【前回の続きです。】
すったもんだの末、一旦ゾロとは別行動を取る事になった。
12:30にコテージ玄関前での待合わせ、それまでゾロは服乾かしつつ、ひたすら寝てる積りらしい。
それならばと、当初は朝食後に送ってしまおうかとも考えてた、荷物の番を任せた。
また観て廻ってる間に、新たに増えるかもしれないし。
先に宿の精算だけは終らせとこうと、私とルフィはコテージを出て先ず、ホテル・ヨーロッパのフロントに向った。
精算を終えた証明書を発行して貰い、今度はパスポートを使って、スパーケンブルグ~ブルーケレン迄、クラシックバスに乗って移動する。
「ブルーベリーって陸の出入り口が在るって地区だろ?そんな端まで何しに行くんだ??」
乗車して素早く先頭席押えたルフィが、振り返って聞く。
開園間も無い時間故場内に人は少なく、バスに乗って来る客も私達以外居なかったんだから、そう急ぐ必要も無いのに…野生の習性ね、きっと。
「『ブルーケレン』だってばルフィ。3日目で足も疲れただろうし、今日は自転車で廻ろうかなと思って…で、レンタサイクル屋がそこに在るから行こうとね!」
「自転車かーー!別に足疲れちゃいねーけど、それで廻るのも面白そーだな♪」
石畳の車道をガタゴト揺れながらバスは進む。
10分程もして目的の場所、ブルーケレンに到着した。
間のバス停で待ってるお客さんが居なかったせいで、早く着いたらしい。
…まァ、この時間に出入国口方面向う人は、あんま居ないわよね。
場内ホテルをチェックアウトしたお客は、大概ホテル側の送迎バス使ったりする訳だし。
目指してたレンタサイクル屋『フィッツ』は、バス降りて直ぐ目の前、カナルステーション裏側に在った。
「うっはーーー♪♪♪自転車沢山置いてあっぞ♪♪♪――お!!前の車輪だけバカでけーのが有る!!!ほろ馬車みてーな形したのも有んなァーー♪♪♪よしナミ!!!これ乗ってこーぜ!!!」
「それは4人乗り用よルフィ!…2人しか居ないんだから、2人乗りで充分でしょ!」
「2人乗り!?2人乗りってどれだ!?どんなんだ!?」
すっかりトム・ソーヤーの瞳になっちゃってるルフィ引き摺って受付で尋ねる。
直ぐに「いらっしゃいませ!」と、オレンジのジャンパー着た、気さくそうな小母さんが出て来た。
「2人乗りですね?3時間で2,000円。それとは別に保証金として500円…この500円は返却時にお返し致しますので。」
説明しながら小母さんは、自転車がズラリ並んで置かれてるフロアから、黄色い縦長の車体した自転車を、担いで出して来てくれた。
外の道に置いて貰った自転車には、成る程2人で乗って運転出来る様、ハンドル・サドル・ペダルが前後に2人分設置されている。
「じゃ、私が1,000円、ルフィが1,500円出すって事で。」
受付で借用証書にサインしながらルフィに言う。
「えええ!!?何で俺が500円よけいに出さなきゃなんねーんだよ!??」
「大丈夫よ。保証金だから、返却時何も問題無ければ返って来るわ。」
「だったらナミが払えよ!!!戻ってくんなら構わねーだろォ~~!?」
「あんた達の借金肩代わりしてて、尚余計に払わされるのは癪に障んの!」
借金の一言が効いたのか、ルフィが渋々と1,500円払う。
手続きを済ませてからも小母さんは、更にキーの掛け方外し方サドルの高さの調整の仕方まで、親切丁寧に説明してくれた。
一通り教わった所でルフィが前に、私は後部のサドルに跨り、ハンドル握って出発進行。
2人してペダルを思い切り漕ぎ出す。
………が、上手く前に進んでくれないっっ。
のたーりのたーり亀並のスピードで、数㎝も漕いだかなって所で敢無くぱったりと倒れてしまった…。
「ルフィ!!!あんたペダルしゃかりきに漕ぎ過ぎ!!!もっとこっちに合せてよ!!!」
「ナミがもっと早くこぎゃいいだろォ!!?んなトロくこいでちゃ全然つまんねーよ!!!」
