象が転んだ

たかがブロク、されどブロク

スマホのない生活とラマヌジャンと

2018年10月21日 07時23分02秒 | 数学のお話

 先々週はスマホもパソコンも故障し、全く文明の利器を失った私だが、過去の偉人たちの知恵はしっかりと私の脳の中で息づいていた。 
 この偉人の一人である、インドの偉大なる数学者ラマヌジャン(1887〜1920)に関しては、ある程度だが知ってるつもりでいたし、ラマヌジャン予想の証明に関しては、ブログの下書きも終わってた程にです。


 しかし、素数とオイラー積とは別に、ゼータ関数の弟分のL関数の視点からラマヌジャン予想を眺めると、色々と新しくも嬉しい発見がある。
 まるで、彼のいた時代にスリップインした感覚だ。ある種のファンタジーを見てるみたいだった。それだけ、ラマヌジャン予想というのは、数学者にとってもそうでなくても、魅惑の幻想に満ちた予想なのだろうか。

 勿論、この予想を数学的に解く事は異常なまでな難題だが。それでもこの雰囲気に触れるだけでも、その数学的情景に浸るだけでも、スマホがパソコンが壊れた事に感謝すべきだろう。


 ヘタレ数理系の私めは、本を読む時はわざわざ書き取りながら読む癖がある。そうする事で大まかなレイアウトや、登場人物をリアルタイムで把握でき、読む楽しみが倍増する。過去の偉大な作家の生きた時代に、タイムスリップした感覚が味わえる様に思えるからだ。 
 
 故に、地球上からネットやスマホが消滅したら、もっと高度な文明が誕生するかもしれない。一笑に伏されるかも、いや大げさな言い方かもだが、文明の利器を失う事で、人類は過去の偉大な知の遺産を発掘し噛み砕き、自らの進化に生かせるかもしれないと。
 ひょっとしたら、ネットやスマホが消滅した時代に、リーマン予想が証明されるかもしれない。またそう思いたいな。


 ゼータ関数の一番の特徴は、その収束性にあると言われてる。その美しき収束ゆえに、様々な関数を引き寄せ、虜にし、密な関係を持つ。そして、このゼータの美しき謎にラマヌジャンが特異の視点でメスを入れた。直感と洞察という名の、文明の利器を大きく超えた鋭い一刺しを。


 二週間程だが、この文明の利器を失った私が、パソコンもスマホもネットもなかった時代の、超天才の洞察に巡り会えたのは非常に幸せだった。

 自らの超人的な洞察以外に、何も頼るものがなかったラマヌジャンの世紀の予想は、その後の現代数学を、ゼータの存在を大きく変革し進化させるものだった。

 因みにラマヌジャンは、1920年に32歳という若さで早逝するが。数学的解析、数論、無限級数、連分数といった分野で多大な貢献をしたのです。

 ”The Man Who Knew Infinity”(無限を知っていた男=2016)という彼を題材にした映画がシリコンバレーのエリートから絶賛されてるらしいが、悲しいかな日本では公開未定だ。臭いモノと難しいモノには蓋をする農耕族の貧相な性であろうか。

 
 もしラマヌジャンが、今の超便利な時代に生きてたら、どんな数学者になってたであろうか。フィールズ賞やアーベル賞の常連であったかもしれないが。学歴や環境や経済に恵まれすぎて、超人的な洞察力が生かされる事もなかったろうか。いや、その洞察力も錆びついて使い物にならかったろうか。

 ラマヌジャンにとって、彼が生きた時代こそが最高の時代だったのだ。そして、彼が生み出した”L関数”は、数学史史上最も美しい奇跡のゼータなのかもしれない。


4 コメント

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Re:アインシュタインを超えた大天才? (lemonwater2017)
2018-10-26 02:43:14
hitmanさん、おはようですかね。

よく調べましたね。

 ラマヌジャンは今や、多分世界で一番有名な数学者と言ってもいいですね。

 数学者は無神論主義者が多いというイメージがあるんですが。彼は敬虔なヒンズー教徒となんですね、初めて知りました。

 論理ではなく直感、自分ではなく神様が与えてくれた定理とは、ラマヌジャンが言うからサマになるんですね。歯が浮くような言葉です。
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アインシュタインを超えた大天才? (ootubohitman)
2018-10-25 20:40:00
宇宙人レヴェルの大天才とかインドの魔術師とかアインシュタインを超えたとか、毎日半ダースの新たな公式を発見したとか。

少し気になりスマホで調べました。スッゴイ数学者だったんですね。転んださんのお気にである理由がいまわかった。

全ての公式を論理ではなく直感により発見したという。敬虔なヒンズー教の彼はその驚異の発想力を神のもたらすものとして受け止めた。

ラマヌジャンにとって定理とは神の言葉であり、アインシュタインがいなくても相対性理論は発見されてたろうが、ラマヌジャンがいなければ彼の発見した公式をの大半は、今でも見つかってないだろう。

まるでウェブ丸写しですが。これだけでもラマヌジャンの全てが理解できた様な気がします。

ラマヌジャン万歳。
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Re.ラマヌジャンとスマホ (lemonwater2017)
2018-10-21 20:40:42
paulさん、続けてです。

 ラマヌジャンのL関数については、リーマンブログの新その3で述べようと思ってますが。

 ラマヌジャンて、知れば知る程に魅力的ですね。かつて、これ程までに魅惑的な数学者がいたのしょうか。ある意味、リーマンやオイラーを超える天才と言えなくもないかもです。

 丁度今、酒呑んでる最中なので、ここで失礼です。どうもスンマセンです。
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ラマヌジャンとスマホ (paulkuroneko)
2018-10-21 10:34:00
続けてお早うございます。

ラマヌジャンが今の時代に生きてたらですか。

ひょっとしたら、リーマン予想を解いてたかもしれませんね。期待値を込めて。

ラマヌジャンに関しては色々と研究が進んでて、映画にもなってますね。この映画観たいな。転んださんが悔やむのも理解できます。

この稀有の天才ラマヌジャンも教育は殆ど受けてないんです。故に証明という概念がなく予想ばっかしてたんです。大半の予想は勿論ハズレだったんですが、L関数の予想だけはピタリと当たったんですね。

でも転んださん言うとおり、ヘタな教育を受けてなかったから、プラチナ色に輝く洞察が曇る事はなかったんですかね。

教育が先か洞察が先か、そういうものをラマヌジャン予想は考えさせてくれます。
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