前回の”その7”では、振動アーベル総和法の、ζ(−1)="1+2+3+•••"=lim[x,0+]Σ[k=1,∞]ke⁻ᵏˣcos(kx)=−1/12、0<x(≒0)の証明をしました。
今回は振動アーベル総和法の特殊公式ではなく、”一般公式”についてです。
今日で、”アーベル総和法”ブログの更新は終わりですが、全4話を付き合って頂いた方、ホントご苦労さんです。多分いないと思いますが(笑)。
特異項と剰余項と___________
前回同様、少し形は違いますが、S(x)=Σ[k=1,∞]k、H(x)=Σ[k=1,∞]ak*e⁻ᵏᵠ⁽ˣ⁾cos(kx)、0<x、0<φ(x)ー①、と定義します。
勿論、{ak}は級数の事ですよ。
また、前回同様少し形は違いますが、
G(z)=Σ[k=1,∞]ak*e⁻ᵏˣー②、z∈C(複素数)、とし、G(z)=A(z)+C+O(z)ー③とします。
因みに、A(z):特異項、C:定数、O(z)はランダウの記号(微妙に揺れ動く挙動値)です。特異項A(z)と剰余項O(z)の違いにも注意です。
前回同様、オイラの定理:eⁱᶿ=cos(θ)+isin(θ)を使い、cos(θ)=1/2(eⁱᶿ+e⁻ⁱᶿ)を得ます。θ=kxとして、cos(kx)=1/2(eⁱᵏˣ+e⁻ⁱᵏˣ)ー④とします。
②より、 G(φ(x))=Σ[k=1,∞]ak*e⁻ᵏᵠ⁽ˣ⁾ー⑤。
①④⑤より、H(x)=G(φ(x))*cos(kx)= G(φ(x))*1/2(eⁱᵏˣ+e⁻ⁱᵏˣ)ー⑥を得ます。
上の⑤⑥式を合わせ、計算します。
H(x)=1/2*Σ[k=1,∞]ak(e⁻ᵏ⁽ᵠ⁽ˣ⁾⁻ⁱˣ⁾+e⁻ᵏ⁽ᵠ⁽ˣ⁾⁺ⁱˣ⁾)=1/2(G(φ(x)+ix)+G(φ(x)−ix))=1/2((G(z)+G(z‾))となります。少しややこしいですが、kで括る所がキモです。
因みに、z=φ(x)+ix、z‾=φ(x)−ixという事で、スマホではオーバーバー(‾)が文字の上に表現できないので、悪しからずです。
故に③より、 H(x)=1/2(A(z)+A(z‾))+C+O(z)となります。
この特異項のA(z)+A(z‾)を消す為、特異方程式を1/2(A(z)+A(z‾))=O(z)となる様に、φ(x)を以下の様に定義します。
ここでx→0+の時、O(z)→0となるので、定数Cが振動アーベル総和H(x)の収束値になるという事で。
総和関数と特異関数と_________
級数{ak}と総和関数G(z)、特異関数φ(x)の関係は以下の様になります。
ak=1、G(z)=−1/z−1/2+O(z)、 φ(x)=cot(π/2)x+ O(x³)
ak=k、G(z)=1/z²−1/12+O(z)、 φ(x)=cot(π/4)x+ O(x⁴)
ak=k²、G(z)=−2/z³+O(z)、 φ(x)=cot(π/6)x+ O(x⁵)
ak=k³、G(z)=6/z⁴−1/120+O(z)、 φ(x)=cot(π/8)x+ O(x⁶)
ak=kⁿ、G(z)=A/zⁿ⁺¹+ζ(−n)+O(z)、 φ(x)=cot(π/(2n+2))x+O(xⁿ⁺³)。
因みに、cotx=tanx=cosx/sinxで、cotxはcot(nπ)で極(±∞)を持ち、cot((2n+1)π/2)で0。故に、cot(πx/2)は、x=2n+1で0になり、x=2nで極(±∞)を。cot(πx/4)は、x=4n+2で0になり、x=4nで極(±∞)を持ちます。cot(πx/6)、cot(πx/8)、、、cot(πx/(2n+2))も同様です。
勿論、n∈Z(整数)です。
