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深い取材と独特の感性@『世界は五反田から始まった』by星野博美

 

 

 九州で研修会があったので、往復の新幹線の中で一気読みしました。(仕事はリタイアしたので出張ではないのですが、自己研鑽のための参加です)

 

 著者の星野博美さんの本を初めて読んだのは、もう20年近く前でしょうか『転がる香港に苔は生えない』でした。それ以来、彼女の本は、写真集は除いて全て読んでいます。この本、著者の本領発揮の力作です。大佛次郎賞を受賞したのも頷けます。同賞の受賞者って、丸山眞男や大江健三郎、内田義彦等のキラ星のような人たちですよ。

 

 内容は、自分も含めた星野家の代々の生業の地である五反田(というか戸越銀座)と星野家の歴史を紐解いてゆくというものですが、単なる個人史ではなく、第3章は「ご当地に無産者託児所や無産者診療所が開設された訳、そして小林多喜二らがなぜここで活動していたのか。

 

 そして第4章では、戦前の満蒙開拓団に五反田から多くの人々が参加した訳、東京大空襲に匹敵する規模の空爆を五反田が受けたけど、東京大空襲のような甚大な犠牲者を出さなかったわけなどを、膨大な資料と取材で深く掘り下げています。同時にそういった「説明」に留まらず、星野氏の瑞々しいそしてオリジナリティーあふれる感性で深い洞察を加えています。

 

 読む前は、この本が「何で大佛次郎賞なんや」と不思議でしたが、読んで大納得です。五反田は世界というか世界の歴史に深くしっかりと結びついていることが深く理解できました。そして五反田に限らず、この本の読者が今いるそれぞれの地域も、本当は同じように世界の歴史とつながっているのでは?と思わせてくれます。

 

 この本、たぶん50年後も多くの人に読み継がれると思いました。

 

 

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