象が転んだ

たかがブロク、されどブロク

プーチンが燃え尽きるとき〜「象の消滅」と狂人の消滅

2022年03月13日 09時31分44秒 | 読書

 「象の消滅」という村上春樹の短編小説がある。ハルキストでなくても、有名な短編なのであらすじくらいは知ってる人も多いだろう。

 ある日、象が突然消えた。
 メディアは”象が脱走した”と大騒ぎするが、脱走でない事は明らかだった。
 象の足には鉄の足枷がかけられたままで、鍵は消防署と警察署に預けられている。象の飼育員が逃がした訳もなく、象が通れる程の大きさの脱出経路などもない。更に、足跡も全く見当たらない。
 不思議な事に、象が小さくなり飼育員が大きくなり、象と飼育員の大きさが同じになった時、象も飼育員も消え去ってしまったのだ。
 動物園が閉鎖し、歳を食ってどこも引き取ってくれない老象と70を過ぎた飼育係。仕方なく町が引き取るが、”小さな町に老象”とは明らかに整合性を欠く。 
 以下、「象の消滅は不思議で寂しくミステリアス感100%」を参考にし、思い切り主観を交え、”プーチン消滅”のシナリオを探っていきたいと思います。


プーチンの消滅

 ”どんな素晴らしいデザインも、周りとのバランスが悪ければ死んでしまう”
 だったら、象と飼育員のバランスはどうだったのだろう?
 確かに(互いに老いてはいるが)、象が大きいままで飼育員が小さいままだったら、整合性というバランスはとれてただろう。
 しかし、象が小さくなり飼育員が大きくなった事で、生き物としての整合性が崩れ、消滅するしか他に選択肢がなくなったとしたら?

 そこで象をロシアに、飼育員をプーチンに置き換えて考察してみる。
 プーチン(飼育員)とロシア(象)のバランスはどうなのか?
 つまり、プーチンがロシアから消滅していくのか?それとも消滅させられるのか?いや、小説の様に両方とも消滅するのか?

 確かに、プーチンのウクライナ侵攻は明らかに整合性も統一性をも欠くし、国際世論の猛反発と欧米の制裁もあってか、ロシア国内の全てのバランスは大きく崩れ去るだろう。
 2020年にロシアの大統領に君臨して以来、プーチンの野望と支持率は侵攻(紛争)を仕掛ける度に大きくなった。しかし、ロシアの経済力と国力は次第に小さく弱くなっていく。
 つまり、プーチンの野心とロシアの経済と国力のバランスが整合性を欠き、大きく崩れてしまった。故に、「象の消滅」が如くプーチンもロシアも消滅するのだろうか。
 1991年は、旧ソ連の崩壊だけでロシアの消滅は免れたが、村上春樹のシナリオ通りになれば、2022年はそれだけで済まない様な気がする。
 つまり、プーチンとロシアの消滅である。


日常というバランスを欠いた妄想

 私達は”あたりまえ”という日常の中に包まれて生きている。
 その日常は、当分は消えそうもないくらいしっかりした堅固なものの様に思える。
 しかし、消滅という言葉を使う事が許されるのなら、当り前が消滅するのは、意外にも簡単な事かもしれない。
 それは、時の流れが消滅を容易にするからだろう。
 プーチンの野望も大国ロシアも、今は当り前の様に何の疑問もなく存在する。しかし、明日いや明後日、当り前の様に存在するかどうかは解らない。
 「象の消滅」みたいに、不可思議な現象と共に、呆気なく消滅するかもしれない。

 我らはノホホンと便宜的な世界の中で生きている。その便宜的な世界の整合性が崩れたら、我らは100%消滅するのだろうか。それとも、「理不尽な進化」(吉川浩満 著)にも書かれてある様に、(99.9%の種は死滅し)ランダムに撰ばれた0.01%の種だけが生き延びるのだろうか。
 一方で、小説に登場する象と飼育係とのバランスはどの様に変化していったのか?”便宜的な統一性”は、どこでそのバランスを崩したのか?
 ひょっとして動物園が閉鎖した時に始まってたのかもしれないし、象が飼育員と出会った時かもしれない。それとも最初から消滅する運命にあったのかもしれない。
 しかし、老象と老人が静かに消滅していくプロセスは、進化という点で考えればごく当然の事かもしれない。
 同じ様に、プーチンの野心がプーチン自身を燃え尽くし、ロシアと共に消滅するというプロセスも、ごく自然な事なのかもしれない。
 こうした消滅は、便宜的で日常の我々の世界では、とても不可思議に思えるだろう。
 しかし、我々が当り前と思ってる日常は(整合性を伴い)バランスよく完結してるのではなく、複雑多岐に絡み合う(一見)便宜的見える、一種の妄想(幻影)なのかもしれない。

