象が転んだ

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日本人が最低でも知っておきたい?イスラエルとエルサレムとパレスチナ

2021年05月19日 06時57分17秒 | 戦争・歴史ドキュメント

 中山泰秀防衛副大臣は18日、イスラエルとパレスチナの戦闘を巡り、”私たちの心はイスラエルと共にある”と記して波紋を呼んだ。
 波紋を呼んだというより、無知・無能を晒したと言った方がいい。

 私達は、新聞やメディアで中東問題と言えば、イスラエルパレスチナ、それにエルサレムという言葉を思い浮かべる筈だ。
 しかし、これらの言葉が持つ意味を中山防衛副大臣は理解してるのだろうか?
 つまり、”心はイスラエルと共にある”との発言は、”イスラエル軍の対パレスチナ攻撃を支持する”と同じ意味であり、と同時に”イスラエルに武器提供するアメリカを支援する”と同じ意味でもある。
 これは発言というより、暴力という暴言である。というのも、最初にエルサレムという<レッドライン>を越えたのは、パレスチナではなくイスラエルなのだから。


エルサレムの”ユダヤ化”

 昨日の「私がアメリカを嫌いな訳」でも書いたが、イスラエル政府の”エルサレムのユダヤ化”という戦略は、明らかに国際法違反であり、イスラエル軍のガザ攻撃にはアメリカの意図がある。つまり、イスラエルが仕掛ける戦争はアメリカに大きな利益をもたらす。
 更に、寄せられたコメントにもある様に、アメリカの対イスラエル支援を支持するイスラエル・ロビーは、イランを敵視する。
 つまり、イランを野放しにすれば、イスラエルがイランによる核攻撃の危険にさらされると考えてるからだ。

 100年以上にわたり、ユダヤ人とアラブ人は、ヨルダン川から地中海の間に広がる土地を巡り争ってきた。イスラエルが1948年に建国して以来、パレスチナ人は繰り返し手痛い敗北を味わってきたが、それでもイスラエルは勝ててはいない。
 これも記事で書いた事だが、ここ約15年の間に繰り返されてきた対立は、イスラエルとガザ地区の境界に関するものだった。ところが今回の対立は、”キリスト教の聖地”エルサレムで起きたのだ。

 ではエルサレムとはどんな街なのか?
 エルサレムとは、ユダヤ人が住む西エルサレムと、アラブ人居住区である東エルサレムから成る。元々、イエス・キリストが処刑された地で、ユダヤ教・キリスト教・イスラム教共通の聖地でもある。
 しかしイスラエルは、東エルサレムを第3次中東戦争(1967)で占領し、エルサレムが自国の首都と宣言してるものの、国際社会はこれを認めておらず、イスラエルの首都はテルアビブであるとみなしている。
 一方で、パレスチナ自治政府は東エルサレムの領有権を主張し、パレスチナ国の首都と規定している。
 故に、イスラエルと国交を持つ諸国も大使館や領事館はエルサレムでなくテルアビブに置いてきたが、2017年にトランプ大統領が”エルサレムはイスラエルの首都である”と明言し、2018年5月にアメリカ大使館をテルアビブからエルサレムに移転させた。
 つまり、エルサレムはキリスト教の聖地であり、イスラエルやアメリカの占有物でもパレスチナの都市でもないのである。


エルサレムの複雑で悲しい歴史

 但し、歴史的に見れば、ユダヤ人の無念さも理解できないではない。
 エルサレムは紀元前930年頃にユダ王国の都となり、紀元前597年に新バビロニア王国の支配下に入り、エルサレムの住民約3000人がバビロンへと連行された。その後エルサレムは再建されるも、セレウコス朝シリアやローマ帝国などの支配を受け、6年にはユダヤ属州が創設され、エルサレムは宗教の中心として栄え続けた。
 この頃は、イエス・キリストがエルサレムに現れ、30年ごろに属州総督ポンティウスによって処刑された。
 しかし、66年にはユダヤ戦争が勃発し、エルサレムは陥落、132年には”バル・コクバの乱”を起こしたが鎮圧され、エルサレムはローマ植民市アエリア・カピトリナとして再建された。
 その結果、エルサレムを追われ、離散したユダヤ人たちは、エルサレム神殿での祭祀に代り、律法の学習を拠り所とする様になる。
 313年にはローマ帝国がミラノ勅令により、キリスト教を公認し、エルサレムはキリスト教の聖地と化した。市名は再びエルサレムに戻され、ユダヤ人のエルサレムへの居住が許可される様になる。

