ばぶちの仕事しながら司法試験を突破し弁護士になりました

仕事をしながら司法試験に合格したばぶち(babuchi)の試験勉強記録+その後です。

年休権と育児休暇と不利益取扱い

2012年03月14日 00時07分46秒 | 労働法
労働法強化週間中です。


年休を取得したらその日は欠勤扱いとして、賞与の出勤率の算出に組み入れる取扱いの是非について。

判例は、
労働基準法136条を努力義務規定とし、欠勤扱いは直ちに違法とはならず、出勤率の低い者が経済的利益を得られないようにする措置を設けることは一定の経済的合理性がある。

労働者の権利行使を抑制し、労基法等の趣旨を実質的に失わせるものである限り、公序違反として無効である。


同じく、育児休暇を取得したらその日は欠勤扱いにすることも同様に考えている。


学説では、労基法39条は年休取得日を賃金について出勤日と同様に扱うことを使用者に要請しているから、賃金に関する不利益取扱いはすべて同条に違反する。



年休、育休、産休などは労働者の権利として保障されているのであるから、これを抑制する規定を設けることは公序良俗違反で無効とするのが筋が通りやすいと思います。

ロースクール労働法第26問の答案構成

2012年03月12日 23時49分33秒 | 労働法
ロースクール労働法第26問の答案構成

組合活動①②③は、憲法28条により労働者と労働組合に保障された団体行動権の行使として、正当な組合活動又は争議行為と言えるか。
正当なら労働法上の免責及び保護(労組法1条2項、8条、7条1号)

①リボン着用
原則:就業時間中の組合活動は正当化されない。
判例:職務専念義務は、勤務時間及び職務上の注意力の全てを職務遂行に用い、職務にのみ従事すべき義務
×使用者に全人格的に従属する

そこで、職務の誠実履行義務と解し、組合活動の必要性と業務への支障が生じるかを比較較量
職務の内容、リボンの形状、記載された文言、職務への影響等から判断

幅3センチ、長さ7センチのリボン着用は、アピールの必要性あり
旅客運送業であり接客業であるが、乗客からの苦情もなく業務への支障は特段なかった
よって、OK

服装規程への抵触も同じく正当な組合活動といえ、正当化されOK

②施設利用
判例:使用者には、労働者に使用者の施設を利用させることの受忍義務はない
使用者の許諾を得ずに企業施設で組合活動を行うことは、許諾をしないことが使用者の施設管理権の濫用と認められる特段の事情が無い限り正当性を有しない
×厳し過ぎる

そこで、組合活動の必要性と業務への支障が生じるかを比較較量

組合活動としてアピールの必要性あり

乗客の目の届かない更衣室の各自のロッカー部分にA4判の要求内容をセロテープで止めたビラ貼り
組合食堂も昼休みに報告のため、30分間だけ集会をしたのみ

業務に支障をきたすおそれがない

よってOK

③運転妨害
争議行為の正当性は、目的と手段と態様
運転妨害はストライキを実効あらしめるためであり目的は正当

しかし、使用者にも操業の自由あり=労働者への争議行為としての労務提供不履行への対抗もなし得る

運転席へのドアの鍵を排他的占有下に置く行為は、説得活動の範囲を超え、正当な争議行為とはいえない

よって違法

黙示の意思の合致

2012年01月15日 23時52分32秒 | 労働法
労働契約において、業務請負などにより、別会社を経由して本会社に労務を提供する場合があります。

この場合に、別会社が労働者との契約を切った場合、労働者は本会社との黙示の意思の合致による労働契約が生じていたとして、本会社との労働者としての地位確認訴訟を提起することができます。


この黙示の労働契約の成立は、
・使用従属関係
・黙示の意思の合致
が必要になります。



労働契約において、
・使用者が労働者に対して賃金を支払う
・労働者は使用者に対して労務の提供を行う
ことが本質的要素です。

よって、別会社との契約ではあるが、労働者と本会社との間に使用従属関係があり、労働者の賃金を本会社が決定し、労働者は本会社に労務を提供しているという関係にあれば、使用従属関係と黙示の意思の合致があるといえることになります。


