象が転んだ

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不倫とその言い訳と”リーマン面”の定義

2023年10月06日 11時02分11秒 | 数学のお話

 ジャニーズとズブの関係にあるNHKだが、記者会見場で質問拒否”リスト”を敢えて公表し、ジャニーズ事務所の内部告発(みたいな事)をしたのに対し、そのNHKは”自社の内部調査はしない”という。
 まさに、ジャニーズの”罪”とNHKの”泥”の擦り合い的な様相を見せ始めてはいるが、こういう時は相手の出方を冷静に分析し、余計は言わず、賢く振る舞った方が優位に立てる。
 つまり、難度の高い高度な”言い訳”こそが運命を分ける。
 読まなくてもいい手紙を読み、”大人だったらルールを守りましょう”とジャニーズ側は先手を打ったつもりだが、元々ルールを破ったのは起業主の喜多川氏であり、NGリストの公開という”禁じ手”を使ったのはNHKである。
 そういう意味では、ジャニーズが掘った墓穴は、NHKのそれよりも(今の所はだが)小さい様な気もする。

 もしアナタが不倫(又は二股)をして、奥さんや恋人にバレたとしたら?どんな”言い訳”をするだろうか。
 正直に告白して土下座するか?最後まで徹底してシラを切るか?それとも開き直って離婚する(別れる)か?

 ある人が言ってたが、数学は小難しい公式を覚える学問ではなく、定義や定理の本質を理解し、様々な局面や場面で使いこなす事に意義があると。
 確かに・・そうではある。
 いくら数学を理解しても、現実や日常の中で使いこなせなければ意味がない。もっと言えば、自分が窮地に追い込まれた時に救ってくれる高度なツールであるべきだ。
 事実、議論合戦でやり込められた時、数学の定義や理論を持ち出すと(ごく偶にはだが)逃げ道が見つかる事がある。
 つまり、数学とは覚えたり理解するではなく、使いこなす為の学問である。いやそうであるべきだ。でないと、数学者は気狂いばかりになる。

 そこで今日は、リーマン面の定義(理論)を不倫問題の解決に活かす事が出来ないだろうか?を考えてみる。


リーマン面の起源

 でもなぜ?今になって”リーマン面なの”って思われるだろう。
 というのは、「天才ガウス#6」のコメント群にある様に、楕円関数論を使って複素数上で定義される楕円曲線(代数曲線)は、代数幾何学的には3次の平面代数曲線として見る事ができる。
 これは、一般的には3次式の代数曲線であるy²=ax³+bx²+cx+dの形で表され、そこで右辺をゼロとした時の方程式(3次多項式)が重根をもたない時、上の代数曲線は種数1(穴の数が1つ)の非特異な平面曲線となる事から”楕円曲線”という名が付く。
 この形の方程式は、ワイエルシュトラスの標準形とも呼ばれ、ワイエルシュトラスのペー(℘)関数(楕円関数)を満たす微分方程式から楕円曲線が現れる事から来る。これは(x,y)=(℘(z),℘’(z))として微分方程式に代入すれば、y²=xの3次式の形をした楕円曲線を得る。
 こうした楕円関数から楕円曲線への考察だが、リーマンが代数関数と代数曲線との関係を(閉)リーマン面との対応を使って考察したのが始まりとされ、その後、楕円関数を複素平面上での種数1の非特異の代数曲線に対応させ、楕円曲線が得られる。

 元々、曲線を”解析なる源泉”と評し、関数の概念を初めて登場させたのはオイラーだが、代数曲線を代数関数として体系化したのはリーマンと言えるし、それを可能にしたのが自身が発見した”リーマン面”の理論である。
 勿論、代数関数論の建設で言えばワイエルシュトラスの功績も忘れてはならない。というのも、”代数関数とは何か?”という重要な問いに、”代数的形状体”と応じたのがワイエルシュトラスで、(閉じた面上に真性特異点をもたない)”解析的関数”と答えたのがリーマンだった。 
 そのリーマンは”いたる所で冪級数展開できる”「コーシーの積分定理」を継承し、「コーシー=リーマン方程式」を満たす解析関数の概念に繋げ、リーマンの複素関数論やアーベル関数論の研究の出発点とした。

