【前回の続きです。】
早朝、『観光丸』の繋留された桟橋を1人で歩いた。
細く長く、海に突出た木の桟橋。
灯台の在る端まで、近付けるだけ奥まで歩く。
見渡す限りの海って、こういうのを言うんだなと思った。
前後左右どっちを向いても海、まるで海上に1人取り残されたみたいで心細い。
……そう感じるのは、自分が置かれた現状からかもしれないけど。
11月29日 書いた人:ナミ
昨日同様、3人で早朝の散歩に行こうと思ってたのに…
あいつら生意気にもしっかり学習してて、部屋に鍵掛けそのままバックレ寝に出るなんて…!!
いっくらドンドン扉叩いて喚いても、ウンともスンとも言いやしない。
鼾すら掻かずって事は……ありゃしっかり起きてたわね。
どんよりと薄暗く空を覆ってた雲に赤みが差す。
雲間から零れた光が、細波立つ海面に一筋の道を作った。
たった1つの光が世界を一瞬にして輝かせるなんて本当に不思議。
30分前までの夜の名残はもう何処にも無いんだから。
「せめてカメラだけでも、昨夜の内にルフィから借りとくんだったわ…。」
携帯じゃ朝陽は上手く撮れそうに無い。
昨日も試してみたけど駄目だったし。
せめてビビやロビン先生にメルして観せてあげたっかったのになァ。
あの馬鹿あの馬鹿あの馬鹿あの馬鹿あの馬鹿あの馬鹿あの馬鹿あの馬鹿あの馬鹿あの馬鹿あの馬鹿あの馬鹿…!!
何よたったの3日位、こっちに合せてくれたって良いじゃない。
子供の頃から散々人トラブルに巻き込んどいて。
自分達ばっか好き勝手やって挙句の果て仲間放っぽってどっか行くだなんて不公平甚だしいわ。
行けば良いんだ、世界の果てまで何処までも。
私やウソップやサンジ君の知らない所で、きっとまた新しい仲間見付けて、楽しく宜しくやるんでしょ?
知らない場所で知らない仲間に囲まれて…何時かこちらの事なんて遠い記憶の彼方?
あんた達、何で何時も道に迷うか解ってる?
前しか向いてないから、後ろを向こうとしないからよ。
自分の来た道辿って帰りたくとも、振り向かず見てもいないんじゃ、帰り様が無いじゃない。
2人共、迷子になって泣けば良いんだ。
何時か人も通わぬ未開の地でも行って、帰って来れずにずっと独りで寂しく泣いてりゃ良いのよ。
ポチャンと、目の前で水音が響いてはっとした。
手摺から身を乗り出して、じっと音のした方を見詰る。
朝まで降り続いてた雨のお陰で手摺は冷たく濡れていた。
海面には波紋が浮んでる…それもそこかしこに。
またポチャンと音がして魚が跳ねた。
それをさっと海鳥が咥えて遠くへ飛び去ってく。
ああそうか、飛魚だ、此処の呼名で『あご』は大村湾の名産だもんね。
浮んだ波紋を数えるに相当居るわ、道理で漁船も沢山見掛ける筈ね。
ルフィが見たら大喜びで海飛び込んで捕まえ様としたかもね…カナヅチのくせに。
……我ながら底意地の悪い考えだわね。
そもそもあいつら、独り残されたって泣きゃしない。
何が有っても涼しい顔して立ち向ってくんだから。
むしろ残されて泣くのは………きっと私だ。
――本当に言いたい事口に出して言わねェんだよ…!!!
……言える訳無いじゃない。
そんな事言ったら、あんた達が困るでしょう?
