【前回の続きです。】
「クリスマスリースって俺達の泊ってるトコだけでなく、全部のコテージに飾ってあったんだなー!!」
建ち並んでるコテージの周囲を、自転車で滑る様に巡る。
湖に面して建ってる全戸のドアには、松ぼっくりと銀色の飾りが付いた、小振りなクリスマスリースが…
…と思ったら赤い花飾りの付いた物まで有る…並びによってリース変えてんのかしら?
「良いわよねェ!!こういう、季節を感じさせてくれるサービスって!!」
「今度またクリスマスシーズンに泊る時はよー!!ケーキ買ってパーティーしようぜ!!俺、とうの下にケーキ屋見付けたんだ!!シャンパンやツマミも必要だなー、全部ここで売ってたよな!?そん時はウソップもサンジも今度こそ連れて来て、全員で朝までワイワイ騒ごーぜ♪♪」
「………今度のクリスマスって!?来年の!?再来年の!?…戻って来る保証有る訳!?」
「う~~~~ん……来年は無理かもしんね~なァ~~~~!!まァ~~~でもいつか……今度だ!!」
――そんなあやふやな口約束で信じられるかっっ。
「ん??今何か言ったかナミ!??」
「あー幻聴でしょ!幻聴!!」
悔いを残さぬ様にとフォレストパークをさんざ周回した後、坂道をだーっと下ってまた港街に戻った。
今度はパレスへの坂道、レンブラント通りを上ってく。
幅広い道の両側には、紅葉した並木。
風が吹く度、紅い枯葉がヒラヒラと舞い落ちて来る。
なだらかに見えても長く続いてる分結構きついのか、今迄バイク並のスピードで走ってたルフィのペースが落ちた。
白い息を立続けに吐いてる、聞えて来る呼吸が大分荒い…ちょっと疲れて来たのかも。(でも降りてやんない)
ゆっくりと背後に流れてく、並木や花壇を振り返って見送る。
電飾で金色に煌く夜も素敵だけど、朝昼の侘び寂び溢れる表情も良いものね。
「パレス正面の門まで来たら、Uターンして道戻ってね!!」
「…え!!?このまま…ヘッ!…パレスの庭まで…ハッ!…入ってくんじゃねェのかよ…!??」
「残念ながらパレス内は自転車乗入れ禁止なんだって!!」
「…んだよもォ~~~!!!…ハッ!…だったら…ヒッ!…最初っから上らすなよなァ~~~~…!!!」
「まァまァvvその分帰りは下りで爽快よォvきっと!!」
坂道を上がる度、煉瓦造りの宮殿が、少しづつ姿を見せてく。
鉄製の門の前まで来た所で、ルフィはさっき同様前輪部分を思い切り持上げ、ぐるり180°車体の向きを変えて、道を戻った。
丁度側歩いてた親子連れが、驚いて目を見張る。
見ていた小さな女の子は、拍手までして喜んでいた。
…本当、こいつ、パフォーマーの才有るわ。
行きとは反対に、自転車は下り坂をハイスピードで滑り落ちてく。
当って来る風でオデコは全開、ルフィのジャケットが目の前でバタバタと鳴り、私のコートまで見事に捲れ上がって寒い。
「あ~~~の~~~さ~~~!!!ブレーキ位ちゃんと掛けてくんない~~~!!?」
「何言ってんだっっ!!!下り坂じゃブレーキ禁止!!!法律でそう決められてんだぞ!!!」
「無いわよそんな法律!!!前から車走ってきたらどうすんのよ!?事故っちゃうでしょ!?」
「大丈夫だ!!そく横飛びのいてやっから安心してろ!!!」
「安心出来る訳有るかっっ!!!」
「それよか今度はどこ行くんだー!?もうすぐ坂下りきっちまうぞォー!?」
「次右折!!バス停横抜けてまた右折して!!」
下り坂で加速したスピードのまま、連チャンで右折してく。
曲がった時ガクン!!!ガクン!!!と物凄い衝撃が車体から伝わって、少し怖かった。
……朝で通行人が殆ど居なくて良かったと思う。
港街のフェルメール通りを進み、海辺に佇むホテル・デンハーグ横まで来た。
「お!!!あの船だ!!!――ちょっと降りて、観て来て良いか!!?」
答えも聞かぬ間に、ルフィが自転車を停める。
そして前に繋留されてる大きな木造帆船目掛けてひた走り。
早朝、私が日の出を観に来た桟橋に繋留されてた帆船、『観光丸』だった。
「何度観てもでっけー海賊船だよなァ~~~!!!」
「海賊船じゃなくて『観光丸』!!オランダから江戸幕府に献上された、日本初の帆船を復元した物だって、何度言えば解んのよ!!?」
「まー細かい事は良いから♪♪今日はこれに乗れんだろ!?いつ乗るんだ!?」
「帰る前に乗るっつったでしょ?だから…4時の回に乗船しようかと考えてるわ。」
「えーー!!?そんな遅くなのかァ~~~!!?ちょうど側まで来たんだから、今乗っちまおうって!!!」
「どの道12時からじゃないと出航しないわよ。その証拠にお客さん、1人も待ってないでしょ?」
…生憎の曇天だけど、航海するにはむしろ日焼の心配無くて良いかもしんない。
波が幾分高くて気にはなるけど…運休するって事は……多分、無いわよね…?
