
連日、大谷の投打に渡る活躍だが、悲しいかな日本列島だけで盛り上がる、メジャーリーグベースボールの悲しい実情がそこにはある。
年々高騰するMLBの放映権を額面通りに買う国は日本だけであろう。つまり、今の衰弱したメジャーを支えてるのは日本人だけという事になる。
アメリカではすでにマイナーなプロスポーツに成り下がった感のあるMLBだが、彼らを”メジャー”と呼ぶのは日本人くらいであろう。
TVで見ても分かるが、日米の野球格差は大方だが、なくなったと思っていい。(パワーはともかく)人気とプレーの質や戦術という点では、日本の方が勝ってると言える。少なくとも、私が知る70〜80年代のMLBのレベルには程遠い。
つまり、WBCでの優勝はまぐれでも奇跡でもなく、日本プロ野球の進化というよりMLBの退化と劣化の賜物でもあったのだ。
二刀流のリスクと大谷巨砲主義
スポーツ酒場語り亭(NHK)では、解説の小早川毅彦氏が(博多の)”にわか煎餅”みたいな間抜け顔で大谷を絶賛する。
ゲストの五十嵐亮太氏も大谷にはゾッコンらしい。その流れに押されてか、MLBに詳しいAKI猪瀬ですら、二刀流のリスクを指摘出来ないでいる。
少なくとも、かつてのニグロリーグでは二刀流が当り前の様に行われてた事くらいは紹介して欲しかった。いや、チーム本塁打が僅か45本の時代にルースが放った29本と、262本の”飛び過ぎるボール”の時代に大谷が放った46本を同列に扱うのは、評論家としての常識と知能を疑う。
ここまで来ると、まるで大艦巨砲主義に浮かれた戦時の日本人を見てるみたいで、今や”不沈艦”大谷の進化を疑う人は皆無に思えてくる。
しかし、全てには終りが来る。
つまり、大谷翔平も完全じゃない。生身の人間だから、早かれ遅かれ、衰洛する時期がくる。
だが、殆どの日本人は大谷が永久的に二刀流での大活躍を維持するものと信じて疑わない。
かつて、信濃も武蔵も大和も、世界一強力で世界一巨大な戦艦だった。攻撃も守りも鉄壁だと思われていたし、”この巨大戦艦を見たらアメリカはビビるだろう”と日本人将校はタカを括っていた。
つまり、今の大谷みたいに絶対的な力を誇ってた筈だった。
しかし、大艦巨砲主義に縋り過ぎた為に、いや、そうした幼稚な幻想に浮かれ過ぎたが為に、呆気ない敗北と歴史的な惨劇を生んだ。
即ち、今、大谷の周りで起きてる”翔平”狂騒劇は、太平洋戦争末期でも起きていたのだ。
「蟻の兵隊」じゃないが、日本人は調子がいい時は整備された軍隊みたいに秩序よく動く。だが、一旦窮地に陥ると混乱し、行き場を失ったアリみたいにバラバラに逃げ惑う。
日本人というのは、調子がいい時はバカみたいに調子がいい。その上、バカの一つ覚えみたいに同じ事(儀式)を延々と繰り返す。これも大艦巨砲主義を起源とする悪しき伝統だが、メジャーのボールパークで大谷のプラカードを掲げて応援する日本人の平和ヅラを見てると、”一億総自決”に邁進する戦時の日本人とダブってしまう。
それに、いくら大谷が活躍しても消費税が撤廃されるでも、医療保険や税金が安くなるでも、中国や北朝鮮が大人しくなる訳でもない。
大谷がアメリカの衰弱しつつある野球メディアを潤わせ、アメリカ経済に寄与したとしても、日米同盟の不公平な主従関係はなくならない。どんなにMLBが落ちぶれても、日本ではメジャーな格付けのままである。
気になる大谷の仕草
それらをもってしても、大谷翔平の活躍には舌を巻くばかりではある。特に、月間MVPに輝いた6月は神業の連続であった。
彼がこの6月に打ち立てたあらゆる数字は、MLB史上に残る歴史的な記録である。
そういう私は(大谷が海を渡った時から)彼の二刀流には限界があると予想していた。だが、フルシーズンの二刀流が3年目に入った今でも、私の予想をあざ笑い続けるかの如く、大谷巨砲主義は日本だけでなくアメリカ全土すらも圧巻し続けている。
なぜ大谷は二刀流で活躍できているのか?