困って…惑って…行きたい道真直ぐ行けないかもじゃない。
陽はすっかり昇り、海を白く眩く照らしていた。
曇ってはいるけど、この風向・風速は天気回復の兆し。
良かった、傘も荷物に入れて送れそう。
何だかんだで花火は二夜とも観られたし、行きと帰りが晴ならば、先ず先ずのお天気運だったって事よね。
…遠くで繋留されてるヨットのマストが風で擦れて鳴ってる。
何だかすすり泣いてでもいるみたい。
精神衛生上、今聞くには良くない感じだわ。
独りで海見てるなんて歌謡曲じゃあるまいし…今朝も無事日の出を拝めた事に満足して私はコテージに戻った。
「ひひょーひひひょうほはへひゅうはわっへふひょはっっ!!ひょうはひゃわんふひひょははぼひゃほふはひひょはふへへはほっっ!!」
…「微妙に昨日とはメニュー変ってるよなっっ!!今日は茶碗蒸しとか南瓜のフライとか増えてたぞっっ!!」と…多分、言ってるのだろう。
相変らず口いっぱい食い物詰め込んだままルフィが喋る。
喋ってる時は食べなきゃいいのに、その間も惜しくて出来ないらしい。
まったく……こんだけ食ってて何で太んないんだろ??
こいつの胃腸こそパラレルワールドにでも繋がってんじゃないかと思うわ。
「増えたメニュー6品位有るよな。カンパチの照焼に茶碗蒸しに白菜と茄子の炒め物に南瓜のフライ、おでんの具も変ってたし、蒸しパンにココア味が加わってたろ?まァ替りに無くなったメニューも有るが…ヒジキのおにぎりは残しておいて欲しかったよな。粥も好きだけどよ。」
隣に座ってるゾロがルフィに応える。
私の言付けを守って、全メニューを1盛りづつ皿によそって来たルフィと違って、こいつは和食中心だ。
見るからに地味ぃぃで渋ぅぅい色合い、まるきし年寄り染みた選択。
主食が粥だから病院食にも似た感じ、洋食中心の自分の皿とは正反対。
同じ環境に育ってて、どうしてこうまで三人三様好みがバラバラになるんだろう?
コテージに戻った私は朝食に行こうと、熟睡してる筈の2人の寝室の扉をノックした。
程無くして、さっきあれだけ煩く叩いても起きては来なかったルフィが瞳輝かせてひょっこりと、その背後からは眠たそーに欠伸しつつもしっかり身繕い整えたゾロが、寝室から出て来た。
………やっぱさっきはタヌキだったのね……。
「偶々だ。腹減ったんで起きた頃、丁度てめェが帰って来たんだよ。」
食後の日本茶を啜りながら、いけしゃあしゃあとゾロが言う。
「ひょおひょお!!はわはわば!!はばへっはわーほぼっはほひはひひんぶぼふわびははへっへひはわへばっっ♪♪」
持って来た6種類のパン抱えて1度に噛付きながらルフィが言う。
「……ああそう、計った様にナイスタイミングで帰って来れてラッキーだったわァァ。お陰で直ぐ様朝食会場に向えたし。」
昨日と比較して、朝食会場のトロティネは、席がスカスカに空いている。
やっぱり平日、火曜の朝というのは人が少ないものなのねと、入って来た時思ったわ。
なのに、何故か案内された席は店内奥、最も料理から遠くに離された窓際隅っこ。
…好意的な意味で取るなら、「窓の外広がる湖畔の景色を眺めながらお食事して下さいませよ」っつう風では有るけど……そう素直に取って良いものかしら…ねェ…?
