ポテンシャルという言葉は、この男の為にあるのかも知れない。
今年は鈴木誠也(広島)が、日本の強打者を代表してメジャーに挑んだ。
序盤の活躍では大きな注目を浴びた鈴木だが、良かったのは開幕の4月だけで、今では故障者リスト入りし、5年100億?とされる大型契約は失効に終りそうな気配である。
結局は今年も、大谷翔平以外の日本人野手メジャーは事実上の壊滅状態である。
しかも大谷の場合、2018年にメジャー入りしてからずっと、先発とDHの二刀流という、ルース以来の偉業を披露し続けてるのだ。
スポンサー契約だけで20億近いとされる規格外の大型報酬もアメリカらしい。
神様が存在するのなら、何故大谷だけに天賦の才能を与えたのだろうか?
ほんの少しでも、他の日本人メジャーに与えるべきではないか。同じ(億を稼ぎ出す)プロなのにこうも違うものか。
いや、大谷自身が特別過ぎるのかもしれない。多分神様は、大谷が可愛くて仕方ないのだろう。
束の間の屈辱
しかし、その大谷もNYでは(気のせいか)、どうも小さく見える。
昨年6月30日のヤンキースタジアム初登板では、2/3回で2安打7失点と(ボクシングで言えば)1Rノックアウト(実際は負けはつかず)であった。
スタンドからは嘲笑が漏れ、大谷にはメジャー入りして味わう初めての屈辱となる。
実はこの時、少し嫌な予感がした。
もし大谷がアリーグ東地区という強打者が揃う激戦区にいたなら、果たして二刀流は成功しただろうか?
レベルが落ちる(とされる)西地区だからこそ、二刀流が成功したのではないか?
確かに、(自己ワーストの)1試合3被弾は昨年8月のオリオールズ戦以来2度目で、今回のヤンキース戦の前のブルージェイズ戦では2発を浴びた。事実、オリオールズもブルージェイズもアリーグ東地区である。
それに、大谷の100マイルを超える自慢の速球を初めて本塁打されたのもボストン戦であった(多分)。
ただ、今回の大谷はリベンジの気持ちがとても強かった筈だ。
事実、出来は悪くはなかった。160kmを超える速球は健在だったし、変化球がやや高めに浮いてたが、制球自体は悪くなかった。
結果は3回で8安打4失点と、前回よりは数字的には良かったが、1つ間違えてたら初回ノックアウトもあり得たかもしれない。
一方で、ヤンキース打線は大谷の変化球に照準を絞り、2試合続けて完全攻略した。
元々、速球で三振を取るタイプでないので、変化球を見極められると三振が奪えなくなり、自らの首を絞める。
つまり、投手大谷の致命傷はここにある。
シーズンはまだ始まって2ヶ月が過ぎたばかりだが、今年は昨年みたいに全てがうまく行くとは限らない。
それでも大谷のポテンシャルは突出してはいる。今はそれだけが救いなのだが・・・
データで検証する快速球の謎
私たちが100マイルとか160キロとか大騒ぎする球速だが、これはボールが放たれた瞬間のスピード、つまり初速を指す。
勿論、初速があれば終速もある。言わずもがなだが、ストライクゾーンを通過する時の速度ある。
”判ってても打てない速球”の指標として、この初速と終速の差が上げられる。
全盛期の江川の快速球が”判っててカスりもしなかった”のは、この差が少なかったからでもある。その上、ホップする様な高回転の球質も手伝ってか、”浮き上がる”様に思えた事だろう。
事実、日米オールスター野球では監督と選手の間でこうした会話がなされた。
”なぜ、打てないんだ?150キロも出てないんだぞ”
”浮き上がるんだ”
”何を馬鹿な!ボールが浮くなんて事がある筈がない”
”でも浮くんだ。実際にバッターボックスで見てみろよ”
監督は言葉を返せなかった。
確かに、大谷の165キロは”打てなくはない”快速球である。しかし、江川のそれは”判ってても打てない”145キロの怪速球である。
事実(YouTubeで検証された動画を見る限り)、大谷の165キロと江川の145キロは殆ど同タイムで捕手のミットに収まっている。
つまり、大谷の快速球は失速の激しい100マイルであり、江川のそれは失速の少ない90マイルと言える。
今ではトラックマンという測定装置を使い、ボールの回転数や回転角度など、投球の属性が瞬時にして映し出される。
