”ヒロシマ”でのG7が閉幕した。
ゼレンスキー大統領と、インドやブラジルといった(先進国の7つの国々ではなく)グローバルサウスと呼ばれる第三世界の国々の存在だけが目立ったサミットであった。
故に、戦後長らく続いてきた西側スタンダードの終焉を感じた。
そんな中、ブラジル大統領であるルーラ氏の”米国が広島に原爆を落とすと誰も想像していなかった”という言葉が、私の心に強く突き刺さったし、これこそが広島で開かれたG7のもう1つのテーマであると思った。
本来なら議長国の日本が、いや日本国の主である岸田首相が勇気を持って言うべき言葉だったのかもしれない。少なくとも、核廃絶の為には、”アメリカの謝罪”は避けては通れない本質でもある。
謝罪できない?アメリカ
今回のサミットには、グローバルサウスを代表してブラジルやインドやインドネシアが参加したが、いずれもロシア批判に消極的である。一方でこれらの国々は、”紛争は対話によって解決されるべき”とウクライナへの武器供与には反対するも、インドのモディブ首相はゼレンスキーとガッチリと抱き合った。
色んな意味でも、グローバルサウスといった新興大国らの躍動と主張を感じたG7だが、これまで世界を牽引してきたアメリカやEUの衰退をはっきりと感じとってしまった。更には、中露の一時の勢いをも霞むほどに思えた。
一方で、G7の実質の主役であった筈のバイデン大統領は、”ヒロシマ”の慰霊碑の前で、事前の取り決め通り、慰霊はしたが謝罪はしなかった。
この9年前、当時のオバマ大統領は、”驚異(核)は空から降ってきた”と広島を訪問したが、そんな場違いな事を言うくらいなら広島に来なければよかった。”核は空から”ではなく、アメリカ(トルーマン大統領)が落としたものである。
つまり、”米国は叩きのめした相手国に詫びる事はしない”というスタンダードは、ここでも守られていた。勿論これは、”日本を戦争犯罪で叩き続けろ”という中国に対抗しての事ではある。
しかし、当時の日本メディアは、”現職の米大統領が訪問するのは初めての事である”とし、”これで日米同盟はより強固なものになった”と手放しに称賛したものである。事実、(共同通信の調査では)98%の日本人がオバマの広島訪問を”良かった”と答えた。
一方で、米メディアは(一部には)”トルーマンの命令について謝罪はしなかった”と好意的に報道したものの、”オバマ氏の恥ずべき謝罪ツアーが広島に到着した”との批判が目立った。
そんな中、本質を云い得てると思ったのは、(妹を被曝で亡くした)作家の早坂暁の言葉である。
”具体的にどれだけの覚悟があるのかみせてほしい。原爆を投下した事実を過ちとして認めるべきだった。(オバマの)語り口はまるで詩人のようだが、原爆を天から降らせたのはアメリカだ。今や核を持つ国々が増え、制止する事もできないが、現在の危機的な状況を作り出したのは誰なのか?それを率直に語りもせず、本当に広島に来るだけの覚悟があったのかと問いたい”
また、長崎の被爆者からは、長崎市訪問が実現しなかった事や謝罪の言葉も無く、2009年のプラハ演説から進歩がないどころか包括的核実験禁止条約は今も批准せず、具体的な核廃絶に向けた提案なども示さなかった事について失望の声も見られた。
個人的な意見だが、日米同盟を健全で強固な形に持っていく為には、原爆投下に対する謝罪は必要条件だと思う。勿論、中露の日米パッシングの軍事プロパガンダに利用されるかもしれないが、”核なき世界”を真に望む為には、これを避けては通れない。
原爆投下の悲しい真実
今回のG7にて、米メディアは、バイデン米大統領が慰霊碑の前で”謝罪するか否か”、ワシントン出発前から強い関心を示してきた。
ジェイク・サリバン大統領補佐官は訪問に先立ち、大統領が謝罪する可能性は”ない”と、明確な予防線を張っていた。
原爆投下については、1945年時点では85%が”戦争を終わらせる為に必要だった”と肯定してた米国民も、95年には59%、2016年には43%にまで減っている。
確かに、少しでも歴史を勉強すればだが、アメリカが原爆を落としたのは、明らかに天文学的な犯罪だという事が理解出来よう。
特に広島の場合、子供たちが野球をして遊んでる場所に、そして、その最中にそれが判っていながら核を落とした。
日本が降伏の用意がある事もアメリカには判っていた。それでもトルーマン大統領は核を落とした。
原爆計画に掛かり過ぎた莫大な予算の辻褄を合わせる為に、広島と長崎が犠牲になったのはメディアやサイトでも紹介されている。こうした機密文書は、今日では日本だけではなくアメリカ国民だけでなく世界中にも伝わっている筈だ。
つまり、原爆投下が戦争早期終結の為ではない事は、今や世界のスタンダードである。
それでも日本人の多くは、”アメリカは謝る必要はない。核を落とされた日本が悪い”と、アメリカを庇い続ける。
しかし、おかしくはないか?