とは言えルフィが行っても別に料理隠すでもなく、にっこり笑顔でサービスして下さるなんて、流石サービス業のプロフェッショナルだわと感心しちゃう。
「んじゃ食べたままでまた聞いてて!今日の予定話すから!…先ずは荷物纏めて帰る用意をして――」
「ああ俺今日は午後から参加させて貰う。午前中は2人で適当に観て廻ってろよ。」
私の言葉を遮り、いきなりゾロが口を挟んで来た。
「……午後から参加って……どうしてよ!?じゃあ午前中はあんた、何処で何してるって訳!?」
仏頂面で私に向い、ちょいちょいと自分の腿を指す。
「触ってみろ」って意味らしい…触れてみるとゾロの履いてるジーパンがしっとり湿ってるのが解った。
「昨夜の雨のお陰でな……未だ生乾きなんだよ。」
「………替えは?持って来てないの…?」
「無ェ。これ1着っ切りだ。」
「何で1着しか持って来てない訳!!?普通持って来るもんじゃない!!!」
「煩ェ!!!冬だってのに着替え3日分持って来てるてめェのがこっちから見たら異常だっつの!!!」
「異常!!?おかしいのは何時だってルフィやあんたの方じゃない!!!大体人の忠告聞かずに昨夜散歩に出るから…そうよ!!自分で勝手に濡れに行った様なもんじゃない!!!それこそ異常な行動だわ!!!」
「濡れに行った訳じゃねェ!!!しょうがねェだろ不可抗力だっっ!!!」
「ちょっと濡れてる位何よ!!!そんなん気合と根性で乾かしなさいっっ!!!大丈夫よあんた体温平均値より高いから!!!着たまま歩いてりゃ昼前には乾いてるわよっっ!!!」
「無茶苦茶言ってんなっっ!!!俺に風邪引かす気かよてめェはっっ!!!?」
「引きゃしないわよゾロは風邪なんて!!!現にあんだけ頭から降られたのに風邪引いてないじゃない!!!最終日なんだから3人で一緒に廻って――」
「我儘もいいかげんにしやがれナミ…!!!!」
――バァァン!!!と、物凄い剣幕でテーブルを叩かれた。
一斉にレストラン内の視線が、私達の席に集中してるのが解る。
ゾロが本気で怒ってる。
元より凶悪顔で凄まれて、悔しいけど、少し怯んだ。
「1時チェックアウトまで、俺はコテージ戻って寝てる。12:30頃、玄関前で待ってっから、そこで合流すりゃ良いだろ?」
「………賭けで負けたら、私の決めたスケジュールに従うって決めたじゃない。約束、破る気なの…?」
「……だから午後から大人しく従ってやる。昼食場所にも文句は付けねェ。」
「…まさかそれ狙ってわざと服濡らしたんじゃないでしょうね?」
「そんな狡い真似するかよ。妙な勘繰りすんな。マジで怒るぞ。」
「………解ったわよ…!!私とルフィだけで楽しく観て廻るわよ!!!あんたなんかそのまま寝込んで風邪引いちまえ!!!迎えにだって来てやんないわ!!!そのまま置いてきぼりよっっ!!!!」
「おー、そしたら滞在費は当然てめェに請求する様頼んどくから宜しく頼むわ。」
両腕を頭の後ろで組み、椅子の背に踏ん反り返って、アカンベしながら言う。
置いてけっこねェよなァァといった、憎たらしい程余裕たっぷりの態度。
ああもう本当に置いてってやりたいっっ。
「12:30にちゃんと玄関外まで出てなさいよ!!!中入って呼びになんて絶っっ対行ってやんないんだからっっ!!!」
憤然として前に向き直る。
前の席ではルフィがのほほんと皿を抱えて、こんもり盛ったコーンフレークをスプーンで掬い食べながら、愉快そうに観客に徹していた。
お皿を抱えてんのは多分、テーブル叩かれた衝撃で中味が零れないようにだ。
「…ははひはふいはほは??」
「ああ、後はてめェの希望を聞くのみだ、ルフィ。」
「……ルフィは…私と…一緒に行くよね…?」
――行ってくれるよね……?
ずずずずっと皿に口付け、残ってた牛乳とフレークを呑込む。
それからゴシゴシと袖で口元拭い、にかりと笑ってこう言った。
「おう!!もちろんだ!!!」
【その30に続】
…という訳でナミ編開始~。
大体11話位?そろそろ終り意識して書いてかんとね~。(汗)
またどぞ宜しくです。(礼)
写真の説明~、観光丸と朝陽。
おまけの週刊ジャンプ、ワンピ感想~。
今回涙々の展開でしたが…
何とはなしに缶コーヒー『ボス』の元CM、『世界を敵に回したしんちゃん』を思い出した自分は「非情」っつかつまりは「情けない」っつか…。(汗)
だってだって――
「皆がニコの事悪い女だって言うの…」
「ロビンちゃんは悪くないよ!!」
「そう言ってくれるのは貴方達だけv」
「僕等は何時だってロビンちゃんの味方さvたとえ全世界を敵に回そうとも!」
――ほら、ぴったり!
