”インパール作戦の悲劇”に関しては、その1とその2で、2度に渡り紹介しましたが、紹介出来なかった部分もありました。
そこで今回は、「戦慄の記録 インパール」から読み取る、”失敗の本質”について語る事にします。
書いてて情けなくなる。これが同じ日本人かと思うと、本当にツラい気持になる。しかし、今の日本人が知っておくべき実録と隠ぺいの真実が、そこにはある。
以下、”白骨街道の責任を牟田口中将だけに押し付けたのは誰か?”(BOOKウォッチ)を参考ですが、少し生温いので、主観と加筆を交えて紹介です。
バカと陸軍参謀は叩いても治らない
インパール作戦を強力に推し進めた第15軍司令官•牟田口廉也中将と作戦参謀のやりとりを紹介する。大体予想は付きそうですがね。
”どのくらいの損害があるか”(牟田口)
”5000人殺せば、(陣地を)とれると思います”(参謀)
”そうか”(牟田口)
誰でも、”敵を5000人殺せば”と思うだろう。ところが違った。実は、味方に”5000人の損害が出る”という意味なのだ。
日本の将兵が戦って死ぬ事を、平然と”殺せば・・・”という。
この作戦会議に出席した経理部の少尉は驚き、以下の様に書き残した。
”まるで虫けらでも殺すみたいに、隷下部隊の損害を表現するその傲慢さ•奢り•不遜•エリート意識、そして、人間を虫けら扱いにする無神経さ。これが日本軍隊のエリート中のエリート、士官学校、陸軍大学校卒の意識でした”
確かに、陸軍大卒と言っても殆どはコネでしょうに。防衛大の軍医に知人がいるが、ホントにアホなんですよ。
真面目に勉強し、軍人になろうという物好きがいる筈もない。当時の陸軍エリートと言っても、殆どが廃棄物的人種なんですかね。
また、こんな話も紹介されている。
牟田口司令官らは、戦闘が始まっても前線から300キロも離れた避暑地に本部を置いて留まってた。
そこには将校専用の料亭があり、将校専属の芸者も日本から来ていた。戦況報告なども料亭で行われた。前線からの命がけの報告を、女を抱き、酒を飲みながら温々と聞いていたのだ。
これに類した話は、戦前の戦争予算の詳細に迫った「軍事機密費」(岩波書店)の中でも出てくるが、あくまで開戦前の話。しかし戦争がはじまり、戦況が悪化しても、”女と酒”に浸る姿は異様だ。
全くこれじゃ、軍上層部が現場の悲惨で過酷な現状をを認識し、冷静は判断が下せる筈もない。
”インパール”の本当の黒幕は?
インパールの悲劇に関しては、NHKBSにて、まず2017年8月15日に、「戦慄の記録 インパール」、次いで、12月10日「戦慄の記録 インパール完全版」、そして18年4月4日の「インパール 慰霊と和解の旅路」として、3度に渡り放送された。
インパール作戦が今日に至り、繰り返し蒸し返されるのは、単に犠牲者の多さやその悲惨さからだけではない。
アジア太平洋戦争の各作戦の中では、実行に移す前から、軍幹部の間で異例なほど反対の声が多く、実行後も作戦転換を訴える声が多々あった。にもかかわらず強行されたという点が大きい。
例えば高級参謀の一人は、”牟田口構想”に断固として反対したが、異動させられた。
ビルマ南方軍のある後方参謀は、”作戦転換を”訴えたが、上司の参謀長は”予定通り実行できる”と突っぱねる。経理部長が”補給が全く不可能”と明言すると、”卑怯者、大和魂はあるのか”となじられた。
大本営でも、秦彦三郎参謀次長が”インパール作戦の前途はきわめて困難だ”と報告しようとすると、東條英機参謀総長が発言を制止し、話題を変えた。
インパールで勝つ事で、苦境の戦局を打開したいという思いが強くあり、作戦に絶大な期待を寄せていたのだ。結局、東條英機は事実を覆い隠し、天皇陛下にウソの報告をした。
秦参謀次長は後に回顧録で、”東條参謀総長に満座の中で叱責され、これ以上人前で言い争っても仕方ないと、黙って引き下がった”と振り返っている。
軍史に残る”抗命事件”と隠蔽と
1944年3月のインパール作戦開始から3ヶ月後の6月、現地で戦っていた第31師団の佐藤幸徳師団長が”独断退却”を打電してきた。
”弾薬も食料もない中では戦えない”という判断だ。”食わず飲まず弾がなくても戦うのが皇軍である”という牟田口司令官に対する反乱でもあった。
2万人の将兵を指揮する師団長が、軍の統帥を無視する異例の事態。これは、日本軍における「抗命事件」として歴史に残った。勿論、牟田口司令官は佐藤師団長を解任した。
同師団の後方参謀は、牟田口と会談し、その迷走する牟田口の発言を書き残してる。
”佐藤を叩き斬って、俺も切腹する。31師団の幕僚は、腹を切ってでも佐藤師団長をいさめる者はおらんのか!腹を切れんのか!”と。
佐藤は軍法会議で争うつもりだった。しかしそれはできなかった。牟田口の上司にあたるビルマ方面軍の河辺司令官が、佐藤を”精神錯乱”とし、問題を”隠ぺい”したのだ。