 しかし638年、アラブ軍征服でエルサレムはイスラム勢力の統治下におかれた。イスラムはエルサレムを第三の聖地とみなしたが、エルサレムの平安は維持されてはいた。
 第一次十字軍のムスリムやユダヤ人教徒の虐殺(エルサレム包囲戦)の後、1099年にはエルサレム王国を成立させ、ムスリムやユダヤ人は居住を禁止され、キリスト教徒の町となる。
 その後、エルサレムは再びイスラム勢力の支配下に入り、後にオスマン帝国などの支配下に置かれた。
 19世紀後半に入ると、ヨーロッパに住むユダヤ人の間でシオニズム(故郷復活)が高まり、パレスチナへのユダヤ人の移住が急増し、聖地エルサレムではユダヤ人が多数派を占める様になる。
 第一次世界大戦でオスマン帝国が敗れると、この地域は英国委任統治領パレスチナとなり、エルサレムにその首都が置かれた。
 第二次世界大戦後の1947年、”パレスチナ分割決議”にて、パレスチナの56.5%をユダヤ国家、43.5%をアラブ国家とし、エルサレムを国連の永久信託統治とする案が決議された。
 この決議を基に、イスラエルが独立宣言(1948)をするが、直後に第一次中東戦争が勃発し、翌年の休戦協定により西エルサレムはイスラエルが、旧市街を含め東エルサレムをヨルダンが統治する事になり、エルサレムは東西に分断した(以上、ウィキより)。

 以下、「解説、イスラエルとパレスチナ」より一部抜粋です。


対立激化のきっかけ

 現在イスラエルは、東エルサレムの実効支配を既成事実化する為、ユダヤ人入植を精力的に進め、パレスチナ人の住居が無許可であるとの理由で、しばしば彼らの住居を破壊している。
 因みに、2018年5月、アメリカが駐イスラエル大使館を公式にエルサレムに移転した。これを受けてガザ地区とイスラエルの国境沿いでパレスチナ市民がデモを行い、イスラエル軍が非武装のパレスチナ市民118人を殺害した。

 今回の対立激化の1つには、シェイク・ジャラー地区のパレスチナ人を強制的に立ち退かせるという動きにあった。この地区は旧市街の壁の外にあるパレスチナ人の居住区だが、イスラエル人の入植者たちがイスラエルの裁判所で土地や家屋の所有権を主張する。
 この紛争は、幾つかの地区や家屋を巡る揉め事に留まらない。イスラエル政府は一貫して、”エルサレムのユダヤ化”という戦略目標を追求してきた。エルサレムを取り囲む形で、占領地にイスラエル人がどんどん入植し、家を建て、広大な入植地を作り、明らかに国際法に違反してきたのだ。

 近年では政府と入植者グループが、壁で囲まれた旧市街に近いパレスチナ人居住区に、ユダヤ教徒のイスラエル人を住まわせようと取り組んでいる。
 それに加え、ここ数週間では、イスラム教の重要な行事ラマダン(断食)の間、イスラエル警察が強硬姿勢でパレスチナ人を取り締まっていた。それが頂点に達したのが、エルサレムの聖地アル・アクサ・モスクでの衝突だ。
 イスラム教徒にとってメッカとメディアに次いで神聖な聖地の寺院の中で、イスラエル治安当局は催涙ガスや閃光弾を使ったのだ。

 イスラム組織ハマスは異例の対応をした。イスラエル政府に対し、アル・アクサとシェイク・ジャラーから治安当局を撤退させるよう要求した後、エルサレムに向けてロケット弾を発射した。
 これを受け、イスラエルのネタミヤフ首相はTwitterで、”ガザのテロ組織は超えてはならない一線を超えた・・・イスラエルは強大な力で応酬する”と書いた。

 こんな状況の中、エルサレムで双方が平和的に共存できる僅かな希望のかけらでもあるのだろうか?
 イスラエルとパレスチナ双方の指導者は、それぞれ身内の政治闘争に取り組み、自分たちの立場の温存に集中してきた。双方の指導者にとって最大の課題は、和平実現だった筈なのに。しかし、和平実現に双方が真剣に取り組んだのは、もう何年も前の事なのだ。
 カーネギー国際平和基金とアメリカ・中東計画は、”最優先されるべきはパレスチナ人とイスラエル人の権利の平等と安全の平等だ”と主張する合同報告書を発表した(4/19)ばかりだった。
 この2つのシンクタンクの報告書には、アメリカ政府が”イスラエル支配下の領土に住む全員に対する全面的な平等と支援”を支持すべきで、”2つの異なる不平等な体制を支持すべきではない”と提言している。

