11月11日以来の「鏡張り部屋」ですが、前回までの大まかな流れは、”その40”(要CLICK)の冒頭を参照です。
前回”その40”では、探偵マーロウとその親友ダルデスの会話を中心に進めました。
果たして、ダーレムとその愛人のレオニーの命を救ったドレフュス医師が、マーロウとダルデスが思う様な”疑惑の医師”なのか?それとも単なる噂であり、誤解なのか?
その為には、ドレフュス医師がメキシコへ発つ前に何とか拘束し、自白させる必要がある。しかし明白な罪状がない為に、警察は動けない。
故に、マーロウもダルデスも異常なまでに神経を張り詰めてるのだ。
一方で、マーロウの秘書のライリンは、マーロウの指示通りに、ダーレムの妻シルフィと娘(スージーとルーシー)を車に乗せ、迷宮のホテル・カリフォルニアへと向かう(”その39”を参照)。
Episode#41
ダーレムはなかなか落ち着けなかった。電話では妻と娘の声を聞く事が出来たが、傍受される危険性をホテル側は考慮し、その後は声を聞く事も許されなかった。
シルフィは昔通りの妻でいてくれてるだろうか?娘2人は、特に長女のスージーは反抗的で電話にも出てくれなかったから、今でも俺の事を恨んでるのだろうか?
そう思うと、ダーレムの心境は決して穏やかでもなかった。
一方で、ライリンの車の中はまるでカーニバルみたいに賑やかだった。特に年頃のスージーは子供みたいにはしゃぎまくっていた。
シルフィが注意しても、全く言う事を聞かない。終いには、妹のルーシーにまで注意される始末。
ライリンは笑いが止まらなかった。
”私にもこんな賑やかな家族がいたら、もっと人生は変わってたかも知れないわ。ほんと、シルフィさんが羨ましいわ”
シルフィは笑うのをやめた。
”こんなに賑やかなのも本当に久しぶりなのよ。仕事と言って家は何週間も留守にするし、戻ってきたと思ったら、変な事故に見舞われるし、これじゃ命が幾つあっても足りない程よ。
ライリンさんはまだ若いし独身だから、伴侶は用心深く選ぶべきよ。一時の愛情や感情で選ぶべきじゃないわ”
先程まで騒ぎまくってたスージーが口を挟む。
”でもパパは悪くはないわ。周りに悪い人が沢山いたのよ。パパは何時までもパパのままよ。そうでしょ?ライリン”
ライリンは微笑んだ。
”お父さんはとても元気よ!昔のままの素敵なお父さんよ。貴方のお父さんは世界一貴女とルーシーを愛してるの。
ただ、悪い人に巻き込まれただけなの、だから安心して頂戴”
シルフィは真剣な表情になる。
”その悪い組織って、はっきりとしてるの?今でも色んな所に蔓延ってるんじゃないかしら?ああいう組織って、怪しい所と複雑に絡み合ってるらしいから、警察が探ってるとしても油断は出来ないわ”
ライリンも真剣に答えた。
”うちのマーロウも言ってたけど、ああ言う組織はヤバくなるとすぐ地下に潜るのよ。それにお金はタンマリと持ってるから、司法取引とかで温々と逃げ切っちゃうの。そうなると警察や検察の手は届かないわ”
ルーシーはポツリと呟く。
”悪い人って、捕まえる事は出来ないの?”
スージーはポツリと答えた。
”捕まんないから、悪い人なの”
一同に笑いが広がる。
ライリンは静かに呟く。
”大体において、悪い奴らは権力と結びついてるから、尻尾を出さないの。警察と言っても権力には敵わないから、あたしたち私立探偵が必要なの。少しは感謝して頂戴な”
ルーシーも静かに呟いた。
”マーロウっていう人、そんなに凄い人なの?どんな悪い人でも捕まえちゃうの?”
シルフィは笑った。
”凄い人だから頼りにしてるのよ。私達が今こうしていられるのも、マーロウさんのお陰よ。マーロウさんがいなかったらパパは死んでたかもね”
スージーはポツリと呟いた。
”パパの恩人なんだ。凄い人なんだね”
ライリンは笑う。
”そうでもないわよ。取り巻きがいいだけよ、ダルデスやテンゾーに囲まれてるから。でも、ドレフュス医師の本性が分からない事には、この事件は解決しないかもね”
シルフィは娘たちを諭すように言う。
”少なくとも推理小説みたいには、うまくは行かないって事”
スージーはポツリと漏らした。
”まだまだゲームは始まったばかりなのね”
ライリンは笑った。
”そうでもないわよ。この世界は尻尾さえ掴めば、一網打尽って事もあるから”
そうこうするうちに、車は山奥の中に入っていく。スージーもルーシーも少し不安になってきた。まるで初めて見るような景色だったからだ。
シルフィは不安そうな2人に両手を回し、優しく微笑んだ。
”案外いい所ね。もっと辺鄙な所だと思ってた”
ライリンは答えに困る。
”見ようによってはね。でも初めてここに来た時は、地獄の末にしか見えなかったわ。でも慣れてくると、案外落ち着いていい所かもね(笑)”
ルーシーは小さい声で呟く。
”パパはこんな所で、独りぼっちで寂しく過ごしてるの?早くパパにあって元気づけなくちゃ”
スージーは少しホッとした。
”アンタがそんな顔してると、パパまで落ち込んじゃうわよ。もっと元気だしなよ”
シルフィは微笑んだままだった。
”だったら私達ここに住んじゃいましょうか。空気はキレイだし、緑もとても美しいし、環境としては申し分ないわ”
しかし、迷宮のホテルに遭遇すると、3人の顔色が変わった。まるで、廃墟と化した高層の建物そのままだったのだ。
ライリンは大笑いしながら、呟いた。
”さあ、ここが皆さんがお気に入りのホテル・カリフォルニアですわよ。自宅にしたければ、転居届が必要ね。急ぐのなら、ホテルにも用意してありますよ”
シルフィもスージーもルーシーも、声が出なかった。いや出そうと思っても、落胆が大きすぎて出る筈もなかった。
ようこそ、
我がホテルカリフォルニアへ
🎵ここは素敵な場所でしょ🎵
🎵ここは素敵な人達でしょ🎵
ドレフュス医師を追いかけるマーロウと
家族との再会に心を踊らせるダーレム一家
2つの世界がとても対照的ですよねぇ
ひょっとしてコロナウィルスの影響でドレフュス医師が足止めを食らってるとしたら?
そういうシナリオも考えられますよねぇ〜
あるいは飛行機の予約をキャンセルして逃亡するか?それとも?
さてテンゾーさん!どう考える?
コロナウィルスで少し閃く事がありました。お陰でこれからのシナリオの参考になります。
個人的にはドレフュス医師を怪しい存在にはしたくはないんですが、それかと言って、薬物シンジケートではありきたり過ぎるので、どう持っていくかは?悩む所です。
これからもコメント宜しくです。