ばぶちの仕事しながら司法試験を突破し弁護士になりました

仕事をしながら司法試験に合格したばぶち(babuchi)の試験勉強記録+その後です。

相殺

2012年10月28日 22時01分50秒 | 民訴法
民訴法をやっています。


別訴で訴訟を提起していた後、当該債権を本訴での相殺の抗弁として主張する抗弁後行型は判例があり、重複訴訟の趣旨に反するとしています。


一方、本訴で相殺の抗弁を提出した後、別訴で当該債権を提起する抗弁先行型は判例がありません。


相殺の抗弁は予備的であって必ずしも判断されるとは限らない点、
相手方が無資力の場合の相殺の担保的機能を発揮させる必要がある点、
相殺の抗弁には既判力が生じるために既判力の矛盾抵触が生じるおそれがある点、
をどの程度重視するかによります。


基本的な論点です。

ただ、判例があるか無いかは間違い易いと思います。



抗弁後行型の場合、先行する訴えの取下げに相手方が同意しない場合や、先行する訴求債権が一部請求であり、残部について相殺の抗弁として提出する場合は応用になりますよね。

前者は弁論を併合して統一的解決を図り、本訴が認められても相殺の抗弁による請求異議の訴えができる、後者は判決の矛盾抵触のおそれがあることから相殺の抗弁は認められないといえそうです。

もっとも前者は相殺の抗弁としての債権が訴訟係属中のため請求異議が認められない問題もありそうです。

今週から

2012年10月21日 23時26分02秒 | 民訴法
今週から民訴法をやっていきます。


合わせて民事系の短答も平成18年度のは解き終わりましたので、平成19年度からやっていきます。

今年中に民事系(できれば公法も)の短答過去問を一回ししたいと思っています。
短答は直前に集中してやろうと思いますので、今は論文を9:1の比率でやります。


今更ですが、今年の問題と解説を入手しました。

きっちり復習をやって、同じ過ちを繰り返さないようにします。



事例から刑法を考える

2012年10月21日 22時37分48秒 | 刑法
事例から刑法を考えるをやり終えました。

本当に疲れる問題集でした。

明らかに新司法試験を超えている問題や解説が多々あります。

著者の要求するレベルがものすごく高い。


ただ、私は今まで刑法は判例を徹底してやってきていませんでした。旧司時代の刑法短答を知っている方なら判例より学説が重要というのはよく知っているかと思います。

しかし、予備試験、新司法試験の短答は判例が重要なキーになりますし、判例を知らずして短答では点が伸びません。

何となくの知識しかなかったのですが、この問題集をこなしていくうちに刑法判例百選、山口厚教授の刑法総論、各論をかなり読み込みました。

特に山口厚教授の刑法総論、各論は問題集とリンクする部分がかなりあり、理解が深まりました。


しかし、パチンコの体感器の問題とかは鬼ですね。山口厚教授の本にも載っていませんし、判例百選にも載っていません。
しかし、重要だということで、解説を何度も読みました。

パチスロのメダルを体感器で取得すると、いつが既遂かというのは深い洞察力が必要です。


この本で理解力が深まった分野は、
被害者の同意
不法領得の意思
横領と背任の区別
共犯
住居侵入
過失
です。

これらの分野に苦手意識がある人は読むことで理解が深まると思います。

ただ、生半可な知識では混乱するおそれがあるので、旧司短答ぐらいの学説の錯綜具合を知っている方でなければおススメできません。

こちらの方が全部の問題について参考答案を作ってらっしゃいます。
非常に参考になりました。

平成23年度合格者



工藤講師もあまりおススメしていませんでした…。

工藤講師のブログ




むしろこちらをススメています。
ロースクール演習 刑法

緊急避難

2012年10月21日 10時27分53秒 | 刑法
共同正犯の事案で、両者に緊急避難が成立するのは、検討を慎重にしなければならなさそうです。


緊急避難の要件に正当防衛と異なり、補充性と法益権衡が要求されているからです。



甲と乙は並んで街を歩いていた。

前から車が暴走してきた。

左側は空き地であり、右にベビーカーを引いた親子がいたので、甲は左の空き地によければ大丈夫と思っており、客観的に左の空き地に避ければ問題なかったが、乙は甲よりも右側にいたため、空き地に避けるのでは間に合わなかった。

