さて、昨日も述べた様に、この番外編を思いついたのは、映画”ファウンダー”とクロック自伝の”成功はゴミ箱の中に”で、展開が多少異なること。それと、”わが豊穣の人材”ではもっと異なることです。
故に、映画”ファウンダー”から離れて、最初はクロック自伝とウエブで拾った情報を合わせて書いてたんですが。実際に”わが豊穣の人材”を手にとってみると、全くマクドナルド感が180度変わったというか。オイオイ全然違うじゃないかってコトになりまして。ウエブの情報って半分しかアテにならない事も思い知らされました。ま、アテにならないという点では私めのブログも同じなんですが(悲)。
”ファウンダー”自体は、”その7”で中断したままですが。マクドナルド急成長のカラクリは、この”番外編”に大半が書かれてるので、悪しからずです。
それと、財務展開や不動産チーム、他社との違いなどに関しても、番外編その5として追加したいと思います。
番外編(その1)で述べた、このハリー•ソネボーンの華麗なるマジックを、”わが豊穣の人材”をバイブルにして、少し突っ込んでみます。
先に進みたくて山々なんですが。ここは、マクドナルドの一番辛い時期でもあり、心臓部でもあり、急成長の核&原動力となった時期です。故に、”リーマンその4”と同様に、じっくりと詳しく説明していきたいと思います。
因みに、ファウンダー(founder)とは、二番目の意味で、①(船が)浸水沈没する。②(土地・建物などが)くずれる、倒壊する。③(計画などが)失敗する、だめになる、とありますが。
マクドナルドの創設当初と全く状態が重なりますね。この沈没仕掛けたクロックが所有するマクドナルドという船を、ソナボーンが救うのですが。
さて、本題に入ります。
そもそも、ソナボーンが結んだ借地契約では、マクドナルドの不動産コストは20年間は固定だが。フランチャイジー(店舗)との”又貸し(転貸)”は非常に危険過ぎる為、土地建物に関する保険や税金のように、値上りが予想されるものは、全て店側の負担となるようにしたと。
1985年時点のマクドナルドの店舗数は9300店であり、そのわずか500店舗だけが売上が低く、歩合ではなく固定家賃のままだったが。この成功率95%の高さを見ても、クロックがフランチャイズの質を、必死で維持してたが伺えます。ここら辺は、彼を手放しで褒めたいです。
それにマクドナルドは、全店の不動産を管理してたので、黙ってても総売上の8.5%(不動産手数料)とロイヤリティの3%が入ってくる。これは当時も今も、ファストフード業界で最高の歩合収入であった。
他のフランチャイズチェーンはこのマクドナルドの不動産収入の仕組みに注目せず、これが他社との財務の大きな差となったのだ。
ソネボーンは、この実績に自信を持ち”マックドナルドはフードビジネスではなく、不動産会社だ”と証券アナリストに吹聴する。これがクロックとの不仲の直接原因になるのですが。これだけ上手く行けば威張りたくもなりますよね。
1960年代〜70年代、マクドナルドは中産階級が増加した郊外に土地を求めた。また、全米各地でも郊外開発事業が進められ、それも大きな追い風となる。
取得する不動産の価格は時と共に上がり、既存フランチャイジーの不動産関連コストは不変という、他社にない強みがマクドナルドにはあったんです。
それは、マクドナルドが長期間、地主から固定の地代で借りるか、土地を購入していたからで。逆に、60年代の不動産に背を向けてたライバル会社は、70年代の不動産高騰に苦しむ。
ソナボーンの不動産戦略により、マクドナルド社内には、大いにやる気が生まれた。店舗の売上げに応じ、歩合給で入ってくるマクド本社の収入は増えたからだ。口を酸っぱくしてQSC(品質•サービス•清潔)を説いたクロックの哲学がようやく、フランチャイズの売上に、本社の儲けに繋がるのだ。
”新店舗を建てて増収を謀るより、既存店舗の売上増に期待を掛けてたのです”とは、ターナーの言葉だ。
