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数学と人種の壁
アメリカ数学会で2人の10代の少女がピタゴラスの定理について、新しい証明方法をプレゼンした事が話題になっている。
応用数学の専門家であるキース・マクナルティ氏は”性別・民族・社会人口学的背景に関係なく、誰でも研究分野での卓越性は達成可能である事を示す素晴らしい出来事”と評してる他、その証明方法自体が波紋を呼んでいる。
数学会にはあまり例がない南部出身のアフリカ系アメリカ人の女子高生2人(カルシア・ジョンソン氏とネキヤ・ジャクソン氏)による証明が驚きを呼んだ事について、”社会的背景によって学問が阻害されるべきではない”などといった議論が交わされる一方で、”彼女らの証明は素晴らしい業績であるのは間違いないが、彼女たちが有名な私立高校に通ってる事には触れていない。故に<学問に届きにくいエリアからの達成>というストーリーを語るには問題がある”とする意見も寄せられている。
以下、「10代の少女がピタゴラスの定理の新しい証明を示す」より一部抜粋です。
2人のプレゼンが大きな話題を生んだのには(黒人という人種の問題以外に)大きな理由がある。それは証明方法自体が高名な数学者たちをも唸らせるものであったからだ。
そもそもピタゴラスの定理とは、”直角三角形の3辺の長さのうち2辺が分かってれば残りの1辺の長さを計算できる”というもので、”a²+b²=c²”との数式で表される。
日本では”三平方の定理”として中学で学習する数式だが、この証明は(今では)数百通りもの異なるパターンが示されている。
実は彼女たちは、このピタゴラスの定理の証明を三角法を用いて行った事が数学会に大きな衝撃を与えたのだ。
この三角法とは、(例えば”1辺とその両端の角度が決まれば三角形の大きさが定まる”という)三角形の角度と辺の長さの関係を測量学などに応用する学問分野である。が、その三角法自体がピタゴラスの定理に依存してる為に、”ピタゴラスの定理を三角法により証明する事は不可能”とされてきた。
一方で、ピタゴラスの定理は”三角法で証明できない”という指摘は、ここ数十年で疑問視されるケースが多く、証明が何度も試みられてきた。その為、彼女ら2人の証明が”最初の三角法によるピタゴラスの定理の証明”という訳でもないが、前述のマクナルティ氏は彼女らの証明を”これまでに見た中で最も美しく、最も単純な三角法の証明である可能性がある”として高く評価している。
ピタゴラスと美しい証明
この美しい証明だが、辺a,b,c(a≠b)の直角三角形⊿abcにて、bとcの間の角度をα、辺aとcの間の角度をβとする(上図)。
まず、⊿abcにて、辺bを軸に水平方向へ反転したコピーを形成し、辺cに垂直な直線Aを角βから延長した後、直線Aと辺cを結ぶ直線Cを引くという3つのステップを繰り返し行う。
但し、直線Aは2番目の三角形の斜辺の延長線となり、直線Cはコピーした辺cの延長線となる事に注意です。
すると、大きな(横長の)直角三角形が形成され、その中に元の直角三角形とその相似である直角三角形を、左上から次第に小さくなる形で無限に描く事が出来る。
つまり、この”無限の相似三角形のシーケンス(無限列)”を使い、直線Aと直線Cの長さを導き出すのが、カルシア嬢とネキヤ嬢の証明となる。
上図で示される様に、3番目の三角形の1辺は2aとなるが、1番目の三角形で三角関数の基本公式を使えば、csinα=ccosβ=aとccosα=csinβ=bとなるので、3番目の三角形の斜辺をdとすると、dsinβ=2aとなり、d=2a/sinβ=2ac/bを得る。
そこで、sinα=cosβはcとaの(三角)比=c/aであり、cosα=sinβはcとbの(三角)比=c/bであるから、1番目と3番目の三角形の相似比(線分比)は2a/bとなる。因みに、”三角比”とは”直角三角形の鋭角θを挟む2辺の長さの比”の事で、最初に述べた”三角法”とは異なる事に注意です。
更に、3番目の三角形の短辺は(2ac/b)sinα=2a²/bとなるので、同様に、4番目の三角形の斜辺は2a²/bcosα=2a²c/b²となる。
以下同様に、5番目の三角形の長辺は(2a²c/b²)sinα=2a³/b²となり、斜辺の2a³/b²cosα=2a³c /b³を得る。
この様に、無限に続く相似三角形の場合、隣合う三角形の辺から線分比(相似比)、つまり三角関数の基本定義を使って表現する事が可能となる。
この時、相似三角形全体の辺A(直線A)の長さは、初項=2ac/b、公比=a²/b²の等比級数の和となる。これは、3番目と5番目の三角形の斜辺がそれぞれ2ac/bと2a³c /b³より、その線分比がa²/b²となる事から判る。
故に、等比級数の公式から、A=2ac/b(1−a²/b²)=2abc/(b²−a²)と表す事が出来る。
同様に、辺C(直線C)の長さも4番目の三角形の斜辺が2a²c/b²となる事から、これも4番目と6番目の線分比が上の線分比と同じなので、cに初項=2a²c/b²と公比=線分比=a²/b²の等比級数を加えた長さとなる。