「もっとお互い息を合わせなくちゃ!!『イチ!ニ!』って声出しながら漕ぐと良いですよ!!」
見かねた小母さんが、苦笑しながらアドバイスをくれる。
掛け声に合せて漕いでみる……トロトロとではあるが、自転車は何とか前進し出した。
「「イチ!!ニ!!イチ!!ニ!!イチ!!ニ!!イチ!!ニ!!イチ!!ニ!!イチ!!ニ!!…」」
「イチ……あ~~~~!!!!もォォやってらんねェェェ~~~~~~!!!!!ナミ!!!おまえこぐな!!!!!俺がこぐ!!!!!」
「……………ルフィ…!」
ペダルから私の足を離す、と同時にスムーズに自転車は走り出した。
速度を次第に上げながら、青赤白黄色とカラフルにパンジーの咲揃うキンデルダイクを抜け、バスチオン橋を渡り、あっという間にフリースラント地区の並木道へと入ってった。
「や~~~っとサイクリングらしく、楽しくなって来たなァ~~~♪♪」
「……そりゃあんたはさぞかし楽しく御機嫌で御座いましょうよ。」
「やァァっぱこう…肩で風切って進むっつうの!?トロっちいんじゃカッコ付かねーよなァ~~~♪♪」
「………すいませんね、馬力足らずで足引張ってトロくして。」
――突然、キキキーッとブレーキが踏まれ自転車が停止する。
珍しく神妙な顔付きして、ルフィが振り返った。
超の付く鈍感野郎でも、少しは私の背後漂うマイナスオーラに気付いたらしい。
「……ナミ……ひょっとして、楽しくねェのか?」
「この顔が楽しそうに見えるか!?」
ルフィに向け、ぐっと顔を突き出す。
「うわっっ、鬼みてェな恐ェ顔。噴火5秒前だな。」
「あんたねェ!!これじゃ私乗っかってるだけじゃない!!ただのお荷物扱いじゃない!!!それでどうして楽しくして居られるっつうのよ!!?」
……こんなんだったら1人用のを別々に借りるんだったわ。
「漕ぐな!!!」だなんて、まるきし足手纏いの邪魔者みたいじゃないのさっっ。
ぶちぶち不平垂れてる前で、ルフィが困った顔して考え込んでる。
ちょっとは反省したのかしら?だとしたら良い傾向だけど。
「んじゃよォ!俺が運転担当で、ナミはナビ担当って事で!!」
「……ナビ担当!?」
「いやほら…何か今前見たら…この先通り抜け禁止っつう感じで行止りになっちまっててよォ…ひょっとして、道、間違えちまったのかなァァなんてな♪」
決まり悪さ気に指し示してる前を見ると、確かに「この先立入禁止」なる感じに、通行止めが置いてあった。
見回せば並木どころか、木が密集して林にすらなってて、観光客1人も歩いてない此処は一体何処なのよ!?
「ひょっとしてじゃなくて、明らかに道間違ってるわよ馬鹿っっ!!!」
「悪ィ♪悪ィ♪…という訳でナミ!ナビ担当に任命する!!宜しく頼むぜ♪」
にかっっと歯を剥き出して、何時もの屈託無い笑顔。
…誤魔化されてる気もするけど、こいつなりに気を遣ってくれてんのよね。
「…了解!それじゃあ早速、Uターンして道戻んのよ運転手!!」
「ラジャー!!!」
掛声と同時に地面蹴り上げ一気に前輪を持上げる――自分の体が仰向けにされる。
後輪だけ地面に付けぐりんと向き180°変換、ガシャンと車体を前に倒して、来た道を逆走してく…パフォーマーもびっくりだ。
ゾロといい、この運動能力には昔から憧れるのよね。
道を戻り、薄桃色のコスモスに縁取られたアムステル運河の横を行く。
石畳の上だとガタゴト振動して腰が痛くなるので、なるたけ煉瓦の敷き詰めてある道の方を渡る様言った。
この辺りの並木道は幅が広く、サイクリングするにはお誂え向きよね。
「これで右の広場に何か飾ってありゃ良いのになー!!土ばっかりですっげさみしい!!」
「春になれば百花繚乱!!綺麗な花々が咲乱れる予定らしいわよ!!それこそ迷路の様な庭園を造る予定なんだって!!」
