「女教師アニタ」と同じ様な展開で、義理の息子となった17歳の少年と性的な関係を結ぶも、保身の為に残酷な選択をする非情な女性弁護士を描いた作品だが、こちらの方はずっと評価が高く、デンマークのアカデミー作品賞に当たるロバート賞を獲得し、国内外の数々の映画賞を受賞した。
この作品は「女教師アニタ」繋がりで見つけた映画だったが、寄せられたコメントにもある様に、”五十路シリーズ”と思うと、あまり気乗りはしなかった。
しかし、評価が高い分、ずっとシリアスだった。SEXシーンは五十路モノのAVを見てる様で興醒めもしたが、描写の大胆さがそれを大きく上回っていた。
つまり、いい意味で私を裏切ってくれた大当たりな作品である。
女弁護士アンネの偽善と拒絶
大まかな展開だが、児童保護の弁護士アンネ(トリーヌ・ディルホム)は、医師である夫ペーターと幼い双子の娘たちと共に郊外の豪華な邸宅で幸せに暮らしていた。
そんなある日、ペーターと前妻の息子で母親とスウェーデンで暮らしてる17歳のグスタフが問題を起こして退学となった為、彼を引き取る事になる。
粗暴なグスタフだが、初っ端から家族の留守中に貴重品を盗み出すという暴挙を犯す。”犯人はグスタフだ”とすぐに気づいたアンネだが、警察に突き出さない条件で家族と打ち解けるよう諭す。
これをきっかけにグスタフは家族だけでなくアンネとも距離を縮めていく。が、グスタフが若い女友だちを家に連れ込み、性行為をしてる姿に、アンネは自らの肉体の衰えを痛感する。肉欲に狂い始めたアンネはグスタフの部屋に入り込み、肉体関係を結ぶという愚行を犯す。
2人は欲望の赴くままに関係を続けるが、妹に2人の関係を知られ、アンネは保身の為に一方的にグスタフとの関係を拒絶した。
アンネに捨てられ、荒んだグスタフに手を焼いたペーターは、彼を寄宿学校に入れる事を決意するが、仕返しとしてグスタフはアンネとの関係をペーターに明かす。動揺したペーターは真相をアンネに確かめるが、彼女は頑として否定し、グスタフが嘘をついてると主張。更に、彼が盗みを犯した事を暴露する。
ペーターは折れ、アンネの言うがままに、グスタフは寄宿学校に送られる。しばらくしてグスタフがアンネの弁護士事務所に現れ、”成人による未成年者への性的虐待としてアンタを訴える”と迫る。しかし、アンネは”証拠もなく、問題児の言い分など誰も信じないわ”と突っぱねる。
グスタフは”父親にだけは真実を知ってほしい”と何度も縋るも、アンネに妨害され、彼女の非情な言葉により深く傷つけられる。やがて絶望したグスタフは姿を消し、冬山で凍死していたのが発見される。
ペーターはアンネが嘘をついてた事に薄々気づいていた。が、家庭の平和を優先し、アンネの言うがままになっていたのだ。
全てを悟ったペーターはアンネに怒りをぶつけ、彼女も思わぬ展開に激しく動揺する。
家族がグスタフの葬儀に向かう所で幕が降りるが、その後、2人がどうなったかは容易に想像がつく。
以上、ウィキを参考に簡単にまとめましたが、この手のドラマにしては珍しく、若い男の方が犠牲者になる。
一番印象に残ったシーンは、アンネが(父親に救いを求める)グスタフを突き放すシーンであった。
”アタナの居場所はここにはない。すぐに出ていきなさい”
若いグスタフは、この言葉を真に受けた。裁判で戦えば勝てたかもしれないのに、この言葉で全てが折れてしまう。
一方で、アンネが保身の為に発した言葉には、肉欲を超えた冷酷さが備わっていた。
”貴方だって楽しんでたじゃない”
性的虐待とはいっても、所詮は互いの欲望を満たす肉体の遊戯に過ぎないし、好き者同士の必然の関係でもある。
いつかはこんな薄ペラな関係にも”終りが来る”事はグスタフにも判ってた筈だ。
しかし、「女教師アニタ」のマルクスとは異なり、17歳の青年には頼りになる家族も味方もいない。実の父ペーターも家族を優先し、アンネに翻った。
