象が転んだ

たかがブロク、されどブロク

「とんでもスキル・・・」に思う、日本アニメの底力と平凡なヒロイズム

2023年02月03日 06時11分36秒 | 映画&ドラマ

 もし、日本が仮想空間で世界を支配するとしたら、こんなごく平凡に見えるアニメだろうかと納得させられた。
 「とんスキ」の愛称で人気のマンガとされるが、原作のシリーズ累計部数は450万部を突破するというから、凄い実力でもある。

 ある日突然、異世界へと召喚された普通のサラリーマン向田剛志(ムコーダ)。 異世界の住人となった彼の固有スキルは”ネットスーパー”という一見しょぼいものだった。 落胆するムコーダだったが、実はこのスキルで取り寄せた現代の食品が異世界だととんでもない効果を発揮する・・・(公式サイトより)

 正直いうと、漫画やアニメは好きではない。子供の頃も漫画に熱中した事はないし、アニメの世界で生きるというより、自分が描いた幼稚な妄想の世界で生きてたような気がする。
 記事にした「あしたのジョー2」も、沢木耕太郎氏の”濃密なヒロイズム”という言葉がなかったら、最後まで見てたであろうか。40年経った今だから見れたのかもだが、70年〜80年代の私は”あした(のジョー)”とは違う方向を向いてたように思える。
 しかし、人生が後半に差し掛かる頃にこうしたアニメに出会えた事に感謝すると同時に、アニメに対する免疫がついたせいか、”たかが漫画じゃないか”っていう見下した粗悪なノリがなくなったみたいだ。
 世界に誇る日本アニメという最強の娯楽文化。つくづく日本は漫画の国だと思い知らされる。


「とんでもスキルで異世界放浪メシ」 

 異世界で活躍する今風の軽いノリのファンタジーと見下していた。が、日常にあふれるこくごく普通の”商品”を駆使してサバイブする、という所が秀逸にも特異にも映る。
 中世程の文明レベルの世界で、現代の食品や化学調味料の存在がいかに抗い難い魅力を持っているか・・・かつて、塩や香辛料が金や銀と同等な扱いを受けていた時代。
 そんなノスタルジックで平凡な空気が、このアニメの世界を支配する。
 更に注目したいのが、実在する食品や商品が登場する所である。イオン・エバラ・花王・カゴメ・サントリー・ハインツ日本・ロッテなど我ら庶民がスーパーで目にする商品を見ると、異常なまでに親しみが湧いてくる。
 例えば、黄金の味(エバラ食品)が登場した時は思わず頬が緩んだ。そう我々はごく日常のありふれた何かに、小さなロマンを追い求める生き物なのだ。

 主人公のムコーダは普通のサラリーマンというか青年で、趣味は料理という”どこでもいる系”の平凡な設定である。料理とても自炊レベルだが、微妙に強かな所も持ち合わせてはいる。
 それに”ネットスーパー”という平凡すぎるスキルがとても愉快に映る。
 異世界というファンタジーものでは、科学が飛躍的に進んだ現代の知識を活かし活躍するというのが定番だが、これが今風のプリウスとかiPhoneとかだったらその時点で見るのを辞めていた。どんなに人気のアニメや漫画でも見る事はまずなかったろう。
 つまり、”平凡の中のごく平凡”な所が斬新にかつ魅力的に映る。少なくとも”平凡の中の非凡”では困るのだ。


最後に〜平凡なヒロイズム

 ここ数年は、健康志向とかの悪影響?で、添加物に有機食材、ヴィーガンに脱炭水化物、減塩に糖質制限と。まるで、カルトや陰謀説紛いの悪しきブームが現代社会を汚染してる様に思える。
 グルメブームと言っても、所詮は外食産業が展開する陳腐な食文化である。遊園地かテーマパークみたいな寿司屋や焼肉屋に無駄金を落とす気は毛頭ない。
 確かに、何を食おうが何処で食おうが幾らで食おうが、何を食って死のうが、人の勝手である。添加物や塩分や糖質たっぷりの加工食品を食って病気になろうが死のうが、やはり人の勝手である。
 つまり、彼ら彼女らは”店で食事をする”という自己満足と娯楽に浸ってるに過ぎない。

 こうした、昨今の陳腐で幼稚な健康食やグルメブームを死滅させるかの様な(今風に言えば)“飯テロアニメ”にも思えた。
 異世界を放浪しながら、あらゆる生き物の獣肉を現代の何処にでもある調味料を使って料理する。これこそが、沢木耕太郎さん風に言えば”濃密な食イズム”となるのだろうか。
 令和世代の若者が失いつつある小さなロマンが、このアニメの中には組み込まれている。
 一方で、今の日本は目的を失い、まるで異世界を放浪するような孤独な状況にある。それは我ら日本国民も同じである。
 そんな追い詰められた暗雲が立ち込める状況を”とんでもスキル”を持つ平凡な若者が救うとしたら?いや”ネットスーパー”という平凡すぎるアイテムが救うとしたら?

 つまり、カリスマ性を誇示する老いた狂気の独裁者よりも、ごく普通の平凡を持ち合わせる善良な若者の方が(調和という視点では)世の中を平和に支配できるのは明らかな気がする。
 香辛料がかつては黄金と同様の価値を持ってた様に、現代の調味料はあらゆる食材を調和に導く黄金の魔法でもある。
 更に、善良で平凡というありふれた才能は人類を調和に導くのではないだろうか。

 まだ4話までしか見てないが、昭和の”濃密なヒロイズム”とはいかなくとも、令和の”平凡すぎるヒロイズム”を醸し出すアニメであって欲しいもんだ。



2 コメント

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ムコーダ (腹打て)
2023-02-03 13:16:54
の怯えるような声がいいんだよな。
それに、フェリルの重厚な声の響き。
令和の平凡すぎるヒロイズムとは沢木さんに感化され過ぎたのかな。 
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腹打てサン (象が転んだ)
2023-02-03 16:33:56
吹き替えの声って
アニメでも映画でもドキュメンタリーでも、かなりの威力を発揮しますよね。
このアニメの人気の秘訣も、平凡すぎる声にあるのかもです。

平凡すぎるヒロイズムも令和の時代にはよくマッチしてると思いますが、昭和とは対称的ですよね。
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