ヒロムの訪問は続いた。一回の訪問に使う時間は一時間半、話題の作り方は天気の話からはじめ、日常の些細なことで笑い、徐々に本論に近づく。紳士的に振舞うヒロムにミサキも好感を持ち、会話は続いた。しかし、話がT会の話になるとミサキは表情が曇り、口が重くなった。ヒロムは無理に聞くことはなく、かさぶたをゆっくりはがすように細心の注意を払った。初めのときとは違い、B氏を否定的に表現することなくヒロムはミサキの心に迫った、T会の戦略を理解するために。
ミサキとの会話の中でたびたび出てくるフレーズがあった。
「私はもっとも霊位が低いから・・・・」
「何故って、人間は霊位を高めるために生まれてきたのだから・・・・」
「れいい」と言う言葉の意味が解らなかった。
「B氏の教えは素晴らしいと思う。けれど、一つ、質問をさせて欲しいんだけど、{れいい}ってなに。」
そう、聞いた時、ミサキはヒロムの顔を見返した。その意味を聞かれるとは思わなかったという顔をした。会話に詰まると二人は席を立った。無理をしない。ヒロムは決めていた。次の日か、その次の日、ヒロムは呼び鈴を押した。
話を続けるうちにミサキは、自分が何をしているのか、と考えるようになってきた。会話の中で自分に気づき始めることは恐怖もあった。カウンセリングのような会話がミサキを少しづつ開放していった。それは情熱的な行動に出た自分と対面することにもなった。
その日はミサキから丁寧に話し出した。
「人間は神の次の存在なのです。世界は神によって造られました。そのときから、魂の数、霊の数は決まっていたのです。神の下に人間がいて人間が生きるためにすべての生き物が造られました。人間はその霊位を神に近づけることが最大の使命なのです。神に近づき神のお役に立つことが、最上の至福なのです。神は人間を高めるために悪をも御造りになりました。悪は人の心に住み着き、神から離れようとしたのです。人は無垢なる生命から傲慢な生き物に変わってしまいました。神は悲しみと怒りを覚え、その人の心の美しさに応じて言葉も肌の色も別々にしてしまわれたのです。」
ミサキは水を飲み、息をつき、だんだん興奮していく自分を抑えながら、続けた。
「そうした神の仕打ちに人間が気づき、悔い改めたなら、人間は浄化の道には入れたのです。神が思うよりも人も心は弱く、悪に支配されていきました。そして、神が与えてくださったすべてのものを自分で支配できると思うようになったのです。人間の数が増えることによって、その他の生き物の数が減りました。その霊が入るための生き物の数が足りなくなり、人の体に他の生き物の霊が入り込んできたのです。かれらは神の庇護の下では無垢なる生き物でした。しかし、人の体を得ることでケダモノに変わってしまったのです。そうした霊位の低いものが、上位のものと性的関係を持ち、血は汚れ、世界は滅びの道に向かい始めたのです。それを正し、浄化の道にいざなうのが神の声を聞くことができるB様なのです。」
ミサキとの会話の中でたびたび出てくるフレーズがあった。
「私はもっとも霊位が低いから・・・・」
「何故って、人間は霊位を高めるために生まれてきたのだから・・・・」
「れいい」と言う言葉の意味が解らなかった。
「B氏の教えは素晴らしいと思う。けれど、一つ、質問をさせて欲しいんだけど、{れいい}ってなに。」
そう、聞いた時、ミサキはヒロムの顔を見返した。その意味を聞かれるとは思わなかったという顔をした。会話に詰まると二人は席を立った。無理をしない。ヒロムは決めていた。次の日か、その次の日、ヒロムは呼び鈴を押した。
話を続けるうちにミサキは、自分が何をしているのか、と考えるようになってきた。会話の中で自分に気づき始めることは恐怖もあった。カウンセリングのような会話がミサキを少しづつ開放していった。それは情熱的な行動に出た自分と対面することにもなった。
その日はミサキから丁寧に話し出した。
「人間は神の次の存在なのです。世界は神によって造られました。そのときから、魂の数、霊の数は決まっていたのです。神の下に人間がいて人間が生きるためにすべての生き物が造られました。人間はその霊位を神に近づけることが最大の使命なのです。神に近づき神のお役に立つことが、最上の至福なのです。神は人間を高めるために悪をも御造りになりました。悪は人の心に住み着き、神から離れようとしたのです。人は無垢なる生命から傲慢な生き物に変わってしまいました。神は悲しみと怒りを覚え、その人の心の美しさに応じて言葉も肌の色も別々にしてしまわれたのです。」
ミサキは水を飲み、息をつき、だんだん興奮していく自分を抑えながら、続けた。
「そうした神の仕打ちに人間が気づき、悔い改めたなら、人間は浄化の道には入れたのです。神が思うよりも人も心は弱く、悪に支配されていきました。そして、神が与えてくださったすべてのものを自分で支配できると思うようになったのです。人間の数が増えることによって、その他の生き物の数が減りました。その霊が入るための生き物の数が足りなくなり、人の体に他の生き物の霊が入り込んできたのです。かれらは神の庇護の下では無垢なる生き物でした。しかし、人の体を得ることでケダモノに変わってしまったのです。そうした霊位の低いものが、上位のものと性的関係を持ち、血は汚れ、世界は滅びの道に向かい始めたのです。それを正し、浄化の道にいざなうのが神の声を聞くことができるB様なのです。」