理由は単純だ。
MLBのレベルと質が、私の予想以上に落ち込んでるからに他ならない(多分)。
今やメジャーのスタメンを見ると大半が中南米の選手で占められる。アメリカが生んだスポーツ娯楽なのに、スタメンにはアメリカ白人だけでなくアメリカ黒人もいない。いたとしても数えるくらいだ。
それに加え、マイナーの半分が消滅し、MLBの地盤は空洞化した状況下で、2022年末の労使交渉も決裂したままシーズンだけは行われている。
ここまで朽ちたメジャーを誰が予想できたろうか?少なくとも私には予想できなかった。
そんな中、救世主の如く現れた大谷の二刀流である。(穿った言い方だが)MLB機構としても簡単に潰す訳にも行くまい。丁度、1994年の労使交渉の決裂で(質量ともに)落ち込んだメジャーを救った野茂の活躍の様に・・・
勿論、政治的な何かが働いてる筈もないが、勘ぐる所がないとも言えない。事実、過去には、MLBの人気復活の為にコミッショナーが策謀した、ステロイドの容認や飛ぶボール疑惑も逆にMLBを劣化させる大きな要因となった。
その一方で、気になって仕方ないのが、ここ最近の大谷のホームランを打った後の仕草である。
MLBでは、本塁打を打った後にバットを投げたり、ポーズを取る事は相手投手の侮辱に当たるとしてタブーとされてきた。
事実、ガッツポーズをしたり、ゆっくりベースを回ると相手チームからクレームが付いたり、報復を受けたりするのが常であった。
つまり、日本では当り前とされる事が、アメリカでは侮辱行為と受け取られる。
イチローがバットをタテに突き上げる行為も本来ならタブーとされるが、数字を積み重ねるにつれ、スタイルとして認知される様になった。
”バットフリップ”と呼ばれる本塁打を放った後の華麗なバット投げの行為だが、場合によっては(侮辱とみなされ)最悪は乱闘騒ぎにも発展する。
ネット上では大谷のバットフリップが”カッコいい”と話題になってるが、その後の人差し指を前に差し出す行為が私にはどうも好きになれないし、理解に苦しむ。
世の中、何が人生を狂わせるかは全く予想できない。些細な事が人生を狂わす事はよく知られているが、絶頂期にある時にこそ、リスク管理はとても重要になる。
しかし、そんな私の心配を覆すかの様に、活躍し続ける大谷翔平は、神に愛された野球選手なのだろう。
不安が的中した?
どうやら、私の心配は稀有ではなかったらしい。
絶好調だった6月だったが、7月に入ってもその好調さは維持されると誰もが思った筈だ。事実、私もそう思った1人である。
ただ、大谷が潰れるとしたら、投手の方からと予想していた。その予想がピタリとハマりそうである。
今日のパドレス戦では6回途中(5回0/3)、今季ワーストタイの5失点。降板後、右手中指マメの影響が判明した。前回登板では6回1/3で1失点と好投するも、同じ右手中指の爪が割れて途中降板。つまり、右手中指が完治してなかった事が原因とされる。
今季の大谷は打つ方は完璧だが、投げる方が危うすぎる。WBC予選Rでも危うかったが、メジャーの開幕にはきちんと修正していた。
基本的にボールは指の腹で投げるものであるが、指や爪に引っ掛けて投げる事自体、それだけでも危い。
事実、野茂も桑田も大魔神の佐々木も、指にマメが出来るようになり、野球人生の峠を下っていった。
幾らケガ人続出のエンゼルスとは言え、指が完治しないまま(無理をして)投げたという説はウソっぽい気もする。事実、今回も先発予定を1日引き伸ばして登板した。
勿論、投げる方がダメなだけなら、後半は打撃に専念して三冠王を狙うべきだろう。このまま二刀流を無理に続ければ、投打両方ともダメにする。
ベーブルースは5年間続けた二刀流(実際には三刀流)を捨て、打撃に専念した事でMLB史上最強の打者に君臨した。
大谷自身が二刀流に浮かれるのは理解できなくもないが、今のままじゃ両方とも潰れる。
それに今シーズンの大谷の投球は明らかに雑である。被本塁打は既に14を数え、与四球も43個。因みに、昨年と一昨年の被本塁打は15本と14本で、与四球は共に44。
つまり、被本塁打も与四球も例年の倍以上に膨らんでるのが判る。こんな状態で、防御率が3点代前半で7勝という結果は、単に運がいいか?相手打者がヘボか?という事に帰着する。
つまり、打たれる時は打たれるべくして打たれる。それが今年の大谷投手である。
大谷に代わる救世主
大谷巨砲主義に不穏な空気が立ち込めそうな中、大谷の代わりに新たな救世主が現れそうな雰囲気がある。