「へー!!花で迷路かー!!それもきれーで面白そーで良さ気だよなー♪♪春にもまた来てみてーよなー!!」
「ゾロと2人、また迷子にでもなりたい訳ー!?」
「迷子じゃねーよ!!ゾロと一緒にすんな!!しっけーだなっっ!!!」
「他人から見たら五十歩百歩よ!!――あ!!そこ!!右折して橋渡って!!」
ジョーカー橋を渡りビネンスタッド地区へ…赤茶色した煉瓦の街並みが、並木が、道を歩いてる人が、どんどん後ろへ流れてく。
早い早い♪楽ちん楽ちん♪…漕いで貰ってると、景色ゆっくり楽しめて、或る意味得かもね。
ドムトールンを横目にハーフェン橋を渡れば、そこは潮風吹き抜ける港街スパーケンブルグだ。
「この次、右の道行ってくれる!?せっかくだからフォレストパークも1周しとこう!!」
賑やかなクリスマスデコレーションされてるホテル・ヨーロッパの横で、ルフィに叫んだ。
「ふぉれすとって…ひょっとして俺達が泊ってるトコかァァ!?」
「そうよォ!!フォレストヴィラ宿泊客でないと入り難い区域だからね!!悔いを残さないよう1周しとこう!!」
右折してえっちらおっちら坂道を上る。(←ルフィが)
風に煽られルフィの髪が踊り、首筋に汗が光って見えた。
紅葉した樹木に囲まれた道を上り切る。
目の前にはウェルネスセンターの白い建物が在った。
その出入口前に立つ一際のっぽの紅葉樹には、白・赤・銀色のクリスマスの飾りが枝いっぱいに吊るされてる。
「ここにもこんなでっけークリスマスツリーが在ったんだなー!!」
「…そうね、食事会場位しか行ってなかったから気が付かなかったわ!」
枯葉舞い散る湖畔の周囲を廻る。
途中、湖の中に浮ぶ島まで架った木の橋を渡って行く。
橋の上から観る景色があんま綺麗だったんで、自転車を停めて貰ってルフィと暫く眺めていた。
赤に黄色にと色付いた木の葉…ひっそり建ち並んだコテージ…湖がそれらを鏡面の様に反射して、まるでモネの描く風景画みたいに観える。
「…ね、カメラ出してくんない?ルフィ。」
「お?…悪ィ、忘れた♪……荷物朝全部送っちまうとか言ってたから、つい全部バッグにまとめてしまっちまって♪」
「あんただから何の為にカメラ持って来たりしてる訳!!?」
「何なら今コテージ戻って、取って来てやろうか?どうせすぐ側なんだから!」
「……別に取りに戻るまでしなくても良いわよ。寝てるゾロの邪魔しちゃ悪いし。」
「起して3人で写真とるとか。」
「怒られるわよ、ゾロに。」
「自転車乗ってるトコ見せてうらやましがらせよう。」
「羨ましがる訳無いでしょ!?あいつが自転車位で!!」
「…うらやましがると思うけどなァァ♪」
にしししっ♪と何だか意味深に笑う。
その笑い方がちょっと癇に障ったんで、頭をペンと叩いてやった。
取敢えずはまた2人で自転車に乗り、後1周湖の周りを走る事にした。
シャーーーッと軽快な音立てて自転車が進む。
前で立って漕いでるルフィの赤ジャケットが、風を受けてバタバタとはためいてる。
その背中が幼い時分に見てた頃より随分と広く逞しく見えた。
「……あのさ……ルフィってまた…身長伸びた…!?」
「…しんちょう??おーー!!伸びた伸びた♪♪今172cmまで行ったぞ!!」
…………高校1年までは、私の方がずっと身長有ったのになァァァ…。
ゾロと私とルフィで、丁度大・中・小の並び順。
一緒に登下校してると、必ず何人かに「兄弟?」って聞かれたもの。
「見てろよ!!その内ゾロだって抜かしてやるさっっ!!!」
「ゾロは幾ら何でも無理なんじゃないのォォ!?あいつ、178㎝も有んだからさァァ!!」
「エースはもっと高ェぞ!!!だから!弟の俺だってそんくれェ高くなるかもしんねェじゃねェか!!!」
「……成る程、一理有るわね。」
妙に納得しつつふと右を見ると、見覚えの有るお城の様な煉瓦の建物。
…なんだ、そっか…パレスハウステンボスって、フォレストパークの横に在ったんだ…!