是非、皆で缶コーヒー『ボス』を不敵に呑みながら、世界政府に立ち向って欲しい。(不謹慎で御免なさい)
早朝、『観光丸』の繋留された桟橋を1人で歩いた。
細く長く、海に突出た木の桟橋。
灯台の在る端まで、近付けるだけ奥まで歩く。
見渡す限りの海って、こういうのを言うんだなと思った。
前後左右どっちを向いても海、まるで海上に1人取り残されたみたいで心細い。
……そう感じるのは、自分が置かれた現状からかもしれないけど。
11月29日 書いた人:ナミ
昨日同様、3人で早朝の散歩に行こうと思ってたのに…
あいつら生意気にもしっかり学習してて、部屋に鍵掛けそのままバックレ寝に出るなんて…!!
いっくらドンドン扉叩いて喚いても、ウンともスンとも言いやしない。
鼾すら掻かずって事は……ありゃしっかり起きてたわね。
どんよりと薄暗く空を覆ってた雲に赤みが差す。
雲間から零れた光が、細波立つ海面に一筋の道を作った。
たった1つの光が世界を一瞬にして輝かせるなんて本当に不思議。
30分前までの夜の名残はもう何処にも無いんだから。
「せめてカメラだけでも、昨夜の内にルフィから借りとくんだったわ…。」
携帯じゃ朝陽は上手く撮れそうに無い。
昨日も試してみたけど駄目だったし。
せめてビビやロビン先生にメルして観せてあげたっかったのになァ。
あの馬鹿あの馬鹿あの馬鹿あの馬鹿あの馬鹿あの馬鹿あの馬鹿あの馬鹿あの馬鹿あの馬鹿あの馬鹿あの馬鹿…!!
何よたったの3日位、こっちに合せてくれたって良いじゃない。
子供の頃から散々人トラブルに巻き込んどいて。
自分達ばっか好き勝手やって挙句の果て仲間放っぽってどっか行くだなんて不公平甚だしいわ。
行けば良いんだ、世界の果てまで何処までも。
私やウソップやサンジ君の知らない所で、きっとまた新しい仲間見付けて、楽しく宜しくやるんでしょ?
知らない場所で知らない仲間に囲まれて…何時かこちらの事なんて遠い記憶の彼方?
あんた達、何で何時も道に迷うか解ってる?
前しか向いてないから、後ろを向こうとしないからよ。
自分の来た道辿って帰りたくとも、振り向かず見てもいないんじゃ、帰り様が無いじゃない。
2人共、迷子になって泣けば良いんだ。
何時か人も通わぬ未開の地でも行って、帰って来れずにずっと独りで寂しく泣いてりゃ良いのよ。
ポチャンと、目の前で水音が響いてはっとした。
手摺から身を乗り出して、じっと音のした方を見詰る。
朝まで降り続いてた雨のお陰で手摺は冷たく濡れていた。
海面には波紋が浮んでる…それもそこかしこに。
またポチャンと音がして魚が跳ねた。
それをさっと海鳥が咥えて遠くへ飛び去ってく。
ああそうか、飛魚だ、此処の呼名で『あご』は大村湾の名産だもんね。
浮んだ波紋を数えるに相当居るわ、道理で漁船も沢山見掛ける筈ね。
ルフィが見たら大喜びで海飛び込んで捕まえ様としたかもね…カナヅチのくせに。
……我ながら底意地の悪い考えだわね。
そもそもあいつら、独り残されたって泣きゃしない。
何が有っても涼しい顔して立ち向ってくんだから。
むしろ残されて泣くのは………きっと私だ。
――本当に言いたい事口に出して言わねェんだよ…!!!
……言える訳無いじゃない。
そんな事言ったら、あんた達が困るでしょう?