その男は、大谷と同世代の藤浪晋太郎(アスレチックス)である。
ドラフト1位で阪神に入団した藤浪を見た時、メジャーで通用するとしたら彼だと直感した。特に手元で鋭く変化するスライダーは既にメジャー級でもあった。
しかし、ライバル大谷に大きく先を越され、球速に拘りすぎたせいか、持ち前の球のキレは姿を消し、コロナ渦中のスキャンダルも手伝い、藤浪”らしさ”は影を潜め続けた。
”打倒大谷”で海を渡った今年、序盤からお得意の乱調が彼を襲う。先発を外され、ネット上ではキツい言葉が次々と飛び交った。
この時点で私は”終わった”と直感した。
しかし大谷同様に、彼もまた私の予想を裏切りそうな勢いである。
キレのある直球は常時100マイル(161k)を超え、今年から覚えたスプリットも鋭く落ちる。「されど大谷 #26」でも書いたが、投手としてみれば藤浪は大谷の上を行く。
全ての球種が大谷よりも高い次元にある筈だが、それでも序盤は決まった様に滅多打ちに遭う。
しかし、抑えに転向して(精神的に)開き直ったせいか、本来の藤浪に戻りつつある。つまり、投球に本来のキレが戻ってきたのだ。
今日のタイガース戦でも、9回に3番手で登板し、メジャー自己最速タイの102マイル(≒164K)をマーク。全12球中7球が100マイルを超え、3者連続空振り三振に抑えた。
延長10回に味方が勝ち越し、5勝目(7敗)をもぎ取った。因みに、防御率は9.35だが、6月以降は3.43と”らしさ”を取り戻しつつある。
大谷と藤浪。
高校時代はライバルとしてしのぎを削ったが、今では大きく水を開けられている。
が、勝負はまだまだ始まったばかりだ。
人生、悪い事ばかりでもない。彼ら二人の野球人生を眺めてると、人生の縮図を見てるようで、興味が尽きない。
”頑張れ藤浪!くたばれ大谷!”
もしかしたら野球の神様は、そんな意地悪を考えてるのかもしれない。
投げる方は、与四球の多さからして、いつかは打ち込まれるだろうなと予想してましたが
よく失点5で収まったなという印象でした。
元々制球難の投手ですが、様々な変化球を覚えた事で、運よく通用してるってレベルです。
一方で、打つ方は後半も健在ですね。
打撃だけに専念すれば、三冠王も射程圏内なので、後半は投手を捨てるべきですが、彼の頑固さがどう出るか・・
特に、声を張り上げて投げるシーンは見てるだけで悲しくなります。
ただ、腹打てさんのコメにあるように、MLBの運営はそれどころじゃなくなりつつありますね。
まさに、大谷の躍動とメジャーの空洞化って感じですが、これも記事にしたいと思います。
コメント有り難うです。
フォアボールで自滅しました。
立ち上がりからスライダーが多くイヤな予感がしましたが
その通りになりました。
今回は指というより制球難が露呈しましたね。
大谷の変化球は指先に引っ掛けて投げるので
指先に負担が掛かりすぎて制球も乱す。
そういうのが判ってて変化球を多投する。
7月は登板を回避して様子見というのが理想でしょうか。
今、私も少し調べましたが、実に興味深いですね。
メジャーの放映権バブルの崩壊については記事にしようと思います。
前に2度ほどメジャー崩壊について書きましたが、予想は外れ、未だにメジャーは存続しています。
が中身は”死に体”みたいですね。
思った以上に、MLBのオールスターが盛り上がらなかったのには、少しショックでした。
こう見えても昔はメジャー通だったので、崩壊するにしても有終の美を飾ってほしいです。
というのも、MLBの約半数のローカル放映権を持つ全米最大のTV放送企業であるシンクレアグループが経営破綻の危機にあるらしい。
このグループは他にも、NBA16チームとNHL12チームの放映権を持つが、MLBに至っては殆どが赤字だという。
この寂しい状況に対応する為、球団自身がローカル局を買収し、放映権を直接管理するとされたが、それも頓挫したらしい。
全てはコロナ渦とTV離れによる悪影響だが、MLBの不人気もそれに輪をかける露。
以上はアメリカメディアのコラムだから、信憑性は??かもだが、盛り上がりのないMLBオールスターを見る限り、大半は当たってると思う。
大谷をもってしてこの視聴率ですか
多分、MLBオールスターの放映権を額面通りで買ったのは日本(NHK)だけでしょうか。
膨らみ続けるMLBの放映権とされますが、日本が買ってるだけなんですよね。
アメリカも(ケーブルを含め)ネットストリーミングの時代ですが、中南米系の選手で占められるMLBを見る人は少ないでしょう。故にネット上での視聴率も同じ程度じゃないでしょうか。