ak=kの時の、”1+2+3+•••”の振動アーベル総和は、オイラーの定理とベルヌイの定義とマクロリン展開を使い、特異項1/z²を消し去りましたが。ここでは、φ(x)=cot(π/4)x+ O(x⁴)と定義する事で、特異項を消すんですね。
詳しくは、https://xseek-qm.net/Regularization.htmの平均アーベル総和法(5-3)を参照です。
この方法では”留数定理”を使いますが。”その5”で紹介する予定の、リーマンの”素数定理”の証明でも使われるカギとなる定理です。説明は超長くなるのでここでは省きます、悪しからずです。
結局、級数{ak}に応じ、それぞれの収束値や総和法の公式やその求め方が異なるんですが、解析接続と全く同じですね。
振動アーベル総和法の一般公式_____
次に、級数{ak}と振動アーベル総和法の公式H(x)は、以下になります。
ak=1、 H(x)=Σ[k=1,∞]1*e^(−kx³)*cos(kx)、
ak=k、 H(x)=Σ[k=1,∞]ke⁻ᵏˣcos(kx)、
ak=k²、 H(x)=Σ[k=1,∞]k²e^(−kx√3)*cos(kx)、
ak=k³、 H(x)=Σ[k=1,∞]k³e^(−kx(1+√2))*cos(kx)、
ak=kⁿ、 H(x)=Σ[k=1,∞]kⁿe^(−kx*cot(π/(2n+2))*cos(kx)、
lim[x,0+]H(x)に当てはめ、級数{ak}の収束値を計算すると、
"1+1+1+•••"=lim[x,0+]Σ[k=1,∞]1*e^(−kx³)*cos(kx)=−1/2、
"1+2+3+•••"=lim[x,0+]Σ[k=1,∞]ke⁻ᵏˣcos(kx)=−1/12、
"1²+2²+3²+•••"=lim[x,0+]Σ[k=1,∞]k²e^(−kx√3)*cos(kx)=0、
"1³+2³+3³+•••"=lim[x,0+]Σ[k=1,∞]k³e^(−kx(1+√2))*cos(kx)=−1/120、
"1ⁿ+2ⁿ+3ⁿ+•••"=lim[x,0+]Σ[k=1,∞]kⁿe^(−kx*cot(π/(2n+2))*cos(kx)=ζ(−n)、
以上修正です。
故に、振動アーベル総和法の一般公式を使えば、"1ⁿ+2ⁿ+3ⁿ+・・・"=ζ(−n)という見事に美しいゼータ関数で表現されます。ゼータ関数が無限級数を収束させるとは、目から鱗です。
無限級数の、ゼータ関数の収束こそが、オイラーの夢であり、アーベルの希望でもあり、リーマンがその夢を実現する事で、現代数学の礎となったんです。
そして、この美しさこそが、数多くの偉大な数学者をゼータの魔力の虜にさせたんです。
補足と計算結果と__________
H(x)=Σ[k=1,∞]ke⁻ᵏˣcos(kx)=−1/12にて、実際に、x=0.001を代入し、数値計算すると、H(0.001)=Σ[k=1,3000]k*e^(−k0.001)*cos(k0.001)=0.083333498•••≒−1/12となりますが。これは、”その6”でも述べました。
ここで、k*e^(−kx)の部分を減衰率、cos(kx)を振動周期というのですが。振動周期はそのままし、減衰率を2倍に緩くして再計算してみます。
すると、H(0.002)=Σ[k=1,3000]k*e^(−k0.002)*cos(k0.001)=1199.916•••≒1200と、かなり大きくなります。
今度は減衰率そのままに、振動率を倍にします。H(0.002)=Σ[k=1,3000]k*e^(−k0.001)*cos(k0.002)=−2000.08333•••≒−1200と、全く逆になりますね。