 1変数の複素解析関数はリーマンにより生み出され、”閉リーマン面は1変数解析関数が繁茂する母なる大地”となり、多変数解析関数の研究に繋がります。
 その後、”分岐点を持たない解析関数では擬凸状のCn上のリーマン領域が多変数解析関数に相当する”という「ハルトークスの逆問題」の解決が岡潔によって示された。
 ”非特異射影代数曲線”と”1変数代数関数体”と”閉リーマン面”の3つは、19世紀の数学史の中核を成した代数関数の重要な柱ですが、”代数関数がリーマン面を通じて代数曲線に対応する”というリーマンの偉大なる発見は、非特異射影代数曲線が他の2つと1対1に対応し本質的に同値な概念であるという認識に繋がります。
 一方で、コーシーによる複素解析性の概念形成と、ヤコビによる「ヤコビの逆問題」の提示やアーベルの楕円積分の逆関数(=楕円関数)の発見が、ヴァイエルシュトラスとリーマンの代数関数論の建設に及ぼした影響は計り知れない。
 つまり、リーマン面の歴史と言っても、なかなか一言では答えられないのである。


多価関数とリーマン面

 という事で、まずはリーマン面の基本的な説明からです。
 リーマン面とは(ザックリと言えば)、”多価関数をそれぞれ1価の関数の集まりとみなす為に、領域(定義域)を多価の数だけ用意し(それらを)連結させたもの”と言える。
 故に、連結可能な複素一次元の複素多様体(いわゆる面)と定義できる。
 数学的に言えば、全てのリーマン面は連結(向き付け)可能な実2次元の実解析的多様体(曲面)であり、正則関数を一義的に定義する為に必要な複素構造を含む。因みに、リーマンの博士論文「複素1変数関数の基礎」では、1変数解析関数の存在域(定義域)としてのリーマン面が”複素平面上の分岐被覆面”として定義された。

 わかり易く言えば、”多価関数を1価関数の様に扱う為に、複素平面を沢山用意してキレイに張り合わせたのが”リーマン面となる。
 簡単な例で言えば、y=±√x(y²=x)という関数があり、これは”xが1つ決まればyは2つ求まる”という2価の関数となる。因みに、1価関数とは”xが1つ決まればyも1つ求まる”事から写像でいう単射が成立する事より、一般には関数は写像とみなせる。
 仮に、y=±√xの2価関数を同時に扱うとなると(それぞれの関数が異なる為に)厄介になるが、y=√xとy=−√xを別々の1価関数として見れば、通常の関数として扱える。
 つまり、y=√xを定義する区間(yの定義域)L1=[0,∞)=(y≧0) と、y=−√xの定義域L2=(−∞,0]=(y≦0)を別モノと考え、y=0の分岐線で繋げたものがリーマン面のアイデアである。

 これは複素数z=x+iyでも同様で、w=±√zをw=√zとw=−√zを異なる領域の複素平面上の関数と考え、実軸(y=0)を境に2つの領域(wの定義域)を行き来できる。
 この様に、平方根の場合は2価なので2つの複素平面を貼り合わせるが、多価であれば貼り合わせる複素平面の数も増えていく。また、log1=2nπiの様に複素対数関数の時は無限多価になるので、無限個の複素平面を貼り合わせる必要がある。
 但し、リーマン面は(曲線そのものではなく)定義域を貼り合わせる平面に過ぎず、それぞれの曲線(関数)の形は反映しない。つまり、関数の諸々の性質はリーマン面を作った後に1価の(通常の)関数として1つ1つ調べる事が出来る。

 但し、現代的な定義での関数は写像(単射)の一種とみなされ、(xが1つ決まればyが1つ決まるという)1価の関数を定義する事が多く、この場合は多価関数を関数と呼ぶのは不適切とも言える。故に、多価関数は単射でない関数から得る事ができるから、逆関数は定義できないが逆関係は存在する。
 しかし、三角関数は1価(単射)の周期関数であるから、その逆関数は多価関数になる。
 例えば、tan(π/4)+tan(3π/4)+tan(7π/4)+・・・+tan((2n+1)π/4)=1の逆関数をとると、arctan(1)=π/4+3π/4+7π/4+・・・(2n+1)π/4となり、複数の値を取る事が判る。 
 こうしたarctan(x)は多価関数だが、−π/2<arctan(x)<π/2と定義域を定める事で、1価の関数とみなす事ができる。


不倫とリーマン面

 そこで、小難しい数学の話は止めにして、(性加害ではなく)不倫の言い訳をリーマン面で補ってみる。

 まずは、3人の男が1人の女性にプロポーズをするケースを考える。
 これは1人の男が1人の女に1本の矢を放ってるから”単射”になる。故に写像が成立し、一価の関数が成り立つ。つまり、健全な男女の(一価の)関係と言えますね。
 そこで、このケースの逆関数(逆関係)を取れば、1人の男が3人の女を股にかけるという不倫の様な状況に置き換わる。
 つまり、”3股”という不健全な多価関数(3価関数=3価関係)が成り立つ。