そして、乙が右によけろと言ったので、甲と乙はとっさに親Aとベビーカーに乗っていた赤ちゃんBを突き飛ばして難を逃れた。

親子ABは骨折などの傷害を負った。




共同正犯の場合、違法性阻却事由は個別に考えると、甲には左によければ大丈夫と思っており、実際にも左側に空き地がありやむを得ずにしたとはいえず補充性が認められない。そのため、親子ABに対する傷害罪が成立する。

一方、乙は空き地に逃げられず右にしか避けられないため緊急避難により不可罰になります。

はたしてこれは妥当なんでしょうか。


補充性の要件を緩めて、やむを得ずというのは、とっさになされるものなので、別の回避方法があってそれを思っていても、他方の共同正犯かつ緊急避難者が別の回避方法がないと判断したならば、全体として補充性は満たされる、とかでしょうか?

不自然ですね。


なので、甲は補充性がなくても過剰避難が成立するとしかない気がします。


この補充性がないなら過剰避難は成立しないとする考えもあり、これを採用するなら、やはり甲は傷害罪2罪(観念的競合)が成立してしまいます。

予定

2012年10月20日 22時12分06秒 | その他
今後の大まかな予定


9月は商法を重点に強化した

10月は刑法を重点に強化中

11月は民訴法を重点に強化

11月末には過去問分析も検討~以降過去問分析は4月まで。

12月は刑訴法を重点に強化

年末年始は行政法を重点に強化

1月は行政法、労働法、短答過去問を重点に強化
民法判例を短答過去問により復習

2月は労働法、憲法を重点に強化

相当因果関係

2012年10月18日 23時54分46秒 | 刑法
刑法で悩みが尽きない議論の一つが相当因果関係ではないでしょうか。

事例から刑法を考える事例13で難しすぎる話がありました。



相当因果関係において、いかなる説を採用するかという考えもありますが、そもそもどの段階の事例かということも考えなくてはなりません。


一言に相当因果関係といっても意味が異なります。


折衷的相当因果関係説などは、行為時の特殊事情をどの範囲で斟酌すべきかという問題です。

なので、行為時に偶然的に発生した事情は除外し、行為時に行為者が特に認識していた事情を排除する必要はないため、行為時に一般人が認識し得た事情及び行為者が特に認識していた事情を基礎に一般人を基準に判断します。


一方、行為後に介在した異常な事態をどの範囲で斟酌すべきかという問題に危険の現実化を用いるべきです。


類型化すると、以下のようになります。

①行為時の特殊事情(相当性説)
②行為後の特殊事情
(1)被害者をことさら脆弱な状態に置いた類型
介在事情が突飛なものである場合であっても危険の現実化を認める。
(2)介在事情を誘発した類型
介在事情のリスクを許されないほど、ことさらに高めることで危険の現実化を認める。
(3)介在事情をはじめから無視できる類型
介在事情がなくても行為が直接的に具体的結果を引き起こすだけの力を持っている類型である。

大阪南港事件は②(3)の類型である。

事例検討

2012年10月18日 23時47分57秒 | 刑法
先日の下記の罪責の検討です。



甲はパスタ屋に入った。

好物のニンニクの効いたペペロンチーノを頼み食べた。

しかし、財布がないことに気付いた。

トイレの場所を聞いて外にあったらトイレに行く振りをして逃げようと思い、店員にトイレはどこですか?と聞いたら、
『店の外に出て角を曲がったところです。』
と言われたので、トイレに行って来ます、といい、店を出てすぐに逃げた。

しかし、勘定がまだだったので逃げたのに気付いた店主が金を払えと追い掛けて来たので、甲は店主を殴って倒し、逃げた。

後日街で店主にすれ違い、店主に金を払えと詰め寄られたためまた殴って逃げた。

甲の罪責は?