マクドナルドの不動産関連のコストが一定してたのに対し、インフレによる食品価格の高騰、店舗販売量の増加、歩合制家賃などにより、不動産収入はどんどん膨らむ。それでいて、暴発(発散)しない様にフランチャイズの拡張率を制限する。それに、フランチャイズの期限を20年に設定したのも、この安定(収束)に一役買ったんですかね。
結果として、マクドナルドにとり、”1970年代の二桁のインフレは恵みの雨”になったのです。
しかし、このインフレにより、1967年には僅か15セントのハンバーガーが、80年には3倍に値上がりするも、全店舗から入ってくる賃貸料も急騰する売上に比例し、プラスの方が遥かに大きかったのだ。
この不動産投資による絶妙なタイミングにより、資産の蓄積というソナボーンの目標は達成された。
今日1986年当時、マクドナルドは傘下9300店のうち60%の店舗を所有し(残りは地主から賃借)、1982年には不動産を含む純資産がシアーズロックを抜き、85年末の不動産の純資産は41億6千ドル。
しかし、マクドナルドの真の価値は、その不動産が産み出す賃貸収入だ。現在マクドナルドは、純益の1/3を24%の直営店から挙げてるが、残りの2/3は76%のライセンス店から得ている。そのライセンス店から得る利益の90%こそが、不動産の賃貸料なのだ。
この不動産収入がなければ、フランチャイジーに課す3%のサービス料は、3倍になった筈で、4%の業界標準を大きく上回る。
故に、ソナボーンの成功の秘密は、単に不動産に目をつけた事よりも、不動産事業を上手く展開する方法を考え出した事にある。たかが15セントのハンバーガーチェーンである。マクドナルドが貸与する店舗の建設資金の為に、地主が本気で協力する筈もなく、銀行も融資したがる筈もなかった。
この様なハンデがあったにも拘らず、何とか地主を説得し、賃貸契約を結ばせ、銀行や保険会社に抵当権を設定させる方法を発見し、マクドナルドに二面性を持たせ、それを実行した。
一方で、ハンバーガーやフレンチフライの事しか頭にない、几帳面な経営スタッフがいて、もう一方では、不動産取引と銀行を説得し、融資を承認させる事しか頭にない財務マンがいた。世間一般がマクドナルドの営業面に目を向けてる間、舞台裏ではソナボーン率いる不動産チームがリスクを冒し、取引を進めてたのだ。
この不動産チームは極めて多彩な人々を配していた。勿論クロックもその一人で、彼はマクドナルドの二面性を持ち、新しい店舗の土地を探すに、人一倍熱心だったのだ。
長々と3000文字近くになったので、”3の1”はここで締め切りです。続いて、”3の2”に進みます。
ソナボーンのこの巧妙な手口は、ある意味アーベル総和法にそっくりです。発散(崩壊)する筈のフードフランチャイズを不動産という業種を噛ませる事で、収束(展開)させようとしたんですが。
それだけではまだ大損(発散)するので、地主に対し、固定の地代で土地を借り入れた。これこそが振動アーベル総和であり、不動産ビジネスに相当するのが"指数関数"で、固定の地代に相当するのが”COS関数”と考えれます。
つまり、この2つの関数いや2つのトリックを噛ませる事で、フードフランチャイズの拡張と繁殖に成功したのでは。
勿論、ソナボーンがアーベル総和に精通してたかは判りませんが、拡張性のある明晰な頭脳を持ってた事は確かですね。
でも、華麗な手口でフランチャイズビジネスを翻弄したソナボーンも、クロック同様にかなり危ない橋を渡ってたみたいです。
paulサンには、何時も的確で鋭いコメントいや解析でとても勉強になります。
不動産ビジネスを巧く噛ませる事で、発散する筈のフランチャイズを収束させ、地主に対しては固定地代を要求する事で、彼らを減衰させたと解釈していいですかね。
一方で、インフレによる土地や物価の上昇により、利益はどんどん膨らむ。支出は収束し、利益は無限に上昇する。それでいて、発散しない様にフランチャイズ率を制限する。それに、フランチャイズの期限を20年に設定したのも、この収束に一役買ってたんですかね。
ま、ここら辺は、リーマンの謎やゼータ関数の謎と同様に、マクドナルドの謎でもありますが。マクドナルドの成功には、色んな説が立てられてますが、考える程に頭が混乱してきます。
これらのコメントもブログに補足しときますね。