 ここで”リーマン面”の定義の登場だが、3人の女と同時に付き合うという多価の関係ではなく、1人1人と別個の独立した形で付き合ってるとすれば、それぞれの関係は1価の1対1の関係となる。
 つまり、大局的に見れば3人の女と同時接触があるから不倫となるが、それぞれをリーマン面を使って、独立した1対1の付き合いと見れば、少なくとも不倫には見えない(多分)。
 この場合は、3人の女を繋ぎ合わせた領域がリーマン面となる。男は3つの境界を巧みに跨ぐようにして3人の女と別個に付き合うが、同時には付き合えないという制限がある。
 つまり、男がA女と付き合ってる事は、B女からもC女からも見えないとなる。

 「天才ガウス#6」でも書いた様に、円弧の長さを求める円積分(=∫dx/√(1−x²))の逆関数(=sinx)から円関数が得られるように、1価の関数を逆関数でひっくり返したら多価の関数になる。これら2つの関数は別物に見えるが、数学的に考察すれば同義と言っていい。
 故に、多価の関係である不倫も逆関数(逆関係)でひっくり返せば、1価の関係となり、健全な交際とみなせる(上図参照)。
 以上は、あくまで数学的な考察と現実との対比ではあるが、不倫の言い訳としてはマズマズではないだろうか。いや、そうでもないか。

 因みに、不倫の言い訳のもう1つの主役である”多価関数”だが、ナッシュJrのゲーム理論にも用いられ、多価関数に「角谷の不動点定理」を適用すれば、”ナッシュ均衡”の存在が証明出来るという。
 つまり、不倫疑惑に対しても”不道心”が必要なのであろうか。
 以上、どうも無理があるリーマン面と多価関数と不倫の言い訳のお話でした。



4 コメント

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角谷の定理とナッシュ均衡 (腹打て)
2023-10-06 14:06:26
「角谷の不動点定理」では、ナッシュのゲーム理論上での混合戦略を有限閉集合と見て、その集合値関数が不動点を必ず持つことから、<ナッシュ均衡>の存在を証明できる。

その角谷氏も、彼の講義に数多くの経済学者が参加するのか?理解できなかった。
まさか自身の定理が、ナッシュのゲーム理論に転用できるとは?考えもしなかったんだろうか。
よく考えると実に勿体ないことではある。 
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腹打てサン (象が転んだ)
2023-10-06 18:10:19
流石に食いついてきましたね。
感謝感激です。
元々、不動点定理とは自己写像という1対1対応の連続関数上での不動点の存在を保証するでした。
厳密に言えば、n次ユークリッド空間のコンパクト(有界閉集合)で定義される凸部分集合からそれ自身への連続関数が必ず不動点をもつ事となるんですが
それを集合値関数に置き換えた角谷氏も凄いですが、ナッシュJrは更に、自身のゲーム理論の混合戦略に置き換え、不動点を”ナッシュ均衡”に結びつけます。

”天才は天才を継承する”の典型ですよね。
まさにアッパレです。
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不動点と均衡 (paulkuroneko)
2023-10-06 22:43:23
ブラウワーの連続関数上での不動点定理を、角谷氏が集合値関数による不動点定理に拡張(一般化)し、更にナッシュJrは自身の(非協力)ゲーム理論の混合戦略上での均衡点(ナッシュ均衡)に置き換えました。
この流れから、フラウワー→角谷→ナッシュJrという黄金の連携が光り輝いて見えます。
ゲーム理論は均衡理論とも言えるので、ナッシュはいち早くこの”不動点=均衡”という連携に気付いたんでしょうか。

元々、角谷氏の不動点定理は、ゼロサムゲームに応用出来ることが角谷氏の論文において議論されていました。
故に、経済学者の注目の的でもあったんですよね。 
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paulさん (象が転んだ)
2023-10-07 03:54:21
そ~なんですよ。
あまりにも出来過ぎの黄金リレーです。
数学の凄い所は、どんな難しい事でもどこかで必ずつながってるという事です。
ある意味、美しさを超えた美学とも言えますが、”自己写像→連続関数→集合→ゲーム理論”と、数学には無限の拡がりがある様に思えます。
それにしても、不動点と均衡の共通点に気付いたナッシュの閃きも凄まじいものがありますね。
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