検討すべき罪責
・2項詐欺罪
・2項強盗罪
・暴行罪


2項詐欺罪
甲はパスタのお代を払わずに逃げるつもりで店員にトイレの場所を聞き、トイレに行ってきますと言っている。

トイレに行く振りをして逃げようとしている点で欺く行為があり、店員はトイレに行きたいのだと錯誤に陥り、トイレの場所を教え甲に行かせているという処分がある。

しかし、店員には、甲に支払いを免れさせるための処分をしていたとはいえないが、このような場合に処分意思が必要か。

詐欺罪は錯誤に陥った被害者が処分行為をするものであり、この点において瑕疵ある意思に基づく処分を行っている。
そして、欺く行為が行為者の債務を免れるためになされており、結果的に債務が免除される結果となる処分行為があれば、それだけで瑕疵ある処分意思であり足りるといえ、その処分を債務者に対して免除させることまでの意識は必要とはいえないと考える。

よって、債務免除のための処分意思までは必要ではなく、客観的に処分行為を行えば債務者が債務を免除されることになれば、錯誤に基づいた処分といえる。

本件は、トイレに行かせていることによって、結果的に債務者に債務が免除されるきっかけを与えている処分行為であるといえる。

もっとも、店主が気付いており債務が免除されるに至っていないため、2項詐欺未遂罪が成立するにとどまる。


2項強盗罪
店主に金を払えと言われており、これを免れるために暴行を加えている。
店主は倒されているのであり、甲の暴行によって店主は反抗抑圧されているため、強盗罪の暴行に当たる。

そして、飲食店での出来事であり、ここで逃げられると店主が後日甲に会うことはまず考えにくいため、債権者たる店主の債権の行使が不可能になる確率が高く、あるいは著しく困難になる。
よって、逃げた時点で債務の支払いが免れたといえ、2項強盗罪が成立する。


暴行罪
後日、甲はたまたま店主と町ですれ違い、店主から代金を請求されている。甲は代金を支払っておらず債務は依然存在する。

そして、甲は債務の支払いを免れる目的で暴行を加えて店主は倒れていることから、店主は反抗抑圧されており、その後甲は逃げたため債務を免れたといえ、暴行罪ではなく、2項強盗罪が成立する。


ここで、先に2項強盗罪が成立したのに、さらに2項強盗罪が成立するのは、同じ財産に対する罪であり二重評価になるとも思えるが、後の暴行は先の暴行とは時間的場所的接着性もなく別個独立した犯罪と考えるべきであり、同一の財産に向けられてはいるが同一に評価できず、2度の2項強盗罪と評価すべきである。財産的価値は一つしか無い点は、量刑で考慮すべきと考える。

もっとも、先の2項詐欺未遂と2項強盗罪とは、時間的場所的接近があること、同一の財産に対して向けられていることから包括一罪と考え、後の2項強盗罪とは併合罪の関係になる。




※2項詐欺罪は処分意思必要説なら犯罪不成立です。
※全部を2項強盗罪の包括一罪とする考えもあると思います。しかし、それは時間的場所的近接性がなく、なぜ別個の犯罪と構成しないのか、財産的価値が同一であれば、別の日に何度暴行をしても一罪になるのかを説明しないといけないと思います。

会社法

2012年10月17日 20時39分07秒 | 商法
会社法では定款記載事項の一つに会社の目的があります。

一方、登記にも目的を登記しなければなりません。


定款は株主総会の特別決議で変更ができます(466条、309条2項11号)。



さて、齟齬が生じた場合に、一方を信じた場合の相手方はどうなるんでしょう?

目的の範囲は広く解するのが判例ですが、それでも解せないぐらいの行為とか。




定款の目的を変更したから、定款を信頼して取引をした。
しかし、登記にはそのような目的は記載なく、目的外の取引であった。

このような場合は、登記が不実記載と考えて、908条2項で保護されるのかな。




では逆は?
登記を変更したから、登記を信頼して取引をした。
しかし、定款にはそのような目的の記載はなく、目的外の取引であった。

このような場合は、908条1項後段で保護されるのでしょうか。


もしそうなら、会社法は定款より登記により決することを重視しているんですかね。

刑法事例

2012年10月16日 22時53分09秒 | 刑法
刑法事例

特に問題集にあるわけではないので、解答もありません。

ただ、後日検討します。




甲は、A宅に侵入し、机の引き出しから現金10万円と銀行のキャッシュカードを盗んだ。

しかし、キャッシュカードの暗証番号がわからず、現金を下ろせなかった。

3日後、Aのblogを発見した。

Aのblogのコメント欄に、
年齢が私と近そうですね。誕生日はいつですか?
と尋ねたところ、
○月○日です。
と返事が返ってきた。

そこで盗んだキャッシュカードをATMに入れてこの誕生日を暗証番号として入れたところ、正しく入力されたと表示されたため、甲の自分の口座に50万円を振り込んだ。


甲の罪責は?

