3/8以来の更新です。前回と前々回で紹介した様に、男(主人公=ダーレム)はホテルの従業員の中年女(サビオレ)とネンゴロになるも、不思議な事に互いに心を許し、二人は信頼し合う仲となる。
同じくホテルの従業員で、若い魔性の女(カミーユ)とも肉体関係を持ち、女は探偵のマーロウを警戒する様に男を説得するも、信頼を得るまでには至らない。その11、12、15も参照です。
一方敏腕探偵のマーロウは、男に”アンタは下手に動くと必ず殺される。そして家族も間違いなく危険な目に遭う。大きな闇組織が関わってる。慎重に慎重を期さないと、私のプランの全てが水の泡になる”と脅される始末。その13、14参照です。
以上、主人公のダーレムと中年女のサビオレ、若い魔性の女カミーユ、そして探偵のマーロウの4人の関係はこれからどうなる事やらですが。リーマンブログ同様に書いてる私も訳解らなくなってきました。
さてと本題に戻ります。
男(ダーレム)は1人になり、眠りに就こうとするもなかなか寝付けない。いろんな事が当魔境のように頭を巡るのだ。男は冷静に頭の中を整理した。
まず中年女のサビオレは信頼できる女には違いはないが、何か裏がありそうな気がする。カミーユは危険過ぎるが、若くて魅力的だし、意外に素直な所もあり、利用しない手はない。
ただ、あの探偵に至っては警戒する必要がある。闇組織に詳しそうだし、俺の家族の事も知り尽くしてる。それに俺の会社と闇組織との繋がりも何がしか情報を握ってるだろう。やつを敵に回したら、それこそ俺の命も家族の命も危うい。
嗚呼どうしたらいい。誰を信用すればいいんだ。
男は睡眠薬をもらう為に、フロントへ降りたが深夜という事もあり誰もいない。仕方なく奥にある支配人の部屋を訪ねた。
トントン、男はドアを叩いた。
支配人は起きてたらしく、何の警戒もなくドアを開ける。
どうぞお入りになって、
さぞお疲れになったでしょう?
もうこのホテルには慣れましたかな?
それとも、もううんざりですかな?
探偵さんにはしっかりと絞られましたかな?
ああ、自己紹介を忘れてましたな
私は、クロード•エヴァンジェスタ•マティアス
皆、老マティアスと呼んでますで
男は礼を言って中へ入る。
支配人というより、管理人の部屋という印象だ。10畳ぐらいの狭い部屋で、台所と洗面台とお風呂だけは最低限揃ってるという質素な印象だ。ただ結構な読書家と見えて、本だけは凄い数が揃ってる。
夜分にスミマセン、なかなか寝付けなくて
睡眠薬でも貰えないかと伺ったんですが
探偵さんにはすっかり脅されましたよ
でもあの若い女は何モンですか?
貴方に拾われたって言ってましたが
それに中年の受付の女ですが、
彼女はメキシコからやって来て、
ずっとここで働いてると言ってましたが
支配人はゆっくりと腰を上げ、台所の方に向かった。
何か飲みますかな?
あいにく睡眠薬なんて
気の利いたものは持っとりませんが
コーヒーか紅茶ならありますが
もうこの歳になると、
コーヒーすら飲みたくなくなりますな
男は少し微笑んで礼を言った。
ではコーヒーでももらいましょうか
夜分なのに、本当に迷惑掛けてスミマセン
色々このホテルの事を知りたくて、
教えれる範囲でいいんですが、
私も複雑な事情を抱えてまして、
お陰で、こんな奇怪な目に遭ったんです
ホント何と申したらいいのやら、
最初は失礼な事を言い過ぎました
この場でお詫びします
初老は微笑みながら、コーヒーを注ぐ。
気にせんでエエです、何も気にせんでエエ
ここにはの
様々な事情を抱えた人の集まるホテルでして
皆最初は発狂したり、暴れたり、
色んな人がおるでね
でもね、アンタの為に言っとくがね
ここでは静かにしとく方が身の為だな
下手に動くと、命の保証さえないんでな
あの探偵サンの言う通り、
大人しくしてた方がエエ、絶対その方がエエ
男はコーヒーを飲みながら老人の表情を注意深く窺う。
マーロウという人、よくここに来るんですか?