もう少し具体的には、
労働者が本会社に労務を提供していること、
別会社が本会社の賃金支払代行機関化していること、
別会社と本会社の業務委託に基づく代金が労働者の賃金と連動していること
などが黙示の意思の合致に必要となります。



使用従属関係が認められるだけでは、派遣業などはすべてそのようになってしまうため、黙示の意思の合致が要求されています。

ロースクール労働法

2012年01月14日 08時38分18秒 | 労働法
ロースクール労働法の基本問題31問がようやく終わりました。

あとは融合問題8問です。

段々書く内容が見えてきました。

次は労働法の過去問検討です。


懲戒解雇は、懲戒処分と解雇が問題になるのですが、両方とも基準は同じなので濫用法理のあてはめがうまく書けないと説得力がないですね。

労働協約の不利益変更

2012年01月11日 23時02分30秒 | 労働法
労働協約は仕組みがわかりにくいです。


就業規則の不利益変更の合理性判断は、規範性取得要件の充足性判断である。

労働協約は規範的効力は原則承認されるので、労働協約の不利益変更の合理性判断は、労使の労働条件規制権の濫用判断のためである。


そうすると労働協約の不利益変更は、一部の組合員を殊更不利益に取り扱うことを目的として締結されたなど労働組合の目的を逸脱して締結された場合には、規制権の濫用であり、規範的効力を否定すべきである。




また、著しい労働条件の低下を含む不利益変更の場合には、組合員の意思が明示又は黙示の授権や承認によって労使間の交渉過程に反映されない限り組合員全員に規範的効力が及ばないというべきである。

特に未組織労働者の場合には、労働組合の意思決定に関与できず、逆に労働組合が未組織労働者のために擁護する立場にないことから、労働協約によって未組織労働者にもたらされる不利益の程度・内容、労働協約が締結されるに至った経緯、当該労働者が労働組合の組合員資格を認められているかどうか等に照らし、当該労働協約を特定の未組織労働者に適用することが著しく不合理であると認められる特段の事情があるときは、労働協約の規範的効力を当該労働者に及ぼすことはできない。

ロースクール労働法

2012年01月10日 01時27分24秒 | 労働法
ロースクール労働法はかなり勉強になります。

結構院生の書く答案が事案に即した記述をしていてすごいなぁと思うのですが、解説であまりいい評価を得ていないものもあり、これ以上のことを要求しているのか!?と焦ります。


