数学を気嫌いする人の気持ちはよく理解できる。実は私も、その1人であった。いや、今も”数学”という学問を嫌ってる不特定多数の1人なのかもしれない。
しかし、数学を多面的に捉えると、繋がってない筈の世界が繋がっている。或いは、深層的にググると見えないものが見えてくるのも不思議である。
物理学がそうである様に、数学の世界もあらゆる領域へ手を広げ、見えない世界の領域へと踏み込んでいく。
一方で同じ数学でも、純粋数学から眺めた数学と応用数学から眺めた数学では、その景色は全く異なって見える筈だ。
元々数学とは、算術(数論)・代数学・幾何学・解析学・微積分学などの分野から成り立つ、”数・量・図形などに関する学問”である。
特に純粋数学は、主に代数学・幾何学・解析学の3分野に大別される。因みに私が好きなのは(関数)解析で、大の苦手は代数学。これで数学アレルギーになり、大学を留年した程である。また、幾何学は(絵が得意だったので)スンナリいけるかなと高を括ってたが、次元の高い領域となるとイメージするのが困難で、これも頓挫してしまった。
つまり、数学の三本柱のニつがダメなのだから、数学が嫌になるのも無理はない。
数学という膨大なる学問の領域
因みに、得意な解析学とはいっても、数学基礎論と数理論理学に、数論(自然数論、整数論、実数論、複素数論)に集合論(素朴&公理系)、そして関数論(連続関数、初等関数、特殊関数)に級数論に微積分額、リーマン予想で有名な複素解析論など、数多くの分野がある。
一方で苦手な代数学には、半群論・群論・可換環論・代数幾何学・環論・体論・線型代数学・多元環論・リー環論・表現論・ホモロジー代数・束論・圏論に、デイリクレで有名な代数的整数論(解析的整数論)などがある。
厳密に言えばもっとあるが、これら全ての分野を理解する数学者は(当たり前の事だが)一人もいないとされる。
ウィキで少し調べただけでも、これだけの膨大なる数学の領域が存在する訳で、既に私の背筋は凍り付きそうになるが、その他にも、便宜上の区分として、集合論・情報科学・確率論・統計学・論理学などがある。
ところで、今私が一番期待してる”応用数学”だが、明確な合意がある訳でもない。
歴史的にみれば、応用数学はニュートン力学に端を発し、19世紀中頃までは応用数学と物理学の間に明確な区別は存在しなかった。
この頃の応用数学は、応用解析である微分方程式論や(表現論・漸近展開・変分法・数値解析を含む領域としての)近似理論や確率論の応用から成り立っていた。
元々数学の応用分野は、自然科学や工学が大半だったが、近年では経済学的考察からゲーム理論が、脳神経科学の研究からニューロンネットワークの理論が生まれ、この様に、数学の外部から新たな数学の領域が次々と生まれていく。
一方で、コンピュータの出現は計算機科学の分野を生み出し、組合せ論・数理論理学・束論・圏論などの数学が応用される。こうしたコンピュータを利用した応用数学には計算科学や数値解析などがある。また、統計的手続きの確率論は数理統計学と呼ばれ、社会科学や人文科学にて、統計学が解析の手段として広く用いられる。
以上をまとめると、応用数学の分野には、数値解析(精度保証数値計算・数値線形代数・常微分及び偏微分方程式の数値解法)、計算機援用証明、グラフ理論、アルゴリズム、組合せ論、最適化問題、オペレーションズリサーチ、制御理論、複雑系、力学系、情報理論、暗号理論、機械学習、時系列解析、統計数学、金融工学、数理ファイナンス、保険数学、ゲーム理論などがある。
この様に、一概に数学という言葉を安易に使っては、数学を専門にするプロフェッショナルに失礼だが、私は迂闊にも数学という言葉を平気で使う悪い癖がある。
故に、私みたいな素人数学者が眺める数学と、数学を職業にする教授や博士らが眺める数学とは大きくかけ離れてる事になる。
欧米には多くの数学ジャーナリストが存在する。が故に、数学というものが日常的に浸透しやすいが、日本ではプロの数学者が数学ジャーナリストを兼ねるから、どうしても数学は堅苦しく理屈っぽく、日常に馴染みにくい。
つまり、数学と一言で言っても、言い表せないのが数学でもある。
しかし、そんな深く広い領域に蔓延する数学が、アイドルやスポーツみたいにお茶の間の学問になる時代が来るのだろうか?
