じっと待った、ヒカル自身が静かに離れるまで、ゆっくりと余韻に浸りながら。身体のすべての毛穴から汗が噴き出していた。二人はもう一度シャワーを浴びて、バスタオルに包まりリビングに移動した。ミサキはヒカルにもたれ掛かり、ヒカルは胸で受け止めた。窓の外を見たままミサキが話し始めた。
「話してもいい。ねえ、話してもいい。」
「何を・・・」
「話さなくちゃって思っていて、機会がなくて。話せなくて」
「どうしたの」
ミサキはヒカルの胸から離れ、振り向くとヒカルの瞳をじっと見つめた。
ヒカルは真直ぐミサキの瞳の奥を見ていた。
「あのね。・・・・・」
ミサキはためらいながら、それでも自分を奮い立たせるようにして言葉に代えていった。
すべてを話すことの罪とすべてを隠すことの罪、どちらの罪が重いのだろう。語り手はその話の中で、いや、話すことで罪から逃れようとする。聞き手は同じ罪を共有しなければならず。また、その罪の重さに耐えなければならない。すべてを隠すことは、隠した本人がその罪を背負うことになる。罪の重さがときに破滅を引き寄せる。
ミサキは嘘はつかなかった。もし、一つでも嘘をついたのなら、その嘘を隠すために、また、嘘をつく。隠すよりも重たい罪が心を汚していく。
ヒカルは今までのことを考えたことがなかった。自然にここにいるような気がしていた。ミサキはヒロムが始めてきたときの事から始まり、ヒロムとの会話の中で「教え」から離れていく自分に恐怖を感じたことも話した。部屋を出て、喫茶店に行ったことも、ヒロムが変容していったことも、会話の中で、自分の生い立ちや寮生活のこと、勧誘の厳しいノルマ、「互いの奉仕」についても、すべてを話尽くした。ヒカルはヒロムの訪問については幾分、ムッとした。ヒカルの知らないことまでヒロムが知ってしまったことにも腹が立った。しかし、ミサキの話を聞いているうちにそのすべてがどうでもいいことのように思えてきた。今、目の前にいるミサキが愛おしいと感じる自分を実感していたから。
ミサキは言葉を止めなかった。
「私はもっとも霊位低い人間だと教えられたの。
だから、神に奉仕して霊位を上げなければならないと言われたわ。
それが生きる使命だとも。
そして、B様の導きで真の配偶者と交わり、連鎖としての生を、高められた霊位の次人を世界に残すことが至福だと。
でも、私はあなたと出合った。
ヒロムさんの言う「偶然の支配」がそうさせたのかもしれない。
人は崇高なる意思と意図を持ち、高められることのみを目指すべき者であり、神の支配のみが真実である。
この道より外れた者は欲獣とかし、欲獣と化した人間は善悪の判断もできず、あらゆるものを食い尽くす。
私の堕落がほんとに「教え」の中の堕落なら、わたしは欲獣になってしまったと思ったの。
それが真実か知りたかった。」
そういうとミサキはテルホに行ったこと、そこで起こったことすべてを話してしまった。
「わたしは解ったの。私はヒカル以外の誰とも堕落できないって」
言葉は残酷なものだ。怒りに似た感情がヒカルを襲った。激しい支配欲と征服欲がヒカルを突き動かした。言い終わったミサキの瞳の奥をじっと見ていたヒカルは、
突然、ミサキを押し倒した。ミサキが見た夢の奇獣が鹿を襲ったときのように柔らかな触れ合いもなく、そのまま突っ込まれた。ミサキは抵抗する事もできず、ヒカルの重さ、怒りの強さを感じた。準備もできていなかった。バスルームの中で感じた融合感もとろけるような感覚もなくただ痛みだけが身体中に響いた。ヒカルは突いた。激しく、さらに激しく突いた。痛みはどんどん増してきた。ミサキはこの痛みに耐えることがヒカルに対する償いなるかもしれないと思った。ヒカルはギリギリと締め付けるようなミサキ自身の中のヒカル自身が何も感じないのに気づいた。虚しさが頭の奥に拡がった。悲しさがヒカルの動きを止めた。ヒカルはミサキの顔を見ていなかった。身体をお越し、ミサキを見ると顔を横に向け、目を瞑り、歯を食い縛っているミサキがいた。ヒカルは自身を抜いて、身体を離し、横たわるミサキの前で正座した。ヒカル自身もヒリヒリと痛かった。
ヒカルの視線はもう一度ミサキに向けられた。無防備に開かれた股からミサキ自身が覗いていた。豊満な胸が少し平たくなっていた。顔は横を向いたままだった。外から差し込む光に涙が光った。ヒカルはミサキを抱き起こした。何もいわず無表情のままで流れる涙をみた。その瞳に口付けずにはいられなかった。ヒカルも泣いた。
「ここを出よう。ここを出て、部屋を探そう。」