 プーチンの野望が単なる妄想だとしたら、少しでもバランスが崩れれば(いや、崩れないとしても)、一気に自らを燃え尽くすだろう。
 自ら描いた野望により、自分が燃え尽くされるのから、それこそ整合性が見事にとれた消滅もない。
 所詮、人類が生きる世界というのは最初から整合性の崩れた幻影なのかもしれない。
 そう思うのは私だけだろうか?



10 コメント

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ドライブマイカー (HooRoo)
2022-03-13 19:13:32
象の消滅って
そんなに優れた短編だとは思わないけど
解説がやけに力はいってるのよ
整合性とか統一性とか
まるで哲学を延々に語ってるみたい

ヘミングウェイみたいに
象と老人なんてタイトルにしたら
もっと面白い展開になったんだろうけど

転んだサンのプーチンの消滅も笑ったよ
狂人になるにつれ整合性が失われていく
狂人はやがて老人になり
そして消え去るのよ

村上春樹って外国でも人気あるんですよね
勿論キライな人も多くいるけど
ドライブマイカーの原作者という事で
再び脚光を浴びてるんだろうけど
この短編も何だかなーって感じ
でも脚本が良かったのかな
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Hooさん (象が転んだ)
2022-03-13 20:42:21
途中から
主人公と女友達ちの理屈っぽい会話になり下ったのが残念ですよね。
言われる通り、”象と老人”のまま突っ切ればよかった。
村上春樹にはそうした潔さに欠けるんですよ。(自分を大きく見せたいっていう)妙なカッコつけが目立つんですよ。
でも(評価は別にして)、海外で彼ほど知られてる小説家もいない。

ドライブマイカーで米アカデミー賞でも獲ったら、ひょっとしたらノーベル文学賞もって期待も抱きますね。

”プーチンの消滅”
お褒め頂いて恐縮です。
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大きな北朝鮮 (腹打て)
2022-03-14 12:26:28
多分高い確率でプーチンは失脚するだろうけど
ロシアは消滅するどころか、誰かが言ってたけど<大きな北朝鮮>に成り下がるだろうな。
2000年にプーチン政権が誕生し、プーチンの野望だけがどんどん膨らみ、一方でロシアの経済や国力は急速に萎んでいく。
最後にはとても貧しい大きいだけの北朝鮮になる。

日本も<小さなアメリカ>に成り下がり、最終的にはハワイみたいにアメリカの1つの州になるかもしれない。
象の消滅は、今そこにある国家の危機なんだろうね。
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国家~~て? (鈴木)
2022-03-14 13:40:10
こんにちは
ブログ拝見してます
私は今年70歳になります
戦後生まれで戦争を知りません
でも父は戦後ソ連に捕虜になり2年後に日本に戻りました
でも何一つ戦地の事は話しませんでした
ただ姉の結婚式の時飲み過ぎて帰宅しコタツで寝ていた時突然〇〇くん頭をさげろと寝言を言いました
母は「お父さん戦争の夢みてるよ」と笑っていました
その記憶だけがあります
次の朝父に聴くと軍曹だったそうです
それ以外は何も話しません
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腹打てサン (象が転んだ)
2022-03-14 15:45:47
ロシアの経済は韓国レベルで、
そんな経済力でウクライナに侵攻し、欧米を含めた世界中を敵に回してるんですよ。
経済制裁やSWIFT制裁で、近いうちに”大きな北朝鮮”になるのはジョークでもユーモアでもなく現実なんですよね。