桟橋脇に立てられた、フラッグのはためき具合を見ていて、少し不安になる。
雄々しく空高く聳え立った太いマストまで、強風に煽られてゆらゆらと揺れていた。
「やぁぁっぱ海は良いよなァァ~~~♪♪」
「そうねーー…って、あんたがそこまで船や海が好きだったなんて、ちっとも知らなかったわ。」
「ここに来て好きになった!!こぉぉんな広くてどこまでも続いてて、圧倒されちまうじゃんか!!」
「……まー…確かにね。」
海を見てるとちっぽけな自分が良く解るとか、寄せては引く波に無常を感じて寂しく思うとか…演歌みたいなフレーズが実感出来るわよね。
「なァ!!こっから船乗ってどこまで行くんだ!?また別の島か!?」
「ん~ん、大村湾を40分程クルージングして戻って来るわ。」
「……なんだ、どこにも行かねェのか…つまんねーな。」
「甲板で帆張りとかロープの結び方の実演とか、色々アトラクション有るらしいわよ!…パスポート使って乗れるんだから贅沢言わない!!」
暫くルフィと2人、桟橋寄っ掛って海を呆ーっと眺めた後、また自転車乗って海沿いを走ってった。
端まで行ってまたUターン…垂直になるまで前の車体を持上げ、ぐりんと向きを変えて道を戻る。
「…ルフィ、あんた……もォ~~し世界1周しててお金に困ったら、こういう大道芸して稼げば良いと思うわ!!」
「えーー!?大道芸って、昨日観たショーみたいなのか!?…そうか!!あーいうの観せて金かせぎゃ良いんだな!!」
私の思い付きに、ルフィは満更でもない様子で、しきりに頷いている。
「あんた元々芸人体質だもん!!世界を股に掛けるパフォーマーとしてやってけるわよ!!きっと!!」
「そうかーー……じゃ、お代を入れてもらう用に、ボウシでも買ってくかなーー…!!」
ホテル・デンハーグ前を横切る、正面玄関の横には、海辺のホテルのカラーに似合った、蒼い色調のクリスマスツリーが飾られてるのが見えた。
海沿いをどんどん進む、冷たい潮風が顔に当って寒いけど、心地好い。
オレンジ広場まで差掛ると、今度は右横にデ・リーフデ号が見えた。
――と、自転車がまた急停止する。
「お!!また海賊船!!!」
「だから海賊船じゃないってばっっ!!!あれは『デ・リーフデ号』!!!日蘭交流の先駆けとなった船を復元した物なのっっ!!!」
「まー良いじゃねーか!!たいして違わねえって♪♪」
「全っっ然違うわよっっ!!!」
「あれにも乗れたら良いのになー。小っせェけど、俺、さっきの船よりもこっちのが好きだ!!俺達の船に似てるからな!!」
「…………またあの夢の話……。」
「夢じゃねーって!!!昨夜ゾロも見たって言ってたし…!!!」
「ハイハイ!いいから!!早く発進させて!!レンタル3時間過ぎたら延滞金発生しちゃうんだから!!」
綺麗な三角形したクリスマスツリーの飾ってある広場から、白い跳ね橋『スワン橋』を渡る。
中央広場の在るビネンスタッドへと入り、ホテル・アムステルダムに沿うようして道を進んだ。
「……なーー!!通る度になぞに思ってたんだけどよー!!この…右っかわずっと続いてる建物って何なんだ!?」
「ホテル・アムステルダムよ!!昨日ランチ・バイキング食べに来たでしょ!?」
「えええ!??あのホテルかァァ!!?ちっとも気が付かなかったぞっっ!!?」
「確かに…建物が軒を連ねてる様で、1棟のホテルとはとても思えない、面白い造りよね♪」
古い街並みが改修を重ねてく内に、1つの大きなホテルに変化してったというコンセプトで建てられたそのホテルは、一見しただけではホテルに見えない。