労働災害のところは結構あてはめが難しいです。


裁判年月日 : 2006年7月10日
裁判所名 : 東京地
裁判形式 : 判決

 (1) 業務起因性の判断基準
 労災保険法に基づく保険給付は、労働者の業務上の死亡等について行われるところ(同法七条一項一号)、労働者の死亡等を業務上のものと認めるためには、業務と死亡との間に相当因果関係が認められることが必要である(最高裁昭和五一年一一月一二日第二小法廷判決・判例時報八三七号三四頁参照)。
 また、労災保険制度が、労働基準法上の危険責任の法理に基づく使用者の災害補償責任を担保する制度であることからすれば、上記の相当因果関係を認めるためには、当該死亡等の結果が、当該業務に内在する危険が現実化したものであると評価し得ることが必要である(最高裁平成八年一月二三日第三小法廷判決・判例時報一五五七号五八頁、最高裁平成八年三月五日第三小法廷判決・判例時報一五六四号一三七頁)。
 ところで、本件で問題となっている虚血性心臓疾患は、前記前提事実(2)イのとおり、基礎となる病変が、日常生活上の種々の要因により、徐々に進行・増悪して発症に至るのが通常であるが、他方で、業務による過重負荷が加わると、急激な血圧変動や血管収縮等を引き起こし、発症の基礎となる血管病変等が自然の経過を超えて著しく増悪して発症する場合もあるとされているところである。そうだとすると、過重な業務によって、著しく血管病変等を増悪させるような急激な血圧変動や血管収縮が引き起こされた結果、基礎疾患の自然的経過を超えて虚血性心臓疾患を発症したと認められる場合に、当該心臓疾患の発症が、業務に内在する危険が現実化したものと評価し、業務起因性を認めるのが相当である。これを本件に則し換言するならば、太郎は、直ちに心筋梗塞を発症するような状態になく、本件作業に従事しなければ相当期間にわたり生きることができたのに、本件作業に従事したことにより既存の基礎疾患を急激に増悪させて心筋梗塞を発症したものというのか、それとも、太郎は、いつ心筋梗塞を発症してもおかしくない状態にあり、本件作業後に発症したのは偶然でしかないというのかによって決定されることになる。すなわち、前者であれば業務起因性が肯定され、後者であれば否定される。本件はいずれであるのかについて、以下検討を進めることにする。〔中略〕
 (ウ) 小括
 以上みてきたとおり、本件作業は、「異常な出来事」に直面した大きな精神的負荷の下に行われた、日常業務とは異なる重負荷の作業であり、それ自体、著しく血管病変等を増悪させるような急激な血圧変動や血管収縮を引き起こし得る業務であったと認めることができる。すなわち、太郎は、本件当日、直ちに心筋梗塞を発症するような状態にはなく、本件査察の連絡を受け、本件作業に従事しなければ相当期間にわたり生きることができたのに、本件作業に従事したことにより既存の基礎疾患を急激に増悪させた結果、心筋梗塞を発症したものというのが相当である。〔中略〕
 エ 小括
 以上の検討結果によれば、太郎は本件当日当時軽症ないし中等症の高血圧症及び左右冠状動脈の動脈硬化という基礎疾患を有するとともに、喫煙習慣があったことが認められるものの、本件当日当時かかる基礎疾患等が自然的経過の中で心筋梗塞を発症するほどの進行状態にあったということは困難である。むしろ、太郎は、本件当日の消防署の査察による精神的負荷の下において行われた本件作業が、著しく血管病変等を増悪させるような急激な血圧変動や血管収縮を引き起こし得る業務であったことにより、太郎の冠状動脈内において粥腫の破綻あるいはスパズムによる冠状動脈閉塞を引き起こし、前記基礎疾患等の自然的経過を超えて心筋梗塞を発症させたものとみるのが相当である。すなわち、太郎は、本件当日、直ちに心筋梗塞を発症するような状態にはなく、消防署から本件査察の連絡を受け、本件作業に従事しなければ相当期間にわたり生きることができたのに、本件作業等に従事したことにより既存の基礎疾患を急激に増悪させ、その結果、心筋梗塞を発症したものと認めるのが相当である。よって、本件においては業務起因性があるというべきである。
 三 結論
 以上によれば、太郎の死亡が業務に起因するものではないことを前提にして行われた本件処分は違法であり、その取消しを求める原告の請求は理由があるのでこれを認容することとし、主文のとおり判決する。

出張時

2012年01月09日 09時48分28秒 | 労働法
出張した場合の扱い。


出張した場合に、出張手当がつく場合、それは時間外労働の見込みも含まれ、残業をしなかった場合にも出張手当が出るため、残業をした場合にも出張手当で補うという規定がある場合、これは有効なのか?


出張すると、昼食代、お茶代、残業すると夕食代が掛かります。
普段は弁当持参や社員食堂などでしたら、全部本来の業務では掛からない出費という扱いでしょう。

また、出張手当も残業代込み概算はおかしな話です。
かといって、実費精算にすると、事務処理が相当手間がかかり、そのための人件費も掛かってくるでしょう。

このあたりは、労働組合との労使協定、労働協約、就業規則などで補うのでしょうかな。


また、海外出張に関しては、土曜日に出発して日曜日に到着、月曜から金曜まで仕事をして、土曜日に現地を出発し日曜日に日本に到着した場合、代休などは一切なく、月曜日から通常出勤になります。

移動時間は労働時間とみなさないのが判例、通説のようですので、このような方法が一般的なようです。

客観説に立ち、使用者の指揮命令下にあるかどうかで判断すれば、移動時間中は寝ていても本を読んでいてもテレビを見ていてもいいことになるので、指揮命令下にないという扱いなんでしょう。

配転命令

2012年01月08日 23時55分05秒 | 労働法
労働法の配転命令の問題。


配転命令権の濫用

1 配転命令権自体が存在するか?

労働契約上根拠づけられていることが必要であり、就業規則や労働協約の定めにあればよく、会社の必要性と合理性があればよい。

2 配転命令権が存在していても濫用となるか?