原爆を落としたアメリカのその国民が原爆投下に対し、半数以上が懐疑的な意見を持ってるのに対し、原爆を落とされた日本人の多くがアメリカの原爆投下を正当化する。
これが逆なら理解はできるが、原爆投下問題に関して、思考が停止したムラ社会の農耕島民ってのは、こんな程度の知能しか持ち合わせてはいないのだろうか。
全く、書いてて悲しくなる。
慰霊か?謝罪か?
原爆投下を肯定するアメリカ人には、共和党支持者や白人男性、65歳以上の高齢者の間では根強い。中には”大統領が広島に行くだけで<謝罪と同義>だ”と批判する米国民もいる。
以下、「バイデンよ、あなたもか」より一部抜粋です。
今まで、原爆投下を謝罪した米大統領はいない。オバマ氏は慰霊碑に献花はしたが、謝罪はしなかった。資料館の視察は僅か10分弱だった。
西海岸最大の発行数を誇るリベラル中道派のLAタイムズは”原爆最後の生存者たちはバイデンの慰霊を見守る中、謝罪はせず”と報じた。
オバマの広島訪問を裏方で実現させた元国務省高官のダニエル・ラッセルは、”オバマ氏は慰霊碑の前で静かに慰霊したが、謝罪の言葉はなかった。当時、岸田文雄は外相としてオバマに付き添ったが、バイデンはその時のオバマ氏のやり方を踏襲したに過ぎない”と語る。
一方で、保守系のザッカリー・クーパー研究員はこう発言した。
”日本の一部には謝罪を求める声もあったが、慰霊碑を訪れる事自体は日米関係の核心的モーメントとして計画されたものではないが、バイデンがそこを訪れた事自体にはシンボリックな意味がある。
日本側は過去を振り返るのではなく、前方にあるチャレンジについて考える為(慰霊碑を訪れる)だというメッセージを送っていた”
バイデンが原爆死没者に対して謝罪を口にできない理由について、ローラ・ケリー記者はこう指摘する。
”バイデンは広島訪問前から謝罪はしないと予防線を張っていた。共和党にバイデンは国際舞台では<弱腰だ>と批判されるのを避けようとした。また、中露が自分たちが今やっている殺戮行為を棚上げし、米国の過去の行動を批判するプロパガンダに使うのを回避しようとした為で、これは十分理解できる理由だ”
一方で、広島県出身の日系人女性Hさん(82)は、”死者を慰霊するのなら、加害者はまず謝罪するのが物事の順序ではないですか。それができない米国はいつそうなれるのか。臭いものに蓋の関係はずっと続くんでしょうね”と語る。
一方で保守系FOXニュースでは、”謝罪するか、しないか”を事前に取り上げ、”謝罪は許さないぞ”といったトーンを滲ませていた。
コメントは予想通り100%、謝罪に反対である。
”なぜ、日本に謝罪せねばならんのか”
”原爆を落としたお陰で、米兵も日本人も無駄な命を落とさなかった”
”敗戦国を助け、今の日本にしたのは米国だ。今も守ってやってるじゃないか”といった歯に衣を着せぬコメントだらけである。
謝罪うんぬんは脇におくとして、バイデン氏は核軍縮でもう少し踏み込んだメッセージを送れなかったのか。
米軍縮協会のダロル・キムボール所長はこ、以下の様にNYタイムズに語っている。
”広島G7サミットは、軍縮・軍拡・核戦争をグローバルに回避する事を全世界に発信する絶好の機会だった。その音頭をとるのがバイデン氏の役割だった。つまり、新たな核戦争危機回避を具体的に示す軍縮外交を提唱する絶好のチャンスだった(がそれをしなかった)”
こちらの方が、謝罪うんぬんより重要だった筈だが、社説でバイデン氏に助言する米紙や米誌はなかった。
後世の史家は”2023年広島G7”をどう評価するのだろうか。
以上、JBpressからでした。
最後に
つまり、今のアメリカに原爆投下に対し、謝罪する勇気も、そして謝罪する事による負の側面を払拭する力もないという事である。
慰霊と謝罪が別物であるように、謝罪と弱腰は別物である。事実、トルーマンが”弱腰”と思われたくないから核を落としたのなら、これほど情けない事もない。
一方で、アメリカによる原爆投下の”謝罪は必要ない”と日本人が思うのなら、そんな日米同盟はない方がずっとマシである。今や、”老いた”アメリカ以外の選択肢は幾らでもある筈だ。
アメリカが謝罪しない限り、(ヤバくなったら逃げてもいい)という”裏条文”が含まれた日米安保という曖昧で歪んだままの軍事同盟はどこへ向かうのだろうか?