初めて宿泊しに来た人が出入り口を中々見付けられず、右往左往したりしたというエピソードが何処かで紹介されてたっけ。
ビネンスタッドバス停を通り抜けた地点で、バスから降りた数人のお客と擦違った。
時間にして10時ちょっと過ぎ…そろそろ少しは賑やかになって来る頃かも。
「しかしよ~~~!!店、全然開いてねェなァ~~~!!だから客もあんま歩いてねェんじゃねェかァ~~~!?」
無邪気な口振だが辛辣なルフィの言葉に苦笑してしまう。
「まァねー…場内の店の多くが10時過ぎに開店ってのは、私もどうかと思うわーー…。」
「レストランとかもっと早く開いてくんねーと腹減っちまって困るよなァ~~~!!」
「後少ししたら開き出すだろうから…そしたらどっか寄ってお茶でも飲も♪」
ミュージアムスタッドの運河沿いを通り、クリスタル橋を渡ってニュースタッド地区へ…また閑静な運河沿いの、ワッセナーの観える道を選び走って貰った。
風車の羽根が回る、小さな広場前で自転車を停めて、またちょっと休憩する。
「風車って、あの花畑に在るだけじゃ無かったんだなー。」
「そうよ、この地区には2基、フリースラントには1基、それとキンデルダイクに在る3基…他にも、ワッセナーの方にも1基在るみたいだから……少なくとも場内に7基以上在るって事じゃないかしら?」
風車の在る広場からは、それこそ花畑の如く色取り取りの童話調の家が、運河を挟んで整然と建ち並んでる様が観渡せた。
「良いよなーーー……いっぺん、あーいう家住んでみてーよなァーーー…。」
「意外ねー、あんたでもマイホーム願望なんて持ってる訳?」
「マイホームっつか、これって別荘だろ?遊びてェ時だけ来て暮らすなんて、何か良いじゃんか♪」
「ああ、そういう発想か。」
「1コ買っといてよ、年取ってから皆で暮らすのも良いよな♪」
「皆して……?」
「ナミやゾロやウソップやサンジや…ビビやロビン先生も呼ぶか!毎日皆で美味ェもん食って飲んで若ェ頃の冒険話とかして騒いで、夜になったら花火観て…そんな感じで面白おかしく暮らすんだ♪な!?良いだろ!??」
「………そうね…夢の様な老後の計画だわね。」
「1コ幾らぐれェすんだろーなァ~~~??皆でワリカンにするって事でよ~~~。」
「一戸建て3,713万円よりとか、何処かに書いてあったわよ。」
「げっっ!!?そんなすんのかっっ!!?……10人くれェ集めて、1人371万くれェでェ~~~…。」
「10人で1軒の家住んだら流石に狭苦しいわよ、馬鹿。」
「まーー将来誰か宝くじ大当りすっかもしんねーし!俺が油田掘り起こすかもしんねーし!!夢はでっかく、前向きにけんとうしとくとしよう!!!」
「………そうね、その頃まで―――」
――あんたが忘れずに、覚えていられればね。
「…何を覚えてればだって???」
「………場所の事よ。」
【その32に続】
ブレーキ掛けずに坂道下ってはいけません。(←そりゃそうだ)
写真の説明~、また一昨年のクリスマスシーズンの写真ですが…早朝のキンデルダイク。
人が居ないのは早朝だからです、何時もは人気撮影スポットなんでかなし人が居ます。(笑)
【07年1/4追記】…ホテル・アムステルダム横海沿いの道は、実は自転車交通禁止だったという事を知り、修正入れました…御免なさい。(土下座)
「クリスマスリースって俺達の泊ってるトコだけでなく、全部のコテージに飾ってあったんだなー!!」
建ち並んでるコテージの周囲を、自転車で滑る様に巡る。
湖に面して建ってる全戸のドアには、松ぼっくりと銀色の飾りが付いた、小振りなクリスマスリースが…
…と思ったら赤い花飾りの付いた物まで有る…並びによってリース変えてんのかしら?
