象が転んだ

たかがブロク、されどブロク

見る者を選ぶ映画「ディール・ブレイク」と、アイスランド経済の奇跡の復活

2024年02月26日 01時45分38秒 | 映画&ドラマ

 2014年と古い映画だが、”本国初登場第一位!アイスランド・アカデミー賞4部門ノミネート”という言葉に煽られ、思わず見入ってしまう。
 結論から先に言えば、見る者を裏切らない作品であるし、同時に見る者を選ぶ映画でもあった。
 展開としては、伝説的な名警官を父に持つハンネスだが、特殊部隊に志願するも落第し、何とかアイスランド警察の内務調査室に配属する。ある日、かつてはギャングのボスで今や麻薬の売人に成り下がったグンナーが逮捕され、本人からの指名でハンネスはグンナーと面会する。
 父の親友でもあり麻薬課のトップに君臨するマルゲールが裏社会に精通するセルビアの商人セルゲイと手を組み、グンナーを破滅させ、セルゲイがギャングのボスに成り上がった事を知らされる・・・

 ここまで言えば、その後の大まかな展開は予測できるが、グンナーは最初から無能で貧弱なハンネスに狙いを絞り、ボスの座を奪還しようと企んでた。結局、ハンネスはグンナーの策略に堕ち、警察とギャングの癒着はマルゲールからハンネスに受け継がれる事になる。
 但し、そこに至るまでの展開が濃密で複雑で北欧の小さな国らしく、ある種の不穏さと陰湿さを含む。
 アイスランド映画と言えば、「湿地」を見て、北欧の暗く異質なミステリーに嵌った記憶があるし、今作もそうした期待を裏切るものではなかった。

 因みに、アイスランドは非常に犯罪が少ない小さな島国で、それは人口が僅か35万人と少ないのが主な理由とされる。
 しかし、(リーマンショックの連鎖による)2008年の経済危機で国家の金融は破綻。”金融立国”を目指す夢は破れ、今まで単一民族国家として長らく築かれてきた平和が一気に崩れ落ちる。更に、人口流失に加え、国土の幾つかは外国人や外国企業に売却された。
 この映画は、こうした急激な環境変化やグローバリズム化を生んだ背景として、外国の犯罪組織の台頭や治安の悪化を描いたもので、私には非常に興味深く映った。それに、”イギリス人>セルビア人>アイスランド人”という微妙な人種階層を垣間見れた事も単一民族の日本人にとってとても勉強になる。


アイスランド経済、復活の裏側

 レヴューでは、アイスランド警察の物足りなさを指摘する声も多いが、私にはこうしたアイスランド特有の暗くどんよりとしたリアリティーに思わず魅入ってしまう。
 因みに、今のアイスランドは僅か数年でV字回復に成功したとされる。事実、2016年の経済成長率は何と7.2%で、東京の北区ほどの人口ながらサッカーワールドカップの初出場をも果たした。
 一体、どんな政策を国は進めたのか?日本の“失われた20年”とはどう違うのか?
 以下、「”奇跡の逆転国家" アイスランドに学べ」より一部抜粋です。

 火山の国・アイスランドの復活を支えた1つが”地熱発電”である。アイスランドは地熱発電と水力発電でエネルギーのほぼ100%を賄う“再生エネルギー”先進国となった。
 安くて豊富な電力を使い、仮想通貨の採掘業を誘致するなど、新たなビジネスが次々と誕生している。一方で日本は地熱の資源量で世界3位という大国なのだが・・・
 9世紀頃から植民が始まったアイスランドだが、スカンジナビア半島でヴァイキングが活躍していた時代。その後長くノルウェーやデンマークの支配を受けるが、実はアイスランドは世界最古の政治集会が開かれた場所としても知られている。
 全島民が集まり、争い事を話し合う最初の集会が開かれたのが930年。日本では平安時代に当たるが、この全島集会の事を”アルシング”と呼び、今のアイスランド国会の語源ともなっている。つまり、アイスランドは問題を全員で話し合う”直接民主主義的”な政治風土が古くから根付いてる国なのだ。

 前述の様に、2008年アイスランドはリーマンショックの影響で国家財政が破綻の危機に見舞われた。政府は非常事態を宣言し、多額の不良債権を抱えた大手銀行に公的資金を投入する事を国民に諮(はか)った。
 そして、行われた国民投票では2度に渡り、政府の案は否決される。”銀行が儲けようとしてやった事に国民が責任を負う必要はない”と反対したのだ。銀行は国有化され銀行幹部は相次いで逮捕された。
 その後のアイスランドが奇跡の復活を遂げるのは周知の通りだが、ヴァイキングの時代に遡る”全島集会”という伝統が国を救ったともいえる。
 以上、未来世紀ジパング(テレ東)からでした。


最後に

 レビューでは、アイスランドという小さな島国を見下す様な指摘も目立ったが、この国の奇跡の復活劇を我が日本も大きく見習うべきである。
 でも、アイスランドに出来て、なぜ日本には出来ないのか。
 それは、上述した様に、”直接民主主義的”な風土が民族のDNAとして、古くから根付いてる事が挙げられる。
 一方で我が国日本(ジパング)は、典型の”お上様”国家である。全ては権力者や政治家の言う通りであり、そうした古く腐った封建精度を未だに頑なに守り続けている。
 アイスランドには幸か不幸か、ヴァイキングの歴史があった。しかし今では、そのヴァイキングのDNAが小さな島国を救ったのだ。

 一方で日本はどうなのだろう。江戸時代の300年も続いた鎖国の後、黒船が来日し、民主化した。その後は軍事国家になり、日露戦争に勝利し、第一次世界大戦で大儲けをしたまでは良かったが、その後の大東亜共栄圏構想は裏目に出て、太平洋戦争で連合国にフルボコにやられ、原爆2発を落とされ、今はアメリカの属国に過ぎない。
 つまり、幸か不幸か平和を叫ぶしか能のない、哀れな鳩である。

 私はこの映画を見て、アイスランドという国が羨ましくも思えた。それは日本にはないリアリティーと独創性があったからだ。
 一方で、日本にはアメリカによって作られた傀儡国家のコピーという偽善しか存在しない。日本人の文化も贅沢も習慣も全てアメリカが書き写した模写に過ぎない。
 そういう思いで見れば、この作品の印象もガラリと変わる筈だ。少なくとも日本人は、世界から見下されても世界を見下す事をやめる時期にある。
 そこまでしないと、日本の復活はありえないと思うのだが・・・   



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