テンセグリティ(Tensegrity)とは、数学者で建築家でもあるバックミンスター・フラー(米、1895~1983)により提唱された概念であり、Tension(張力)とIntegrity(統合)の造語である。が、実際はケネス・スネルソンが彫刻として取り組んでた張力材と圧縮材からなる構造物に対し、”テンセグリティ”との造語を発案して用いたのがフラーであった。
具体的に言えば、曲げ力や剪断力を軸力に変換する構造により、”最小の断面で最大の構造物を造る”という数学の思想が大きく反映されている。
しかし、複雑で予想しにくい非線型挙動や大変形を生じやすい事や張力の管理が難しい事などにより、実際に建築物に利用するには問題が多いとされてきた。だが、社会と自然環境に対するコストを最小限に抑えた上で”全体的な効率を最大限に高める”とする理念の方が何よりも重要である。
故に、フラーは自身の哲学的思想(理念)の表現手段としてテンセグリティを採用したが、構造システムが破綻しない範囲で部材を極限まで減らた時の”最適形状の一種”とも考えられる。
因みに、フラーのテンセグリティは多面体に類似する対称性の高い形状をし、スネルソンのそれは有機的で不定形な作品が散見される。
まるで空中に浮いてるかの様な視覚効果が演出できるが故に、現代ではもっぱら芸術作品や玩具として用いられている。
一方で、理論物理学者のJ・K・マクスウェルは、(三角形の骨組構造である)トラス構造システムの静定次数と安定次数の計算式には適用範囲があり、この計算式が適用できない”何かしらの量を最大または最小にする”様な特殊な形状が存在する事を認めている。
これは、テンセグリティの概念にピタリと合致し、テンセグリックトラスなど”疑似テンセグリティ”とも言うべきシステムが生まれた。
張力の統合がもたらすトリック
故に、一般的な構造物とは異なり、圧縮材(ブロック)が互いに接続されず、張力材(チェーン)とのバランスによって成立し、”宙に浮いてる”様な構造物を作成できる。
この構造の大きな特徴は”少数の材料でも安定した立体が成立する”が故に、剛性を維持しながら軽量化する事も可能である。また、圧縮材を組み合わせた構造物とは異なり、弾力性を持つから、一部に力が加わった時には構造物がたわむ事で衝撃を緩和させる事が出来る。
そこで、Amazonでも600円ほどで売られてるJKBrickworksが作ったテンセグリティの仕組みを考えてみる。
2つのブロックと3本チェーンがどの様にバランスを保ってるかを見れば、仕組みは簡単です(図参照)。
以下、「宙に浮く!?”テンセグリティ構造”の不思議な仕組み」より一部抜粋です。
まず、下側のブロックは土台の役割を果たし、単体で安定する。一方で、上側のブロックには下向きに重力が働くので、それを打ち消す為に上側ブロックと土台のブロックをチェーンで繋ぐ必要がある。
つまり、”重力=張力”となる様に上手にバランスを取るのだが、(勿論)上側ブロックのL字の先端と土台を繋ぐ短いチェーンだけでは簡単に崩れてしまう。
そこで、ブロックのT字部と土台を2本の長いチェーンで繋ぎ、重力を計3本のチェーンに働く張力で打ち消してやる。厳密に言えば、圧縮材(ブロック)と張力材(チェーン)の相互作用により全体としてバランスを保つ。
つまり、チェーンに働く張力が重力を打ち消し、あたかもブロックが”浮いてる”様に見えるのだが、実は”チェーンが支えてる”というトリックで、”張力の統合”とはそういう意味なのであろう。
因みに、テンセグリティを成立させるには、圧縮材に最低でも3本以上の張力材が接続する必要があるとされる。故に、圧縮材と張力材の数を増やし、複雑なテンセグリティを作成する事も可能だ。
実は、アートや建設物だけでなく、生物の細胞膜や人間の筋肉骨格系もテンセグリティ構造だと考えられている。
つまり、人間は骨(圧縮材)と筋肉(張力材)によるテンセグリティであり、絶妙なバランスを成り立たせている。故に、体幹もテンセグリティによるバランスだと捉える事ができる。