故に、C=c+2a²c/b²(1−a²/b²)=2c(b²+a²)/(b²−a²)と表す事が出来る。
ここで、AとCの長さの比は、A/C=2ab/(a²+b²)となり、直角三角形では”斜辺×sinθ=(θの)対辺”となる事から、A/C=sin(2α)となる。つまり、2ab/(a²+b²)=sin(2α)を得る。
一方、最初に直角三角形を水平方向にコピーし、2つの直角三角形を合わせた三角形は二等辺三角形になる。故に、正弦の倍角公式を用いれば、sin(2α)=2sinαcosα=2(a/c)(b/c)となり、2ab/(a²+b²)=2ab/c²を得る。
但し、a,b,cいずれも0ではない為、両辺をabで割り、変形すれば、めでたくピタゴラスの定理”a²+b²=c²”が示される。
以上、GIGAZINEからでした。
最後に
HackerNewsでも、この証明については話題になり、”この証明は三角形の辺の比率(相似比)としてsinやcosが存在すると仮定してるだけで、<三角法を使用する>というフレーズは誤解を招く”と指摘する意見がある一方で、”従来は正弦の法則を証明に使用できないという信念があり、その為にピタゴラスの定理を三角法、ないしsinやcosを用いて証明するのは不可能だと考えられてきた。これが打破された為、創造的で予想外の証明であると考えられる”と2人の女子高生の証明が如何に画期的だったかを説明するコメントもあった。
ご指摘の通り、”三角法を使って”というより、単に”高校生レベル”の三角関数の定義(三角比を含む)を使い、ピタゴラスの定理を証明したとも言える。
しかし画期的と言えば、”相似三角形のシーケンス(無限列)”を使用した所や、最初に⊿abcの水平コピー(ミラーリング)を作った所などは新鮮なのかなとも思う。
つまり、幾何学が無限級数と結びつく辺りは、古典的でもあり現代的でもある。事実、等比数列の和を無限個で考えたものを幾何級数とも呼ぶ。
でも、そんなに大騒ぎするほどの証明なのだろうか?
むしろ、ニューオリンズの”10代の少女(Teenagers)”という暗に誤解を招く様な表現が問題ではないだろうか。少なくとも、女子高生を”少女”と呼ぶ趣味は私にはないし、”New Orleans”のフレーズが微妙にも思える。
そういう私も(タイトルでは)敢えて、”黒人女子高生”としたが、”少女”よりかは誤解は少ないであろうか。
こうした微妙な嗜好で、2人の女子高生の証明を”美しい”と評価したとしたら・・・
つまり、彼女たちは高校生として数学と戯れてたのであり、少なくとも”10代の少女”として数学会に認められる為に、この証明を発表した訳でもないだろうに。
勿論、数学者だってイ◯モツを持つ成人男性である。若い女性や少女に興味がない筈がない。だったら数学者らしく、”◯歳の女子高生”と明確にすべきではなかったか。
いや、私の考え過ぎであろうか・・・
そこまで大騒ぎするほどの証明なんだろうか。
大きな直角三角形を作り、その中に⊿abcと相似な三角形が無限に埋め尽くされる。
大きな三角形の辺Aと辺Bを無限等比級数で求め、ピタゴラスの定理を証明するんだけど、これは三角法というより、単に三角比と三角関数の基本公式を使っただけで、三角法との関連がよく判らない。
厳密には、105個あるとされるピタゴラスの定理の証明だけど
一番ポピュラーなのは、直角三角形4つと小さい正方形1つを組合せ、大きい正方形を作る方法である。
これは大きな正方形の面積を2通りの方法で示し、両者を比較すれば簡単に証明できる。
また相似を使った証明では、頂点Cから辺cに垂線を下ろした点をHとし、3つの三角形の相似性を使えば、これも簡単に証明できる。
3つ目は、直角三角形の3辺に内接する円(の内心)の定義を用いた証明で、三角形の面積を内接円の半径で表し、更にその半径を辺a,b,cの長さで表す事で3平方の定理を導く。
これが一番美しく数学的でもあるんだよな。
内心の定義ですか、外心の定義とセットで覚えた記憶がまざまざと蘇ります。
うーん懐かしい!懐かしすぎる。
久しぶりに高校の頃を思い出しましたよ。
⊿ABCの面積はab/2=(a+b+c)r/2で表せ、一方で長辺c=(a-r)+(b-r)で表せてr=(a+b-c)/2となり、a²+b²=c²が簡単明瞭に示せる。
これこそが美しくも画期的な証明です。
それに比べると、今回の女子高生の証明は、従来知られてる相似性を使った証明にも劣りますかね。
あ〜あ、これも記事にしたくなりました。
色々とご教授頂いて、感謝感激です。
ほんとに懐かしかったです。
”劣ります”ではなく
”複雑でしょうか”
とした方が誤解はないですかね。
アインシュタインやダビンチの証明もあるとか。
それに女子高生の証明は過去にもあったんですね。相似と等比級数を使ったやつで、どうもこっちの方がスッキリしてると思うんですが。
これってパクリと言えるのかな
それに、元アメリカ大統領も証明を残してたというから、色んな分野の秀才や有名人たちも挑戦してた。
これに関しても記事にするつもりですが、夏休みの宿題にしては丁度いい課題かもですね。