アキコはヒデオがいつもと違うと感じていた。言葉が多かった。あんなことを言葉に出すことはなかった。仁のことが・・・・・。二人は共通のショックを受けていた。
五反田のヒデオの部屋は一度、一階から二階に引越しただけで同じ場所にあった。部屋の前でアキコを降ろし、ヒデオは車を駐車場に入れに行った。アキコは郵便受けから鍵を取り出し、部屋に入った。広いとはけして言えない部屋。が、機能的に整理された部屋。アキコは靴を脱いで、自分部屋ではけしてしないのだが、ヒデオの自作の靴箱の開いているところに入れた。ドアの横のスイッチをいれて、部屋を明るくした。階段を一つ飛ばしで駆け上がるヒデオの足音がした。アキコはドアを開けた。ヒデオはアキコを見た。アキコも笑顔でヒデオを見ていた。ヒデオが玄関に入るとアキコは一歩ひいて待った。スニーカーを脱ぎ、下駄箱にいれ、ガラ袋にくるまった洗濯ものを洗濯用のケースに入れると明日用の着替えをその横のカラーボックスにから取り、ガラ袋に入れた。あまりにスムーズに進む、その光景を、けして、初めてというわけではなかったが、アキコは見とれた。ヒデオはハッとアキコに気付き振り向いた。
「座っていてよ。」
「ヒデオ、凄いね。」
「なにが・・。」
「ううん。」
アキコは振り向くと、奥の部屋のテーブルの前に座った。ヒデオはグラスを二つ持ち、さらに、ターキーとジンのボトルを指の間に挟んでアキコの座っているテーブルに運んだ。ヒデオがテーブルに置くと、アキコがポツンと言った。
「あたしって気が利かないね。」
返事はないがヒデオは笑顔でアキコと見ていた。
「ヒデオ、どうして、こんなに綺麗にしていられるの。」
「職業病かな。」
冗談ぽくヒデオが言った。
「オレの親方、年寄りでさ、凄くうるさかったんだよ。道具の整理とかさー。掃除とかさ。最初は説明なしに汚いと殴られた。車の荷台とかさ、どの道具がどこにあるのがいいか。わかんないときでもできてないと殴るんだよ。それが染み付いて、部屋もこんなのになっちゃった。」
「そう、仕事場は綺麗にできるけど・・・・自分の部屋までは無理ね、私は。」
ヒデオはアキコのグラスにターキーを自分のグラスにジンを注いだ。
「氷、いる。」
そういうが早いか、ヒデオは立ち上がっていた。アキコは酒造会社のマークの入ったグラスを見ていた。氷を丼に入れ、柿の種をパンメーカーのマークの入ったさらに盛り、ヒデオが来た。
「ヒデオ、今日よく話すね。」
アキコがそう言うとヒデオの表情が曇った。
氷をグラスに落とし、何も言わず二人はグラスを鳴らした、柔らかい微笑を添えながら。
五反田のヒデオの部屋は一度、一階から二階に引越しただけで同じ場所にあった。部屋の前でアキコを降ろし、ヒデオは車を駐車場に入れに行った。アキコは郵便受けから鍵を取り出し、部屋に入った。広いとはけして言えない部屋。が、機能的に整理された部屋。アキコは靴を脱いで、自分部屋ではけしてしないのだが、ヒデオの自作の靴箱の開いているところに入れた。ドアの横のスイッチをいれて、部屋を明るくした。階段を一つ飛ばしで駆け上がるヒデオの足音がした。アキコはドアを開けた。ヒデオはアキコを見た。アキコも笑顔でヒデオを見ていた。ヒデオが玄関に入るとアキコは一歩ひいて待った。スニーカーを脱ぎ、下駄箱にいれ、ガラ袋にくるまった洗濯ものを洗濯用のケースに入れると明日用の着替えをその横のカラーボックスにから取り、ガラ袋に入れた。あまりにスムーズに進む、その光景を、けして、初めてというわけではなかったが、アキコは見とれた。ヒデオはハッとアキコに気付き振り向いた。
「座っていてよ。」
「ヒデオ、凄いね。」
「なにが・・。」
「ううん。」
アキコは振り向くと、奥の部屋のテーブルの前に座った。ヒデオはグラスを二つ持ち、さらに、ターキーとジンのボトルを指の間に挟んでアキコの座っているテーブルに運んだ。ヒデオがテーブルに置くと、アキコがポツンと言った。
「あたしって気が利かないね。」
返事はないがヒデオは笑顔でアキコと見ていた。
「ヒデオ、どうして、こんなに綺麗にしていられるの。」
「職業病かな。」
冗談ぽくヒデオが言った。
「オレの親方、年寄りでさ、凄くうるさかったんだよ。道具の整理とかさー。掃除とかさ。最初は説明なしに汚いと殴られた。車の荷台とかさ、どの道具がどこにあるのがいいか。わかんないときでもできてないと殴るんだよ。それが染み付いて、部屋もこんなのになっちゃった。」
「そう、仕事場は綺麗にできるけど・・・・自分の部屋までは無理ね、私は。」
ヒデオはアキコのグラスにターキーを自分のグラスにジンを注いだ。
「氷、いる。」
そういうが早いか、ヒデオは立ち上がっていた。アキコは酒造会社のマークの入ったグラスを見ていた。氷を丼に入れ、柿の種をパンメーカーのマークの入ったさらに盛り、ヒデオが来た。
「ヒデオ、今日よく話すね。」
アキコがそう言うとヒデオの表情が曇った。
氷をグラスに落とし、何も言わず二人はグラスを鳴らした、柔らかい微笑を添えながら。