本当に信頼できる人なんですか?
これが単なる脅しだったら?
それにあの人のお兄さんも、
闇組織から消されたんでしょ?
私はその闇組織から追われてるんですよ
大人しくしてろって言われても
家族の方も心配だし、
早く会いたいって気持ちも当然あります
そのマーロウさんからは、
モルモットの様に大人しくしてろって
でもそう言われても、落ち着く筈がないですよ
老マティアスの表情が緩んだ。
でもアンタは冷静な方じゃ、
家族思いの優しい方じゃ
嗚呼、それにカミーユって女じゃが
私が拾ったというより、
元旦那と一緒に逃げ込んできたんだよ
しかし元旦那の方は、直ぐに逃げちまった
落ち着いてここにいれば、命は救われたのに
惜しい事をしたもんだ
男は真顔で聞き返す。
ヤッパリ殺されたんですか?
あの女の話は本当だったんですね?
老人は首を降る。
いや、自ら持ってた銃で自殺したんじゃよ
持ってた銃というより奪った銃でな
二人はボロボロだったな、ここに来た時は
しかし、旦那の方が私を銃で脅し、
仕方なく部屋に泊めさせたんじゃよ
でも女はともかく、男は終わってたな
銃を必死で振り回す狂乱の男をだな、
何とか落ちつかせようとしたんじゃが、
そりゃカミーユも必死だったよ
一度は愛し、心を許した男だったからね
でも男は信じる事が出来なかったんじゃな
自分を自分の運命を、カミーユの説得を
それで男は逃げ出したんじゃ
逃げ出してすぐに、大きな音がしたよ
カミーユは泣きじゃくってね
もう可愛そうで仕方がなかった
お腹の中に小さな子供がいたんだが
勿論流産さね、子供の死と元旦那の死と、
二重に苦しんだな、全く哀れな娘じゃ
男は少し放心状態になった。
アイツが言ってた事は本当だったんだな
話半分に聞いてたが、ホントに辛かったんだ
だから俺を頼りにしたんだろうか?
でも俺と寝た所で何の慰めになる?
死んだ旦那が子供が生き返るってのか?
全くバカで哀れな娘だよ
老人は少し笑った。
なに、哀れな若い娘ってのはそんなもんさね
全てを失った女は、全てを与えたがるもんじゃ
悪い娘じゃないが、アイツも変わっちまった
でもあの娘は、今ごろ復讐を考えてる筈じゃ
全てを失った女ほど怖いものはないさね
ワシも散々説得したが、もう変わらんな
アンタが説得してくれれば、
何とかなるかもしれんがの
コカインで腐った脳みそは
もう救いようがないのかの
全く悲しい運命じゃの、
見た目は処女みたいなんだがの
最初は子猫みたいに懐いてたんだが
貧しい環境と悪の遺伝がそうさせたんかの?
男は自然と涙が溢れた。哀れな若い娘の身体を弄んだだけで、何もしてやれなかった自分に腹が立った。
マティアスさん、俺はね、
あの娘に何もしてやれなかった
若く豊満な肉体を興味本位に弄んだだけで、
全く何もしてやれなかった最低の男だよ
あの女は俺に助けを求めてたのに、
肉体を通じて、メッセージを送り続けてたのに
何も知らない俺は、危険な女と見下したんだ
正直カミーユをマーロウに売ろうとも考えた
俺は最低の人間さ、
闇組織に追われて当然の人間だ
そうだろ?マティアスさん、違うか?
老人は男の肩を叩いた。
そう自分を責めさんな
まだあの女は迷っとる
アンタを信じるべきか、迷っとる
元旦那に裏切られ、心が揺れ動いとるんじゃ
でも、一度は闇組織に心を許した女じゃ
危険な女には、代わりはないのじゃがの
ワシにはどう見ても、あの娘が
”危険な女”という風には思えないんじゃ
ワシの目も狂ったかの
アンタみたいに若かったら、
命がけで救ってたかもの
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