その夜、ミサキは昼のことをヒカルに話していいものか悩んでいた。ノックの音がした。
トントン、トントン、トントントン
同じリズムでもう一度、ノックの音がした。ヒカルだ。ミサキはドアを開けた。静かに微笑むヒカルがいた。ミサキはヒカルの顔を見ると、涙がこぼれそうになった。思わずヒカルの胸に飛び込んだ。ヒカルは少し慌てたが、ミサキを抱きしめると部屋に入った。
いつもの時間が過ぎて、窓の外を眺めているとヒカルは既に寝息を立てていた。ミサキは仕方なく、布団を敷きヒカルを寝かせた。
次の日。
ヒカルが出かけて、洗濯も終わったころ、また、呼び鈴が鳴った。ノックの音がして、インターフォンからヒロムの声がした。
「昨日は驚かせてゴメン、ヒロムです。」
ミサキはドアを開けた。
ヒロムはミサキをすり抜けるようにして奥のリビングに陣取った。
ミサキはインスタントコーヒーをいれ、ヒロムに出した。
「こんな話は「ベース」でしてもいいんだけど、今「ベース」もいろいろあって雑音が多いから、それにヒカルも仕事が忙しいみたいだし、まっ、きみに話を聞きたいんだけど。」
コーヒーに口をつけることなくヒロムは話し出した。
「T会のことはいろいろ調べたんだ。Bが主宰でキリスト教を原典としていることや、その組織が血の階層によってできていること、まー、カルト集団と言うよりも・・・・」
ヒロムはたたみ掛けるように言葉を発した。Bの名前や「血」と言う言葉が出るとミサキはビクンと反応した。ミサキはヒロムの言葉がうねりとなって押し寄せてくるように感じた。気が遠くなりそうだった。ヒロムはそんなミサキに気づき、言葉を止めた。
「あっ、失礼、喋りすぎた。」
ヒロムはミサキの顔を見た。ミサキはヒロムのほうを見ることもできず、震えていた。
「うー、そうじゃなくて、僕は簡単なことを聞きたいだけなんだ。」
ミサキは押し寄せる想念の海で身動きできないでいた。ヒカルはミサキの腕を取った。ハッとしてミサキはヒロムを見た。ヒロムの目がミサキの目の前にあった。
ミサキは、手を振りほどき、少し離れた。
「何を聞きたいんですか。」
「君が何故、T会に入ったか、そのときの状況を教えて欲しいんだ。」
ヒロムはミサキから少し距離を置いて座りなおし、続けた。
「君は昔から宗教に興味があったわけじゃないだろ。」
ミサキはうまく話せなかった。と言うよりも、口がうまく動かなかった。
「あっ、うっ、あっ、」
ミサキは自分がどうなっているのか、気持ちだけが焦り、言葉はどんどん遠のいた。
見かねたヒロムは
「まだ早いか・・・」
そういうとミサキの耳もとに口を近づけ
「また来る。」
と言って腰を上げた。バタンとドアの閉まる音がした。ミサキはしばらく動けなかった。心のなかで何かが崩れていくのを感じた。ヒカルに合いたかった。早く、ヒカルに合いたかった。ドアに這いずるようにして辿り着き、やっとの思いで鍵を閉めた。ミサキがヨロヨロしながらリビングに戻ると、昼の光の眩しい景色が見えた。原色と灰色が際立ち、視界がクルクル回って見えた。目を瞑っても世界は回っていた。止めたくても止められ力で意識が遠のいていくのを感じた。ミサキはそこに座り込んだ。
トントン、トントン、トントントン
同じリズムでもう一度、ノックの音がした。ヒカルだ。ミサキはドアを開けた。静かに微笑むヒカルがいた。ミサキはヒカルの顔を見ると、涙がこぼれそうになった。思わずヒカルの胸に飛び込んだ。ヒカルは少し慌てたが、ミサキを抱きしめると部屋に入った。
いつもの時間が過ぎて、窓の外を眺めているとヒカルは既に寝息を立てていた。ミサキは仕方なく、布団を敷きヒカルを寝かせた。
次の日。
ヒカルが出かけて、洗濯も終わったころ、また、呼び鈴が鳴った。ノックの音がして、インターフォンからヒロムの声がした。
「昨日は驚かせてゴメン、ヒロムです。」
ミサキはドアを開けた。
ヒロムはミサキをすり抜けるようにして奥のリビングに陣取った。
ミサキはインスタントコーヒーをいれ、ヒロムに出した。
「こんな話は「ベース」でしてもいいんだけど、今「ベース」もいろいろあって雑音が多いから、それにヒカルも仕事が忙しいみたいだし、まっ、きみに話を聞きたいんだけど。」
コーヒーに口をつけることなくヒロムは話し出した。
「T会のことはいろいろ調べたんだ。Bが主宰でキリスト教を原典としていることや、その組織が血の階層によってできていること、まー、カルト集団と言うよりも・・・・」
ヒロムはたたみ掛けるように言葉を発した。Bの名前や「血」と言う言葉が出るとミサキはビクンと反応した。ミサキはヒロムの言葉がうねりとなって押し寄せてくるように感じた。気が遠くなりそうだった。ヒロムはそんなミサキに気づき、言葉を止めた。
「あっ、失礼、喋りすぎた。」
ヒロムはミサキの顔を見た。ミサキはヒロムのほうを見ることもできず、震えていた。
「うー、そうじゃなくて、僕は簡単なことを聞きたいだけなんだ。」
ミサキは押し寄せる想念の海で身動きできないでいた。ヒカルはミサキの腕を取った。ハッとしてミサキはヒロムを見た。ヒロムの目がミサキの目の前にあった。
ミサキは、手を振りほどき、少し離れた。
「何を聞きたいんですか。」
「君が何故、T会に入ったか、そのときの状況を教えて欲しいんだ。」
ヒロムはミサキから少し距離を置いて座りなおし、続けた。
「君は昔から宗教に興味があったわけじゃないだろ。」
ミサキはうまく話せなかった。と言うよりも、口がうまく動かなかった。
「あっ、うっ、あっ、」
ミサキは自分がどうなっているのか、気持ちだけが焦り、言葉はどんどん遠のいた。
見かねたヒロムは
「まだ早いか・・・」
そういうとミサキの耳もとに口を近づけ
「また来る。」
と言って腰を上げた。バタンとドアの閉まる音がした。ミサキはしばらく動けなかった。心のなかで何かが崩れていくのを感じた。ヒカルに合いたかった。早く、ヒカルに合いたかった。ドアに這いずるようにして辿り着き、やっとの思いで鍵を閉めた。ミサキがヨロヨロしながらリビングに戻ると、昼の光の眩しい景色が見えた。原色と灰色が際立ち、視界がクルクル回って見えた。目を瞑っても世界は回っていた。止めたくても止められ力で意識が遠のいていくのを感じた。ミサキはそこに座り込んだ。