江川氏が全盛期の頃も、初速と終速が映し出されてた事もあったが、精度が悪すぎたせいかすぐに閉じられた。
投手のポテンシャルとしては大谷を超えるとされる佐々木朗希の165キロに迫る快速球も(気のせいか)失速が激しい様な気がしていた。
事実、昨日の読売巨人相手登板では、速球の初速と終速が映し出され、平均して160kmと145km程と、その差は15km。
意外に思えたのが、スプリットの球速差で145−135=10kmと、速球よりも失速が少なかった事だ。
プロ野球の平均でも、速球は145−135=10kmで、スプリットは135−125=10km。
つまり、佐々木の快速球はスプリット以上に失速する。
そういうデータを見抜いてたかは知らないが、巨人は見事に佐々木を攻略した。
”165キロとても所詮は失速の激しい球だ。じっくり構えれば打てない球ではない”と思って、打席に入ってたのだろうか。
事実、快速球に気後れするシーンは少なかった様に思えた。
単なるデータだが、それを心理的優位性に変える事で、佐々木を打ちのめした原ジャイアンツ。今頃は笑いが止まらんだろう。
最後に〜データから蘇る江川の凄さ
多分、全盛期の江川氏だったら、初速と終速の差はどれ程だったろう。
(理論的に)ゼロという事はありえないが、5キロ程には収まってたろうか。
事実、当時の動画の検証では6キロほどだったとされる。
つまり、”判ってても打てない球”の秘密は、こんな単純なデータの中に埋もれてるのかしれない。
因みに、江川の全盛期(1980~82)の145キロは今の装置で計測すると、158キロ以上になるという。
それに、速球のホップ率(写真)がプロ野球の平均に比べ、23センチ以上も高かった。
重力でお辞儀する筈の球が、江川の場合には”浮き上がる”のである。つまり、”重力すらも支配する”江川の豪速球なのだ。
更に回転数(rpm)で言えば、最高で江川の2750rpm(1981年)、次に松坂大輔の2583rpm(1999)、大谷翔平の2528rpm(2017)、佐々木朗希の2523rpm(2021)とされる。
以上は日テレNEWS(2021)で検証されたものだが、これらデータをまとめると、1981年の江川は158キロ(初速)の豪速球を投げ、終速は152キロで、そして更に浮き上がる。
こんな球なら、MLBのオールスターでも打てる筈がない。
本当のポテンシャルとはこういう事を言うのだろうか。
速球での三振がゼロとスプリットで三振が取れないと自滅する悪いクセが露呈した気もします。
それと最初から力んでたような気がしました。
試合前には長嶋さんに挨拶したりと余計な気を遣うから・・・
失速が激しいのは東京ドームのマウンドが固く急なせいもあるのでしょうか。
配球を読まれてたとの声もあるけど
昨日の佐々木の出来だったら巨人でなくとも打たれてたかもしれませんね。
せめて、試合が終わってからにすべきでした。
これも読売側が考えた策略?だったんでしょうか。
事実、読売は江川のポテンシャルの高さを検証してましたから、佐々木の速球の弱点も見抜いてたんでしょうね。
メジャーでもなし得なかった”終速”を表示したのにはアッパレです。こういうのを含め、戦略なんですよね。
失速の少なさで言えば、阪急の山口高志。
スプリットの方が失速が少ないのも矛盾してる気がするけど
トラックマンデータを細かく検証する事で、スピードガンに隠された投球の秘密が暴かれる。
これからのプロ野球はこんな形で進化していく。
ギフテッドとか言うんでしたっけ?
左では江夏氏が一番速かったらしいですね。
400勝の金田さんも160kは出てたと。
個人的には終速だけでいいかなとも思うんですが、それでは夢がなさ過ぎだし・・・
という訳で、未だに江川を凌ぐ怪物は現れないんですよね。
初めて知りました。
少し調べたんですが、知能に秀でた人種を指すようですが、発達障害も多いようで、両刃の剣も言えますね。
でも生まれ持った豊かな才能を活かすには環境や周りの理解も必要なので難しい所です。
江川さんも現役当時はボロクソに言われましたが、これもギフテッドの負の側面ですかね。
コメントありがとうございます。