確かに、ロシア=ウクライナ戦争の不透明な状況を見ても、今は謝罪してる時期と場合じゃないかもしれない。だが、過ちとして認めるべきではないだろうか。つまり、敗戦国のドイツと日本がいくら謝罪し尽くしても、戦争が過去のものになる筈もない。
ただ、”アメリカは謝罪すべきか?”が当り前の様に議論される世界であってほしいもんだ。
それにもし、G7でこれが一番の話題になったのなら、日本にとっても核廃絶にとっても大きな成果になり得たであろうが、ゼレンスキー大統領やモディブ首相の存在ばかりが目立ったサミットとなった。
今や、ロシア=ウクライナ戦争で一致団結しつつある(旧)東ヨーロッパ圏の国々やグローバルサウスと呼ばれる、第三世界の存在と躍動が世界の中心なのかもしれない。
つまり、核廃絶もアメリカの謝罪もローカルな話題に据え置かれるかもしれない。
アメリカが原爆を投下した広島で、アメリカの核の傘の下にいながら”核なき世界”を力なく叫ぶ日本。世界はこの哀れな矛盾をどう見るのだろうか。
なぜ日本人はアメリカに対し、こうした怒りを(正式な文書にして)ぶつけられないのか。
一方で、なぜアメリカは日本人のこうした隠された怒りを受け止めようとしないのか。
冷戦が終わり、社会主義が自壊すると民主主義もまた腐敗し始めた。やがて西側のスタンダードは消滅し、アメリカや中国に代わり、インドやブラジルやオーストラリアなどのグローバルな国々が覇権を握る日が来るかもしれない。
そうなった時、”アメリカだけが原爆を落とした”と、彼らは自壊したアメリカを批判するであろうか。
核廃絶とアメリカの謝罪ががこれら新興大陸の国々の力で成されるとしたら、これ程の皮肉もないだろう。
なので、日米安保にどっぷり浸かっている現在、「原爆投下を謝罪しろ」なんてことが言えるわけがありません。
僕は美点と考えますが、日本人は「水に流す国民性」なんですね。
原爆投下で言えば、もっと終戦の決断を早くしていれば避けられたんですよね。
悲惨な沖縄戦もなかったかもしれません。
しかし、当時の「戦争指導者たちの保身」と「精神論」でずるずる終戦が遅れてしまいました。
戦争指導者の中には「国体の維持」というこだわりもあったようですが、戦後生まれの当方としては「大日本帝国」が続くよりは現在の「日本国」の方がずっとよかった。
でも現在、愛国保守を名乗る人の中には「大日本帝国的なもの」を望む人がいるんですね……。
日本は生きていけると思います。
むしろ、アメリカがいない方がずっと都合がいいかもですね。いや、そういう事にもっと早く気付くべきでした。
それに、原爆投下も(日本を打ち負かす為ではなく)単に核開発に掛かった莫大な予算の辻褄を合わせる為だけでした。
つまり、アメリカが日本に核を落とした事実は、アメリカにとって日本は無くてもいい存在で、日米同盟も存在に値しない空約束に近い。
そんなアメリカを敵に回したり味方にした事自体が致命的だったんでしょうか。
一方で、インドやオーストラリアやブラジルなど、これらグローバルサウスと呼ぶ”新大陸”の国々と手を結んだ方がずっと未来は明るいと思います。
つまり、アメリカと付き合っても(結果的にはですが)、百害あって一理なしでしたから。
結局は、アメリカという幻影に踊らされ振り回されてきただけのニッポン。
そういう私もアメリカに憧れた時期もありましたが、今となっては幻想に過ぎなかった。”自由の国”という見た目のいい偽善なイメージにマンマと騙されてたんですかね。
コメントいつも有り難うです。
日本がもっと早く降参してたら原爆投下はありませんでした。
が、アメリカにとっては原爆投下の格好の口実となったのも事実ですね。