「良いわよねェ!!こういう、季節を感じさせてくれるサービスって!!」
「今度またクリスマスシーズンに泊る時はよー!!ケーキ買ってパーティーしようぜ!!俺、とうの下にケーキ屋見付けたんだ!!シャンパンやツマミも必要だなー、全部ここで売ってたよな!?そん時はウソップもサンジも今度こそ連れて来て、全員で朝までワイワイ騒ごーぜ♪♪」
「………今度のクリスマスって!?来年の!?再来年の!?…戻って来る保証有る訳!?」
「う~~~~ん……来年は無理かもしんね~なァ~~~~!!まァ~~~でもいつか……今度だ!!」
――そんなあやふやな口約束で信じられるかっっ。
「ん??今何か言ったかナミ!??」
「あー幻聴でしょ!幻聴!!」
悔いを残さぬ様にとフォレストパークをさんざ周回した後、坂道をだーっと下ってまた港街に戻った。
今度はパレスへの坂道、レンブラント通りを上ってく。
幅広い道の両側には、紅葉した並木。
風が吹く度、紅い枯葉がヒラヒラと舞い落ちて来る。
なだらかに見えても長く続いてる分結構きついのか、今迄バイク並のスピードで走ってたルフィのペースが落ちた。
白い息を立続けに吐いてる、聞えて来る呼吸が大分荒い…ちょっと疲れて来たのかも。(でも降りてやんない)
ゆっくりと背後に流れてく、並木や花壇を振り返って見送る。
電飾で金色に煌く夜も素敵だけど、朝昼の侘び寂び溢れる表情も良いものね。
「パレス正面の門まで来たら、Uターンして道戻ってね!!」
「…え!!?このまま…ヘッ!…パレスの庭まで…ハッ!…入ってくんじゃねェのかよ…!??」
「残念ながらパレス内は自転車乗入れ禁止なんだって!!」
「…んだよもォ~~~!!!…ハッ!…だったら…ヒッ!…最初っから上らすなよなァ~~~~…!!!」
「まァまァvvその分帰りは下りで爽快よォvきっと!!」
坂道を上がる度、煉瓦造りの宮殿が、少しづつ姿を見せてく。
鉄製の門の前まで来た所で、ルフィはさっき同様前輪部分を思い切り持上げ、ぐるり180°車体の向きを変えて、道を戻った。
丁度側歩いてた親子連れが、驚いて目を見張る。
見ていた小さな女の子は、拍手までして喜んでいた。
…本当、こいつ、パフォーマーの才有るわ。
行きとは反対に、自転車は下り坂をハイスピードで滑り落ちてく。
当って来る風でオデコは全開、ルフィのジャケットが目の前でバタバタと鳴り、私のコートまで見事に捲れ上がって寒い。
「あ~~~の~~~さ~~~!!!ブレーキ位ちゃんと掛けてくんない~~~!!?」
「何言ってんだっっ!!!下り坂じゃブレーキ禁止!!!法律でそう決められてんだぞ!!!」
「無いわよそんな法律!!!前から車走ってきたらどうすんのよ!?事故っちゃうでしょ!?」
「大丈夫だ!!そく横飛びのいてやっから安心してろ!!!」
「安心出来る訳有るかっっ!!!」
「それよか今度はどこ行くんだー!?もうすぐ坂下りきっちまうぞォー!?」
「次右折!!バス停横抜けてまた右折して!!」
下り坂で加速したスピードのまま、連チャンで右折してく。
曲がった時ガクン!!!ガクン!!!と物凄い衝撃が車体から伝わって、少し怖かった。
……朝で通行人が殆ど居なくて良かったと思う。
港街のフェルメール通りを進み、海辺に佇むホテル・デンハーグ横まで来た。
「お!!!あの船だ!!!――ちょっと降りて、観て来て良いか!!?」
答えも聞かぬ間に、ルフィが自転車を停める。
そして前に繋留されてる大きな木造帆船目掛けてひた走り。
早朝、私が日の出を観に来た桟橋に繋留されてた帆船、『観光丸』だった。
「何度観てもでっけー海賊船だよなァ~~~!!!」
「海賊船じゃなくて『観光丸』!!オランダから江戸幕府に献上された、日本初の帆船を復元した物だって、何度言えば解んのよ!!?」
「まー細かい事は良いから♪♪今日はこれに乗れんだろ!?いつ乗るんだ!?」
「帰る前に乗るっつったでしょ?だから…4時の回に乗船しようかと考えてるわ。」
「えーー!!?そんな遅くなのかァ~~~!!?ちょうど側まで来たんだから、今乗っちまおうって!!!」
「どの道12時からじゃないと出航しないわよ。その証拠にお客さん、1人も待ってないでしょ?」
…生憎の曇天だけど、航海するにはむしろ日焼の心配無くて良いかもしんない。
波が幾分高くて気にはなるけど…運休するって事は……多分、無いわよね…?
