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1/7の摩訶不思議な世界〜”素数の逆数”で遊ぶ数学”その1”

2024年09月28日 05時46分30秒 | 数学のお話

 「数学は計算の上を飛ぶ」に寄せられたコメントに、ダイヤル数ってのがあった。
 ダイヤル数とは、その数に2、3、4を掛けた時、その値が各桁の数を順序を崩さずに巡回させた数となる。
 例えば、142857は有名なダイヤル数だが、”巡回数”とも呼ばれ、142857×a(a=1,2,...,6)の値は142857を巡回させた数になる。
 事実、142857×2=285714、142857×3=428571、142857×4=571428、142857×5=714285、142857×6=857142と、1→4→2→8→5→7の間を巡回する。

 一方、142857は1/7を小数で表した時に現れる数で、1/7=0.142857142857…となり、142857の正体は素数7が持つ不思議な性質とも言える。だが、両辺に7を掛け、1=0.999999999…となるので”ナルホド”と思ってしまう。
 この様に小数点以下の繰り返される小数を”循環小数”と呼び、繰り返される部分は”循環節”と呼ぶ。因みに、循環小数はn/m(mとnは互いに素)との形で表される。
 故に、2/7、3/7、4/7、5/7、6/7は全て循環小数となり、その循環節は順に、285714、428571、571428、714285、857142となる(図1参照)。 
 つまり、142857×a(a=1,2,...,6)とa/7の循環節は等しいと言える。

 以下、「素数はめぐる」(西来路文朗・清水健一共著)を参考に”素数の逆数”の不思議な世界を紹介します。


循環数と”1/素数”の不思議な関係

 ここからが本題ですが、1/7の不思議を少し突っ込んで説明します。
 つまり、1/7が148257の循環を引き起こすのは偶然か?必然か?って事です。
 まず、1÷7の計算で”商”に現れる数は、0,1,4,8,2,5,7,...となり、同様に”余り”として現れる数は順に、1,3,2,6,4,5,1,...となる(図3)。
 一方で、1/7の不可思議の本質は、例えば余りが3になった後の計算が、3÷7を計算するのと同じである事にある。実際、3÷7を計算すると、この商の列は0,4,2,8,5,7,1,...となり、この数の列は最初の0に続き、1÷7の商の列の4以降の数を並べた列となる。
 更に、これは素数pにて一般に成り立つ。
 つまり、”1÷pの計算にて余りがaになれば、その後の計算はa÷pの計算と同じになる”事が言える。

 この様に、数学的に厳密に考えると、142857×a(a=1,2,...,6)を計算する事と、a/7を小数で表し、循環節を計算する事は同じである事が判る。これは、循環節142857を求める1/7の余りの列(1,3,2,6,4,5,...)に、7未満の全ての自然数が現れてる事こそが、142857×a(a=1,2,...,6)の値は142857を巡回させた数になる事が成立する理由となるからだ。
 これも同様に、1/pで一般に成り立つ。
 つまり、”1÷pの余りの列にp未満の全ての自然数が全て現れる時、1/pの循環節に1〜p−1の数を掛けると循環節が巡回する”と言える。
 何故なら、”1÷pの計算で余りにaが現れれば、その後の計算はa÷pの計算と同じになる”が故に、1/pの循環節のa倍とa/pの循環節が等しくなるからだ。

 更に、142857に7以上の数を掛ける。まず、142857×7=999999となるが、これは驚くべき事でもない。先述の様に、1/7=0.142857142857…の両辺に7を掛ければ、1=0.999999999…となり、142857×7=999999となるのは自明である。
 以降、142857に8〜13を順に掛けると、1142856,1285713,1428570,1571427,1714284,1857141を得る。
 これは一見すれば、巡回してない様に見えるが、先頭の1を除き、1の位に1を足せば、142857,285714,…,857142と巡回数が復活する。

 従って、1000000を引いて1を足す事は、999999を引く事と同じで、142857×7=999999を引けば、順に142857,285714,…,857142となり、142857に1〜6を掛けたのと同じ巡回数を得る。
 この様に、142857×a(a=8,9,...,13)にても、142857×7=999999を引く事で、142857の巡回が起こるのだ。