これは、減衰率と振動周期が連動しない場合、級数が収束しない事を示してます。全く不思議ですね。e関数とcos関数の連動とバランスが大切なんでしょうかね。何だかピンと来ませんが、面白いと言えば面白いです。
今度は大谷ではなく、オイラーとリーマンについてです。
発散級数から有限値を引き出すオイラーの方法も総和法と呼ばれるそうですが。これをリーマンは”解析接続”を使って見事に証明したと言われます。
まさに、オイラーからリーマンに引き継がれた夢ですね。また、オイラーは実零点(ζ(-2)=ζ(-4)=…=0)を発見し、虚零点(ζ(S)=0)に関するリーマン予想に大きな動機を与えたとも言われてます。
オイラーが息を呑むように数学をしたとすれば、このゼータ関数は息を呑む様な関数ですね。
何時もナイスなフォローを、とても有難いです。
偶然にも、『リーマンの夢』(黒川信重 著)を読んでるのですが(驚)。本のタイトル通り、ゼータ関数の探求こそが、リーマンの夢だったんですね。
多分、素数の謎とかは、最初はリーマンの頭にはなかったのかもです。リーマンはオイラーと異なり、とても不遇な人生を送ったみたいですが。
まさに、”息を呑む様な”ゼータ関数に包まれて過ごした時間は、彼にとって甘美で貴重なものだったのでは。
リーマンのこの零点の研究の全貌は未だ闇の中で、リーマン家の家政婦が燃やしてしまったと言われる”黒革の手帳”に、その詳細が隠されてたとされますが。
この”リーマンの夢”に関しては、後でブログ立てるかもですが。もう感動で涙出そうです。
元々はリーマン予想に興味がなかったのですが、モンゴメリーがダイソンに示した式がFermiの黄金律の式と同じ形になっているのに驚きました。ただし、物理の方での導出はδ関数の2乗やδ(0)などを使った物理ならではの計算です。それで、リーマンの素数定理まで勉強しましたが、いかんせん、式は追えても「意味が頭に入らず」、いざ具体的数値を当てはめようとしたら、手が付けられませんでした。
貴ブログを読んで、少し意味が分かってきました。
統計物理や量子物理ではΓ関数や ζ関数をよく使いますが、私はもっぱら公式に頼っています。特に量子論でのくり込みは発散の除去と関係しています。物理ではこれを正則化と言うようです。
ところで振動項の付け加えは量子力学で発散を押さえる方法を想起します。
量力は基本的に古典物理なのでそれで住みますが、本来の量子論つまり場の量子論までいくとその手は使いません。何か「総和法 ⇔ 量子力学」、「リーマンの解析接続 ⇔ 場の量子論」の対応が感じられます。
ちなみに私はEinsteinの主張を支持していて(不確定性原理を除く)、一般相対論から素粒子論を議論すべきと考えています。そうすると、発散の問題が解決できます。まあ「数学から解放されよう」です(笑)。
小難しい古い記事にコメント頂き、感謝です。
言われる通り、数学を数学だけの世界から開放しないと、今のままでは”難しいだけの学問”として死滅するだけだと思います。
それに、現代数学は物理学に頼る部分も多く、ポアンカレ予想は物理学や統計学なくしては解けなかったろうとされてます。
事実、数学を公理や定義だけで追うと袋小路に陥ってしまいます。
そういう私も、できるだけ小説風にリーマン予想を表現したいんですが、所詮素人なんですね、どうしても数式を追ってしまいます。お陰で、”リーマンの謎”ブログは頓挫したままです。
アインシュタインも元はガウス曲率から着想を得て、リーマンテンソルを経由し、一般相対性理論へと結びつけました。
量子力学は目に見えない力学ですが、ゼータ関数も目に見えない数学とされます。
その物理学と数学を結びつけるのが一般相対論とすれば、それはガウスの夢でもあり、リーマンの夢であったかもですね。