桟橋脇に立てられた、フラッグのはためき具合を見ていて、少し不安になる。
雄々しく空高く聳え立った太いマストまで、強風に煽られてゆらゆらと揺れていた。
「やぁぁっぱ海は良いよなァァ~~~♪♪」
「そうねーー…って、あんたがそこまで船や海が好きだったなんて、ちっとも知らなかったわ。」
「ここに来て好きになった!!こぉぉんな広くてどこまでも続いてて、圧倒されちまうじゃんか!!」
「……まー…確かにね。」
海を見てるとちっぽけな自分が良く解るとか、寄せては引く波に無常を感じて寂しく思うとか…演歌みたいなフレーズが実感出来るわよね。
「なァ!!こっから船乗ってどこまで行くんだ!?また別の島か!?」
「ん~ん、大村湾を40分程クルージングして戻って来るわ。」
「……なんだ、どこにも行かねェのか…つまんねーな。」
「甲板で帆張りとかロープの結び方の実演とか、色々アトラクション有るらしいわよ!…パスポート使って乗れるんだから贅沢言わない!!」
暫くルフィと2人、桟橋寄っ掛って海を呆ーっと眺めた後、また自転車乗って海沿いを走ってった。
端まで行ってまたUターン…垂直になるまで前の車体を持上げ、ぐりんと向きを変えて道を戻る。
「…ルフィ、あんた……もォ~~し世界1周しててお金に困ったら、こういう大道芸して稼げば良いと思うわ!!」
「えーー!?大道芸って、昨日観たショーみたいなのか!?…そうか!!あーいうの観せて金かせぎゃ良いんだな!!」
私の思い付きに、ルフィは満更でもない様子で、しきりに頷いている。
「あんた元々芸人体質だもん!!世界を股に掛けるパフォーマーとしてやってけるわよ!!きっと!!」
「そうかーー……じゃ、お代を入れてもらう用に、ボウシでも買ってくかなーー…!!」
ホテル・デンハーグ前を横切る、正面玄関の横には、海辺のホテルのカラーに似合った、蒼い色調のクリスマスツリーが飾られてるのが見えた。
海沿いをどんどん進む、冷たい潮風が顔に当って寒いけど、心地好い。
オレンジ広場まで差掛ると、今度は右横にデ・リーフデ号が見えた。
――と、自転車がまた急停止する。
「お!!また海賊船!!!」
「だから海賊船じゃないってばっっ!!!あれは『デ・リーフデ号』!!!日蘭交流の先駆けとなった船を復元した物なのっっ!!!」
「まー良いじゃねーか!!たいして違わねえって♪♪」
「全っっ然違うわよっっ!!!」
「あれにも乗れたら良いのになー。小っせェけど、俺、さっきの船よりもこっちのが好きだ!!俺達の船に似てるからな!!」
「…………またあの夢の話……。」
「夢じゃねーって!!!昨夜ゾロも見たって言ってたし…!!!」
「ハイハイ!いいから!!早く発進させて!!レンタル3時間過ぎたら延滞金発生しちゃうんだから!!」
綺麗な三角形したクリスマスツリーの飾ってある広場から、白い跳ね橋『スワン橋』を渡る。
中央広場の在るビネンスタッドへと入り、ホテル・アムステルダムに沿うようして道を進んだ。
「……なーー!!通る度になぞに思ってたんだけどよー!!この…右っかわずっと続いてる建物って何なんだ!?」
「ホテル・アムステルダムよ!!昨日ランチ・バイキング食べに来たでしょ!?」
「えええ!??あのホテルかァァ!!?ちっとも気が付かなかったぞっっ!!?」
「確かに…建物が軒を連ねてる様で、1棟のホテルとはとても思えない、面白い造りよね♪」