入れ墨

2012年10月16日 01時05分34秒 | 行政法
入れ墨訴訟が提起されたようです。


採用時の信仰等調査事件とか、政党所属調査事件とかが参考になりますね。

後者の事件は、調査は強度でなく、社会的に許容されるから合憲としていましたが今回はどうでしょうか。


入れ墨を入れる自由の保護とこれの回答を強制する自由との争いでしょうか。

市に対して不法行為を争っていますので、プライバシー権の侵害とか、思想・良心の自由とかも問題ですかね。

たぶん、戒告処分は無効になって、損害賠償はもっと少額になるのではないかな。

http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2012101500778


「職員が大阪市を提訴=入れ墨調査は違憲-地裁

 大阪市が市職員を対象に入れ墨調査をした問題で、市が回答を拒否した職員を懲戒処分にしたのは違憲だとして、交通局の男性職員(54)は15日、市を相手に、処分取り消しと500万円の損害賠償を求める訴訟を大阪地裁に起こした。
 入れ墨調査は5月、教職員を除く約3万4000人を対象に実施された。7月の再調査も含め、これまでに114人が入れ墨があると回答。市は8月、回答を拒否し続けた6人を、職務命令違反として、戒告処分とした。
 訴状によると、職員側は、入れ墨調査は私生活上の自由やプライバシー権を侵害する違憲・違法な行為で、処分は無効と主張。回答拒否を続ければ分限免職の可能性もあると脅され、何度も回答を迫られたとしている。職員は入れ墨はしていないという。」

株主総会不存在

2012年10月15日 22時05分02秒 | 商法
取締役の選任決議が不存在の場合に、後の株主総会で新たな取締役を選任する決議をした場合。

無効原因ではなく、不存在になるというのが判例です。



取締役を選任する株主総会が不存在の場合において、この取締役によって構成される取締役会は正当な取締役会とはいえず、かつ、その取締役会で選任された代表取締役も正当に選任されたものではなく、株主総会の招集権限を有しないから、取締役会の招集決定に基づき代表取締役が招集した株主総会で新たな取締役を選任する決議がなされたとしても、その決議はいわゆる全員出席総会としてされたなどの特段の事情がない限り法律上存在しない、株主総会不存在になる。

事例

2012年10月15日 15時10分48秒 | 刑法
※ちょっと修正しました。


甲はパスタ屋に入った。

好物のニンニクの効いたペペロンチーノを頼み食べた。

しかし、財布がないことに気付いた。

トイレの場所を聞いて外にあったらトイレに行く振りをして逃げようと思い、店員にトイレはどこですか?と聞いたら、
『店の外に出て角を曲がったところです。』
と言われたので、トイレに行って来ます、といい、店を出てすぐに逃げた。

しかし、勘定がまだだったので逃げたのに気付いた店主が金を払えと追い掛けて来たので、甲は店主を殴って倒し、逃げた。

後日街で店主にすれ違い、店主に金を払えと詰め寄られたためまた殴って逃げた。

甲の罪責は?




























最初の店主を殴った時に事後強盗罪を検討したなら、失格です。

2項詐欺罪

2012年10月15日 15時00分03秒 | 刑法
2項詐欺罪は複雑です。

対象は財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させたこと。

これは不法な利益ではなく、財産上の利益を不法に取得したことを意味します。


客体は移転性のある利益に限られるが、狭く解する必要はないと思います。

情報やサービスは移転されることはない(提供者から消えない)ので、原則移転性は肯定はできません。

しかし、対価を支払うべき有償のサービスや情報提供にはその余地があります。

被害者は請求できる料金を詐欺により請求できないため、財産上の損害があるし、欺いた行為者にはサービスや情報を不正、不法に取得することによって、その対価として支払うべきであった財産上の利益を不法に取得したといえるからです。

サービスや情報自体ではなく、全体として見る必要があります。



詐欺罪の穴場的存在は、248条の準詐欺罪でしょうか。