延々と続くコロナ渦にも度重なる緊急事態宣言にも殆どウツになる事はなかったし、自粛もマスクもワクチンにも全く混乱する事も動揺する事もなかった。
つまり、当り前の様に普通の生活が出来ていた。
しかし今回のウクライナ紛争(危機)には、流石にウツになりつつある。
ミステリーやサスペンスを見ても、心は沈んだままだし、プロ野球のキャンプ情報にも心は踊らない。
ワイドショーなどでウクライナ情勢を流してるが、今やコメンターや専門家らの発言も慢性化&均一化し、現地と同様に膠着状態に陥っている。
ウクライナ各都市は、延々と続く市街戦に突入した。ウクライナ軍は住民と共に徹底抗戦する。民間人の死者は慢性的に且つ飛躍的に増えていく。
その状況を我らはタダ眺めてるだけだ。
だったら”義勇兵に応募してキエフに向かえ”って言われそうだが、僅か3日の訓練でウクライナへ向い、平和ボケの日本人がロシア兵に捕まり、バカ高い保釈金を要求されるのがオチだろうか。いや、あっさり殺されるのが早いだろうか。
こういう時だからこそ、無駄な血は流すべきではないと思うのだが・・・
つまりコロナ渦と同じで、家でじっとして普通にしてるのがベターな筈だが、”何か為になる事をしたい”と思うのが人間である。が、下手にデモに参加し、オミクロン株にでも感染したら元も子もない。
田舎では、3回目のワクチンが4月以降にずれ込んだ。つまり、あと1ヶ月は辛抱の時期である。
その頃にはウクライナ情勢も安定し、停戦に向かう具体的な動きが見られる事を只々願うばかりである。
旧友の来訪
そんな慢性的なウツ状態で毎日を過ごし、それでも時折は夢を見るのだが、昨晩見た夢は少しは気分転換になるものだった。
夢の舞台は自宅の居間である。
幼馴染の旧友が訪ねてきた。彼は隣組の会費を集金して回っている。
私は彼を居間に招き、棚にあるインスタントコーヒーを取りに行く。
”こんな時間に集金なんて大変だね”
旧友は首を降った。
”そんな事ないよ。気分転換にも丁度いいし、運動にもなる”
私がお湯を注ごうとした時、会話に夢中になりすぎたせいか、熱いお湯がカップから溢れ出し、テーブルがビチャビチャになった。
テーブルを掃除しようと雑巾を取りに行くと、旧友は”何か出来る事があったら手伝うよ”と、ゴソゴソと動き出す。
私は”別に構わんですよ”と言って、彼を見た。
何と彼は、古い食器棚から皿を全部取り出し、テーブルの上に並べたではないか。
男は呟く。
”この古い棚は余計だね。ない方がスッキリする”
確かにそうだった。居間にある2つの食器棚のうち、一つは古くなって前々から処分しようと思っていたのだ。
”ほんと邪魔なんだよ。ウチは一人で住んでるのに、食器棚や家具が多すぎるんだ”
”昔の家はどこもそんなんじゃないの?”
