象が転んだ

たかがブロク、されどブロク

鏡張りの部屋、その27〜意外な展開?〜

2019年12月02日 05時13分51秒 | 鏡張りの部屋

 前回”その26”では、何者かに命を狙われ、重症を負ったレオニーが覚醒し、マーロウが彼女を問い詰めようとする所まででした。

 これまでの大まかなあらすじは、前回を参照です。


 マーロウは早速、レオニーの口元に耳を近づけた。
”今、写真を5枚持って来てます
無理に起きなくてもいいし
喋らなくてもいい
見覚えのある顔だったら、頷くだけでいい
わからないなら、首を横に振ればいい
では最初の写真から見せるよ”

 マーロウは5枚の写真を、次々とレオニーに見せる。
 しかし、レオニーの反応は鈍い。まるで頷いてるのか?拒否してるのか殆ど見分けがつかないほどだ。でも何かを言いたさそうな表情を浮かべてはいた。

 慌てて、ダーレムが口を挟む。
”レオニー、俺だよ俺!わかるよな!
頷くか?首を少し横に降るだけでいいんだ
君を襲った犯人はね、
マーロウさんのお兄さんを
殺した奴かも知れないんだよ
そいつは今、
メキシコへ逃げ出そうとしてるんだ
君の証言が全てなんだ
君次第で全てが解決するかも知れないんだ”

 老支配人がダーレムを遮った。
”慌てちゃいかんぞの
まだまだ、重病には変わりないんじゃ
マーロウさんもダーレムも
もう少し落ち着いたらどうなんじゃ
怖くて見ておれんよの”

 レオニーの傍らで、カミーユは血圧と心拍数、それに酸素摂取量を注視していた。
”血圧も心拍数も非常に安定してるし、
全然大丈夫!何か変化があったら
知らせるから、そのまま進めましょ
さあ、マーロウさん!早く進めて”

 マーロウは少し間を置き、再び写真を最初から見せ始めた。注意深くレオニーの瞳孔を探るも、哀しいかな彼女の瞳に反応はない。
”今は無理しなくていい
この写真の中には、
君が知ってる男がいない事がこれで解った
それだけでも十分に助かった
さあ、今日は疲れたろ、ゆっくりとお休み”

 ダーレムはマーロウに食い下がる。
”どういう事だ?
何か聞き出すんじゃなかったのか?
殺人犯は今も逃走中だろ?
このまま野放しにするつもりか?
レオニー!何か言いたいんだろ?
何でもいいから喋ってくれ!”

 老支配人はダーレムを押さえ付ける。
今日はその位にせんとの
気持ちはわかるが
まだ話せる段階じゃない
まだ、本当の体力が戻っとらんのじゃよ
彼女の事を一番に思う気があるんなら
今はそっとしとくべきじゃ”

 マーロウは煙草を蒸す。
”ダーレムさん、今日はこれで十分です
本当に助かった
実は、今日は一番危険と思われる
凶悪犯の写真を、あえて持ってきたのさ
その中にレオニーが知ってる男がいたら
ロス市警も私も、今頃は大慌てだろうな
お陰で、最悪のケースは免れたって訳さ
マティアス支配人、今日はご手数掛けました”

 老支配人は深々とお辞儀をした。
”何じゃ、そういう事情があったんかの
早くそう言えばいいものを
マーロウさん、アンタも人が悪い
でも最悪にならずに済んだからよかったの”

 ダーレムはマーロウに詰め寄った。
”という事は、
マーロウさんの兄を殺した奴と
レオニーを刺した奴は
違う人物という事ですか?
結局、捜査は振り出しに戻ったんですか?”

 マーロウは静かに微笑んだ。
”まあ、そこまで慌てる必要もないさ
今や、カードはこっちが握ってるんだ
それに、犯人は一度しぐじったんだ
奴に二度目はない
あったとすれば、それは逮捕される時さ”

 カミーユは心拍計を外し、マーロウに尋ねる。
”え?どういう意味?
結局、犯人は特定できなかったのよね
それに、その犯人が
証拠を残す程のヘマをする筈もないし
レオニーの記憶が完全に復活するまでは
何にも情報は得られないのよ
その間に、第二の第三のレオニーが
犠牲になる可能性も大いにあるのよね”

 マーロウは首を降る。
”多分、レオニーは襲った犯人を知ってたんだ
だから犯人は一瞬躊躇し、慌てたのさ
つまり、殺し損ねたって訳”

 ダーレムはマーロウを見た。
”という事は、犯人は彼女の顧客という事?
そうとしか考えられないよね?探偵さん”

 マーロウは静かに頷いた。
”ピンポーン、珍しく?正解だ
つまり、犯人はレオニーの得意客の一人
さっき、彼女が何かを言おうとしたよね
そいつこそが、彼女を襲った犯人なのさ”

 老支配人は笑った。
”どおりでマーロウさんの機嫌がいい訳じゃ”
慌てて入ってきた時は、
追い詰められてると思ったじゃがの
一本とられたの、ガッハッハ
マーロウさん、食事はまだだったかの?”

 マーロウは支配人の誘いを断った。
”今から、レオニーの顧客を全部洗い出します
多分、大物が釣れるかも知れません
釣れなかったとしても、
何らかの糸口は見つかる筈です
それまでレオニーさんを頼みます
いつか私の方からご馳走しますよ”

 老支配人は軽く会釈する。
”アンタも体に気をつけての
いつ命を狙われても
おかしくはない仕事だからの
では、ご馳走を楽しみにしてますじゃ”

 
 ダーレムは不思議な気持ちになっていた。何か腑に落ちない所もなくはなかったが、これがマーロウ流の捜査の進め方なのかと改めて感心した。
 決して事を荒出たせず、余計な事は一切せず、堕ちてくる獲物を確実に拾う。

”この人の言う通りにすれば、100%間違いはない”

改めてそう確信した。


ようこそ、
我がホテルカリフォルニアへ
🎵ここは素敵な場所でしょ🎵
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2 コメント

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中々死にませんね〜 (hitman)
2019-12-03 00:09:42
27話にしても死者が出ません。
転んだサンの意固地もここまで来ると(*_*;
堕ちてくる獲物を確実に拾うですか、次回も期待してます。
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hitmanさんへ (象が転んだ)
2019-12-03 06:43:41
とうとう死者が出ますよ。
次の28話でですが。
でも獲物はなかなか堕ちてきませんがね。
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