昨日の”ABC予想(前半)”では、「ABC予想」の概要と京都大学数理解析研究所教授の望月新一氏のABC予想を証明したとする論文の発表の概要について述べました。
しかし昨日、”IUT理論”を補足したら、前半部が異常なまでに長くなり読み難くなったので、ABC予想の中核をなす"宇宙際タイヒミュラー理論(IUT理論)"の簡単な紹介をここで述べたいと思います。
因みに参考図書は、「宇宙と宇宙をつなぐ数学」(加藤文元著 角川書店)です。望月氏の論文の中でも一番難しく、抽象的な所なので、まともに理解しようとすると頭がおかしくなりますね。
そもそも、IUT理論とは
宇宙際タイヒミュラー理論、つまりIUT理論とは、”Inter-universal Teichmüller Theory"の事です。オズワルド•タイヒミュラー(1913-1943)とは、ドイツの数学者で”タイヒミュラー空間論”で有名です。
このIUT理論を簡潔に言えば、掛け算と足し算を分離する為に、”環”の概念ベースにした理論です。因みに、”環”に関しては「群と体と環の関係」を参照です。
このABC予想自体は、素数や素因数分解を知ってれば簡単に理解できますが。ABC予想内の自然数の足し算的性質と素因数分解の掛け算的性質との組合せが証明を困難にしています。
この掛け算の世界と足し算の世界を分離する為に、2つの数学的舞台(宇宙)を考えるとあります。
そこで具体的には、足し算と掛け算が持つ”正則構造”を一旦分解(p進タイヒミュラー理論=正則構造変換)し、足し算を固定し、掛け算だけを"伸び縮み"(タイヒミュラー変形)させるんですが。これは1つの舞台では実現出来ず、もう1つの舞台が必要です。
この2つの舞台には情報共有(データリンク)が必要で、これを対称性の群(環)を用いた通信で対処します。故にIUT理論の肝とは、この”群を用いた対称性通信で2つの舞台の壁を越える”事ですね。
データ復元の手段として”遠アーベル幾何学”(複雑な群により図形を復元)を援用するが、群の言葉に翻訳された対象を復元する際に”ひずみ”生じます。
つまり、この2つ世界の対称性通信によって生じる不定数やひずみを元の世界に戻し、定量的に計測•評価する事で不等式を導き、正解を出すという新構造こそがIUT理論なのです。
判り易く言えば、”堅苦しい世界の”整数論を対称性の群(環)を繋ぎにし、”抽象的な世界の”代数学と結びつけ、2つの世界間で生じる誤差を量で表し、答えを導くんですが。
この夢の様な奇抜な理論を世界の数学者はどう見るんでしょうか?
一見、ロマンにも映る新理論ですが、”数学における通信の意味及び群が2つの数学を自在に行き来できる理由の説明が、大幅に欠如してる”との指摘もある。
これこそが、IUT理論が良い意味で飛躍してると称賛され、悪い意味では理解不能とされます。”一部には説得力がない”との声も聞かれますが。
勿論、「宇宙と宇宙をつなぐ数学」の著者である加藤教授は”ガロアやリーマンに匹敵する理論”とベタ褒めですが、どうなる事やらです。
以上、寄せられたコメントを元に補足しました。
IUT理論の外郭は何とか理解できましたが、これを数学的に証明する事は可能なんでしょうか。あまりにも抽象的過ぎて、どう評価していいか迷います。
でもお陰様で勉強になります。
何だか書いてて怪しそうな気もしなくもないですが、難解なのか?突飛なだけなのか?判断に迷いますね。
でも日本人として完全証明がなされる事を願いたいです。
京都大学数理解析研究所のHPではこんな風に紹介されてた。結局は 楕円曲線の上で定義されたテータ関数を従来の”アーベル系”の視点とは決定的に異なる”遠アーベル的”な視点で扱う「ホッジ•アラケロフ理論」の研究が大きく進展し、IUT理論に寄与してるという事か。
後は転んだクン、上手くまとめてくれ給え。
知るほどに望月教授の大ファンになりそうです。遠アーベル幾何からP進アーベル幾何なんて、ゼータ関数の拡張と全く同じ流れですね。
タイヒミュラー幾何からP進タイヒミュラー、楕円関数のテータ関数におけるホッジ•アラケロフ理論の寄与なんて何だか出来過ぎですよね。
ざっと述べただけで、アーベル、ヤコビ、ガロア、リーマンの名前が思い浮かぶんですから。
つまり、望月教授が目指すIUT理論とは、19世紀の偉大な数学者の基盤の上で成り立つ夢の数体論なんでしょうか。
何だか、頭の中が”環”の中でグルグルと回りそうです(^^)
貴重なコメント有難いです。