困って…惑って…行きたい道真直ぐ行けないかもじゃない。
陽はすっかり昇り、海を白く眩く照らしていた。
曇ってはいるけど、この風向・風速は天気回復の兆し。
良かった、傘も荷物に入れて送れそう。
何だかんだで花火は二夜とも観られたし、行きと帰りが晴ならば、先ず先ずのお天気運だったって事よね。
…遠くで繋留されてるヨットのマストが風で擦れて鳴ってる。
何だかすすり泣いてでもいるみたい。
精神衛生上、今聞くには良くない感じだわ。
独りで海見てるなんて歌謡曲じゃあるまいし…今朝も無事日の出を拝めた事に満足して私はコテージに戻った。
「ひひょーひひひょうほはへひゅうはわっへふひょはっっ!!ひょうはひゃわんふひひょははぼひゃほふはひひょはふへへはほっっ!!」
…「微妙に昨日とはメニュー変ってるよなっっ!!今日は茶碗蒸しとか南瓜のフライとか増えてたぞっっ!!」と…多分、言ってるのだろう。
相変らず口いっぱい食い物詰め込んだままルフィが喋る。
喋ってる時は食べなきゃいいのに、その間も惜しくて出来ないらしい。
まったく……こんだけ食ってて何で太んないんだろ??
こいつの胃腸こそパラレルワールドにでも繋がってんじゃないかと思うわ。
「増えたメニュー6品位有るよな。カンパチの照焼に茶碗蒸しに白菜と茄子の炒め物に南瓜のフライ、おでんの具も変ってたし、蒸しパンにココア味が加わってたろ?まァ替りに無くなったメニューも有るが…ヒジキのおにぎりは残しておいて欲しかったよな。粥も好きだけどよ。」
隣に座ってるゾロがルフィに応える。
私の言付けを守って、全メニューを1盛りづつ皿によそって来たルフィと違って、こいつは和食中心だ。
見るからに地味ぃぃで渋ぅぅい色合い、まるきし年寄り染みた選択。
主食が粥だから病院食にも似た感じ、洋食中心の自分の皿とは正反対。
同じ環境に育ってて、どうしてこうまで三人三様好みがバラバラになるんだろう?
コテージに戻った私は朝食に行こうと、熟睡してる筈の2人の寝室の扉をノックした。
程無くして、さっきあれだけ煩く叩いても起きては来なかったルフィが瞳輝かせてひょっこりと、その背後からは眠たそーに欠伸しつつもしっかり身繕い整えたゾロが、寝室から出て来た。
………やっぱさっきはタヌキだったのね……。
「偶々だ。腹減ったんで起きた頃、丁度てめェが帰って来たんだよ。」
食後の日本茶を啜りながら、いけしゃあしゃあとゾロが言う。
「ひょおひょお!!はわはわば!!はばへっはわーほぼっはほひはひひんぶぼふわびははへっへひはわへばっっ♪♪」
持って来た6種類のパン抱えて1度に噛付きながらルフィが言う。
「……ああそう、計った様にナイスタイミングで帰って来れてラッキーだったわァァ。お陰で直ぐ様朝食会場に向えたし。」
昨日と比較して、朝食会場のトロティネは、席がスカスカに空いている。
やっぱり平日、火曜の朝というのは人が少ないものなのねと、入って来た時思ったわ。
なのに、何故か案内された席は店内奥、最も料理から遠くに離された窓際隅っこ。
…好意的な意味で取るなら、「窓の外広がる湖畔の景色を眺めながらお食事して下さいませよ」っつう風では有るけど……そう素直に取って良いものかしら…ねェ…?