プーチンやロシアの消滅よりも大きな北朝鮮の方がずっと深刻かもです。
第4回の停戦会議がまもなく始まりますが、ロシア側の妥協が勝利の確信によるポーズなのか?プーチンに隠された弱気なのか?
個人的には良い方向に向かうと思いたいです。
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鈴木さんへ (象が転んだ)
2022-03-14 15:46:46
偶然ですね。
私の伯父も関東軍の兵士で、ソ連の捕虜になったんですが、やはり戦争の事は一言も話しませんでした。
でも私の地域には関東軍が多かったらしく、子供の頃は色んな武勇伝を聞かされました。
戦争を体験した人ほど戦争は振り返るのも嫌なんですかね。

コメントとても参考になります。
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第4回停戦交渉 (paulkuroneko)
2022-03-15 08:18:25
どうやら上手く進んでないみたいですね。
プーチンはクリミアとドネツクとルガンスクの親ロシア自治区は絶対に引かないし、ウクライナ全土制圧はプーチンの威信をかけた目標です。
一方でゼレンスキーはロシア軍の完全撤退に加え、壊されたインフラの賠償請求を新たに突きつけました。
お互いの要求は交渉を重ねる毎に開いていきますが、戦火は次第にロシア有利になってきてますね。

今回の交渉が中断したのも、お互いの要求が思った以上にかけ離れてることが原因だと思われます。
しかしプーチンからすれば、話が纏まらないどころか、どんどん離れていく。2週間以上も攻め続け、これと言った具体的な戦果も得られていない。
焦りと誤算がこれ以上膨らむと、プーチンが核に手を付ける可能性もなくもないですね。
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paulさん (象が転んだ)
2022-03-15 09:56:07
今回もまた物別れに終わりそうです。
それに戦火もどんどん酷くなってますし、ロシアはウクライナに戦争の罪を擦り付けてきました。
これから停戦交渉が繰り返される度に、両国の要求も過激になるんでしょうね。
最初から、プーチンが提示した中立化と非武装化だけでは停戦合意に繋がる筈もない事は解りきってたんですが。
ここまで拗れちゃうと・・・

ゼレンスキーはプーチンとの直接交渉を盛んに呼びかけてますが、同じテーブルに立ったとしてもプーチンに遣り込められるでしょうね。
考えるほどにブルーになります。
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プーチンという人 (腹打て)
2022-03-15 12:47:16
この狂人も苦難の環境を生き抜き、ここまで成り上がったんだけど
叩き上げ型の独裁者って決まった様に最後は狂気に走り、暴走しちゃう。
今がまさにそれなんだけど、元々ブレーキが壊れた落ちこぼれの旧KGBで、今から思うと運が良かっただけの男だったように思う。

ただ、過去に何度も行われてきた米ソの軍縮により、ロシアには腐るほど旧式の軍事物資が残ってる訳で、経済力は韓国ほどだけど潜在的な軍事力はアメリカや中国に次ぐだろうね。
最新鋭の高度な大量破壊兵器が使われるのはこれからだろうけど、ウクライナ軍にはその覚悟は出来てるのだろうか。

ロシアの軍事要請に、ウクライナと暗に軍事同盟を結んでる中国が応じるかは疑問だが、多分軍事支援はしないで距離を置くだろうね。そうなるとロシアは軍事的にも孤立する。
一方でプーチンは習近平に脅しを掛けるだろうけど。でも中国もそこまでプーチンが強く出れば、逆に脅し返すかもしれない。
今はまだ中国が中立の立場をとってる為にプーチンも強気でいられるけど、中国を変に怒らせたら、その時はプーチン政権が失脚する可能性も高いのかな。
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腹打てサン (象が転んだ)
2022-03-15 18:01:04
追い詰められたとしても、プーチンは責任転嫁で逃げ回るでしょうね。
つまり、暴君は自分で責任を負う事はないですから。その間に政権内部でも孤立するでしょうか。

ただ、これからロシアは全面攻撃を仕掛けてくるでしょうから、ウクライナの損失を考えると、徹底抗戦に固執するではなく、一歩引いて戦況を眺めた方がいいと思う。
ある識者も、ウクライナは臨時政権を国外に作るべきだと語ってます。

一方で、プーチンが強く要求するドネツクとルガンスクの独立ですが、これは中国から見れば台湾独立を意味します。
そういう意味でも、中国は内心ではプーチンのウクライナ侵攻をよく思ってない事は確かですね。

私も最初から中国はロシアと距離を置くだろうと思ってました。
つまり、どっち転んでもプーチン失脚の確率が強そうですね。
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