平成28年9月3日(土)京都府助産師会 第2回定期研修会を開催しました!
京都府助産師会では定期研修会の1回は毎年丹後支部中心となって丹後で研修会を開催しています。
今年は、京都府北部唯一の認可NICUを持つ舞鶴医療センターの小児科部長の小松博史先生にご講演いただきました。
参加者は40名。地域の保健師や助産師が主な参加者でした。
小松先生は2006年に舞鶴医療センターに赴任されてから、常に京都府北部の地域医療の事を考えご尽力くださっています。地域のお母さん達からの信頼も厚く、温かい人柄から地域から必要とされている先生です。
今回、「京都府北部、若狭地方小児科医療の現状と展望」というテーマでのご講演をいただき、また、舞鶴医療センターのご協力により新しく建て替わった舞鶴医療センターの新病棟とNICUの見学会を開催しました。
講演会では、小松先生がアンケート調査された「京都府北部地域の周産期医療の現状把握と今後の方向性の検討を目的とした調査」からの結果からの考察をお話いただきました。
(以下内容)
京都府北部、若狭地方(高浜、大飯、小浜周辺)が共通していることは県庁所在地から離れている過疎地であること。そのために、中心都市と違い、医師が不足し、医療施設はうまく散在しているが、小児科はあるが産婦人科は弱い。産婦人科はあるが小児科が弱い。産婦人科も小児科も縮小している。などの偏りがあり、その偏りは現場の努力と施設を超えた連携ででなんとか周産期医療が守られているという状況である。
その中で、周産期医療、小児科医療が守られているのは、舞鶴医療センターのNICUがあるということが重要になっている。NICUがあることで、舞鶴医療センターには小児科医師が6人在住し、(他の病院は福知山市民病院以外2~3人)京都府北部・若狭地方で新生児で人工呼吸器の管理が必要な対象は舞鶴医療センターに搬送される。また、小児科医がそろっていることで、人工呼吸器が必要な重症な子どもや、小児白血病、腎臓病、精神領域の疾患、支援学校登校しながらの療育についてなども舞鶴医療センター小児科でしかできない状況である。
つまり、重傷で長期の治療が必要な子どもは舞鶴医療センターがなければ遠い京阪神地区まで行かなければならないということである。
しかし、その要であるNICUの存続に危機が迫っている。2014年の診療報酬改定に伴う新生児集中治療管理加算の条件追加により、患者数の少ない地方のNICUではその基準に満たず、苦しい運営状況になっている。また、できるだけ母子を分離しない、自宅から近い地域で通院ができるようにという各施設の配慮もあり、すべての対象となる新生児が医療センターNICUに集約できず、各施設の負担も増えている。今後、少子化、過疎化も相まって増々運営が厳しくなってくると思われる。
しかし、NICUがもしもなくなれば、たちまち京都府北部の周産期医療と小児科医療そのものが崩壊し、この地域で安心してお産、子育てができなくなる。
以前は、重傷な妊婦、新生児は舞鶴医療センターの母子センターが周産期サブセンターとして京阪神に搬送しなくてすむための京都府の北の砦として存在していた。しかし、2006年に産婦人科医師が集団退職し、産婦人科は一時休止。その後一人の産婦人科医師が配属されるも、周産期サブセンターの産婦人科の機能は現在舞鶴共済病などの他施設がになっている。そのため、母は出産した病院、子どもは舞鶴医療センターと母子が分離して違う施設で治療を受けなければならない状況がある。
以前から福知山市民病院にNICUをおくという話もあるが、舞鶴に必要だと思う。それは舞鶴医療センターは同じ過疎地域である福井県の若狭地域の搬送も受け入れているから。もしも、舞鶴医療センターのNICUがなくなれはその地域の患者さんは、2時間かけて福知山まではいかない。かといって高速で2時間かかる福井市も遠いということで、車で1.5時間の大津の方へ行くだろう。しかし、大津の方向も山越えという交通事情がある。
搬送された方のアンケートによると、母体搬送(妊娠中での搬送)は安心だが、子どものみの搬送は不安が増えるという結果がでている。妊産婦の安心という側面からも母体搬送が望ましく、京都府北部に母体搬送、新生児搬送ともに1か所で受け入れられる施設を確保するべきと考えられる。
現在は苦肉の策として新生児搬送を医療センターからドクターカーを出して、ベビーを迎えに行く取り組みをしている。地域にも好意的に受け入れられているが、生れたばかりの小さなベビーが長距離の移動を余儀なくされ、母子も分離される不安を想うとさらに周産期医療の集約化が望まれる。
講演の後は活発な意見交換の後、舞鶴医療センター3B病棟のスタッフの方の案内で施設見学をしました。
小松先生も病棟で参加者の質問に丁寧に対応していただきました。
快く講演依頼を受けてくださった小松博史先生、施設提供、施設見学のご協力をいただきました舞鶴医療センターのスタッフの皆様ありがとうございました。