「結び目理論」とは
そんな中、NHKでは「笑わない数学」が地上波で配信されている。
とても画期的な試みだが、私も見たり見なかったりで、昨年の3月から始まったシーズン1(全12話)の放送を終え、約1年ほどのブランクを経て、今年の9月からはシーズン2へと突入した。
因みに、シーズン1は「素数」「無限」「四食問題」「P対NP問題」「ポアンカレ予想」「虚数」「フェルマーの最終定理」「カオス理論」「暗号理論」「abc予想」「確率論」「ガロア理論」の全12話がNHKのサイトでは、その再放送を動画で振り返る事が出来る。
シーズン2は「非ユークリッド幾何学」に始まり、「小ラッツ予想」「1+1=2」「結び目理論」「超越数」と続く。
少し偉そうな言い方になるが、「カオス理論」と「結び目理論」を除いては、私の数学ブログでも紹介してるので、(多分いないとは思うが)参考にして頂ければ有り難く思う。
因みに、「結び目理論」とは、物理学の「超弦(ひも)理論」と混同されがちだが、”ひも”にできた結び目を位相(多様体の貫通穴の数)で分類し、研究する数学の一分野(位相幾何学=トポロジー)である。
具体的には、様々な結び目の絡まり方を数式で書き表して分類し、最終的には”全ての結び目を記述できる”様な統一的理論を見つけ出す事を目指す。
この理論は(以下でも述べますが)、”あらゆる物質は原子よりもずっと小さな極小の紐(弦)でできている”という「超弦(ひも)理論」の統一理論に、(統一論という点では)よく似ている。
こうした数学者が頭の中で考え出した遊び(と言ったら失礼だが)の様な研究は20世紀に大発展を遂げる。ところが、その数学理論が宇宙法則と関係していたのだ
数学は数学者の”発明”か?それとも人類とは無関係に宇宙に存在し、それを数学者が”発見”しただけなのか?
これは”神は発明か?発見か?”とみなせばわかり易いが、答えはそうかもしれないし、そうでないかもしれない。
つまり数学という学問は、人類が誕生する前から、既に宇宙という神秘の世界へと足を踏み入れてたのであろう。事実、万有引力(重力)は恐竜の時代にも存在した筈だし、重力なくしては地球は誕生しなかった。だが一方で、数学なくしては重力を解明する事は不可能である。
つまり、こうした絡まった複雑な謎を解く為に数学が存在し、我ら人類は自ら編み出した数式や公式を使って、これら難題を解き明かしてきた。
以下、「靴紐からDNAまで、絡まった紐を解きほぐす”結び目理論”で広がる世界」より大まかに纏めます。
トポロジー(位相幾何学)とは”形を連続して変形させたものは同じものとみなす”とのルールの元で様々な形(多様体)の持つ性質を数学的に研究する分野である。
”コーヒーカップとドーナツは同じだ”という例が有名だが、どちらも貫通穴が1つだけで、トポロジーでは同じモノとみなす。
同様に、「結び目理論」でも、輪っか状になった紐の様々な”絡まり方”を数式で記述し、トポロジーの世界で分類する。
例えば、ご祝儀袋についてる”水引”の様に紐が複雑に絡まってるとする。途中で切る事なく、紐をたぐり動かすだけでシンプルな輪っかの状態に戻るものを数学的に”絡まっていない”状態と呼び、逆に、いくら動かしてもどこかが引っかかり絶対に解けないものを数学的に”絡まっている”状態と呼ぶ。
一見、複雑に絡まってる紐が(数学的な意味で)絡まってるかどうかを知るには、見た目で判断する事は困難だが、「結び目理論」を使えば、複雑な紐の状態を数式に書き表し、それを解く事で紐がどの様に絡まってるのか?或いは絡まっていないのか?を確かめる事ができる。
この様に、結び目が絡まってるかどうかは、数式を見る事で知る事が出来るが、結び目には無数のバリエーションがあり、既に知られてる数式を全部もってしても、全ての結び目を完全に記述する事は出来ないとされる。
つまり、最終的には全てのの結び目を記述できる様な統一的理論を見つける為に、この「結び目理論」が生まれたと言っていい。
実際に、生物学にでは「結び目理論」を使ってDNAやタンパク質といった紐状の構造を分析する研究が既になされ、工学では分子を紐状に繋いだポリマーの構造に、この理論を応用する研究が進められている。
「超弦(ひも)理論」とは?