また、DNAの螺旋などの自然全体に見られる幾何学的パターンもテンセグリティの原則が見られると。それらの構造は張力と圧縮の相互作用により、材料を最小限に抑えつつ、弾力性を保持している。
こうしたテンセグリティの仕組みは、”最も少ない材料で効率的に安定をもたらす構造”であり、自然界の至る所に存在するという。
最後に〜テンセグリティの時代と理念
見た目にも構造学的にも、また理念的にも人々を魅了するテンセグリティだが、ブロックとチェーンだけで完成するという点では、大阪万博のメインモニュメントにしても良かったかもしれない。
少なくとも、350億円も掛かる何の想像もない?大屋根(リング)よりかはずっと効率的で倹約的で、かつ印象的で芸術的で、更に”安定と調和をもたらす”というテーマとしてみれば、万博の理想と言えたかもしれない。
これら構造物だけでなく、あらゆる生き物はバランスを保って存在している。それは人類も同じであるべきだ。
しかし、ごく一部の権力者や独裁者は自らの私利私欲の為に暴走し、自然界のバランスまでをも壊してしまう。放っておけば、人類をも滅ぼすであろう。
つまり、コロナ渦に始まり、ロシア=ウクライナ戦争やイスラエル=パレスチナ戦争と続く、昨今の非常に不安定な時代には、”最も少ない労力で効率的に安定と平和をもたらす”というテンセグリティの理念が必要なのかもしれない。
確かに、数学は難しい。
しかし、それをクリアすれば(の話だが)、コストの掛からない安定した世の中を築くのは不可能じゃない。そう、数学は調和を大切にする学問である。
フラーが今の調和のバランスの崩れた時代を見たら、なんと叫ぶだろうか?
補足
故に、張力の統合と重力がつり合い、絶妙なバランスを取り、まるで宙に浮いてる様に見えるんですね。
以上、”物理おもしログ”さんのコラムから抜粋しました。
長いチェーンの2本は上向きに引っ張られてそう〜
ブロックの形状を考えると
短いチェーンの部分の方が
長いチェーンの部分よりも重そうに感じるけど
張力の統合で考えるとバランスがとれてんのかな??
正解と言いたい所ですが
丁度逆ですね。
剛体のつり合いという点で見れば、理解しやすいんですが・・私とした所が説明不足でした(スミマセン)。
高校の物理で学んだ”力のモーメント”を使えば、L₁×Mg=L₂×T₂となるので、上のブロックは重心Gを支点に(ヤジロベーみたいな感じで)絶妙なバランスが取れてます。
更に、張力の統合と重力がつり合い、Mg+T₂=T₁となり、宙に浮いてる様に見えるんですね。
力のモーメントとは
物体を回転させる力のことですね。
作用する力の向きが垂直のときに最大で平行のときは0になる。
と 物理のお話はここまでにして
大谷の移籍先がどうなるのか?
アメリカではそこそこ騒がれてますよね。
ドジャースが最有力とされてますが
個人的には古巣に舞い戻るんでは?と思います。だって高額選手揃いのドジャースは大谷に年間70億も払えんでしょうし、来年活躍できるとも限りませんし
力のモーメントで言えば
大谷のパフォーマンスが何処に向くかで戦力になるかかどうかが決まってきます。
さてと
転んだサンはどー予想します?
”力のモーメント”とか
高校の物理の授業では??でしたが、こんな所でしっかりと生きてるるんですよね。
話は変わって、久しぶりの大谷ネタですが
ドジャースはどうでしょうか?
収支的にはトントン状態で、大谷を獲得するまでの余裕はないと思いますが・・
かと言って、古巣エンゼルスだと単年で値切ってくるでしょうね。怪我の回復次第ではトレードでも高く売りつける事は微妙かもですね。
力のモーメントと同じく、契約は方向と力のバランスが重要ですから、どうなる事やらです。
コメント有り難うです。
張力T2と重力Mgのバランスがとれて
さらに
張力T1とT2の統合と
重力Mgがつり合ってるから
ブロックが空中で安定し浮遊してるように見えるということでいいのかなしら
大変勉強になりました(๑˙❥˙๑)
とても良い所を突いてたと思います。
お陰で、力のモーメントに気づく事が出来て、テンセグリティの構造式を明確に理解できました。
感謝するのはこちらの方ですよ。
こちらこそ、大変勉強になりました。
これからも宜しくです。