そういうとミサキはコクンと肯いた。二人は見つめあった、ヒカルの手がミサキの小さな顔を包み、ミサキの手がヒカルの唇に添えらて、瞳の奥を、その奥の真実を確かめあうように。そして優しい口付けから、もう一度、確かめ合うように二人は愛し合った。
「話してもいい。ねえ、話してもいい。」
「何を・・・」
「話さなくちゃって思っていて、機会がなくて。話せなくて」
「どうしたの」
ミサキはヒカルの胸から離れ、振り向くとヒカルの瞳をじっと見つめた。
ヒカルは真直ぐミサキの瞳の奥を見ていた。
「あのね。・・・・・」
ミサキはためらいながら、それでも自分を奮い立たせるようにして言葉に代えていった。
すべてを話すことの罪とすべてを隠すことの罪、どちらの罪が重いのだろう。語り手はその話の中で、いや、話すことで罪から逃れようとする。聞き手は同じ罪を共有しなければならず。また、その罪の重さに耐えなければならない。すべてを隠すことは、隠した本人がその罪を背負うことになる。罪の重さがときに破滅を引き寄せる。
ミサキは嘘はつかなかった。もし、一つでも嘘をついたのなら、その嘘を隠すために、また、嘘をつく。隠すよりも重たい罪が心を汚していく。
ヒカルは今までのことを考えたことがなかった。自然にここにいるような気がしていた。ミサキはヒロムが始めてきたときの事から始まり、ヒロムとの会話の中で「教え」から離れていく自分に恐怖を感じたことも話した。部屋を出て、喫茶店に行ったことも、ヒロムが変容していったことも、会話の中で、自分の生い立ちや寮生活のこと、勧誘の厳しいノルマ、「互いの奉仕」についても、すべてを話尽くした。ヒカルはヒロムの訪問については幾分、ムッとした。ヒカルの知らないことまでヒロムが知ってしまったことにも腹が立った。しかし、ミサキの話を聞いているうちにそのすべてがどうでもいいことのように思えてきた。今、目の前にいるミサキが愛おしいと感じる自分を実感していたから。
ミサキは言葉を止めなかった。
「私はもっとも霊位低い人間だと教えられたの。
だから、神に奉仕して霊位を上げなければならないと言われたわ。
それが生きる使命だとも。
そして、B様の導きで真の配偶者と交わり、連鎖としての生を、高められた霊位の次人を世界に残すことが至福だと。
でも、私はあなたと出合った。
ヒロムさんの言う「偶然の支配」がそうさせたのかもしれない。
人は崇高なる意思と意図を持ち、高められることのみを目指すべき者であり、神の支配のみが真実である。
この道より外れた者は欲獣とかし、欲獣と化した人間は善悪の判断もできず、あらゆるものを食い尽くす。
私の堕落がほんとに「教え」の中の堕落なら、わたしは欲獣になってしまったと思ったの。
それが真実か知りたかった。」
そういうとミサキはテルホに行ったこと、そこで起こったことすべてを話してしまった。
「わたしは解ったの。私はヒカル以外の誰とも堕落できないって」
言葉は残酷なものだ。怒りに似た感情がヒカルを襲った。激しい支配欲と征服欲がヒカルを突き動かした。言い終わったミサキの瞳の奥をじっと見ていたヒカルは、
突然、ミサキを押し倒した。ミサキが見た夢の奇獣が鹿を襲ったときのように柔らかな触れ合いもなく、そのまま突っ込まれた。ミサキは抵抗する事もできず、ヒカルの重さ、怒りの強さを感じた。準備もできていなかった。バスルームの中で感じた融合感もとろけるような感覚もなくただ痛みだけが身体中に響いた。ヒカルは突いた。激しく、さらに激しく突いた。痛みはどんどん増してきた。ミサキはこの痛みに耐えることがヒカルに対する償いなるかもしれないと思った。ヒカルはギリギリと締め付けるようなミサキ自身の中のヒカル自身が何も感じないのに気づいた。虚しさが頭の奥に拡がった。悲しさがヒカルの動きを止めた。ヒカルはミサキの顔を見ていなかった。身体をお越し、ミサキを見ると顔を横に向け、目を瞑り、歯を食い縛っているミサキがいた。ヒカルは自身を抜いて、身体を離し、横たわるミサキの前で正座した。ヒカル自身もヒリヒリと痛かった。
ヒカルの視線はもう一度ミサキに向けられた。無防備に開かれた股からミサキ自身が覗いていた。豊満な胸が少し平たくなっていた。顔は横を向いたままだった。外から差し込む光に涙が光った。ヒカルはミサキを抱き起こした。何もいわず無表情のままで流れる涙をみた。その瞳に口付けずにはいられなかった。ヒカルも泣いた。
「ここを出よう。ここを出て、部屋を探そう。」
そういうとミサキはコクンと肯いた。二人は見つめあった、ヒカルの手がミサキの小さな顔を包み、ミサキの手がヒカルの唇に添えらて、瞳の奥を、その奥の真実を確かめあうように。そして優しい口付けから、もう一度、確かめ合うように二人は愛し合った。