つまり、軍法会議などで事実が露わになり、責任が上層部に波及する事を恐れた措置だったのだ。それに、河辺司令官は東條英機の陸大の同期だったという。
多大な犠牲に加え、戦争末期の陸軍参謀部の混乱ぶりを見せつけたインパール作戦。それぞれの責任者たちは、お陰で殆ど責任を問われずに戦後を迎えた。
この”隠ぺい”こそが、東京裁判での”A級戦犯逃れ”に結びつき、”インパールの悲劇”の責任を誰一人償う者がいないという、本当の悲劇を生んだのだ。
失敗の本質と責任逃れと
但し、牟田口司令官だけは、”よく生きていられるな”と罵られた。慰霊祭に出ると、遺族から”あんたが牟田口か、帰れ”と叱責された。
それに対し牟田口は、”あれは私のせいではなく、部下の無能さのせいで失敗した”とやり返した。そして最後まで、兵士たちへの謝罪の言葉は無かった。
今日に至るまで”インパール作戦の大失敗=牟田口が無能だった”という定式で語り継がれてきたが、至極当然の事ではある。
”陸軍参謀が悪くて、牟田口に責任はない”という単純な問題ではない。両方共に超の付くA級戦犯なのだ。
牟田口は1956年、防衛庁戦史室から依頼され、「回想録」を残してる。
”私の統率なり判断ぶりは、殆ど総てが非であったと思われてならない。私は終始自らを責め、懊悩の日々を過ごして居る”と。
しかし牟田口は、”(インパールは)上司の意図通りに動いた結果に過ぎず、自らの独断によって実行した訳ではない”と言い訳をしてる。
この回想録では、”私は決して、南方総軍および方面軍河辺将軍の意図に背いて作戦構想を変更し、我を通した考えは微塵もない事をここに宣言する”とも主張してる。
しかし、これも明らかな言い逃れであり、典型の責任転嫁である。
インパール作戦を立て、指揮したのは牟田口だ。しかし、その作戦を認可し、実行したのは、牟田口より上の司令部である。
牟田口の意志ですぐに作戦を中止したとしても、彼に全ての非はない筈だ。しかし、負傷兵や餓死寸前の兵を見殺しにし、見捨てた責任は”自決”に値する。結局、司令部も牟田口も単に自決が怖くて、責任を曖昧にしただけなのだ。
失敗の本質の4原則
ここに、”改ざん•隠ぺい•忖度(そんたく)•責任逃れ”という、日本軍の”失敗の本質”の4原則が凝縮されているのだ。
因みに、忖度という言葉は、”森友問題”で一気にブレークしました。元々は、相手の身中を察し、思いやる言葉ですが、権威や力のある相手へおべっかを使ったり、贔屓したりと、ここに来てネガティブな意味で用いられる機会が増えた。この”忖度”こそが、軍上層部の腐った慣習だったのだ。そしてそれは今、森友問題で復活した。
自分の意見はお互いにズバズバ言う欧米人とは異なり、相手の心中を察し、その場の空気を読み、思いやり文化の根強い日本ならではの言葉とも言える。
滝クリの”おもてなし〜”も、本番アリの芸人御用達の高級エステも、”忖度”の一種ですかね。
少し横道それましたが。それは、今日の腐敗しまくった永田町や霞が関、それに不祥事が絶えない民間企業の姿にも通じると、デイリーBOOKは締め括るが。少し甘い気がする。
前述した、”改ざん•隠ぺい•忖度•責任逃れ”という”失敗の本質”の4原則こそが既に、インパール作戦時に行われてたという事だ。
敗北を前提にし、如何に責任を逃れるか?現場の兵士に”責任転嫁”し、軍上層部には”忖度”し、ヤバイ事は”隠蔽”する。現場からの報告は”改ざん”し、上層部の都合の良い様に書き換える。
こうやって、陸軍参謀部は酒を呑み、女と戯れながら、インパールの責任をA級戦犯を巧みに逃れたのだ。
現代の永田町と霞が関で起こってる事が、75年前のインパールで既に起こってたのだ。
結局、安倍がやってる事と牟田口がやってる事は同じ事なんだな。舞台が森友学園かインパールかの違いだけか。
憲法も然り。
動かぬ事が一番楽で、動いた結果が拙く責任取らされる事も無い。
だが、7月27日のポツダム宣言に対し動かなかった結果、ピカドン・ドンと2発も打ち落とされた。
「果たして官邸は如何に…」。
プロのコラマーでもこんな甘い事を書くのです。転んださんが甘いと見抜いたのも当然ですが。改ざん、隠蔽、忖度、責任逃れを失敗の本質の4原則に繋げるあたりは流石だと思います。
インパール作戦も最初で中止にして、何もしなければよかった。でも泥沼に入って、途中から何もしなくなったから、大きな悲劇を生んだんですかね。
失敗の本質については、もう書きようがないです。何を書いても理不尽さだけが残りますもん。ホント日本人としてツラいですね。
同胞に命令して殺して、自分は安穏としているのが一番罪深いですね。しかし、人間社会は、昔も今も、そういうふうに回っているんですね。
クマが人を襲うにしても、単に生きてく為の本能であり、人間の様に、改ざん•隠ぺい•忖度•責任逃れといったエゴはないですから。