つい先日「月刊社労士」の12月号が届いたので、
以前に届いたものは置いておいて
ここから気になる記事をまとめて書いてみる。
------------------------------------------------------------------------------------------------------------
1.改正社会保険労務士法が成立
2.社労士は労務管理業務の専門家
3.女性の活用推進をどう進めるか
(法政大学 武石恵美子教授)
4.行政不服審査法改正と労働保険審査制度の見直し
(東京会 北岡大介社労士)
------------------------------------------------------------------------------------------------------------
------------------------------------------------------------------------------------------------------------
1.改正社会保険労務士法が成立
□11月14日午後の衆議院本会議で改正「社会保険労務士法」が全会一致で成立。
□改正点は以下の3点。
(1) 個別労働関係紛争に関する民間紛争解決手続における紛争の目的の価額の上限を
「60万円」から「120万円」に引き上げ。
(2) 労働に関する事項及び社会保険に関する事項について、
裁判所に補佐人として、弁護士である訴訟代理人とともに出頭し、
陳述することができるようになった。
(3) 社員が一人の社会保険労務士法人の設立等が可能になった。
□(1)(2)は公布から九月を超えない範囲内(平成27年8月まで)、
(3)は二年を超えない範囲内(平成28年11月まで)で
政令で定める日から施行。
※(1)では、
例えば100万円の未払残業代が請求されているケースで、
従来は弁護士と共同受任しなければならなかったところ、
改正社会保険労務士法の施行後は
特定社労士が単独で対応することが認められるようになる。
※(2)、(3)はそこから具体的にどのように社労士として変化があるか?
もう少し様子を見てみたいと思う。
------------------------------------------------------------------------------------------------------------
2.社労士は労務管理業務の専門家
□社会保険労務士は(特定社労士でなくとも)
団体交渉において(労使のいずれかから)委任を受けて
交渉委員として出席に、必要な発言をすることができる。
これは、前回の第7次社労士法改正において認められるようになった。
□「争議屋」的な社労士が今も横行しているが、
労務管理の専門家として高度な職業倫理をもって業務に取り組まなければならない。
※実は「争議屋」というもののイメージがよく分からないのだが、
要は法律を遵守し、相手方の立場も理解して
信頼関係を構築していくべき、ということなのかな、と思う。
------------------------------------------------------------------------------------------------------------
3.女性の活用推進をどう進めるか
(法政大学 武石恵美子教授)
□不確定な市場に企業が対応する上で
「多様な価値観」「多角的な視点」「新しい発想」が重要性を増しているが、
そのためには多様な人材の能力を活かして経営にイノベーションをもらたすことが必要。
ここから「ダイバーシティー(多様性)」推進が求められている。
□経営戦略として「ダイバーシティー推進」が掲げられても、
組織運営に繋げようとすると現場レベルで様々な反発や抵抗が生じることが多い。
女性活躍推進の意義を明確にし、揺るぎない方針をトップが示すことが第一の条件。
こうして、経営戦略から落とし込まれた「人事戦略」として
ダイバーシティーを推進することが肝要。
□「働きがい」と「働きやすさ」を車の両輪として同時に進めることが重要。
「働きがい」については、女性に意欲向上を求める前に、
まず「組織が変わる」ことが重要。
日本企業ではOJTが中心であるが、
「仕事の与え方」や「結果のフォロー・フィードバック」について、
女性に対しても男性と同様のスタンスで対応することが基本。
□「働きやすさ」については、従来の「壮年男性正社員」をモデルにした
画一的な働き方(長時間労働など)を改める必要がある。
そのためにはまず、「壮年男性正社員」の働き方そのものを問い直すべき。
□数値目標を掲げる企業が増えてきたが、
より重要なのは数値目標の決定プロセスと実現のための進め方。
強引に女性管理職を増やしても、男性からの批判だけでなく、
女性サイドからも否定的な声があがる。
※一般論としては同感。
特に「働きやすさ」に関して「壮年男性正社員」の働き方そのものを見直す必要は、
「女性」だけでなく、「介護が必要な労働者」「高齢者」「外国人」などを含めた
ダイバーシティーを考慮すればその通りだと思う。
※ただ個人的には、
「多様な人材の能力を生かさなければ、不確定な市場に対応できない」は
本当に検証されているのか?という疑問がある。
労働者自身の属性が多様であるということと、
急速に変化し、多様化するマーケットに対応できるということは、
(多少の相関はあるにせよ)別に考えた方が良いのでは?と思う。
少なくとも「女性管理職を増やせば利益が増える」といった
因果関係はないだろうし。
------------------------------------------------------------------------------------------------------------
4.行政不服審査法改正と労働保険審査制度の見直し
(東京会 北岡大介社労士)
□平成26年6月に行政不服審査法が改正され、
関連する労働保険審査官及び労働保険審査会法も改正された。
□主な改正点は以下の通り。
(1) 従来審査請求・再審査請求等を行わなければ
行政訴訟に移行できなかったところ(行政不服審査の二重前置)、
再審査請求を経なくても行政訴訟の提起が可能になった。
(2) 審査請求の申立期間が、処分のあったことを知った日から「60日以内」から
「3か月以内」に緩和された。
(3) 「口頭意見陳述」について、
利害関係者等を招集して行うとともに、
申立人が処分庁に対して質問することができるようになった。
(4) 審査請求人等が、
提出された文書その他の物件の謄写を求めることができるようになった。
□この改正によって労災保険・雇用保険給付等に係る行政不服審査へのアクセスが良くなるので、
不服審査件数そのものが増加する可能性が高いと思われる。
社労士として、実務能力と職業倫理などの資質向上を図っておくことが必要。
------------------------------------------------------------------------------------------------------------