 新しい発想は良い事だが、今週は昔ながらの現実とおなじみのレトリック(弁論)、そして100年前から続く紛争が再燃し、すべてをかき消してしまった。
 以上、BBC(ジェイミー・ボウエン)からでした。


最後に〜イスラエル・ロビーと対イラン政策

 歴史と進化に必然はない。同じ様に、特定の未来に向かう必然性もない。
 しかし、イスラエルとパレスチナは特定の必然の、そして同じ悲運に向かおうとしている。
 特にイスラエルの、そしてイスラエルを支援するアメリカのやり方は、露骨過ぎる。
 国際社会が反対&反発してるにも関わらず、”エルサレムのユダヤ化”を強引に推し進め、まるで中東諸国を所有物にしようとするかの勢いだ。

 少数派が外交に大きな影響を与える政治団体をエスニック・ロビーと言う。
 ではなぜ、アメリカではこういった特異な現象が起きるのか?
 大多数を占める米国の一般人では、内政に比重が偏る。しかし、少数派のイスラエル・ロビーがアメリカ外交政策へ大きなインパクトを与える傾向があり、その事例として、中東和平イラン核交渉がある。
 アメリカの政治・金融・メディアを牛耳るユダヤ人はごく少数派だが、献金額が桁違いで政治的影響力がとても強い。それに、イスラエル・ロビーは単一のまとまった団体ではなく、様々な団体や個人から成り、多くのロビーはアメリカの対イスラエル支援を支持し、イランを敵視する。
 イランに甘い顔をすれば、彼らの故郷がイラン核攻撃の驚異に晒されるからだ。

 しかし、イラン核合意(イランとの融和策)に賛同するリベラルなユダヤ人ロビーも存在する。事実、彼らの活躍のお陰でオバマ政権時はイラン核合意を実現出来た。
 でもトランプ政権によりそれは覆され、再び対イラン強硬策となった。

 イスラエルとパレスチナが、100年前から続く同じ様な悲劇を繰り返さない為には、リベラル派のユダヤ人ロビーの活動が不可欠だが、今の”幻想のアメリカ”の悲しい背中を見てると、それすらも期待できない様な気もする。



4 コメント

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バイデンも曖昧やね (腹打て)
2021-05-20 04:28:39
転んだ君の予想通り、アメリカは肯定も否定もしない。
幻想の国のアメリカの本音が見え隠れしてるんだけど、おかげで中国は笑いが止まらんだ。

それにしても、中山のアホはなんであんな発言したんだろ?バイデンですらイスラエル支援をぼかしてるのにな。
コメント引用ありがとう。
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腹打てサン (象が転んだ)
2021-05-20 05:01:14
いえいえこちらこそ。
お陰で満足いく記事が書けました。
オーツジャパン発言の安倍もアホですが、心は発言の中山も???ですね。

でも、バイデンの曖昧発言には少し驚いてます。中国を意識すつなら、嘘でもいいからイスラエルの空爆を暗に反対する声明を出すのかなと思ってましたから。
結局、アメリカも思う以上に追い込まれてんですかね。
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とうとう (腹打て)
2021-05-21 08:41:20
バイデンも動いた。
停戦の道筋を求めるという曖昧な表現だけど、一応は踏み込んだわけだ。
実際には、”停戦に向けた大幅な緊張緩和を期待する”と伝えたんだが、イスラエルのネタニヤフ首相は”イスラエルに平穏を取り戻すまではやめない”と反発した。
イスラエルのハマス側は”一両日中”の停戦を示唆してるが、ここに来てイスラエルの暴走だけが目立つ格好になったね。

ユダヤ人の強欲さと狡猾さがこういう所にしつこく現れるんだな。この状況を国際世論はどう見るのだろう。
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腹打てサン (象が転んだ)
2021-05-21 10:01:15
動きましたね。
このままだと、言われる通り、イスラエルは孤立しそうな勢いですが。
この先、どうなるんでしょうか?
目が離せなくなりました。
コメント有り難うです。
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