断言)
しかも、「ここがキトラ古墳です」って看板が出てなかったら、
到底ここが「キトラ古墳か~」と納得できないたたずまいです。
この前を通ったことはあるけど、もちろん入れない。
入れるものだと思ってなかったので、
本日そこが開いている&人が入れる&階段が登れるなんて、
思ってもみなかったんだからあああ!(ゼイゼイゼイ)
普段は厳重に鍵のかかっているであろうフェンス内に侵入し(そこは進入だろ)、
外階段を登ると、引き戸の前でスタンバイする係りの人。
我々7名(少数精鋭である★)が集合すると、するすると戸を開けてくださり、
更にその中にスタンバイしている人がいる。
7名が入り終わると後ろで戸が閉められ、先に進むドアが開かれます。
こ…コワイなあ、なんか。
機密、もしくは気密を護るために、一つ一つ着実に進めていく歩み。
中へ通された部屋はひんやりしていて、壁一面にはくねくねと曲がりくねった
パイプが配置されており、そこに水を通して水冷式で室内を冷やしているらしい。
触れると確かに冷たくて、パイプは結露しており、水滴は下の排水路に落ちてます。
ココまでは結露も、水分も、大丈夫らしい。
その部屋から一つ先が、いよいよ見学地。
前の集団が見学している間、しばしその部屋にて待機する間に、
キトラ古墳壁画を剥がし取った時の道具などを見せてもらいます。
漆喰をこそげ取るのには画材屋さんでフツーに売っているパレットナイフを用い、
歯医者でつかうデンタルミラーのような形のものにジェルパッドを貼り、
壁から漆喰を剥がしてはそのコテ(?)で押さえながら、
落ちないように剥ぎ取っていくのだとか。
朱雀の面は漆喰は浮いたところがなかったので、
切り取ってはがさねばならず、そのためには市販の道具が使えなかった。
そこで、そこらへんのホームセンターで調達した部材をつかって自作した
「ダイヤモンドワイヤー・ソー」(ピアノ線にダイヤモンドの粉が塗ってあって、
それを漆喰の中へめり込ませて掻き取る道具)だのを見せてもらいました。
このダイヤモンドなんちゃら、ちゃんと特許も取ってあるんだそうですわ。
(→
これのことかな?)
石室内に入って作業する人が実際に着ている防護服も
展示してあったのでベタベタ(これは触ってもいいといわれた)
これを着ると非常に暑いんだそうで…昨今こういった防御服を見ると、
作業者の苦労をしのんでしまいますわね、どうしても。
そして、いよいよキトラ石室とご対面の時間がやって参りました。
全員が入って、ここでも扉が閉められて、そこから3分間のタイマーセット。
目の前の扉の窓の外には…キトラ古墳の石室がむきだしです。
茶色の土にほとんど埋もれたまま、こちらがわに開いた面を見せ、石室の中が見えています。
石室の中側の漆喰はすべて剥ぎ取られていますので、石室そのものが見えています。
向こう側がすぐ近くに見えているので石室としては本当に小さいスペース。
この中に入って作業された方は本当にご苦労されたでしょう。
(ゆえに体の小さい、女性が作業にあたったのだとも聞きましたが)
石室内にはカビ防止の装置が何本か入っていて、人工的な雰囲気ではありますが、
ここにあの壁画があって、埋葬されている人がいて、天上にも絵があったかと思うと、
「オオオオオ」というばかり也です。
人は感動すると変なところが気になるようで…。
私は天上から下がっている「ヒヤロン」を入れた金魚すくいの袋のようなものや、
石室手前に敷かれた鉄板の数とか、どーでもいいところが目に付いて目に付いて…。
ヲイヲイ、どこ見てんのよぉ~状態で自分に突っ込んでおりました。
なんか、好きな人の前に出て「いいお天気ですね」とか云っちゃう少年少女状態。
本物を前にすると、どうも平常心ではいられなくなるようです。
その証拠に、
「これ、本当に埋めちゃうんですか~やめておきましょうよ~今からでも止めましょうよお」
とか駄々こねている人もいました(ははは)
しかし、逢瀬というのは短ければ短いほど燃え上がるものだと決まっている(?)もんで。
あんなに恋焦がれていた存在に、出会えたばかりなのに、もうお別れです。
しかも、永遠にお別れです。
キトラ古墳はこの9月以降に埋め戻しが決定しているので、
この公開が最初で最後の機会だったわけで。
ゆえに、初めて会った人と、もうこれで会えなくなるのです。
切ない別れではないか。
くすん。
思わず「元気でね」と手を振っちゃいましたよ。もう会えないのに。
(石室内の漆喰を剥ぎ取られた満身創痍のキトラくんにかける言葉ではないけれど)
再び、宇宙船の中のような、一つ開けては、一つ閉める扉を三つくぐり、
「外界」へ出たときは、今までの出来事は夢かまぼろしか?状態。
まさに、”3時間待ちの3分診療”のようなもので、
実際に見たら「あわあわあわ」状態。
思い出してはふわふわした記憶を辿るのが精一杯です。
コトの詳細やデータ類は
こちらさまをご参照下さい。
(と毎度まいど他サイトさまに丸投げのアタクシ★)
キトラ古墳は石室を埋め戻し、かつての墳丘の状態に戻し、
ここを中心とした一帯を整備して、
学びの場となる予定だそうで。
あと数年したら、あの「工事現場事務所」みたいな
「アパート」みたいな、
「プレハブ倉庫」みたいな、
建物も、後ろの竹林も、みんなみんななくなってしまうのだな。
まるでそんなもの、最初っからなかったように。
(って、確かに発見当初は、あの建物はなかったよ)
そんなセンチメンタルな気分に一瞬はなったものの、
1300年前の風景は今とも異なっていたことだろうし。
「歴史は活用してこそ意義がある」とは
加来耕三センセのお言葉だけど。
キトラ古墳という存在が一つの教材となっていけば、いいのではないかと。
キトラ古墳の石室壁画は「記念館」が出来たら、そこに常設されるようなので、
かつてのように
「キトラ壁画公開!…でも160分待ち!!」みたいな事態は避けられそう(笑)
あの頃は、壁画見るのも難儀したわよねー。
(こんな→
ふざけた(?)ポスターもありましたっけ★)
ということで、真夏の夜の夢ならぬ、真夏の『一瞬の夢』でございました。
はー、良いもん見た見た。