お昼から、投票のついでに、図書館に予約していたこの本をとりに行った。
次に待っている人があるので早く返してくださいと言われていたので、借りていた本をみんな返してほっとした。
最近、あさのさんの本が面白いので、買ってきた「バッテリー」をⅡまで読んだ、こんな面白くて新しい本を105円で買ってもいいのかなと、嬉しいような気の毒なような。
図書館の本棚に続きの三冊があったのでそれも借りてきた。
「木練柿」はシリーズの核になる三人を巡る、4編の短編から成っている。
「楓葉の客」
「遠野屋」でかんざしを盗んだ娘を、手代の信三が見つける。彼女は糸屋「春日屋」の一人娘で、親にすすめられた縁談がいやで、歩いているうちについふらふらと店に来て手が出たのだという。一方若い男が殺される。それがまた、女中の知り合だった。
これらが「遠野屋」に起きた事件の発端だった。
「海石榴」の道
「遠野屋」で清之介が始めようとした、今で言う着物から草履、小物までのコーディネイトをするという企画が、「黒田屋」の殺人騒ぎで中止になっていた。もう一度始めてはどうかというときに、仲間に入るはずだった「三郷屋」が殺人犯としてつかまってしまう。言い訳のできない状況だったが、信次郎はあまりの出来過ぎた状況に不信感を持つ。
「宵いに咲く花」
伊佐治の息子の嫁には、夕顔を見ると不可解な不安と恐怖を覚るという悩みがあった。
だが夫婦仲はよく、良く働く気立てのいい嫁で幸せだった。
ある日買い物に出て遅くなって帰る途中、暗がりで襲われる。
ひねくれものの信次郎は、相変わらずいやみな男だったが、勘は冴えていた。
「木練柿」
清之介が刀を捨てたのは、亡くなったおりんに出会って「遠野屋」の婿に入るときだった。生き方に迷っていた彼に、両刀を預かりながらおりんは「お覚悟を」といった。この言葉は今でも彼の中で生きていた。
平穏な日々の中で養子にして、可愛さが増してきた赤ん坊のおこまが散歩の途中で誘拐される。
平身低頭して助けを頼む清之介を前に、信次郎は「おこまは生きている」と断言する。
「宵に咲く花」「木練柿」が特に情感にあふれ、三人の、今、過去につながる話に事件が絡んで面白い。
読書
37作目 「木練柿」★4.5