なら、フォレストパークからも行ける様にして貰えると助かるのに。
パレス前の坂道ってなだらかに見えて、駆け足で上ると結構きついのよねェ。
「……ねェ!!私、重くない!?何なら運転交替しようか!?」
「あー!?別にちっとも重かねーよ!!大丈夫だって!!」
「だって2人分も乗せて漕いでんだから…いいかげん疲れたでしょお!?」
キキィッッ…!!とブレーキ音響かせ自転車が停まる。
「…なら、試しに1人でこいでみて、どんだけ負担有るか確かめてみるわ!」
そう言って私を降ろし、ペダルをまた漕ぎ出す。
――ばひゅん!!!と一気に自転車は前に進んだ。
「おおおおっっ!!?すっげェェ!!!!軽ィ!!!ペダルも何もかも軽ィぞナミ!!!!」
そのまま私残して湖を1周―――1分も経たない内に戻って来た。
「いや~~~~もすっっげ快調!!!!ペダルが軽ィのなんのって!!!!ナミィィィ~~~お前、ずいぶん重かったんだなァァァ~~~~♪♪♪♪うはははははははははうはははははははははうはははうはうはははは…♪♪♪♪」
――ガンッッ…!!!!!!
オデコにウェストポーチを思っ切し投げ付けて、自転車ごと地に沈めてやった。(←中の携帯無事だと良いけど)
「………あんた、本っっっ当に失礼…!!!!!」
【その31に続】
…ああ…何だかとっても青春話している…。(赤面)
2人乗りは人気が有って、午前中で無くなっちゃう場合も有りです。
『8/20追記:写真の説明』…紅葉するフォレストパーク。
…勝手ながら『その9』と写真取替えた…済みませぬ。(汗)
すったもんだの末、一旦ゾロとは別行動を取る事になった。
12:30にコテージ玄関前での待合わせ、それまでゾロは服乾かしつつ、ひたすら寝てる積りらしい。
それならばと、当初は朝食後に送ってしまおうかとも考えてた、荷物の番を任せた。
また観て廻ってる間に、新たに増えるかもしれないし。
先に宿の精算だけは終らせとこうと、私とルフィはコテージを出て先ず、ホテル・ヨーロッパのフロントに向った。
精算を終えた証明書を発行して貰い、今度はパスポートを使って、スパーケンブルグ~ブルーケレン迄、クラシックバスに乗って移動する。
「ブルーベリーって陸の出入り口が在るって地区だろ?そんな端まで何しに行くんだ??」
乗車して素早く先頭席押えたルフィが、振り返って聞く。
開園間も無い時間故場内に人は少なく、バスに乗って来る客も私達以外居なかったんだから、そう急ぐ必要も無いのに…野生の習性ね、きっと。
「『ブルーケレン』だってばルフィ。3日目で足も疲れただろうし、今日は自転車で廻ろうかなと思って…で、レンタサイクル屋がそこに在るから行こうとね!」
「自転車かーー!別に足疲れちゃいねーけど、それで廻るのも面白そーだな♪」
石畳の車道をガタゴト揺れながらバスは進む。
10分程もして目的の場所、ブルーケレンに到着した。
間のバス停で待ってるお客さんが居なかったせいで、早く着いたらしい。
…まァ、この時間に出入国口方面向う人は、あんま居ないわよね。
場内ホテルをチェックアウトしたお客は、大概ホテル側の送迎バス使ったりする訳だし。
目指してたレンタサイクル屋『フィッツ』は、バス降りて直ぐ目の前、カナルステーション裏側に在った。
「うっはーーー♪♪♪自転車沢山置いてあっぞ♪♪♪――お!!前の車輪だけバカでけーのが有る!!!ほろ馬車みてーな形したのも有んなァーー♪♪♪よしナミ!!!これ乗ってこーぜ!!!」
「それは4人乗り用よルフィ!…2人しか居ないんだから、2人乗りで充分でしょ!」
「2人乗り!?2人乗りってどれだ!?どんなんだ!?」
すっかりトム・ソーヤーの瞳になっちゃってるルフィ引き摺って受付で尋ねる。
直ぐに「いらっしゃいませ!」と、オレンジのジャンパー着た、気さくそうな小母さんが出て来た。
「2人乗りですね?3時間で2,000円。それとは別に保証金として500円…この500円は返却時にお返し致しますので。」
