仁、そして、皆へ

そこから 聞こえる声
そして 今

鍵を返せば済むことさⅤ

2008年09月01日 16時27分22秒 | Weblog
ヒデオがアキコの顎に手を掛けた。アキコが身をねじるよう格好になってキッスをした。唇を離すと
「ハハ、酔っ払っちゃたー。」
と言うとヒデオに抱きついた。床に倒れ込むように二人は重なった。アキコは耳もとで囁くように言った。
「でもね。「ベース」のセクスはほんとに違ったの。セクスって感じがしなかった。痛くないし、するって言うよりも空気の中を漂うような感じだったなー。誰って解らないから、優しくできたのかな。でもー、不思議なんだよぉ。初めのころからいるのに仁と交わったことはなかった。だから、ヒトミとマサミがいいナーなんて。」
仁と言う言葉にヒデオが反応したような気がした。
「ヒデオも・・・・」
アキコは顔を上げてヒデオの表情を見ようとした。薄暗くて表情などわからないんのだが、ヒデオは顔を横に倒した。
「フフッ、でもいいか。いろんなことが関係なったモンネ。」
ヒデオが顔を戻した。アキコは優しい目で見ていた。
「今の「ベース」より言葉のないころのほうが好きだったなぁー」
アキコはヒデオの脇をくすぐった。ヒデオは突然の行為に驚き、身体を起こした。子供のような顔があった。ヒデオもにっと笑った。身構えるアキコを捕まえた。イヤイヤをするように抵抗をするアキコ。そうしながらも身体を密着させ、二人は抱き合った。アキコの話が終わると寡黙なヒデオに戻っていた。左手はアキコを抱いたまま、ヒデオは右手で二つのグラスを指に挟んで取った。アキコは口を突き出して、ターキーを舐めた。ヒデオもジンを舐めた。少し離れて一気に飲んだ。ヒデオが腰を上げた。
「今日、ヒデオの部屋に行こうかなー。」
ヒデオはいたずらっぽい目でアキコを見た。アキコはヒデオの腕にしがみ付いた。

 二人は店を出た。ホテル街のほうには行かず、駅に向かった。アキコはヒデオの腕に絡まりながら言った。
「もう、いいのかもね。「ベース」はヒロムを中心に動いているし、私たちが行っても行かなくても・・・・」
ヒデオは何も言わなかった。
「わたしたちが流れ着いたように、今の「ベース」が必要な人間が「ベース」に辿り着くのかもよ。」
ヒデオの顔が一瞬、曇ったようにアキコは感じた。
「仁、仁の造る空気が続くのなら・・・・」
アキコの言葉もそこで途切れた。アキコはヒデオにくっ付いた。ヒデオもアキコを抱き寄せた。