空耳 soramimi

あの日どんな日 日記風時間旅行で misako

あさのあつこ 「木練柿」 光文社

2011-04-10 | 読書




お昼から、投票のついでに、図書館に予約していたこの本をとりに行った。
次に待っている人があるので早く返してくださいと言われていたので、借りていた本をみんな返してほっとした。


最近、あさのさんの本が面白いので、買ってきた「バッテリー」をⅡまで読んだ、こんな面白くて新しい本を105円で買ってもいいのかなと、嬉しいような気の毒なような。
図書館の本棚に続きの三冊があったのでそれも借りてきた。



「木練柿」はシリーズの核になる三人を巡る、4編の短編から成っている。

「楓葉の客」
「遠野屋」でかんざしを盗んだ娘を、手代の信三が見つける。彼女は糸屋「春日屋」の一人娘で、親にすすめられた縁談がいやで、歩いているうちについふらふらと店に来て手が出たのだという。一方若い男が殺される。それがまた、女中の知り合だった。
これらが「遠野屋」に起きた事件の発端だった。

「海石榴」の道
「遠野屋」で清之介が始めようとした、今で言う着物から草履、小物までのコーディネイトをするという企画が、「黒田屋」の殺人騒ぎで中止になっていた。もう一度始めてはどうかというときに、仲間に入るはずだった「三郷屋」が殺人犯としてつかまってしまう。言い訳のできない状況だったが、信次郎はあまりの出来過ぎた状況に不信感を持つ。

「宵いに咲く花」
伊佐治の息子の嫁には、夕顔を見ると不可解な不安と恐怖を覚るという悩みがあった。
だが夫婦仲はよく、良く働く気立てのいい嫁で幸せだった。
ある日買い物に出て遅くなって帰る途中、暗がりで襲われる。
ひねくれものの信次郎は、相変わらずいやみな男だったが、勘は冴えていた。

「木練柿」
清之介が刀を捨てたのは、亡くなったおりんに出会って「遠野屋」の婿に入るときだった。生き方に迷っていた彼に、両刀を預かりながらおりんは「お覚悟を」といった。この言葉は今でも彼の中で生きていた。
平穏な日々の中で養子にして、可愛さが増してきた赤ん坊のおこまが散歩の途中で誘拐される。
平身低頭して助けを頼む清之介を前に、信次郎は「おこまは生きている」と断言する。



「宵に咲く花」「木練柿」が特に情感にあふれ、三人の、今、過去につながる話に事件が絡んで面白い。


読書
37作目 「木練柿」★4.5
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あさのあつこ 「夜叉桜」  光文社

2011-04-10 | 読書




「弥勒の月」が面白かったので、二作目を予約してみたら、すぐに来た。

「音もなく少女」が気になっていたので先に読み、続けてこの本を読んだ。

文庫470ページほどにぎっしり詰まった本の後では、「夜叉桜」は読みやすく、すぐに終わってあっけなかった。

このシリーズは三作目があるという。検索して見つけた「小暮柿」を早速予約した。



これは前作を凌ぐ出来だと思った。

信次郎は相変わらず、不可解な気質で、その気が無くても周りを振り回し、わざと言葉を使って他人の弱みをちくちくと刺し、生きることに倦み疲れたように、掴みどころが無い。
だが、なぜか清之介の店に拘り頻繁に現れる。

伊佐治は彼を好きになれないでいるが、怜悧な切れ味を持つ信次郎の推理を認めて、心底では憎めないでいる。

そして清之介は「遠野屋」を大店に育て上げ、店は繁盛して活気がある。

そこに女郎の連続殺人が起きる。

最初に殺された女は、「遠野屋」の手代、信三の幼馴染だった。

清之介は、彼を過去から開放してくれた兄に遭った。そして今、兄も逆境の中にいた。
清之介の過去はまだ彼を追っていた。

殺された女郎たちを調べていくうちに、「遠野屋」とのかかわりが浮かび上がる。

因縁の過去が尾を引く、物悲しい話になっている。

何か世間を越えた空間に住み、すね者のような信次郎と、過去に縛られ、受けた恩義の重さでも自分を縛っているような清之介が、人間らしさを垣間見せる。

「あさのあつこ」さんは、こうなるのだろうかと言う期待にこたえてくれることもある。
こうなるの?と言う疑問には明らかに新しい展開で驚かす。
うまい。
そしてとうとう、いったいそれでどうなるの?と終わりまで読ませる。

43作目「夜叉桜」★5
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ボストン・テラン 「音もなく少女は」  田口俊樹訳 文春文庫

2011-04-10 | 読書


長く待っていたので図書館から連絡があってすぐに走っていって一気読み。さすがに面白かった。


ブルックリンの極貧家庭に生まれた、耳の不自由な少女イヴが勇気のある女たちに守られ成長していく物語。

母のクラリッサは、耳が聞こえないという障害を持つイヴを、将来味わうだろう人生の荒廃から救うために、教育を受けさせようとする。
そこで教会で顔見知りになっただけのフランに相談する。

イヴを育てることでクラリッサとフランは親友になる。

フランには過酷な過去があった。

彼女の愛した青年も耳が不自由だった。

フランの両親は傷害のある子供たちを教育する私立学校を経営していた。そこに彼は入学していた。

家系に障害のある子供がいると、優生保護のために断種手術を受けなくてはならなかった。
彼女は青年と逃げるが、子宮を摘出され、恋人は射殺された。
その後、彼女は一人小さな店を持って暮らしていた。

三人の女性が、運命と卑劣な男たちに翻弄されながら勇気を持って生き抜くものがたり。

文章は繊細でダイナミック、時には詩的で、上質な文学的な香りを持っている。

彼女たちが、過酷な出来事に打ちのめされながらも、立ち上がるたびに、読んでいても何度か胸が一杯になった。

評判どおり読み甲斐のあるいい本だった。

42作目 「音もなく少女は」★5
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