一方で、NHKがMLBに支払う放映権料は200億とも噂されますが、実際にはMLB.comと契約してる電通から10億ほどで買ってるとされます。
事実、巨人不人気の為、野球放送で儲けのない日テレはMLB放映権に手を付けたらしいですね。
結局、MLBも放映権バブルと重なり、最後には弾けるんでしょう。
日本のプロ野球みたいに、昔ながらのやり方が良いのかもですね。
コメントありがとうです。
結局はですが
日本だけで盛り上がったMLBのオールスターでした。
出場してる選手の大半は中南米系で
そんな中、大谷選手だけが目立ってました。
個人的には千賀投手と打者大谷の対戦を見たかったんですが、実現しませんでした。
始球式ですが
往年のマリナーズの選手たちが紹介されましたが、今ひとつ盛り上がりに欠けてましたね。
全米視聴率も過去最低の3.9%で昨年の4.21%から減少した。
MLBと独占契約してるFOXの視聴者数でも昨年を下回った。
NBAもNFLもオールスターは同じ様な数字だと言うから、娯楽の分散化やストリーミングサービスの多様化も考慮する必要があるけど
日本のメディアも騒ぎすぎですよね。
でも正直見てて
野球というスポーツに限界を感じました。
そんな冷え込んだ土壌の中で大谷が独りで頑張っている。
何だか悲しい気がしました。
有数のクローザーの一人ですね。
少なくとも、ボストンのジャンセンよりも上です。
私の叫びが届いたみたいです。
一方で大谷ですが
ドジャースの投手陣が悪過ぎで、エンゼルスと同じレヴェルです。
とにかく、藤浪にはビッグチームに移籍してもらって大谷超えを期待したいです。
転んださんの願いが少しは届いたみたいです。
シーズン終了の頃は立場が逆転勝利してるかもしれませんね。
というのも常時160Kを投げれるクローザーはプレーオフを目指す球団なら特に欲しいでしょうからトレードもアリでしょうか
打てる筈がない藤浪の球が打たれ、打てる筈の大谷の球が打たれない。
でも今の藤浪には焦りがありませんから後半も好調を維持するでしょう。
ところで大谷は再び復活しつつあります。
転んださんの呪いはまだ届いてないみたいですよ。
全体主義に陥りやすい農耕島民ですよね。
皆が皆、簡単に同じ色に染まる。
負ければ負けるで、お通夜みたいな暗い色に一気に染まる。
”イッツ翔タイム”と締め括る
某局のパートタイマーなアナウンサーにはいつもウンザリですが
そんなバカ声を聞く機会も少なくなるでしょうね。
全体主義の一種と言えそうだ
戦時下のイケイケの日本人と
二刀流が
延々と続くと思ってる日本人
前者は負けるとわかってて
後者は終りが来るとわかってて
それでも束になって突き進む
このままだと7月は
二刀流壊滅記念日を迎えそうな勢いだが
ここに来ても日本人は
大谷の二刀流を信じて疑わない
平和なニッポン
そんなに騒いで何になる
戦艦大和が呆気なく沈没した時もこんな感じだったんでしょうね。
ただ、大谷以外の日本人メジャーはもっと頑張らなアカンですよ。
日本の大相撲と同じで、かつては国民の娯楽だったスポーツに誰も振り向かなくなる。
今や世界規模で見ても、国民の娯楽はスマホなんですよ。
野球だけでなく、オリンピックも含め、全てのプロスポーツが壊滅の危機にある様な気がします。
これから暑くなりますが、お身体には十分にお気をつけてです。
コメントいつも有り難うです。
ここ3試合は無安打で、疲れもそうですが、何か異変をきたしてるようにも思います。
今は打つ方だけに専念し、様子を見たほうがいいですね。
予想通り、二刀流は今年が限界だと思いますが、劣化と退化はいきなり襲ってくるものだから、誰にも予想は出来ない。
つまり、大谷本人にその覚悟と理解がないと、一気に衰洛の一途を辿る事にもなりかねないので、今こそリスク管理が必要になると思います。
何だか偉そうなコメント返しで、スンマセンです。
ということは
今回の登板も指のケガは完治に近かったと思われます。
序盤から変化球が多くなにか変だなと思ってましたが、肩か肘かどこか不調だったんでしょうか。
色々と勘ぐる所はありますが
6月が神がかりだっただけに
多くの日本人にとってはショックだったでしょうね。
NHK解説の小早川氏もアナウンサーもかなり落ち込んでましたから
でも”横に曲がるカットボール”というコメントに悲しさを覚えました。
そんなレベルなんでしょうね
野球解説者というのは