更なる疑問

 だったら、142857を7以外の素数2,3,5,...で割ると同じ様な巡回数が現れるのだろうか?との疑問が湧く。
 まず、1428257÷2=71428.5となり、(永遠じゃないが)142857が巡回する。だが、1428257÷3=47619となり、142857が巡回しない。つまり、割り算は掛け算と同じ様な現象は起きないのだろうか。  
 次に5で割ると、1428257÷5=28571.4となり、142857が巡回する。
 ここで、少し混乱しそうだが、何らかの関連性はないのだろうか?つまり、2と5で割ると142857が巡回する理由は何処にあるのか?

 これも少し考えれば解る事だが、2=5/10として、(1/7)÷2=(1/7)×(5/10)=(5/7)×(1/10)となり、1428257÷2は5/7の巡回節714285を10で割ったものになり、71428.5となる事が判る。
 同じ様に考えて、(1/7)÷5=(1/7)×(2/10)=(2/7)×(1/10)となり、1428257÷5は2/7の巡環節285714を10で割ったものになり、28571.4となる事が判る。しかし、1428257÷3では、3が10を割り切らないので、3で割る事は分母が10の分数を掛ける事にはならない。
 故に、(1/7)×(1/3)を考える事になり、全く様子が異なるのだ(説明終)。

 次に、142857に1〜6を掛けた6つの巡回数を3桁ずつ2等分して足すとそれぞれ順に、142+857=285+714=428+571=571+428=714+285=857+142=999となり、全て999となる。
 次に、3等分して足せば、それぞれ順に、14+28+57=28+57+14=99、42+85+71=198、57+14+28=99、71+42+85=85+71+42=198と、今度は99が3つ、198が3つと少し状況が異なる。が、当然198=99×2だ。
 最後に、142857を6等分して足すと、1+4+2+8+5+7=27と9が並ぶ事はないが、27を2等分して足せば、2+7=9と、これまた9が現れる。

 これは、どういう理由からなのだろう?
 まず、2等分和、3等分和、6等分和のうち、最後の6等分和については簡単に説明が付く。
 これは、142857の6等分和=1+4+2+8+5+7は、自然数142857の各位の数の和になるからで、一般に自然数の各位の数の和は、9の倍数の判定条件に関係する。
 例えば、100の位がa、10の位がb、1の位がcの3桁の数は100a+10b+cであり、100a+10b+c=9(11a+b)+(a+b+c)を満たすので、この3桁の数が9の倍数である事と、9が各位の数の和a+b+cを割り切る事は同値となる。故に、9の倍数の判定条件は”各位の数の和が9で割り切れる事”となる。
 更に、2桁以上の自然数の各位の数の和は元の数より小さくなるので、9の倍数の判定条件は”各位の数の和を繰り返し求めると9になる事”と言い換えれる。
 一方で、142857は9の倍数である。従って、9の倍数の判定条件が使え、各位の数の和を繰り返し求めると、いずれは9になる(説明終)。


最後に

 以上より、142857の6等分和の不思議は解明できたが、2等分和や3等分和の現象はどう説明できるのか?また、1/7以外の素数の逆数1/pでも同様に不思議な現象が起きるのだろうか?
 確かに、素数とは言っても、自然の中に存在するものだから、こうした摩訶不思議も当り前と言えばそれまでだが、数学の世界から眺めると、いろんな事が見え隠れする。
 勿論、素数と言えど、抽象性という毒牙を剥く事もあるだろうし、リーマン予想はその典型でもある。
 それら摩訶不思議な現象を1つ1つ解読し、一般化させ、定理や定義や公理として作り上げられ、現代数学を支えるツールとなる。

 ただ、こうした素数の逆数が奏でる巡回数の不思議な規則が、後のラグランジュの定理やオイラーとガウスによる平方剰余の相互法則に昇華するのも不思議な縁でもある。

 次回は、1/7以外の巡環節も交え、1/pの摩訶不思議な世界を紹介したいと思います。

 


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