説明しながら小母さんは、自転車がズラリ並んで置かれてるフロアから、黄色い縦長の車体した自転車を、担いで出して来てくれた。
外の道に置いて貰った自転車には、成る程2人で乗って運転出来る様、ハンドル・サドル・ペダルが前後に2人分設置されている。
「じゃ、私が1,000円、ルフィが1,500円出すって事で。」
受付で借用証書にサインしながらルフィに言う。
「えええ!!?何で俺が500円よけいに出さなきゃなんねーんだよ!??」
「大丈夫よ。保証金だから、返却時何も問題無ければ返って来るわ。」
「だったらナミが払えよ!!!戻ってくんなら構わねーだろォ~~!?」
「あんた達の借金肩代わりしてて、尚余計に払わされるのは癪に障んの!」
借金の一言が効いたのか、ルフィが渋々と1,500円払う。
手続きを済ませてからも小母さんは、更にキーの掛け方外し方サドルの高さの調整の仕方まで、親切丁寧に説明してくれた。
一通り教わった所でルフィが前に、私は後部のサドルに跨り、ハンドル握って出発進行。
2人してペダルを思い切り漕ぎ出す。
………が、上手く前に進んでくれないっっ。
のたーりのたーり亀並のスピードで、数㎝も漕いだかなって所で敢無くぱったりと倒れてしまった…。
「ルフィ!!!あんたペダルしゃかりきに漕ぎ過ぎ!!!もっとこっちに合せてよ!!!」
「ナミがもっと早くこぎゃいいだろォ!!?んなトロくこいでちゃ全然つまんねーよ!!!」
「もっとお互い息を合わせなくちゃ!!『イチ!ニ!』って声出しながら漕ぐと良いですよ!!」
見かねた小母さんが、苦笑しながらアドバイスをくれる。
掛け声に合せて漕いでみる……トロトロとではあるが、自転車は何とか前進し出した。
「「イチ!!ニ!!イチ!!ニ!!イチ!!ニ!!イチ!!ニ!!イチ!!ニ!!イチ!!ニ!!…」」
「イチ……あ~~~~!!!!もォォやってらんねェェェ~~~~~~!!!!!ナミ!!!おまえこぐな!!!!!俺がこぐ!!!!!」
「……………ルフィ…!」
ペダルから私の足を離す、と同時にスムーズに自転車は走り出した。
速度を次第に上げながら、青赤白黄色とカラフルにパンジーの咲揃うキンデルダイクを抜け、バスチオン橋を渡り、あっという間にフリースラント地区の並木道へと入ってった。
「や~~~っとサイクリングらしく、楽しくなって来たなァ~~~♪♪」
「……そりゃあんたはさぞかし楽しく御機嫌で御座いましょうよ。」
「やァァっぱこう…肩で風切って進むっつうの!?トロっちいんじゃカッコ付かねーよなァ~~~♪♪」
「………すいませんね、馬力足らずで足引張ってトロくして。」
――突然、キキキーッとブレーキが踏まれ自転車が停止する。
珍しく神妙な顔付きして、ルフィが振り返った。
超の付く鈍感野郎でも、少しは私の背後漂うマイナスオーラに気付いたらしい。
「……ナミ……ひょっとして、楽しくねェのか?」
「この顔が楽しそうに見えるか!?」
ルフィに向け、ぐっと顔を突き出す。
「うわっっ、鬼みてェな恐ェ顔。噴火5秒前だな。」
「あんたねェ!!これじゃ私乗っかってるだけじゃない!!ただのお荷物扱いじゃない!!!それでどうして楽しくして居られるっつうのよ!!?」
……こんなんだったら1人用のを別々に借りるんだったわ。
「漕ぐな!!!」だなんて、まるきし足手纏いの邪魔者みたいじゃないのさっっ。
ぶちぶち不平垂れてる前で、ルフィが困った顔して考え込んでる。
ちょっとは反省したのかしら?だとしたら良い傾向だけど。
「んじゃよォ!俺が運転担当で、ナミはナビ担当って事で!!」
「……ナビ担当!?」
「いやほら…何か今前見たら…この先通り抜け禁止っつう感じで行止りになっちまっててよォ…ひょっとして、道、間違えちまったのかなァァなんてな♪」
決まり悪さ気に指し示してる前を見ると、確かに「この先立入禁止」なる感じに、通行止めが置いてあった。
見回せば並木どころか、木が密集して林にすらなってて、観光客1人も歩いてない此処は一体何処なのよ!?
