ばぶちの仕事しながら司法試験を突破し弁護士になりました

仕事をしながら司法試験に合格したばぶち(babuchi)の試験勉強記録+その後です。

論文刑法過去問平成10年第1問

2007年03月06日 01時12分39秒 | 刑法
ちょっと長いですが、過去問検討

平成10年第1問
「甲は愛人と一緒になるために、病気で療養中の夫Aを、病気を苦にした首吊り自殺を装って殺害する計画を立てた。

そこで甲は、まず、Aに睡眠薬を飲ませ熟睡させることにし、Aが服用する薬を睡眠薬と密かにすり替え、自宅で日中Aの身の回りの世話の補助を頼んでいる乙に対し、Aに渡して帰宅するように指示した。

睡眠薬の常用者である乙は、それが睡眠薬であることを見破り、平素の甲の言動から、その意図を察知したが、Aの乙に対する日頃のひどい扱いに深い恨みを抱いていたため、これに便乗してAの殺害を図り、睡眠薬を増量してAに渡した。

Aは、これを服用し、その症状と相まって死亡した。

Aが服用した睡眠薬は通常は人を死亡させるには至らない量であった。

甲及び乙の罪責を論ぜよ。」



甲の罪責
行為=Aを熟睡させるために睡眠薬を乙に渡した
結果=A死亡

乙にAを熟睡させるために睡眠薬を渡した行為は殺人の実行行為か?

否定

∵実行行為は犯罪結果発生の具体的・現実的危険性を有する行為
→Aを熟睡させる行為はかかる危険性を有する行為ではない

↓よって
殺人予備罪の実行行為あり


結果
Aの死亡


因果関係
#本来、実行行為で殺人罪を否定しているから、これを検討する必要なし。

甲に責任を問えるか?
否定
∵因果関係は折衷説から、乙の行為の介在は一般人が認識し得ない


また、甲が渡した睡眠薬の量は、乙が増量したのでも一般人は致死量にあたらないため、相当少量であるといえ、乙の行為が介在しなければAは死亡しなかったといえる。

よって、殺人の実行行為ない。


さらに
早すぎた構成要件の実現を検討すると

よく例にあるのが、
甲が乙の首を絞め、反抗しえない状態に陥れた後、近くの河に投げ込んで溺死させようと思い、乙の首を絞めたところ、それだけで乙が死亡してしまった場合。

これは、因果関係の錯誤の問題と捉えます。

つまり、実行の着手があることが前提で、その行為により直接結果が発生する必要があると考えます。

とすると、本問甲は殺人の実行の着手があったといえず、さらに甲の予想外の乙の行為が介在しており、直接結果が発生していない。

ということで、早すぎた構成要件の実現はあてはまらない。

∴甲は殺人予備罪

#ここで、殺人予備罪といっても、甲にはAを熟睡させるという傷害の故意もあるといえる
#傷害の実行行為で傷害致死結果が生じたが、致死の因果関係は否定のため、傷害罪というのもありだと思われます。
#傷害致死は結果的加重犯です。
#基本犯たる傷害罪と本件致死との間に相当因果関係あれば重い責任を問えると解します。
#本件において乙の行為の介在がある以上、相当因果関係が遮断されるといえ、傷害罪にとどまると考えます。


乙の罪責
睡眠薬増量の実行行為あり、Aの死亡結果発生。
睡眠薬増量でも通常人は死に至らないが、病弱を認識しており結果発生の認識し得たため、因果関係もあり。
∴乙は殺人罪


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