ばぶちの仕事しながら司法試験を突破し弁護士になりました

仕事をしながら司法試験に合格したばぶち(babuchi)の試験勉強記録+その後です。

承継的共同正犯の難問

2006年07月17日 01時27分50秒 | 刑法
論文本試験一日目受けられた方、お疲れ様でした。明日も頑張って下さい。

刑法をやってます。

承継的共同正犯で難しい問題がありました。簡単に答案書いてみます。

平成3年度第1問
「甲は、Aと喧嘩して同人を木刀で殴打しているところに友人乙が通りかかったので加勢を求めたところ、乙は、角材を手にして甲と共にAを殴打した。その結果、Aは、全身打撲の傷害を負い、内臓破裂により死亡したが、死因となった内蔵破裂が乙の加勢後の殴打によるものかどうかは不明である。甲および乙の罪責につき、反対説に言及しながら自説を述べよ。」

甲の罪責
甲は傷害罪の共同正犯成立
傷害致死罪は?
甲の行為と結果において相当因果関係があるか?
乙の加勢前に内臓破裂→因果関係あり→傷害致死罪
乙の加勢後に内臓破裂→共同正犯の結果的加重犯(傷害罪の共同正犯は肯定)から因果関係あり→傷害致死罪
↓よって
相当因果関係あり
∴傷害致死罪が成立


乙の罪責
甲との傷害罪の共同正犯成立
死亡結果は?

承継的共同正犯
一部実行全部責任の原則は、行為者が互いに意思の連絡の下、行為を相互利用補充し合って犯罪の実現を容易にした点に認められる。
↓とすれば、
反対:否定
×相互利用補充関係あっても常に否定は妥当でない
↓よって
後行者が先行者の行為を認識し、先行者と後行者の互いの行為が相互利用補充関係にあれば承継的共同正犯肯定

乙の加勢前に内臓破裂→因果関係なし
乙の加勢後に内臓破裂→因果関係あり
↓で、
どちらであるか不明なら因果関係否定

また、傷害罪の特例(207条)は、意思の連絡ない場合の規定であり、意思の連絡ある場合は共同正犯で処理すべきであるし、傷害致死罪についての規定がない以上認めるべきでない。

∴乙には傷害罪の共同正犯のみ

*******************************
この問題において、最初に疑問に思ったのは、
部分的犯罪共同説を採るならば異なる共同正犯は認めないはずなのに、なぜ甲が結果的加重犯の共同正犯として認められて、乙は基本犯の共同正犯で良いんだ?
ってことです。

しかし、これは、2つに分ければ良いのではと思いました。

すなわち、
①乙の加勢前に内臓破裂した場合
甲は傷害致死罪の単独正犯
乙は傷害罪の単独正犯
で、両者は傷害罪の限度で共同正犯

②乙の加勢後に内臓破裂した場合
甲は傷害致死罪の共同正犯
乙は傷害致死罪の共同正犯
両者は傷害致死罪の共同正犯

で、甲については傷害致死罪の単独正犯あるいは共同正犯が成立する。

これは刑訴法の過去問でもありましたので、このような判決は認められます。

よって、甲は、傷害致死罪の単独正犯又は共同正犯が成立するでよい気がします。

で、乙は、傷害致死については因果関係がみとめられないから、傷害罪の共同正犯に留まると。

で、実際に①か②かは不明であるから、この状態で終了!
甲と乙の共同正犯についての合致は問題にならないと。


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2 コメント

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平成3年度第1問について (edomonto)
2006-07-26 10:06:18
 非常に難しい問題ですね。

私も、まだしっかりと検討はしてないのですが、感じた点を以下に記します。(たんなる思いつきですので、間違いかもしれません。後日、基本書等で検討した結果を書かせてください)



共同正犯で問擬すると因果関係が不明な以上、承継的共同正犯を認める以外、死の結果を乙に帰責はできない。



 他方、甲・乙「意思の連絡」ない場合は、傷害罪の同時犯となる。そして、この場合、傷害致死罪として両者に死の結果を帰責できることになるはずである。



この不都合を何とか回避する構成を行って欲しい、というのが本問の出題の意図ではないでしょうか。



 不都合というのは、乙に関して「意思の連絡」ある場合の方が、処罰が軽くなってしまうのはバランスを失するのではないか。



 逆に、「意思の連絡」あることで処罰を重くするのであれば、その根拠は何か。行為者の「意思」によって罪責に影響を及ぼしてよいのか。



 この点を、刑法の体系、つまりは違法観(行為無価値なのか、結果無価値なのか)と関連付けて論じてほしい、というのが出題意図ではないでしょうか。

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こんばんは (kuma_pat)
2006-07-27 01:11:24
edomontoさんへ



鋭い分析、ありがとうございます。



もう少し考えると、傷害罪の特例を傷害致死罪まで拡張できるかによって、不都合性があったりなかったりすると思います。



甲乙の意思の連絡がない場合、傷害罪の特例として傷害致死罪まで認める場合には、意思の連絡がある場合の乙の罪責に不均衡が生じますが、特例に傷害致死罪は認めないとすれば、乙の罪責は同じになります。





後者の場合には、意思の連絡ある場合とない場合で、罪責が同じになりますが、量刑の範囲によって考慮できるという構成もあり得そうです。
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