古い街並みが改修を重ねてく内に、1つの大きなホテルに変化してったというコンセプトで建てられたそのホテルは、一見しただけではホテルに見えない。
初めて宿泊しに来た人が出入り口を中々見付けられず、右往左往したりしたというエピソードが何処かで紹介されてたっけ。
ビネンスタッドバス停を通り抜けた地点で、バスから降りた数人のお客と擦違った。
時間にして10時ちょっと過ぎ…そろそろ少しは賑やかになって来る頃かも。
「しかしよ~~~!!店、全然開いてねェなァ~~~!!だから客もあんま歩いてねェんじゃねェかァ~~~!?」
無邪気な口振だが辛辣なルフィの言葉に苦笑してしまう。
「まァねー…場内の店の多くが10時過ぎに開店ってのは、私もどうかと思うわーー…。」
「レストランとかもっと早く開いてくんねーと腹減っちまって困るよなァ~~~!!」
「後少ししたら開き出すだろうから…そしたらどっか寄ってお茶でも飲も♪」
ミュージアムスタッドの運河沿いを通り、クリスタル橋を渡ってニュースタッド地区へ…また閑静な運河沿いの、ワッセナーの観える道を選び走って貰った。
風車の羽根が回る、小さな広場前で自転車を停めて、またちょっと休憩する。
「風車って、あの花畑に在るだけじゃ無かったんだなー。」
「そうよ、この地区には2基、フリースラントには1基、それとキンデルダイクに在る3基…他にも、ワッセナーの方にも1基在るみたいだから……少なくとも場内に7基以上在るって事じゃないかしら?」
風車の在る広場からは、それこそ花畑の如く色取り取りの童話調の家が、運河を挟んで整然と建ち並んでる様が観渡せた。
「良いよなーーー……いっぺん、あーいう家住んでみてーよなァーーー…。」
「意外ねー、あんたでもマイホーム願望なんて持ってる訳?」
「マイホームっつか、これって別荘だろ?遊びてェ時だけ来て暮らすなんて、何か良いじゃんか♪」
「ああ、そういう発想か。」
「1コ買っといてよ、年取ってから皆で暮らすのも良いよな♪」
「皆して……?」
「ナミやゾロやウソップやサンジや…ビビやロビン先生も呼ぶか!毎日皆で美味ェもん食って飲んで若ェ頃の冒険話とかして騒いで、夜になったら花火観て…そんな感じで面白おかしく暮らすんだ♪な!?良いだろ!??」
「………そうね…夢の様な老後の計画だわね。」
「1コ幾らぐれェすんだろーなァ~~~??皆でワリカンにするって事でよ~~~。」
「一戸建て3,713万円よりとか、何処かに書いてあったわよ。」
「げっっ!!?そんなすんのかっっ!!?……10人くれェ集めて、1人371万くれェでェ~~~…。」
「10人で1軒の家住んだら流石に狭苦しいわよ、馬鹿。」
「まーー将来誰か宝くじ大当りすっかもしんねーし!俺が油田掘り起こすかもしんねーし!!夢はでっかく、前向きにけんとうしとくとしよう!!!」
「………そうね、その頃まで―――」
――あんたが忘れずに、覚えていられればね。
「…何を覚えてればだって???」
「………場所の事よ。」
【その32に続】
ブレーキ掛けずに坂道下ってはいけません。(←そりゃそうだ)
写真の説明~、また一昨年のクリスマスシーズンの写真ですが…早朝のキンデルダイク。
人が居ないのは早朝だからです、何時もは人気撮影スポットなんでかなし人が居ます。(笑)
【07年1/4追記】…ホテル・アムステルダム横海沿いの道は、実は自転車交通禁止だったという事を知り、修正入れました…御免なさい。(土下座)