「博士を殺した数式」(ノヴァ・ジェイコブス著、高黒ひろ訳)では、「超弦(ひも)理論」が登場する。
このシーンを以下に一部抜粋する。
”素粒子物理学、つまり「超弦理論」の本質はアイザックの非常に確固とした計量可能な数学の世界とは全く違った。カオス理論の不透明な深みで、父は規則性や均一性やパターンを見受けていた。
彼のモットーは、”宇宙は全てを知り得る”だが、理論物理学者の息子フィリップは”宇宙は知り得るが、それはある程度まで”であり、”全てが宇宙が誕生した時に決められた訳ではない”と唱えた。
事実、父の世界と決定論への恐怖が素粒子物理学を目指した理由の1つでもあった。
つまり、不確実に支えられた宇宙には安全性があり、そこでは素粒子は気まぐれで不規則で奇妙である。その現実では少なくとも、驚いたり、決めたり、誤りを直す余地があるからだ・・・”
確かに、計量による規則性を追い求める数学と、不規則な世界から新しい何かを見出す物理学の違いと言えば、それまでかもしれない。
「超ひも理論」とは、(前述の様に)”あらゆる物質は極小の紐(弦)でできてる”という考え方で、”ひもがぶつかり、くっついたりする事で様々な自然界の現象が引きおこされる”という説である。
この理論は、1960年代後半に南部陽一郎により、その原型がつくられ、今なお完成していない仮説である。しかし、この理論が完成すれば、宇宙の始まりを計算でき、宇宙の根本原理が解明されるかもしれないという。
例えば、物質を拡大すると素粒子に行き着くが、その素粒子の正体は細長い”ひも”であるとする。一方で、素粒子の大きさはゼロとされるが、発見されてる素粒子は全部で17種類で、この素粒子にはパートナーとなる影の素粒子(ひも)が存在する。
つまり、ひもの振動の違いで色んな素粒子が生まれるが故に、超高速で振動するひもが物質をつくるとされる。
自然界は、①素粒子間の電磁気力②ミクロな世界で顔を出す弱い力③原子核を崩壊させる強い力④輪っか状のひもが伝える重力の、僅か4つの力でできている。故に、力の正体はひもが切れたりくっついたりする時に生まれるものなのかもしれない。
以下、「この世界は10次元だったのか?」から大まかに纏めます。
一方で、素粒子とは一体どんな形をしてるのか?
