番外編”その4”の続きです。連チャンで行きます。少し長くなりましたが、辛抱をです。ウエブでは、マクドナルドの闇やクロックやソナボーンの真実に触れてるものが、殆どなく、このブログを立ち上げたんですが。”わが豊穣の人材”に出会えて、ホントにラッキーだったと、今は思ってます。
《不動産提供方式》
不動産転貸に伴う一時金は、店を”又貸し”すると同時に、フランチャイジーから保証金として7500ドルを受け取るようにした(1963年以後は1万ドル)。
保証金の半分は、契約締結15年後にフランチャイジーに返還し、残りは20年目の契約終了時に支払う。その間、マクドナルドはこの金を自由に運用できる。店舗からのこの一時預り金は、マクドの強力な運用資金となったんです。
マクドナルドが不動産を取得し、店舗に貸す方式として。当初は店舗から入る保証金や敷金を担保や頭金にし、土地は借地で建物だけ取得する方式だったが。
1960年代に入ると、10年間の割賦契約で土地を買取り、それを抵当に、銀行から資金を借り入れ、建物を立てるという方式にした。
一方、地主は10年間の割賦契約の間は、マクドナルドが支払い困難になり、倒産し支払い不能になるのを防ぐ為、土地に第一抵当権を設定し、支払いが滞った時は不動産を取り戻せるようにしたが。勿論、ソナボーンは引き下がらない。
1950年代の銀行は、ファストフードという実績がない商売の担保として、建物以上(つまり土地)を要求した。そこで、ソネボーンは地主を説得し、地主に有利な土地の長期賃貸契約を結び、土地の第一抵当権を放棄するようにした。つまり、その土地を副担保として、銀行に差し出すと。
お陰で、マクドナルドは地主から土地を長期の割賦で借入れ、同時に銀行へ担保として提供し、店舗建設の融資を得た。
ソナボーンは、土地をフランチャイジーに貸すに当たり、1万ドルの敷金を要求した(間もなく1万5千ドルに)。これにより、ノドから手の出る程欲しかった現金が入ってきた訳だが。欲に駆られる事なく、この敷金を頭金にして、10年割賦で土地を買収する事を考えたのだ。
故に、マクドナルドは自分の懐を痛めず傷めず、土地と建物の両方を手に入れるという、ソナボーンの憎い狡猾な発想でもあったんです。つまり、マクドナルドがハンバーガーを売り続ける限り、大衆が僅か15㌣のハンバーガーを食い続ける限り、ソナボーンの不動産帝国は、自己増殖を続ける仕組みになったのだ。
地主も好景気とはいえ、過去の度重なった農業恐慌や経済恐慌の再来を怖れてたのでは。それに、長期賃貸料は地主によって非常に魅力的に映ったのかも。そこを上手くソナボーンが突いたと。
つまり、マクドナルドは、いやソナボーンは、店舗からの保証金や土地からの敷金を運用し、不足は地主や銀行から借り入れるという、何とも華麗な”財テク”を披露したのだ。
店側にも、この方式は多くの利点があった。店に資金があり、土地を購入できても、マクドナルドより高値で土地を購入し、賃借する必要があった。
故に、マクドの知名度を使って土地を取得し、”又貸し”をしてもらった方が、個人で借りるよりもずっと安くなる。
この”不動産取得方式”は、フランチャイジーの管理をも容易にしたんですね。マクドナルドが不動産を取得する(地主からの賃貸も含め)事は、財務上の利点だけでなく、フランチャイジーの管理上でも効率が良かったんです。まさに、ソナボーンマジックです。
ただ、ソナボーンの戦術ばかりが目に行きますが。彼の交渉術も超一流だったんです。”我が豊穣の人材”ではそれが何度も述べられてます。
《交渉術》
ポーカーフェイスのソナボーンは常に尊大とも思える態度で相手に接した。”土地は他に幾らでもある、マクドナルドが考えてくれるだけでも、有り難く思え”と、地主を突き放し、交渉を有利に進めた。常に地主という強者を受け身の立場に追い込み、相手が譲らぬと見れば、即刻中止を決め込む決断力。この自信と押しの強さが、マクドナルドの財政状態を実物以上に強く見せかけた。
しかし、ソナボーンもマクドナルドの弱い立場を誰よりも承知し、事実何度も妥協した。シカゴのマフィア紛いの高利にも手を出した。マクドの成長の為には、過剰借り入れをする決意を変えなかった。借金に臆病な会社よりも速い成長を遂げたのは、ソナボーンの創意に負う事が大きかったのだ。
要するに、レイ・クロックは困難に立ち向かい、潰されかけた(いや潰された)。しかし、ハリー・ソナボーンはこの難題に取り組み、克服し、クロックを救い、マクドナルドを急成長させたと私は考える。動物反射的に、困難に真っ向から立ち向かった勇敢だが、無謀で無策な?クロックに対し、難題に取り組む勇気と知略がソナボーンにはあったのだ。
ただ、レイクロックの悪口ばかり書いてますが。”3の1”で書いた様に、ソナボーンの不動産チームにも彼が名を連ね、不動産ビジネスには、ソナボーン同様必死に勉強したんですね。タダの馬鹿じゃなかった。教育を受けてないだけで、知能は高かったんですね。
それに、”甲高い”クロックの声は部屋中に響き渡り、マクドナルドの支配者としてのカリスマと威厳は十分に効果を発揮しました。そして、クロックの後釜のフレッド•ターナーは、二人が成し得なかったフランチャイズの大幅拡張を成功させたんです。
また、paulさんのコメントにある様に、ソナボーンの巧妙な手口はアーベル総和法にそっくりで。フードフランチャイズに不動産ビジネスを噛ませる事で、収束(展開)させようとしたんですが。
それだけではまだ大損(発散)するので、地主に対し固定の地代で土地を借り入れた。これこそが振動アーベル総和マジックであり、不動産に相当するのが”指数関数”で、固定の地代に相当するのが”COS関数”であるとのご指摘です。
つまり、不動産ビジネスを巧く噛ませる事で、発散する筈のフランチャイズを収束させ、地主に対しては固定地代を要求する事で、彼らを減衰させた。故に、この2つの関数いや、2つの巧妙なトリックを噛ませる事で、バブルの危機に遭遇する事なく、逆にインフレという波に上手く乗り、フードフランチャイズの拡張と繁殖に成功した。
ま、ここら辺は、無限級数の収束の謎と同様に、マクドナルドの謎でもありますが。マクドナルドの成功には、色んな説がありますが、考える程に頭が混乱し、この”マクドナルド〜我が豊穣の人材”を読むたび、闇に包まれる思いです。
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