とは言えルフィが行っても別に料理隠すでもなく、にっこり笑顔でサービスして下さるなんて、流石サービス業のプロフェッショナルだわと感心しちゃう。
「んじゃ食べたままでまた聞いてて!今日の予定話すから!…先ずは荷物纏めて帰る用意をして――」
「ああ俺今日は午後から参加させて貰う。午前中は2人で適当に観て廻ってろよ。」
私の言葉を遮り、いきなりゾロが口を挟んで来た。
「……午後から参加って……どうしてよ!?じゃあ午前中はあんた、何処で何してるって訳!?」
仏頂面で私に向い、ちょいちょいと自分の腿を指す。
「触ってみろ」って意味らしい…触れてみるとゾロの履いてるジーパンがしっとり湿ってるのが解った。
「昨夜の雨のお陰でな……未だ生乾きなんだよ。」
「………替えは?持って来てないの…?」
「無ェ。これ1着っ切りだ。」
「何で1着しか持って来てない訳!!?普通持って来るもんじゃない!!!」
「煩ェ!!!冬だってのに着替え3日分持って来てるてめェのがこっちから見たら異常だっつの!!!」
「異常!!?おかしいのは何時だってルフィやあんたの方じゃない!!!大体人の忠告聞かずに昨夜散歩に出るから…そうよ!!自分で勝手に濡れに行った様なもんじゃない!!!それこそ異常な行動だわ!!!」
「濡れに行った訳じゃねェ!!!しょうがねェだろ不可抗力だっっ!!!」
「ちょっと濡れてる位何よ!!!そんなん気合と根性で乾かしなさいっっ!!!大丈夫よあんた体温平均値より高いから!!!着たまま歩いてりゃ昼前には乾いてるわよっっ!!!」
「無茶苦茶言ってんなっっ!!!俺に風邪引かす気かよてめェはっっ!!!?」
「引きゃしないわよゾロは風邪なんて!!!現にあんだけ頭から降られたのに風邪引いてないじゃない!!!最終日なんだから3人で一緒に廻って――」
「我儘もいいかげんにしやがれナミ…!!!!」
――バァァン!!!と、物凄い剣幕でテーブルを叩かれた。
一斉にレストラン内の視線が、私達の席に集中してるのが解る。
ゾロが本気で怒ってる。
元より凶悪顔で凄まれて、悔しいけど、少し怯んだ。
「1時チェックアウトまで、俺はコテージ戻って寝てる。12:30頃、玄関前で待ってっから、そこで合流すりゃ良いだろ?」
「………賭けで負けたら、私の決めたスケジュールに従うって決めたじゃない。約束、破る気なの…?」
「……だから午後から大人しく従ってやる。昼食場所にも文句は付けねェ。」
「…まさかそれ狙ってわざと服濡らしたんじゃないでしょうね?」
「そんな狡い真似するかよ。妙な勘繰りすんな。マジで怒るぞ。」
「………解ったわよ…!!私とルフィだけで楽しく観て廻るわよ!!!あんたなんかそのまま寝込んで風邪引いちまえ!!!迎えにだって来てやんないわ!!!そのまま置いてきぼりよっっ!!!!」
「おー、そしたら滞在費は当然てめェに請求する様頼んどくから宜しく頼むわ。」
両腕を頭の後ろで組み、椅子の背に踏ん反り返って、アカンベしながら言う。
置いてけっこねェよなァァといった、憎たらしい程余裕たっぷりの態度。
ああもう本当に置いてってやりたいっっ。
「12:30にちゃんと玄関外まで出てなさいよ!!!中入って呼びになんて絶っっ対行ってやんないんだからっっ!!!」
憤然として前に向き直る。
前の席ではルフィがのほほんと皿を抱えて、こんもり盛ったコーンフレークをスプーンで掬い食べながら、愉快そうに観客に徹していた。
お皿を抱えてんのは多分、テーブル叩かれた衝撃で中味が零れないようにだ。
「…ははひはふいはほは??」
「ああ、後はてめェの希望を聞くのみだ、ルフィ。」
「……ルフィは…私と…一緒に行くよね…?」
――行ってくれるよね……?
ずずずずっと皿に口付け、残ってた牛乳とフレークを呑込む。
それからゴシゴシと袖で口元拭い、にかりと笑ってこう言った。
「おう!!もちろんだ!!!」
【その30に続】
…という訳でナミ編開始~。
大体11話位?そろそろ終り意識して書いてかんとね~。(汗)
またどぞ宜しくです。(礼)
写真の説明~、観光丸と朝陽。
おまけの週刊ジャンプ、ワンピ感想~。
今回涙々の展開でしたが…
何とはなしに缶コーヒー『ボス』の元CM、『世界を敵に回したしんちゃん』を思い出した自分は「非情」っつかつまりは「情けない」っつか…。(汗)
だってだって――
「皆がニコの事悪い女だって言うの…」
「ロビンちゃんは悪くないよ!!」
「そう言ってくれるのは貴方達だけv」
「僕等は何時だってロビンちゃんの味方さvたとえ全世界を敵に回そうとも!」
――ほら、ぴったり!
是非、皆で缶コーヒー『ボス』を不敵に呑みながら、世界政府に立ち向って欲しい。(不謹慎で御免なさい)