ただ、(曖昧な)日米安保と原爆投下の(過ちと)謝罪は独立して考えるべきだと思います。
一方で、アメリカ国内でも原爆投下の真実や謝罪に関する認識が(一部ですが)高まりつつあるのも事実です。
この時期に、この記事を書くのも少し場違いかなとも思いましたが、ブラジル大統領の言葉には背中を押された気もします。
言われる通り、日本がアメリカに謝罪させるのは不可能に近いですが、(個人的には)世界の流れがアメリカの謝罪を生む様に持っていけたらと思うんですが・・・
その為にも、グローバルサウスの新興大陸の国々には期待しています。勿論、今の内閣なら裏切られるかもですが・・・(悲)
コメントいつも勉強になります。
アメリカは人類史上唯一の核使用国であり
日本は唯一の核被爆国です。
更に前者は勝者で後者は敗者ですから、この2カ国で結ばれた安保条約には主従関係が存在し、どうしても歪んできます。
核使用国のアメリカが核廃絶に踏み切れないのも、未だに核による力の論理が働く為で、日本が核廃絶に及び腰なのも、アメリカの核の傘を意識してのことです。
もしこのままアメリカが原爆投下の過ちを認めないままでいたら、プーチンが核をウクライナに落としても”アメリカだって落としたじゃないか”って開き直るでしょうね。
今のアメリカには原爆投下の過ちを認めるだけの勇気も覚悟もありません。
そんなアメリカの苦悩を知ってか、プーチンは核の使用を敢えて堂々とチラつかせています。
ブラジルのルーラ大統領の”まさかアメリカが原爆を落とすとは”とのコメントはとても新鮮に驚異に映りました。
少なくとも”まさかプーチンが”にならないことを祈るだけです。
先にコメントされた方と被りますが、有害事象多数で世界中で訴訟問題になっているコロナワクチンはファイザーの在庫処分のために押し付けられて無理やり買わされて日本だけ未だに打て打てドンドンの状態ですよね。農薬もアメリカの命令で他国で規制されているものが作物に使われているようです。アメリカからの資金要請に反対していた中川昭一大臣は変死してしまいました。Twitterで見かけたのですが、原発投下の映像が流れた際にオバマ氏は拍手した一方でプーチン氏は十字を切る動作をしていたようです。
原爆を落とされて当然なんて思う人がいるのですね。日本人の奴隷根性に絶望しています…
私と同じで、まんまと裏切られましたよね。
特にアメリカは口先だけなんですよ。
派手なだけのイメージを高く売りつける。
武器も薬も牛肉もそして娯楽も、アメリカ国内で要らなくなったものを売りつける。
私が知ってるアメリカは、こうではなかった。
勿論悪い事も沢山したんですが、今ほどには酷くはなかった。
ウクライナ戦争がどんな形で終結するかは解りませんが、中国が賢く振る舞えさえすれば、アメリカは一気に衰退するかもですね。
ゼレンスキーとルーラ大統領が顔を合わせなかったのも、(勝手な推測ですが)このコメントが原因でアメリカに釘を刺されてたのかもですね。
今回のG7ではアメリカの存在は無いに等しかった。アメリカもEUも遠い昔の国のような気がしました。
アメリカもロシアも中国も高く付きすぎた覇権争いで疲弊し、その代わりにグローバルサウスと呼ばれる第三世界が躍動するのは確実となりそうです。
時代は確実に変わるんですよね。
勿論、全ての責任をアメリカに押し付けるつもりもないんですが、今のアメリカは巨悪の根源と言われても仕方ないですかね。
中国もロシアもアメリカと同じ様な事をやろうとしてるから始末が悪いんですが
言われる通り、日本人の相変わらずの奴隷根性といい、全く嫌な時代になったもんです。
コメントありがとうございます。