大成観光事件のリボン闘争というのがあります。
高級ホテルでの団体交渉において、賃上げ要求をしたが拒否られたため、リボン闘争に入った事案。
この判決では、本件リボン闘争は組合活動であり、争議行為ではないという認定をして、労働組合の正当な行為ではないとしました。
伊藤正巳裁判官の補足意見は、以下のとおり。
リボン闘争すべてが争議行為ではないとはいえないが、一般的にはリボン闘争は争議行為に当たらず、本件も争議行為ではなく組合活動である。
組合活動ととらえた場合に、就業時間中に組合活動を行うことが許されるのか。
一般に、就業時間中の組合活動は、使用者の明示又は黙示の承諾があるか労使慣行として認められているかの場合にのみ許され、職務専念義務に基づくものである。
職務専念義務は、厳しく考えるとすべての活動力を職務に集中し、就業時間中は職務以外のことは一切注意力を向けてはならないとすることは、労働者は全人格的に従属することになり、妥当でない。
そこで、職務専念義務は、労働契約に基づきその職務を誠実に履行しなければならないという義務であり、この義務と両立し、使用者の業務を具体的に阻害することのない行動は、違背しない。
職務専念義務に違背するかどうかは、使用者の業務や労働者の職務の性質、内容、当該行動の態様などを考慮して判断する。
ちょっと長いですが、わかりやすい流れです。
まとめると、
本件リボン闘争は、組合活動か争議行為か?
↓組合活動
就業中行うことは許されるか?
↓職務専念義務に反しないならば許される場合がある
どのような場合か?
↓
労働契約に基づきその職務を誠実に履行しなければならない義務
この義務と両立し、使用者の業務を具体的に阻害することのない行動なら許される。
具体的には、使用者の業務、労働者の職務の性質、内容、当該行動の態様などから判断すべき。
一般的に、リボン闘争は争議行為とはいえないとしても、本件のように団体交渉が決裂したためにリボン闘争に入った場合には、争議行為とみなされる一面もあるのではないでしょうか?
本件が組合活動であって、争議行為ではないというのなら、リボン闘争が争議行為に当たるのはどんな場合なんでしょう?
高級ホテルの従業員が接客時にリボンを着けていたら、客としては嫌だなぁと思います。
客に対してアピールしてもそれは客側としては何の意味もない。
間接的にホテルの名誉や価値を傷付け、それを回避する狙いであって、将来的にもホテルのためにはならない。
客は使用者とはかかわりがなく、ただの被害者的な立場になります。
同じお金を払っているのに、この活動以外に泊まりに来た人は通常の接客だったのに、この活動期間中だったために、リボンを着けた方に接客されるのは納得がいかないでしょう。
自分が客として泊まりに行ったら、今日じゃない日にしてくれよ、とか、客じゃなく幹部と話し合えよ、と思うと思います。
間違ってもがんばれよとは思いません。思う人は同業者でしょう。