私はコーヒーを入れ直し、テーブルの上に並べられた皿を眺めながら、旧友と雑談を繰り返していた。
以降、何を喋ってたかは記憶にない。
インスタントコーヒーは期限切れ間近の古いものだったので、美味しくはなかったが、久しぶりの会話は不思議と弾んでいた。
するとその時、場の空気が変わった。
広瀬アリス登場
な・な・なんと、あの広瀬アリスが訪ねてきたではないか。
化粧品のコマーシャルに出てくる(CGで着色されたかの様な)完璧無比な美しさに、私は感動と衝撃を覚えた。
「真夜中の訪問99」に登場した時と全く同じで、とても澄みきった大きな瞳をしている。
私達2人は目の前の美女を眺めながら、一点の曇りもない2つの美しい瞳に吸い込まれるかの如く、只々呆然としていた。
彼女は(前回登場した時とは異なり)とてもゴキゲンで快活だった。
私が重い腰を上げてコーヒーを入れようとすると、彼女が遮る。
”結構古いコーヒーね。でも濃い目にすれば、飲めないこともないか・・・”
生意気にも私は言い訳をした。
”コーヒーなんて普通は飲まないから、どうしても古くなるんだよ。お湯は電気ポットに入ってるから・・・”
彼女は、テーブルの上に散らばった皿をテキパキと片付け、電気ポットの中を覗き、私の方に顔を向ける。
とても美しい精悍な顔だちだった。このまま時間が止まってほしいと思った。
”この水でコーヒーを入れたの?よくそんなのが飲めるわね。全部捨ててよ、私が入れ直してあげるから”
そう呟くと、彼女は私達が飲んでるコーヒーを強引に取り上げるではないか。
若い女の豊穣で魅惑の香りが、確かに私の部屋を充満している。
”私の家に広瀬アリスが存在する。紛れもなくこれは真実である。夢や幻想なんかじゃない”
私は旧友の顔を見た。
男は、”女とはどんな関係なのか?”って少し混乱した表情をしている。
女はコーヒーを入れ直し、二人に配る。
私の横に腰を落ち着けた彼女は、美味しそうに(かつ満足そうに)コーヒーを飲んでいる。まるで私を、いや私達の会話を快く受け容れてるかのようにも思えた。
私と女の距離は20センチも離れてはいない(多分)。
益々、女の心地いい濃密な香りが私の全細胞の1つ1つに、過不足なく充填する。
私は、この奇怪な現実が終わらない事を強く願った。
もう一度、彼女を見る。
間違いなく、CMに登場する完璧無比な広瀬アリスだった。
私は誇らしげに旧友の顔を見た。
男の視線も目の前の美女にクギ付けになっている。
広瀬アリスが入れてくれた濃い目のコーヒーは、私が何度も味わったものであった。
期限切れのインスタントコーヒーも旧式の電気ポットも現実そのものであったし、居間のテーブルも食器棚も旧友も、そのままを再現していた。
”これは夢なんかじゃない”と、心の中で強く確信した瞬間、夢は覚めた。
最後に
「前回」登場した時はあっさりと逃げられたが、今回は違った。
僅かな時間だったが、そばに居てくれた。それも不味いコーヒーにまで付き合ってくれて、感謝感激である。
過去、夢の中には色んな女優さんが登場したけど、一番美しかった。美しいだけでなく完璧だった。美に完成形があるとすれば、広瀬アリスの事を言うのであろう。
正直、目の大きい女性はあまりタイプではないが、夢の中にでてきた彼女は、CGによって見事なまでに着色された彫像みたいだった。
毎日の様にウクライナ危機に心を痛めつつも、こういう夢が見れるのは、”何事も諦めるな!必ず終わりは来る”と、神様が激励してるのであろうか。
そう思うことにしよう。でないとやりきれられない。
夢の中での真実。
とても哲学的で抽象的ですね。
現実ではありえないけど、夢の中では真実になりうる。
ただ昨晩見た夢は、3/4程は現実だったんですよね。ほんと忠実に再現されてたと思います。
ただ、広瀬アリスの美しさは人工的な着色に近く、それだけが現実離れしてました。
事実と真実の違いとは、そういう事なんでしょうか。
夢の中に登場した食器棚やコーヒーや友人は実際に存在する事実(現実)です。
一方で、夢に登場した広瀬アリスさんは実際には存在するんですが、転んださんと出会うのは夢の中での真実。
現実では有り得そうにもない真実が、夢の中では簡単に実現する。
事実と真実の違いは、前者は客観的なたった一つの事象であり、後者は人の数だけ存在する主観的な事象です。
夢に主観が入る筈もないんですが、見る夢が人それぞれだとすると、現実の中にたった一つだけ存在する事実に比べれば、不特定多数の主観的な真実とも言えますね。
人は生きてる限り夢を見る。
いや夢は描くものか・・・
ウクライナ情勢も少しずつ停戦の動きが出てきましたかね。
油断は禁物ですが、夢と同様にいい方向に考えたいです。