配転命令権があってもそれが権利濫用となるのであれば、無効となる。

不当な動機、目的によって命令する場合
必要がない場合
労働者が通常甘受すべき程度を著しく越える不利益を負う場合

この場合には無効になる。

3 配転命令権が有効な場合でも懲戒解雇は有効か?

配転命令権が有効であり、労働者が拒否した場合、懲戒解雇ができるかどうかは別問題である。

懲戒権を行使するためには、懲戒事由が明文化されていることが必要。

懲戒事由に該当しても、処分の相当性が問題になる。

客観的に合理性を欠き、社会通念上相当といえない場合には、懲戒解雇も権利濫用法理(労働契約法15、16条)になる。

懲戒解雇は、懲戒権の濫用と解雇権の濫用の双方が適用される。

退職金不支給

2012年01月07日 00時48分27秒 | 労働法
小田急電鉄事件の判旨を参考に懲戒解雇による退職金不支給事件の流れ。


1 懲戒解雇の相当性
懲戒処分は、企業側に企業秩序定立権があり、労働者は労働契約によって当然に企業秩序遵守義務を負う。
そして、労働者が企業秩序遵守義務違反行為をした場合には、使用者は懲戒処分をすることができる。

もっとも、懲戒処分は労働者の不利益となるため、客観的に合理的であり、社会通念上相当と是認されなければならない(労働基準法15条)。

まず、就業規則に懲戒事由が明示してあり、その内容が必要性、合理性を満たせばよい。

本件、労働者の企業秩序違反行為が懲戒事由に該当するか。
該当するとしても、その行為に対する処分が相当であるかどうかを判断する。

そして、懲戒解雇の場合は、労働者に著しく不利益を及ぼすため、その処分の相当性が厳格に認められなければならない。

2 退職金不支給の一般的判断基準
退職金は、退職金規定によると、功労報償的な性格を有するが、賃金の後払い的な性格を有し、労働者の退職後の生活保障の意味合いも有する。
また、退職金規定により、支給条件が明確に規定されている場合には、賃金の後払い的性格が強いといえる。
当該退職金に対し、労働者がこれを見込んで生活設計を立てるのが通常であり、不合理な期待とはいえないため、期待をはく奪するには、相当の合理的理由が必要である。

3 具体的基準
退職金全額を不支給とするには、労働者の永年の勤続の労を抹消してしまうほどの重大な不信行為があることが必要である。
強度の背信性があるかどうかで判断すべきである。
私生活上の行為といえる場合には、会社との関係が薄くなることが考えられるため、会社に対する名誉信用が著しく低下させたなどの特段の事情が無い限り、退職金全額不支給は認められないと考える。

賃金

2012年01月05日 00時33分27秒 | 労働法
労働基準法4条11条の賃金は、
労働の対価として支払われるものであるが、各種手当も実質的に判断する。

就業規則や労働契約で決まったものか
支給条件が明確に定まっているか
使用者に支払い義務があるか

これらを総合的に考慮して判断する。

家族手当、扶養手当は賃金に当たる。

任意的恩恵的に認められる場合には、使用者の裁量に委ねられるものであるから、賃金には当たらない。


手当が賃金に当たるというのは、通常の考えだと当たらないように思えます。
通勤手当は労働者負担であるものが賃金として支給されているといえるのも通常の考えに反すると思えます。


通勤手当を上述の考慮要素に当てはめると、
就業規則や労働契約で定められていれば、
支給条件が明確に定まり、最短距離の定期券とされているなどの定めが通常あり、
就業規則等に定められているのであるから、使用者が支払う義務を負っているといえる。

よって、任的恩恵的給付ではないため、賃金に当たる。

三六協定

2012年01月03日 00時16分09秒 | 労働法
日本郵便では、赤字のため非正規社員80名の契約を更新しなかった。

20年とかのベテランの非正規社員も存在したのに、大量の人がいなくなったため、正規社員だけでは当然回らなくなるだろう。


この場合って、これだけ長期間の契約関係があったのだから、解雇権濫用の法理もあり得そうな事案ですね。

さらに、三六協定が2か月ごとに更新されているみたいですが、サービス残業にしないと協定が守られなくなるとか。


労働法を勉強していると、知った名称が出てきて面白い事案だなと思いました。

社員の人は大変だと思います。

http://diamond.jp/articles/-/15555