「ひょっとしてじゃなくて、明らかに道間違ってるわよ馬鹿っっ!!!」
「悪ィ♪悪ィ♪…という訳でナミ!ナビ担当に任命する!!宜しく頼むぜ♪」
にかっっと歯を剥き出して、何時もの屈託無い笑顔。
…誤魔化されてる気もするけど、こいつなりに気を遣ってくれてんのよね。
「…了解!それじゃあ早速、Uターンして道戻んのよ運転手!!」
「ラジャー!!!」
掛声と同時に地面蹴り上げ一気に前輪を持上げる――自分の体が仰向けにされる。
後輪だけ地面に付けぐりんと向き180°変換、ガシャンと車体を前に倒して、来た道を逆走してく…パフォーマーもびっくりだ。
ゾロといい、この運動能力には昔から憧れるのよね。
道を戻り、薄桃色のコスモスに縁取られたアムステル運河の横を行く。
石畳の上だとガタゴト振動して腰が痛くなるので、なるたけ煉瓦の敷き詰めてある道の方を渡る様言った。
この辺りの並木道は幅が広く、サイクリングするにはお誂え向きよね。
「これで右の広場に何か飾ってありゃ良いのになー!!土ばっかりですっげさみしい!!」
「春になれば百花繚乱!!綺麗な花々が咲乱れる予定らしいわよ!!それこそ迷路の様な庭園を造る予定なんだって!!」
「へー!!花で迷路かー!!それもきれーで面白そーで良さ気だよなー♪♪春にもまた来てみてーよなー!!」
「ゾロと2人、また迷子にでもなりたい訳ー!?」
「迷子じゃねーよ!!ゾロと一緒にすんな!!しっけーだなっっ!!!」
「他人から見たら五十歩百歩よ!!――あ!!そこ!!右折して橋渡って!!」
ジョーカー橋を渡りビネンスタッド地区へ…赤茶色した煉瓦の街並みが、並木が、道を歩いてる人が、どんどん後ろへ流れてく。
早い早い♪楽ちん楽ちん♪…漕いで貰ってると、景色ゆっくり楽しめて、或る意味得かもね。
ドムトールンを横目にハーフェン橋を渡れば、そこは潮風吹き抜ける港街スパーケンブルグだ。
「この次、右の道行ってくれる!?せっかくだからフォレストパークも1周しとこう!!」
賑やかなクリスマスデコレーションされてるホテル・ヨーロッパの横で、ルフィに叫んだ。
「ふぉれすとって…ひょっとして俺達が泊ってるトコかァァ!?」
「そうよォ!!フォレストヴィラ宿泊客でないと入り難い区域だからね!!悔いを残さないよう1周しとこう!!」
右折してえっちらおっちら坂道を上る。(←ルフィが)
風に煽られルフィの髪が踊り、首筋に汗が光って見えた。
紅葉した樹木に囲まれた道を上り切る。
目の前にはウェルネスセンターの白い建物が在った。
その出入口前に立つ一際のっぽの紅葉樹には、白・赤・銀色のクリスマスの飾りが枝いっぱいに吊るされてる。
「ここにもこんなでっけークリスマスツリーが在ったんだなー!!」
「…そうね、食事会場位しか行ってなかったから気が付かなかったわ!」
枯葉舞い散る湖畔の周囲を廻る。
途中、湖の中に浮ぶ島まで架った木の橋を渡って行く。
橋の上から観る景色があんま綺麗だったんで、自転車を停めて貰ってルフィと暫く眺めていた。
赤に黄色にと色付いた木の葉…ひっそり建ち並んだコテージ…湖がそれらを鏡面の様に反射して、まるでモネの描く風景画みたいに観える。
「…ね、カメラ出してくんない?ルフィ。」
「お?…悪ィ、忘れた♪……荷物朝全部送っちまうとか言ってたから、つい全部バッグにまとめてしまっちまって♪」