つまり、グスタフが敗北するのは、アンネと肉体関係を結ぶ前から、明らかだった様にも思える。
最後に
原題の「dronningen」は”女王”という意味である。しかし、アンネのSEXシーンが露骨すぎて、女王というより毒を吐いてしまった哀れなキャリア婆にも映った。
ただ肝心の高い評価も男女間で温度差があり、映画評論家の猿渡由紀さんは”偽善的で複雑な中年女”としてアンネを魅力的に捉えるし、くれい響さんは”いい作品だが127分は長すぎた”とやや辛口である。
ただ、映画としてみれば実によくできたサスペンスではあるが、現実としてみれば有り得ない話でもある。
若い女友達がいるグスタフからすれば、五十路女とのSEXは(現実には)楽しめる領域にはない。ガサツな肉欲を満たすにも不十分で、アンネがペーターと夫婦の関係を持つシーンも非現実的に思えた。
それ以上に、グスタフの母親が一度も姿を見せない事も不思議に思える。裁判で和解に持ち込めば、相手は医者と弁護士で一攫千金も狙えるのにである。
しかし、この映画の本質は、アンネという保身の為なら平気で毒を吐く、キャリア婆の壮絶な偽善にある。
元はと言えば、若い男女のSEXを見て、女として嫉妬したのが彼女が狂い出したきっけだった。その狂いを精算するには相手に毒を盛って始末するしかない。
愛に飢え、彷徨う身寄りのないグスタフを、アンネは自ら築いた立場と権力を使い、力づくでねじ伏せてしまう。
わかり易く言えば、母親が子どもを都合よく私物化し、後はゴミのように捨てる。
こうした、一切の妥協を許さない大胆な描写が高い評価に繋がった。
ただ、個人的にはSEXシーンを減らし、その分、復讐に燃えるグスタフの母親が元夫のペーターと共に策謀し、アンナをズタズタにしてしまうシーンを最後に入れても面白かったのではないか。
権力に対してはギロチンを!
立場に対しては策謀を!
でないと、弱者は哀れだし、世の中バランスが悪すぎる。
ただ、グスタフがアルカイダの実行犯によく似てると思うのは、私だけだろうか?が故に、どうも彼を贔屓にしてしまうのだが・・
しかしグスタフも愚かでバカ正直すぎる。
後半の展開は胸糞悪いけど
質の高いポルノ映画とも言えるのかな。
でも見てて損はないです。
記事にしてくれてありがとう。
やっぱり老け過ぎよ
見た目は50代後半と思ってたけど
今年で51なのよねぇ
でも女って
その気になれば幾らでも嘘をつけるの
保身のためなら余計にね
マイエル・トーキーは女性の監督らしいですが、女性の視点でというより、こうしたケースでは加害者が男性の時はとことん追求・断罪され、逆に女性ならグレーゾーンになるケースが多い事に疑問を感じ、製作に至ったとか。
因みに、グスタフの母親はペーターの前妻のレベッカだそうです。
いい作品を紹介頂いて、感謝です。
狡猾なキャリアオバさんと愚かで悲しい青年の不都合な関係とも言えましょうか。
これからも宜しくです。
主演の女性は有名な女優さんらしいですね。
でも鏡で自分の老いた裸体を見つめるシーンは、少し残酷にも思えました。
でも女性からしたら、そういう所が愛らしくて魅力的に映るんでしょうか。
女性って追い込まれる程に次から次へと嘘を付く。
言われてみればそうかもですね。
酒を飲みながら見てたんで、細かい所を見逃してたんでしょうか。
最初に、レベッカがペーターに相談したらしいんですよね。
”もう私じゃ手に負えないわ。寄宿学校にでも入れようかと思ってるの”
”いやそんな事するくらいなら、私達で面倒を見よう”って事で、グスタフを受け入れた。
言われる通り、性犯罪の場合は明らかに男が不利ですよね。またそういうグレーな所を女は上手く付いた。
つまり、アンナには最初から勝算があった。
ある意味、監督の皮肉が込められた作品でもあるんですかね。