普通は粒子という言葉から、点のような小さな球状の粒と想像する。例えば、”光は粒子か波か”という議論がなされてきたが、様々な理論や実験や検証の末”粒子と波の両方の性質を持つ”事が判った。
そこに、”実はひもの形をしてる”という超弦(ひも)理論の仮説が加わった。事実、量子の世界では、常識では説明できない様な不思議な現象が起こるが、それを説明するに、単純な形の”粒”よりも、複雑な形状を持つ(情報量を多く持つ)”ひも”の方が都合がよいと考えられたのである。
上述の様に、自然界には重力・電磁気力・強い力・弱い力の4つの力が働く。重力と電磁気力は我らにも馴染みがあるが、強い力と弱い力は原子の様なミクロな世界で働く。いずれにせよ、この4つの力にこの宇宙は支配されている。
しかし、宇宙が生まれた時は1つの力だけが存在し、ビッグバン膨張により宇宙が広がり温度が冷えるにつれ、分離して4つの力となり、現在に至ったと考えられている。
そこで、元々1つであったという事は、”4つの力をまとめて説明できる1つの理論があるのではないか”という研究が始まった。
その理論には幾つかの仮説が挙げられるが、中でも超ひも理論は最有力な説と見られている。
最初は、電磁気力と弱い力を統一するというものだったが、「電弱理論」と呼ばれる理論は既に完成している。更に、強い力を含めて3つの力を統一する「大統一理論」は、完成に達してないが、ある程度までは研究が進んでいる。
最後に〜重力の壁と”笑えない”謎
しかし、4つ全てを統一する「超大統一理論」の研究には困難が待っていた。
その大きな壁こそが重力である。私達の目に見える世界での重力の法則は「相対性理論」で説明でき、素粒子のようなミクロな世界の法則は「量子論」で説明できるが、この2つの理論を合わせると、矛盾が生じる。
が、”全ての素粒子はひもである”と仮定すると、それがクリアできる可能性が見いだされた。故に、「超ひも理論」は相対性理論と量子力学を繋ぐ理論ともいえる。
例えば、ギターやバイオリンなどの弦楽器は、弦というひもの振動で音を鳴らすが、弦の長さや振動で音の種類や大きさに違いが生まれる。これが、ひもの形や振動により、様々な素粒子や力が生まれる「超弦(ひも)理論」の例えに使われている。
一方、「超ひも理論」により新たな謎も生まれた。それは”私達の世界は縦・横・高さの3次元空間ではない”かもしれないという事。というのも”この世界が4次元時空間では、超ひも理論と矛盾する。つまり、10次元または11次元の時空間でないか”と考えられたからだ。
では、私達が認識できない残りの次元はどうなっているのか?
”ビッグバン膨張で大きく広がったのは私たちが認識できる3つの次元だけで、残りの次元は小さいままなのではないか?”とか”「カラビ・ヤウ多様体」という小さくて奇妙なものに閉じ込められているのではないか?”などが考えれている。
世界には4つの力があるとされるが、その1つである電磁気力はかつて”電気と磁気という2つの異なる力”と考えられていた。しかし、19世紀にマクスウェルが”電気と磁気は同じものである”と証明した。
”電気と磁気が同じ”と聞かされても、”だから何?”と思うだろう。だが、その証明から電気工学やエレクトロニクスが大いに進歩し、私たちが電化製品を利用できるのもマクスウェルの研究の恩恵なのだ
しかし、マクスウェルの生きていた時代には、今の時代の様に電化製品に囲まれた生活が送れるとは誰も想像していなかった。
一方で、原子力エネルギー(核分裂エネルギー)も強い力の研究から生まれたもので、今ではクリーンな核融合エネルギーも実用化に向け研究が進められている。これらは基礎的な理論が確立されたからこそ生まれたテクノロジーなのである。
また統一理論は全宇宙で働く力の研究でもあり、相対性理論では扱えないブラックホールの内部や宇宙誕生直後の解明へと繋がる可能性も秘めている。
以上、長々と引用&説明しましたが、あまりにも抽象的すぎて理解に苦しむ所も多々ありますね。
まるで、理論と妄想の間で彷徨う仮説にも思えなくもないんですが、ここまで来るとまさに、笑わせたくても”笑わない”数学とも言える。
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