「あんただから何の為にカメラ持って来たりしてる訳!!?」
「何なら今コテージ戻って、取って来てやろうか?どうせすぐ側なんだから!」
「……別に取りに戻るまでしなくても良いわよ。寝てるゾロの邪魔しちゃ悪いし。」
「起して3人で写真とるとか。」
「怒られるわよ、ゾロに。」
「自転車乗ってるトコ見せてうらやましがらせよう。」
「羨ましがる訳無いでしょ!?あいつが自転車位で!!」
「…うらやましがると思うけどなァァ♪」
にしししっ♪と何だか意味深に笑う。
その笑い方がちょっと癇に障ったんで、頭をペンと叩いてやった。
取敢えずはまた2人で自転車に乗り、後1周湖の周りを走る事にした。
シャーーーッと軽快な音立てて自転車が進む。
前で立って漕いでるルフィの赤ジャケットが、風を受けてバタバタとはためいてる。
その背中が幼い時分に見てた頃より随分と広く逞しく見えた。
「……あのさ……ルフィってまた…身長伸びた…!?」
「…しんちょう??おーー!!伸びた伸びた♪♪今172cmまで行ったぞ!!」
…………高校1年までは、私の方がずっと身長有ったのになァァァ…。
ゾロと私とルフィで、丁度大・中・小の並び順。
一緒に登下校してると、必ず何人かに「兄弟?」って聞かれたもの。
「見てろよ!!その内ゾロだって抜かしてやるさっっ!!!」
「ゾロは幾ら何でも無理なんじゃないのォォ!?あいつ、178㎝も有んだからさァァ!!」
「エースはもっと高ェぞ!!!だから!弟の俺だってそんくれェ高くなるかもしんねェじゃねェか!!!」
「……成る程、一理有るわね。」
妙に納得しつつふと右を見ると、見覚えの有るお城の様な煉瓦の建物。
…なんだ、そっか…パレスハウステンボスって、フォレストパークの横に在ったんだ…!
なら、フォレストパークからも行ける様にして貰えると助かるのに。
パレス前の坂道ってなだらかに見えて、駆け足で上ると結構きついのよねェ。
「……ねェ!!私、重くない!?何なら運転交替しようか!?」
「あー!?別にちっとも重かねーよ!!大丈夫だって!!」
「だって2人分も乗せて漕いでんだから…いいかげん疲れたでしょお!?」
キキィッッ…!!とブレーキ音響かせ自転車が停まる。
「…なら、試しに1人でこいでみて、どんだけ負担有るか確かめてみるわ!」
そう言って私を降ろし、ペダルをまた漕ぎ出す。
――ばひゅん!!!と一気に自転車は前に進んだ。
「おおおおっっ!!?すっげェェ!!!!軽ィ!!!ペダルも何もかも軽ィぞナミ!!!!」
そのまま私残して湖を1周―――1分も経たない内に戻って来た。
「いや~~~~もすっっげ快調!!!!ペダルが軽ィのなんのって!!!!ナミィィィ~~~お前、ずいぶん重かったんだなァァァ~~~~♪♪♪♪うはははははははははうはははははははははうはははうはうはははは…♪♪♪♪」
――ガンッッ…!!!!!!
オデコにウェストポーチを思っ切し投げ付けて、自転車ごと地に沈めてやった。(←中の携帯無事だと良いけど)
「………あんた、本っっっ当に失礼…!!!!!」
【その31に続】
…ああ…何だかとっても青春話している…。(赤面)
2人乗りは人気が有って、午前中で無くなっちゃう場合も有りです。
『8/20追記:写真の説明』…紅葉するフォレストパーク。
…勝手ながら『その9』と写真取替えた…済みませぬ。(汗)